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報告書&レポート

2019年5月8日 ヨハネスブルグ 事務所 原田武
19-12

南ア・鉱業憲章(Mining CharterⅢ)への南ア鉱業業界の反応

―大枠合意したものの、未だ個別の課題を残す―

<ヨハネスブルグ事務所 原田武 報告>

はじめに

鉱業憲章(Mining Charter)は、歴史的不利益を被ってきた南ア国民への鉱山権益移転を促すことを目的として、鉱物石油資源開発法(MPRDA)を根拠法として、2004年にはじめて制定された。3度目の改定に当たるMining CharterⅢとして、2017年にはZwane前鉱物資源大臣によって施行されたものの、鉱業業界からの大きな反発を受け、結果として施行は凍結された。2018年に入って、現Mantashe鉱物資源大臣のもとでドラフトが再編され、鉱業業界との対話を経て、2018年9月に最終案が公示されている。

南ア鉱業業界を代表する南ア鉱業協議会(Mineral Council)のRoger Baxter CEOに面談する機会あり、このMining CharterⅢに関する最近の見解を聞くことができた。同氏によると「Ramaphosa政権になり、Mantashe氏が鉱物資源大臣になってからは、業界と政府の対話が進むようになった」とのこと。また、「改正された鉱業憲章に関しては概ね満足しており、特に2017年6月や2018年6月のドラフトと比べると大きな改善が見られた。2018年9月に承認された鉱業憲章は、当初案にあった実施不可能な事項が削除され、ほとんどの項目を実施可能なものと考えている。しかし、特定の部分については、今後の鉱業投資を抑制する可能性があり、大きな課題になり得る」とのこと。面談の中で、課題として挙げられたのが、鉱業権の更新や譲渡時のBEE企業の保有率下限の考え方、そして鉱山資機材の調達時の規制といった条項であり、大きな問題との認識であった。これらの課題を含むいくつかの見直しについて、Mineral Councilからは既に2019年3月26日付けでJudicial Reviewの申請が鉱物資源省(DMR)宛てに提出されており、その申請内容を踏まえつつ、課題としている内容を以下のとおり解説する。

1.BEE保有率について

Mining CharterⅢでは既存の鉱業権(Existing Mining Rights)と新規の鉱業権(New Mining Rights)に分類して規定されている。今回、新規取得時にはBEE株主の下限が26%から30%に変更されており、この比率の増が以前のMining CharterⅡからの大きな変更となる。従業員5%、コミュニティ5%、BEE企業20%といった詳細な内訳も今回から取り入れられた。南ア鉱業業界もこれまでの議論の中でこの変更について歩み寄った経緯がある。

一方で、これまでもMineral Council等の業界から挙げられてきた論点の一つは、“Once Empowered, Always Empowered”(BEE保有率について、過去に一度下限をクリアしていれば、その後にBEEが権益売却等により保有率を下げたとしても、条件を満たしているとする考え方)の適用にある。Mining CharterⅢの条項には、「既存鉱業権者について、鉱業権が存在するいずれかの段階で最低26%BEEを達成し、2018年鉱業憲章の開始前にBEEパートナーが撤退した場合、鉱業権の継続に適合しているとみなし・・・」(条項2.1.1.2)や「BEEの保有株式が売却されて規定の最低株式保有以下になった場合、鉱業権の期間の間、エンパワーメント資格は認められ・・・」(条項2.1.6.1)というように、条件付きではあるが“Once Empowered, Always Empowered”の考え方に立っている。

