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報告書&レポート

2019年4月10日 ロンドン 事務所 吉益英孝、倉田清香
19-10

Mining Indaba 2019参加報告

―南ア鉱業政策と鉱業界のトレンド―

<ロンドン事務所 吉益英孝、倉田清香 報告>

はじめに

2019年2月4日から7日の4日間にわたって、今年で25回目となるアフリカ最大の鉱業投資会議「Mining Indaba 2019」が南ア・ケープタウン国際会議場で開催された。アフリカ諸国をはじめとする政府関係者、メジャー及びジュニア企業、国際機関、鉱業関係者が集った。

JOGMECは2日目に「電気自動車時代におけるサプライチェーンの変革」をテーマにセミナーを開催し、政府からは関経済産業副大臣、自動車メーカーと電池メーカーからはそれぞれ本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)、パナソニック株式会社(以下、パナソニック)が講演を行った(別途報告2019年4月9日 カレント・トピックス19-09:Mining・Indaba 2019参加報告 JOGMECセッション ―電気自動車時代におけるサプライチェーンの変革―参照)。またJOGMECは、JBIC及び阪和興業株式会社と共同でジャパン・パビリオンを出展した。

本稿では、南アRamaphosa大統領及びMantashe鉱物資源大臣の基調講演並びに注目されるトピックに関するパネルディスカッションの概要について報告する。

写真1.Mining Indaba 2019会場

写真1.Mining Indaba 2019会場

1.Cyril Ramaphosa南ア大統領による講演

我々は南アだけでなくアフリカに対する投資が魅力的になるよう真摯に取り組んでいかなければならないと考えており、またアフリカにおける課題に対しても同様である。

2018年、大統領就任に当たり南アで開催された投資会議では、世界中から企業が参加し、合計で200億US$の投資を集めることができた。就任時に5年間で1,000億US$の投資を集める目標を立てたが、これまでの7か月で200億US$を調達することができたことは、南アは投資するには魅力的な国であることを示しているだろう。

南アの失業率の改善には投資が必要不可欠であるが、鉱業は重要な投資先の一つである。Mantashe大臣となぜ南アでは過去と比べて鉱業探査活動が低調なのかについて議論をしたが、南アは鉱物が豊富な国であるにも関わらず、株式上場している鉱山企業がないことが挙がった。大臣は鉱山企業に対してより探査活動が活発になるよう促している。

鉱業投資を促進・支援するために鉱業政策の改善と安定的でわかりやすい規制整備を優先する。以前は鉱業界と政府、鉱山企業と労働者の間で対立していたが、これからは対立した関係ではなく、より近い、協力的な関係にしたいと考えている。以前は鉱業界が懸念点を政府に対し報告しても、政府は聞く耳を持たなかったため、今後は態度を改善していきたい。さらに労働ビザの規制と南アでの事業コストの改善について、現在鉱業界の代表と協議し、見直しを進めている。

ESKOMは南ア経済にとって重要であるが、これから数日後にESKOMの資金、事業および組織体制を安定化、改良する方策を公表する(筆者補足:ESKOM(南ア国営電力会社)は長年の杜撰な管理と汚職問題で、事業は300億US$以上の負債を抱えており、停電を引き起こして国民と同国の企業に迷惑をかけている。2019年2月20日に公表された財務省の声明iによると、これから3年間で合計690億ZARの経済的支援をESKOMに対し行うことが判明。また、2月27日に公表された閣議声明iiによると、閣議でESKOM救済の金融支援を受け入れた。ESKOMの組織再編も提案され、ESKOMのビジネス部門を3つの企業体に分けることに賛成したiii。)。

土地改革法(Land Reform Programme)ivについては、企業によって保持されているが使用されていない土地を対象にするもので、土地を農業や経済的統合のために改革するものである。法律に基づく形で実施するので、投資家の資産が奪われるものではない。したがって投資家たちは安心してほしい。

