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報告書&レポート

2019年1月25日 金属企画部国際業務課 久保田博志、ジャカルタ事務所 南博志
19-04

第11回ASOMM+3概要報告

<金属企画部国際業務課 久保田博志、ジャカルタ事務所 南博志 報告>

はじめに

2018年12月6日、フィリピンの首都マニラ郊外で、ASEAN10か国に、日本・中国・韓国の3か国を加えたASEAN+3鉱物協力協議会合(ASEAN Senior Officials Meeting on Minerals:ASOMM+3)が開催された。本会合は2007年6月の第1回会合以来、ほぼ毎年定期的に開催され、ASEAN側から日本・中国・韓国の3か国「プラス3」に対し、鉱物資源分野における支援プロジェクトを要請する場となっている。今回の会合はASEAN10か国中ベトナムを除く9か国とプラス3が参加し、前年の会合に続いて11回目の開催となった。今回、日本側代表の経済産業省に同行し、産業技術総合研究所とともに本会合に参加したのでその概要を紹介する。

写真1.ASOMM+3代表団集合写真

写真1.ASOMM+3代表団集合写真

1.ASOMM+3とは

ASOMM+3とは、ASEANの鉱物資源分野の専門会合であるASOMMに日本・中国・韓国の3か国を加えた会合であり、ASEAN各国の鉱業関係省庁やその他の政府関係機関関係者がその構成メンバーとなる。ASOMM+3の設立に関しては、2005年8月、マレーシアのKuchingで開催された第7回ASOMMで、ASEAN+3の枠組みの中での協力を推進するための組織として、プラス3側との協議の場を設置する決議がなされ、同会合後に開催された第1回ASEAN鉱物閣僚会合(ASEAN Ministerial Meeting on Minerals:AMMin)で認められ、設立・開催に至った。ASOMM+3の第1回会合は2007年6月、ミャンマーの首都ネピドーで開催され、その後、ほぼ毎年ASOMM会合と同時期に開催されている。

ASEAN側からの要請に応じた日本側の取組みとしては、2008年から2013年にかけて、JOGMECがラオス、カンボジア、ミャンマー、ベトナムにおける環境(鉱害防止)セミナー開催や、2015年から2017年にかけてJICA委託事業として産業技術総合研究所ASEAN鉱物情報データベース(ADMIS)に係る研修実施などがある。

2.第11回ASOMM+3の概要

2.1全体日程

今回のASOMM+3は、2018年12月6日にマニラ郊外のホテルで開催されたが、第18回ASOMM会合の一連の関係会合が同時期に開催された。全体の開催日程は以下の通りであった。

12月4日~5日 第18回ASOMM会合
12月4日~5日 第3回AMCAP MTR会合
12月4日 第2回BOJ会合
12月6日 午前 第11回ASOMM+3会合
12月6日 午後 第6回ASEANの鉱物分野における協力に関する民間部門フォーラム
(6th Private Sector Forum on Cooperation in Minerals in ASEAN)
  • 写真2.ASOMM+3各国代表団

    写真2.ASOMM+3各国代表団

  • 写真3.プラス3代表団席(中央が日本代表)

    写真3.プラス3代表団席(中央が日本代表)

2.2各国参加機関

第11回ASOMM+3会合の参加国と主な参加機関は以下の通りであった。

ブルネイ 開発省(Ministry of Development)
カンボジア 鉱業エネルギー省鉱物資源総局
(Ministry of Mines and Energy, General Department of Minerals Resources)
インドネシア エネルギー鉱物資源省(Ministry of Energy and Mineral Resources)
ラオス エネルギー鉱山省(Ministry of Energy and Mines)
マレーシア 天然資源環境省(Ministry of Natural Resources and Environment)
マレーシア鉱業協会(Malaysian Chamber of Mines)
ミャンマー 天然資源環境保全省 鉱山局ほか
(Department of Natural Resources and Environmental Conservation, Department of Mines)
フィリピン 環境天然資源省 鉱山地質科学局
(Mines and Geosciences Bureau, Department of Environment and Natural Resources)
シンガポール 国際企業庁(Enterprise Singapore)
タイ 工業省一次産業鉱山省 鉱物資源管理局ほか
(Department of Primary Industry and Mines, Division of Material Resource Management)
中国 自然資源部 国際合作司
地質調査局 発展研究中心、科技外事部境外地質処、成都地質調査中心
日本 経済産業省、産業技術総合研究所、JOGMEC
韓国 韓国地質資源研究院(KIGAM:Korea Institute of Geoscience and Mineral Resources)
ASEAN 鉱業連盟(ASEAN Federation of Mining Association)
経済社会部(ASEAN Economic Community Department)

