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報告書&レポート

2019年1月21日 ロンドン 事務所 福田光紀、吉益英孝、ザボロフスキ真幸
19-03

Mines and Money London 2018参加報告

<ロンドン事務所 福田光紀、吉益英孝、ザボロフスキ真幸 報告>

はじめに

2018年11月26日から11月29日にかけて、2018年で16回目となるBeacon events主催の「Mines and Money London 2018」が英国ロンドンで開催された。例年はマクロ動向、コモディティ動向、資金調達動向、ESG動向など一年のトレンド及び今後の見通しが講演されていたが、今年は地域別にカンファレンスの日程が決まっており、ジュニア企業からの企業及び案件紹介の場が大幅に増やされた。以下、主な講演を紹介する。

講演会場(左)と展示会場(右)

講演会場(左)と展示会場(右)

1.鉱業産業の現状

(講演:Mines and Money、Chief Commentator, Dr. Chris Hinde氏)

鉱業セクターは、2011年~2016年に渡って、6年間弱気市場であったが、2016年を底に回復基調にある。6年間の弱気市場中に、鉱業界は操業コスト削減を手始めに実施。図1のように銅鉱山会社の操業コストを見ると、2011年以降、コストカーブは下がっているにも関わらず生産性は上がっている。これは、銅以外のほとんどの金属鉱山でも同様の動きとなっている。

図1.世界の銅生産量とキャッシュコスト

図1.世界の銅生産量とキャッシュコスト

(出典:Mining Beacon and S&P Global Market Intelligence)

鉱山業界は鉱山機械及び機器の買い替えを控えたことにより、2011~2016年に渡って大型エクストラクター、ローダー、トラックのグローバル販売数は著しく減少し、鉱山機械のメンテナンスに注力した。(図2)しかし、2016年以降、鉱山企業は鉱山機械の買い替えを開始し、今後3年間の設備投資は年間1.5%を上限に増加すると予測。しかし、2020年の出荷数は2012年のピーク時から25%減の水準に留まる。

図2.世界の鉱山機械の出荷量推移

図2.世界の鉱山機械の出荷量推移

(出典:Mining Beacon and S&P Global Market Intelligence)

また、鉱山企業は2012年をピークとして探査費用を大幅に減少させたが、2016年を底に増加に転じている。2018年の世界の鉱山企業の探査費用総額は101億US$に回復(石炭、鉄鉱石を除く)。2017年の探査数は前年比14%増、2018年は19%増になると見積もっている。しかし、2018年第2四半期及び第3四半期の貴金属及びベースメタル価格の下落が、2018年第3四半期の探査活動に影響を与えており、探査数は前期と同じだが、掘削数は前期比7%減となった。探査数の3分の2は金プロジェクトであり、特にカナダ、西アフリカ、豪州に探査が集中している。

図3.世界の鉱山企業の探査費用推移

図3.世界の鉱山企業の探査費用推移

(出典:Mining Beacon and S&P Global Market Intelligence)

2018年第3四半期における資金調達額は、44億US$と前期46億US$から減少。資金調達先は、上位からカナダ、豪州、米国となっている。また、M&A数は2018年第3四半期に金及び銅プロジェクトで著しく増加した。

2.M&Aトレンド

(講演者:Pala Investment、Vice President and Senior Legal Counsel、Kate Southwell氏)

(1)現状認識

プライベートエクイティは、現在、魅力的な投資先を探している状況。2018年後半の銅価格の下落の影響等により案件の評価額が抑えられていることから、魅力的な投資先が存在しているにもかかわらず、投資先となる所有者はこの底値のタイミングでは売却したがらない。さらに、取引可能な資産については質が下がってきており、M&Aの活動は停滞化している。2018年における案件の50%以上は1,000万US$未満の取引に留まっている。また、株主のアクティビズムも活性化しており、取引の促進や適切な根拠や評価を欠いている取引に対しても介入を実施している。例えば、カナダの鉱山企業のHudbayの株主(4.8%)であるWatertonは、Hudbayに対し、チリの鉱山会社であるMantosとの取引を終わらせるための議論又は計画の策定を直ちに行うように求めていた。