鉱山企業は、労働者を削減するのではなく、技術を活用し鉱山運営の効率化と労働者の安全を保障してほしい。また、鉱山企業に対して10の価値創造原則を提案したい。

1. 事業を行うエリアのコミュニティを事業の一員のように扱わなければならない。鉱山企業はコミュニティを無視して事業を実施してはならない。コミュニティのことをケアしなければならない。

2. 企業は事業実施地域の地方政府と協力して、地方政府にインフラや上下水道の専門的な知識を提供しなければならない。

3. 企業は規則義務以上に労働者の生活状況を気に掛けなければならない。例えば、労働者により良い居住環境を与えるなどすれば協力し合える関係を保つことができるだろう。過去のように労働者を非人間的な扱いをすることを避けてほしい。

4. 企業は南ア国民のために教育と鉱業スキル向上に投資する必要がある。

5. 企業はトレーニング・教育機関と協力し、教育課程・カリキュラムに目を向け、学生たちに実務経験を与えるべきである。

6. 企業は付加価値化を取り入れるべきである。取り入れることによって金属と金属商品への需要が高まるはずである。すでに数社は南アでの付加価値化事業を取り入れているが、より多くの会社に取り入れてほしい。

7. 企業は労働者のために安全衛生により目を向ける必要がある。

8. 企業は若者のためにインターンシップ、実務経験、就職機会等を与える必要がある。中小企業に対しても支援する方法を模索しなければならない。

9. 企業は女性労働者のための企業内での取組を優先しなければならない。女性をシェアホルダーや役員に登用し、そしてより多くの女性を雇い、女性労働者のためのトレーニングも優先するべきだ。

10. 企業は労働者・労働組合関係者を株主・役員の中にも含めるべきである。

2.Gwede Mantashe 南ア鉱物資源大臣によるMining Indabaオープニングスピーチ

写真2.Gwede Mantashe 南ア鉱物資源大臣

写真2.Gwede Mantashe 南ア鉱物資源大臣

過去数年の各コモディティの需要は堅調であるが、金属価格は不安定であった。今年は金属需要にとっては試練の年になると予想しており、為替についてはボラティリティが大きいと予想している。景気後退から抜け出し、2.2%の経済成長ができたことについては楽観視しているが、この経済成長は鉱業から来ているものではない。鉱業のGDPに占める割合は7%であるが、向こう3~5年で10%に引き上げる目標をもっている。2018年の鉱業からのGDPに対する貢献が良い数字ではなかった理由は、ニッケルと白金族の生産量が減少したことによるものと見ている。

南アに投資するのは安全だと投資家を安心させたい。安定した規制と政策を投資家に与えられると考えている。(現在は鉱業法(MPRDA:Mineral and Petroleum Resources Development Act)上、鉱物と石油は同じ法律枠内にあるが)これからは鉱物と石油を別々にする。石油も投資拡大にとっては重要な部門になっていくだろう。

鉱業ライセンスについては、いくつか問題がある。政府は個々の州にライセンス付与の権利を与えて、汚職撲滅を目指す。ライセンス付与と調査を通じ、鉱物がどこにあるのかを投資家に示すことによって、投資家は南アでの探査許可が取りやすくなるだろう。しかし、投資家は政府と協力しなければならない。

投資家には鉱物を採掘後、そのまま鉱石を輸出するのではなく、製錬などのその後の付加価値化も南アで行い、南ア国民に仕事を与えてほしい。鉱業は投資家だけのものではなく、労働者・コミュニティのものでもある。

南アはビジネスにとって開かれた場であり、鉱業をさらに前に進めていきたい。

3.パネルディスカッション(2月6日):「責任のある鉱物調達(Responsible Sourcing)」
the key towards successful energy transition and a low-carbon future

司会:
Christpher Sheldon氏, Practice Manager, Energy and Extractives Global Practice, World Bank

スピーカー:
Dr. Volker Steinbach氏, VP, BGR(Institute for Geosciences and Natural Resources), Germany
Marten Westrup氏, Team Leader Energy and Raw Materials, Directorate General for trade, European Commission
Jeff Radabe氏, the Minister of Energy, Republic of South Africa