2.3会合概要

(1)ASOMM+3議長による開会の挨拶

開催国のフィリピンの環境天然資源省で議長を務めるMoncano鉱山地球科学局長により開会が宣言され、続いて、共同議長であるプラス3の中国・日本・韓国がそれぞれ開会の辞を述べた。

1)ASOMM+3議長(フィリピン環境天然資源省)

ASEAN地域が鉱物資源の価値の付加とそれによるASEAN地域の発展を目指すためには、人材育成、鉱物資源評価、持続可能な鉱業の発展に向けて国境にまたがる地質図や地質情報の編纂などが必要であり、ASEAN+3は人材育成などの鉱業分野でのパートナーシップの継続が重要である。

2)中国

中国は鉱物資源に関わる新たな行政組織(自然資源部)を設置(改組)した。中国は地球科学データの整備の分野でASEANに協力してきた。これらの地質調査プロジェクトからは成果を発表する中国とASEANのリーダーによる会合を開催した。また、人材育成は中国・ASEAN協力事業の中心である。

3)日本

日本は資源の殆どを海外に依存しており、鉱物資源は日本の産業の中心的存在である製造業にとって不可欠で、その安定供給は重要な政策課題である。鉱物資源に富むASEANに対して、これまでにも共同地質調査などの協力事業を実施し、鉱業分野の人材育成も行ってきた。ASEANは日本にとって重要なパートナーである。

4)韓国

韓国はASEANに対して、探査、環境修復など鉱物重分野で協力を続けてきた。その中心はKIGAM(Korea Institute of Geoscience and Mineral Resources)であり、近年はMIRECO(Mine Reclamation Corporation)とも連携している。ASEANとのパートナーシップを維持、強化して、韓国とASEANの双方が利益を得られることを目指している。

(2)鉱業政策のアップデート

参加各国による鉱業政策のアップデートは以下の通り。

1)ASEAN(カンボジア)

持続可能な発展のための人材育成(中国による地球科学センター設立やカンボジアでの人材育成、日本のAMDIS研修等)を例示し、セミナー等を通じた情報・知見の共有、地質データベース、環境に配慮した鉱業(Green Mining)、資源評価を支援するプラス3との協力枠組みの重要性が述べられた。

2)プラス3(中国・日本・韓国)

中国は、鉱業分野の政策として、環境に配慮した鉱業(Green Mining)、鉱物評価、科学技術振興・技術志向の産業政策、中国-ASEAN地球科学センターの設立等の国際協力の継続の4項目に重点を置いていると説明した。

日本は、我が国の経済力の源泉は製造業であり、その中で部品製造など関連分野も含め産業の裾野の広い自動車産業は製造業の中心的存在であると説明。自動車産業の部品や材料には多種多様な鉱物資源が使われており、鉱山業が自動車産業をはじめとする製造業を支えている。ASEAN地域はニッケルや銅などの重要鉱物資源の主要供給地域である。日本はASEAN諸国をはじめとする資源国との関係強化は重要な政策課題であると述べた。

韓国は、ASEAN諸国との鉱物資源分野における協力の中核組織はKIGAMであるが、そのほかの韓国政府機関が連携して探査活動(ミャンマーでのクロム資源評価)を実施、研修プログラムも8か国60人が参加するまでに拡大したと説明。また、鉱山環境分野においても、インドネシアやフィリピンにおける環境修復協力(MIRECO)やタイにおける水処理支援(KICA)を実施していること等を報告した。