(2)具体的な投資案件における傾向

最近の大きな投資案件については、いくつかの理由によって投資が決定された。まずは、①戦略的な投資である。例えば、産金大手のBarrickはRandgoldとの合併では、買収額がEV/EBITDAの10.57倍となった(平均は5.9倍)。しかし、これによってBarrickは世界でトップ10に入る費用対効果の高い貴金属鉱山のうちの5つを手にしたことになり、業界内において最もキャッシュコストの低い事業者の一つとなる見込みとなった。次に、②シナジー効果が鍵となっている投資である。案件の評価額が想定以上に上昇傾向にある場合、買収側はその対価を支払うことを正当化するため、シナジー効果に注目し、評価額以上の価値を生み出す必要がある。さらに、③成長の経緯を良く見せるための投資も存在する。プロジェクトの成長が停滞し、それほど投資もできていない場合は、バランスシート上のリスクにはならないが、それでは将来の生産にはつながらない。また、④中国は、引き続きリチウムやコバルトといった電池用の金属に興味を有しており、中国への安定供給に必要な量を上回る案件への投資が行われている。

戦略的投資に当たってのポイントとなるのは、規模、資産の多様化、共同出資である。鉱業及び金属の取引に当たって規模と効率性を一緒に考えることは重要である。さらに、資産の多様化だが、例えば、Sibanye Goldが米国のStillwater Miningを獲得したのは、地理的に多様化しようとする目的があった。共同出資については、ジョイントベンチャーという枠組みを活用することで、資本と運営コストを抑えつつも単独で運営するよりも多くの収益を得られる可能性がある。

地政学的な不確実性が継続していることにより、2018年第3四半期において世界の鉱業及び金属取引は抑制的になっている。貿易の混乱も含めた地政学的な不安定性は、既存プロジェクトの選択と集中を促し、そしてハイリスク案件への投資の判断を鈍らせている。

失敗した試みもある。カナダの鉱山企業Nevsunの買収に当たっては、銅の権益確保に向けて激しい競争になった。Nevsunと交渉を行ったのは18企業。敵対的買収を狙うLundin(カナダ企業)をZijin(中国、紫金鉱業)が打ち破ることになった。市場環境も厳しく、英国企業のPrembridgeはカナダ企業のCapstoneのMinto銅山の買収資金を確保できなかった。

(3)今後の注目ポイント

電池技術が今後の戦略的な鍵となる可能性がある。急速な電池技術の発展により、北米や豪州、一部の南米のリスクの低い案件に対し優先的に投資が呼び込まれることになる。電池用金属、銅、金は、今後も最も人気のあるコモディティであると予想される。各国の政策は電気自動車の需要を急速に加速している。英国、フランスは2040年までに、ノルウェー、オランダは2025年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止しようとしており、中国は2020年までに新車販売の12%をゼロエミッション車にすることを目指している。さらに、政策的な財政支援や米国ドルの変動(米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和から量的引き締めへの移行政策等)が鉱業及び金属の取引に影響を与えると考えられる。政策の不確実性は今後の取引の上で最大のリスクの一つである。資源国が自国の資源からより多くの利益回収を行うため、資源を管理するようになったことから、規制リスクが増大している。また、資源企業にとって、出口戦略と流動性の確保は依然として厳しい状況となっている。鉱業部門は引き続き投資コミュニティにとって関心が低く、さらに、鉱山運営に当たっては社会的なライセンスが必要であり、投資先を多様化するにも限界がある。

おわりに

「Mines and Money London」は今回で第16回目を迎え、326社(鉱山企業は約200社)から、4日間にわたり延べ2,500名が参加した。前回同様Mines and Technologyと共催であったが、1回目となった前回は、鉱山開発関連技術についても大々的に取り上げていたが、今回はTechnology分野の講演数やブース数は大幅に縮小され、また講演よりビジネスマッチングに重きを置くように変化した。講演の多くはジュニア企業による投資家に向けたアピールの場として活用され、上述のような業界のトレンドなどについてまとめた内容は少数であった。小規模開催となったTechnologyではデータ分析を活用した鉱山内での運搬、ドローンの探査・採掘への活用、3Dモデリングによる掘削の効率化、次世代スペクトル測定器に関する講演などがあったが、講演数は限定的であった。

参加者はジュニア探鉱企業や投資家が多かったが、彼らと意見交換したところ、価格の回復も手伝い、探鉱は活発化の兆しがあるものの、ジュニア探鉱案件などのハイリスクな案件にまで投資が大きく回復している状況にはないことが窺えた。講演では金・銅の他、電池関連の金属についても発表が多く、引き続きEV化の流れを受けた電池市場への期待感が感じられた。

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