Dr. Volker Steinbach氏

・これからはどのようにテクノロジーが鉱業に取り入れられるのか、テクノロジーにはどのような鉱物が必要なのか、どのような資源が未来に残っているのか、どの金属の需要が増えてくるかは重要な事項である。

・リチウムイオン電池(LIB)にはリチウム、ニッケル、銅、グラファイトが必要であり、2035年には、LIBに使われるリチウムの需要は4倍になる予想。

・新ハイテクノロジーにはインジウム、ゲルマニウム、ガリウム等の鉱物が必要となるだろう。しかし、世界的に産出する鉱山が少ないので、リサイクルが必要だろう。

・ドイツは輸入した鉱物がどのように使われるのか、どのようなコンディションで使われるのかを先進国として気にかけなければならない。経済エネルギー省及び経済協力開発省と協力して、コバルトのサプライチェーンをチェックするプロジェクトを実施した。現在はDRコンゴとも協力しながらプロジェクトを進めている。

・アフリカ諸国が市場にアクセスできるようになると、責任のある鉱物調達に関してリスクはあると思う。紛争鉱物としてコバルトが話題になってからは、アフリカ諸国から欧州へのコバルト輸出が抑えられたが、その一方でコバルトはアジアへ流れた。鉱物がどのように取り出されているのかを証明するのが大事であり、先進国としてアフリカ諸国をサポートする義務がある。

Marten Westrup氏

・個別の金属ごとにどのようなリスクがあるのかを考えなければならない。紛争鉱物に関しては、これからの欧州では政府と消費者から責任のある鉱物調達へのプレッシャーが高まるだろう。

・原材料の生産企業と調達先の国だけではなく、欧州に原材料を輸入している会社にも、サプライチェーンの透明性を証明する責任がある。

・政府には消費と生産の両面で義務がある。消費に関しては、政府はより責任のある鉱物調達のポリシーを実行する企業へのサポートと、責任ある調達の証拠の提供と開発・運営に関して企業と話し合わなければならない。生産に関しては、鉱業界が管理監督すべきである。例えば、税収、コミュニティと労働者をどうやって守るかなどの議論をしなければならない。

・これからは欧州での金属生産、そしてリサイクルを増やすべきだ。そうすれば、欧州連合圏外からの鉱物の依存が減少する。

・現在はリチウム、ニッケル、コバルトに対する規則がないので、法律上リスクはないとみられるが、欧州には中流部門と下流部門を担う企業が多くあるため、商業上リスクはあると見られる。欧州の中下流企業から上流部門への原材料の透明性を求める声が高まっている。また企業だけではなく、消費者からも原材料の透明性を求める声も高まっている。

Jeff Radabe氏

・これから10~20年のエネルギー資源統合計画のドラフトを公表した。これは、国民一般のためだけではなく、南アのすべての経済部門とのコンサルテーションのために公表しているものであり、産業革命を支えるためにたくさんの異なる経済部門からの動向を取り入れている。

・政府としては、紛争鉱物について社会的にネガティブな影響がないかどうかを気にしている。また新たな技術分野であるコバルトなどを含む電池関連の動向にネガティブな影響がないようにするべきだ。

・一方で新技術を取り入れて、国民の仕事が失われないかどうか等が不安な要素でもある。鉱業は南アにとって重要な経済部門だ。

4.パネルディスカッション(2月6日):Remote control and continuous mining 1 year on: Where is the technology at and Where is it actively being utilised?