3)議論

議論では、これまでのASOMM+3の様々な活動を通じて、政策実現に向けて進んでいることを評価する一方で、各事業の実施の優先順位、支援国間の連携による事業効果の向上の必要性などを指摘する意見が多く出た。また、人材育成や環境に配慮した鉱業の重要性を指摘する意見も多く出された。主な意見は次の通り。

「鉱業分野における互恵とは何かが分かってきた。ASOMM+3の優先政策はより多くの協力事業を実施することであり、その活動がASOMM+3の政策に合致することが重要である。ASOMM+3の協力範囲は、環境に配慮した鉱業、そのための研修やワークショップ、鉱物資源データベース、持続可能な鉱業開発に向けた活動などである」(ASEAN事務局)

「ASEAN事務局は2018~2020年のプロジェクトの優先度を特定する必要がある」(フィリピン)

「各国で鉱物資源評価が行われ、資源量の分類にはJORC(豪州)などがあるが、鉱物資源評価の統一が必要であり、そのための人材育成が必要である」(中国)

「中国は地質調査、日本は研修などを行ってきたが、中国と日本とで何らかの関係性を持たせることはできないのか。環境に配慮した鉱業はASEANにとって重要であり、そのためのASEANへの技術移転が必要」(ミャンマー)

(3)実施プロジェクトの報告(2016~2018年)

ASOMM+3の枠組み等でこれまで実施されてきた以下のプロジェクトについて、中日韓の各国から報告があった。

1)中国

地球科学・地質調査、地質・環境図及び多目的地化学図等の編纂、ASEAN向けのデータベース構築と共有、そのための人材育成と技術サポート、ASEAN加盟国の地球科学専攻学生10人受入れ、中国-ASEAN鉱業フォーラム(CAMCF)開催の実績を説明した。ASEAN側(フィリピン)からは、「中国が実施している研修についてASEAN全体を対象とするとよい」「ASEAN事務局(AMS)と協力してはどうか」との意見が出された(AMSによれば、研修はASEAN全体を対象としているとのこと)。

2)日本

産業技術総合研究所から、2017年までJICAの委託を受け同研究所が実施していた地質鉱物資源データベース(AMDIS)事業について説明があった。質疑応答では、「データベース(AMDIS)事業を今後どのように継続していくのか」「環境に配慮した鉱業に関する協力の可能性はあるか」などの質問があり、日本側からは、事業の継続には予算措置が必要であること、環境分野への協力に関しては、休廃止鉱山の環境修復や坑廃水処理の経験が日本にはあり、その経験を共有することは可能であるとの回答があった。

3)韓国

ミャンマーにおける活動報告、MIRECOと連携した活動やCCOP(東・東南アジア地球科学計画調整委員会)におけるKIGAMの活動について報告があった。質疑応答では、「二国間協力からより地域的な情報共有の枠組みを構築してはどうか」、「地域へのインパクトが大きくなればより大きな前進がある」、「環境に配慮した鉱業に関する協力が重要である」、「鉱業投資を呼び込むためのデータ整備である空中物理探査などの調査へのプラス3からの資金的な支援が必要である」などの意見が出された。

(4)2018~2020年の実施計画

最後に、ASEAN各国および中国、日本、ASEAN鉱業連合協会から2018~2020年にかけての計画について発表があった。詳細は以下の通り。

1)シンガポール/マレーシア

ASEAN+3国間のネットワーク枠組み構築に資する事業として、2019年と20120年に鉱業災害と持続可能な鉱業に関するセミナーの開催を計画しているとの説明があった。質疑応答では、議長やAMSからワークショップのテーマ等の詳細やプラス3の支援の可能性について質問があり、シンガポールは「(鉱業災害、持続可能な鉱業、環境に配慮した鉱業をテーマとした)このようなセミナーは全てのASEANメンバーが関心を持つと思う」と回答。また、講演者等(Resource person)の手配や資金面で韓国(KIGAM)が支援する予定であるとの回答があった。