しかし、その条件の中には「既存鉱業権において、結果が持続するという認識(The recognition of continuing consequences)は譲渡できず、鉱業権の譲渡の際には失効する」(条項2.1.1.4)、「結果が持続するという認識は新規鉱業権の申請や鉱業権の更新に際しては適応されない」(条項2.1.1.5)との規定があり、過去にBEE下限の26%を満たしたという結果があっても、その効力は鉱業権の移転や更新後には持続しないことになる。つまり、鉱業権の更新後や移転後に、BEE保有率の下限を再度満たす必要が出てくることになる。この条件、特に鉱業権の移転に関しては、今後の鉱業投資や企業合併などの取引に影響が大きいとして、Mineral Council及び南ア鉱業業界が危惧している。MPRDA法のSection11において、鉱業権の移転に際して、鉱業大臣の同意が必要となっているが、移転前の義務を移転先が引き継ぐのであれば、その同意は承認されることが規定されている(Section 11(2)(a))。Mineral Councilから提出されたJudicial Reviewの申請の中では、この条項と新たなMining CharterⅢの規定との整合性が取れていないと主張する。Mining Charterは飽くまでも政策指針(policy)であって、MPRDA法そのものとの整合性を欠くことはできないはずというのが論拠となっている模様。

2.鉱山資機材の調達に係る制限

Mining CharterⅢには、BEEのオーナーシップ以外にも、従業員の構成、鉱山労働における人材育成や住環境の向上、周辺コミュニティへの貢献、地方企業成長への貢献などを目的とした条項や目標値が盛り込まれている。その中でも、特に困難な条項(Challenging Clause)として議論されてきた事項として、鉱山資機材の調達に関する規定が挙げられる。調達先に関して、厳しくローカライゼイションルールが設定されており、サプライヤーやメーカーにとって大きな問題であるという。具体的には、「鉱山資機材の調達に係る総支出の最低70%は、南ア製品(South African manufactured goods)とする・・・」(条項2.2.1.1)とある。今後、段階的に比率を上げて、5年以内に目標の数値にすることも規定されている。ここで言う「南ア製品」の基準として、Mining CharterⅢの中では“Local Content”という概念を使っている。製造過程において、南アで付加された価値を見積もるための指標であるが、このLocal Content(南アでの付加価値率、計算式はA =(B – C)÷ B、B:資本財の販売価格、C:資本財の製造に使われた輸入材料の費用)が60%以上のものを南ア製品と定義している。鉱山機器の多くを輸入製品に頼っている現状を考えると、南ア国内での付加価値が60%を越えるという条件は厳しいとの業界からの意見もある。Mining Charterには、スコアカードが設定されており、スコアを一定以上取得できない場合、Mining Charterに準拠しているとは認められず、MPRDA法違反となり、鉱業権の停止や無効となる可能性もある。当該を供給するメーカーが地元になく、海外からの輸入に頼るしかない場合、それらを調達するとスコアに悪影響を与えることになってしまい、鉱業権者にとっては不当に厳しい状況になる可能性があるとして、Mineral CouncilからのJudicial Reviewの中で見直しが要求されている。

おわりに

南ア鉱業業界からは、大枠は了解できるが詳細については議論の余地ありとして、Mineral CouncilからのJudicial Reviewが申請されている。Mining CharterⅢが公示された2019年9月から数えて180日での申請であったが、このタイミングは、南アの法改正等の行政手続きのステップを踏襲した模様。Mineral Councilによるメディアでの発表の際には、公示後もDMRとの議論を行ってきたが、渋々(reluctant)の対処としてJudicial Reviewを申請したと表明しており、これまで同様、DMRとの対話を大切にする姿勢が窺える。鉱物資源大臣も自身のStatementの中で「友好的な対話の中で解決を見いだせなかったのは残念」とする一方で「対話への復帰を期待する」と述べている。議論を進めて、一定の解釈で折り合うのか、司法の裁定を待つことになるのか、今後の成り行きに注目していく必要がある。


  • Government Notices/1002 Mining Charter, 2018: Publication of the Mining Charter, 2018 for implementation Gazette No. 41934 , 27 September 2018
  • Government Notices/1399 Mining Charter 2018 implementation guidelines: Publication of the Mining Charter 2018 implementation guidelines Gazette No. 42122, 19 December 2018
  • Application with the High Court, Pretoria, for a judicial review and setting aside of certain provisions of the Broad Based Socio-Economic Empowerment Charter for Mining and Minerals Industry 2018, 26 March 2019
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