司会:
Clive Govender氏, CEO, CGC Consulting

スピーカー:
Thanbile Makgala氏, Executive Mining, Impala Platinum
Peter Beilby氏, COO, Resolute Mining
Gordon Smith氏, Executive Head Technical, Anglo American Platinum

Gordon Smith氏

・遠隔操作や自動化の議論は技術の問題でもあるが、むしろ鉱山運営をどうしたいのかというシステム全体の議論である。どう運営を改善・効率化したいのかがはっきりしていれば技術は後からついてくるものだと考えている。

・鉱山運営の自動化についてはそのレベルに応じて5段階あると考えている。レベル1は機械による操業、レベル2が現場にはスタッフを配置しつつ機械の自動での運転、レベル3は遠隔地からの人間の操作による操業、レベル4は人間が操作しない機械による操業、レベル5はAIによって完全に機械任せの操業。現在はレベル2の段階であり、まだ自動化は一部の利用にとどまっている。これからやるべきことはたくさんある。

Peter Beilby氏

マリのSyama金鉱山(坑内掘り)viで鉱山機械メーカーのSandvik社と協力viiし、鉱山中に設置される大容量光ファイバーシステムによる情報収集・伝達や鉱石の運搬等含めITの導入・自動化を進めているが、これからは新技術の導入に伴い労働の質が変わるので、労働者の教育の方法が変わってくる。政府・大学等とも教育の方法を協力して検討していかなければならない。

Thanbile Makgala氏

鉱業の遠隔操作や自動化が進めば、これまで“筋肉”に頼っていた労働環境が改善され、女性の鉱業界への進出が進むと考えている。一方で、地域コミュニティに対して鉱業はこれまで雇用の創出の面での貢献があったが、貢献の方法が変化する可能性がある。

おわりに

南ア大統領及び鉱山大臣からは南アの鉱業投資に向けて前向きな取り組みを推進するアピールがなされると共に、雇用の維持や労働者の安全・衛生について企業に対応を求め、企業と労働者の双方に配慮や歩み寄りを求める内容となっている。鉱業憲章内でも取り上げられたが、女性の地位向上についても特に気を配っている印象を受けた。

南部アフリカ諸国ではこれまで鉱業に力を入れてきたが、石油への投資も呼び込みたいと考えている様子がMinisterial Presentationsでのボツワナ、ザンビアの講演や南アMantashe大臣の講演から伺えた。また、鉱石・精鉱輸出からの脱却を図りたい意向から付加価値化についても言及が目立った。付加価値を如何につけるかは南部アフリカに共通する課題であり、政策としてどう反映されるかは注視が必要であろう。

Mining Indabaではこれまで政府とのつながり、投資環境のアピールやビジネスマッチングなどに重きが置かれてきたと考えているが、今回からは昨今注目が集まる責任ある調達や鉱業の技術革新などにもテーマが広がっており、また電池関連金属にも大きくフォーカスする形となった。責任ある調達についてはDRコンゴを始めアフリカの国々が大きく関わる問題であり、注目の話題となっている。さらに、鉱業における遠隔操作や自動化の導入に対する期待感が高まっていると同時に、アフリカに限らず技術の導入による雇用減・雇用の質的変化や教育の改革の必要性が指摘されており、企業だけでなく、政府・労働者も含めて技術的な革新にどれだけついていけるか注意しなければならないという意識が必要である。


  1. ESKOMに関する報道:https://www.ft.com/content/a70bdbca-2956-11e9-a5ab-ff8ef2b976c7
  2. 2月20日の予算委員会でのTito Mboweni財務大臣の演説:https://www.gov.za/speeches/budget_vote
  3. 2月27日の閣議の内容に関する文書:https://www.gov.za/speeches/statement-cabinet-meeting-27-february-2019-28-feb-2019-0000
  4. 2月7日の大統領の演説内容:https://www.gov.za/speeches/president-cyril-ramaphosa-2019-state-nation-address-7-feb-2019-0000
  5. http://www.energy.gov.za/files/irp_frame.html
  6. Resolute Mining社マリSyama金鉱山の概要:https://www.rml.com.au/africa.html
  7. Resolute Mining社とSandvik社の協力関係に関する報道:http://www.miningweekly.com/article/sandvik-resolute-gear-up-for-the-fully-automated-syama-gold-mine-2019-02-07/rep_id:3650
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