2)ミャンマー/インドネシア

セミナーやワークショップ等を通じて、鉱物や貴石の付加価値に関する経験や知見に関する情報共有を図るため、2019年12月あるいは2020年1月に持続可能な鉱業をテーマに3日間のワークショップの開催を計画している。質疑応答では、議長からの「プラス3からの協力は得られるか」との問いかけに対して、中国からは2020年第3四半期に持続可能な鉱物資源開発に関するワークショップを支援する予定(なので調整が必要、ワークショップには関心があり講師派遣等は可能と考える)などの意見が出た。

3)タイ

ASEAN加盟国における探査・開発・採掘・選鉱及び環境修復に係る環境技術の研究開発(R&D)に関する3日間のワークショップ及びセミナーを2019年7月頃に開催する予定で、調整、費用負担(スポンサー、旅費)はタイ政府が負担するとの報告があった。質疑応答では、他のイベントと重複しないか、テーマや参加者のレベルやスケジュール等は関係者で調整すべき、協力は可能だが環境に配慮した鉱山開発はテーマが他のセミナー等と被るのではないかなどの意見が出された。

4)中国

中国からは、①地球科学・地質調査、持続可能な鉱業に資する地質・地質環境図及び国境を越えた多目的地化学図の作成とそれに係る人材育成プロジェクト②ビッグデータ技術やアプリケーションを含むASEAN加盟国向けの地理情報データベースの構築とその共有に関する人材育成と技術サポート③ASEAN加盟国の地球科学専攻学生10人を毎年中国での大学院教育の提供③中国-ASEAN鉱業フォーラム(CAMCF)の開催等の複数のプロジェクトの提案があった。

5)日本

2015年から2017年にかけて開発したASEAN地域の広域地質データベースAMDISの開発メンテナンスに関する講義及び現地調査を通じた人材育成の2019年度以降の実施の可能性が話題となった。日本側からは予算措置が課題と回答があった。

6)ASEAN鉱業連合協会(ASEAN Federation of Mining Association:AFMA)

鉱物資源部門へのASEAN+3への投資プログラムの策定と実施に向けたビジネスマッチングや合弁事業の協力、ASEAN+3の政府系機関や民間セクター間の定期的な協議を進めたいとの考えが示され、2018年と2019年には中国-ASEAN鉱業協力フォーラム(China-ASEAN Mining Cooperation Forum:CAMCF)の開催が予定されていること、日韓にも同様な活動への協力を期待するとの発言があった。質疑応答では、「政府系機関の参加の可能性はあるか」「フォーラムが積極的な投資に資することを期待している」などの意見が交わされた。

おわりに

今回の会合におけるASEAN側の2018年から2020年にかけたプロジェクトの提案は、環境に配慮した鉱業(Green Mining)、地質データ収集提供(データベース)とそれに必要となる人材の育成、そのためのセミナーやワークショップの開催といったものが多かった。これに対して、ASEAN側からも乱立気味の各セミナーやワークショップのテーマや対象者の整理、ASOMM+3間の連携を指摘する意見も出された。

プラス3側では、中国が実施中及び計画中のプロジェクト数からも明らかなようにASEAN各国政府との関係強化へ積極的に取り組んでいることが際立った。また、韓国もKIGAMだけではなくその他の政府系機関と連携して探査・環境分野での協力事業を展開している。これら中韓が実施・計画している協力事業(セミナー開催、共同鉱物資源評価のための地質調査等、鉱物資源データベース、人材育成、留学生受入れ等)はこれまでに日本がASEANに実施してきた協力事業と類似したものであった。

日本が、現在主にASEAN地域で展開している2国間の資源外交をベースとした活動は、国際(多国間)会合の支援・協力としてアピールし難い面がある。複数国に同時に日本のプレゼンスを効率的に示すことができ、各国鉱物資源関係者との人脈を構築・維持にも有効であることから、本会合のような多国間会合を効果的に活用していくことが必要であると考える。

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