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報告書&レポート

2019年3月27日 ジャカルタ 金属環境事業部企画課 砂田和也、ジャカルタ事務所 南博志
19-08

フィリピン共和国における環境協力ワークショップ・報告

<金属環境事業部企画課 砂田和也、ジャカルタ事務所 南博志 報告>

はじめに

2017年1月、JOGMECは経済産業省と共にフィリピン共和国において同国環境天然資源省(DENR)と「探査・環境保全セミナー」を共催し、両国の官民179名の参加を得てフィリピンの持続可能な「責任ある鉱業(Responsible Mining)」の発展と環境保全等について両国が協力関係を深めていくことで一致した。

このような背景にあって現在、経済産業省とDENRは鉱業における協力枠組みの協議を進めている。

2019年1月18日、この動きに関連し、JOGMECとDENRの両者は、今後の具体的な環境保全分野での協力の推進に資する目的で、フィリピン・マニラにおいて環境協力ワークショップを開催した。

写真1.環境協力ワークショップ会場

写真1.環境協力ワークショップ会場

1.ワークショップ概要

<<<環境協力ワークショップ@マニラ:プログラム(2019年1月18日開催)>>>

14:00-14:10 開会挨拶等
14:10-14:30 JOGMECの概要及び金属環境事業部の役割(JOGMEC)
14:30-15:10 新たな鉱害防止技術の研究(JOGMEC)
15:10-15:30 休憩
15:30-16:10 フィリピンにおける休廃止鉱山の現状について
(鉱山地球科学局MGB Verasco, Jr.主任調査員)
Palawan島Quicksilver鉱山における水銀汚染対策について
(生態系研究開発局ERDB Exconde技師)
16:10-16:50 休廃止鉱山における鉱害防止事業について(JOGMEC)
16:50-17:20 総合討論
17:20-17:30 閉会

ワークショップでは、まず日本側からJOGMECの鉱害防止事業の概要、休廃止鉱山における鉱害防止事業の実例及び集積場の緑化対策及びパッシブトリートメントに係る技術開発等についてプレゼンを行った。これに対しフィリピン側からは、特に技術開発のプレゼンに関心が高く、質問が数多く寄せられて活発な議論がなされ、当初の予定時間を超過することとなるなど盛況であった。

JOGMECへの質問の多くは、パッシブトリートメントのパイロットスケールでの試験における詳細な条件や課題であった。フィリピン側からのプレゼン内容にも関係するが、水銀汚染への対処方法に関する質問もあった。また、坑廃水処理方法の詳細や坑廃水処理をいつまで続けなければいけないかについても質問があり、詳細な坑廃水処理方法については今後の協力関係の中で説明していくこととしたが、いつまで続けるかについては100年、200年と処理を続ける必要があること、それには多額の資金が必要になることを回答した。

一方、フィリピン側からはフィリピンにおける休廃止鉱山の現状及びその対策について、加えて、特に技術や資金の支援が必要と位置付けているPalawan島Puerto Princesa市にあるQuicksilver鉱山における水銀汚染対策についてプレゼンが行われた。詳細については、次項で述べる。

2.フィリピン側のプレゼン要旨

(1)フィリピンにおける休廃止鉱山の現状について

フィリピンにおける休廃止鉱山対策は、2001年に環境天然資源省傘下の鉱山地球科学局(MGB:Mines and Geoscience Beureau)が民間会社に委託して、22か所の休廃止鉱山の現状の評価とコストや対策に係る提言を取りまとめたのが始まりである。その後、2004年にはMineral Action Planの中で国としての方針がまとめられ、最終的には休廃止鉱山対策のプロセスとして以下の手順で実施するものとされた。

① 大まかなリスクアセスメント及び鉱山の構造評価

② 調査及び構造の再評価

③ EMP(Environmental Management Plan)準備

④ EMPの実行

⑤ プロジェクトのモニタリング及び地方行政への移管

2010年から2018年までの間に実際に「④EMPの実行」まで進んでいる休廃止鉱山は3か所あり、それぞれ廃棄物流出防止、覆土・緑化などの対策が行われた。またその他に、30か所が②まで進み、11か所が③まで進んでいる。

なお、2018年現在、フィリピンには、休止鉱山が54か所、廃止鉱山は11か所、計65か所存在している。

今後、2019年から2022年にはDuterte大統領の長期ビジョンに沿った形で休廃止鉱山対策のロードマップが策定されており、6つの廃止鉱山でEMPの実施が計画されている。なお、鉱山の調査はMGBが実施し、対策の実施等は民間会社が行う。また、休廃止鉱山の対策に係る費用は国の予算で支出する。

(2)Palawan島Quicksilver鉱山における水銀汚染対策について

ワークショップにはMGBだけではなく、生態系研究開発局(ERDB)からも参加があり、プレゼンを行った。

Quicksilver鉱山近郊では鉱山由来の水銀汚染により、ティラピア(魚類)から高い濃度の水銀が検出されていた。また2017年には地域住民の血、尿、毛髪の中からも検出されるなど、喫緊の課題となっている。この問題に対するプロジェクトを2018年10月より開始、2022年までの計画で実施していく。計画としては、対象地域の汚染の現状を詳しく把握するとともに、土壌改良等の対策として、水生の虫や植物、フィルター等を用いる方法、水銀の超蓄積性をもつ現地種の樹木を用いた方法等が検討されている。またフィリピンは、これらの調査や検討に関して、資金や技術の支援を求めている。なお、対策費用としては合計で約2,500万PHP(約5,300万円)を見込んでいる。

  • 写真2.Moncano MGB局長挨拶

    写真2.Moncano MGB局長挨拶

  • 写真3.Exconde技師講演

    写真3.Exconde技師講演

写真4.ワークショップ参加者集合写真

写真4.ワークショップ参加者集合写真

おわりに

本件の概要は、MGBのホームページにも掲載されており、環境保全を重視する「責任ある鉱業(Reponsible Mining)」の実現に向けて、フィリピン側の本協力への期待度がうかがわれる。なお、本ワークショップの開催とともに、今後の具体的な環境協力の推進についても意見交換が行われた。中でもフィリピン国内の人材育成等は重要で、フィリピン側にとって有益となるよう今後も十分にコミュニケーションをとりつつ、検討・事前準備を進めていくことで一致した。

また、上記水銀汚染のような事例は、未だに違法採掘が多いとされている東南アジア諸国では、問題が顕在化されていないケースも含めて、多数存在していると考えられる。今後人口がさらに増加すると予想されている国もあり、これらの国々に対する環境協力は今後ますます重要なっていくと思料する。

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