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報告書&レポート

2019年6月13日 金属企画部 調査課 新藤徹
19-16

モンゴルOyu Tolgoi銅・金鉱山の現況について

<金属企画部調査課 新藤徹 報告>

はじめに

当機構が毎年刊行している「資源メジャー・金属部門の動向調査」で取り上げている英豪Rio Tintoは2016年に就任したJean-Sébastien Jacques CEOのリーダーシップの元、事業の選択と集中を大胆に推進してきた。その過程で改めて注力事業に位置付けられた銅事業であるが、その中でも将来的な主力銅鉱山として現在拡張作業が進められているモンゴルのOyu Tolgoi銅・金鉱山を今般、視察する機会に恵まれた。拡張後はRio Tintoのみならず世界の他の銅鉱山と比較しても最大級となる同鉱山の状況につき、以下に報告する。

1.Oyu Tolgoi鉱山概要

Oyu Tolgoi鉱山はモンゴル南部、首都ウランバートルの南約600km、中国との国境より北に70kmに位置する(図1参照)。モンゴル政府(34%)とカナダの上場企業であるTurquoise Hill Resources社(66%)が共同で保有しており、Turquoise Hill Resources社の筆頭株主で同社の51%の株式を保有するRio Tintoが操業する。

2013年より露天掘りによる操業を開始し、2018年の生産量は159.1千t(含有銅量ベース)であった1。2018年12月末時点の鉱山全体の鉱石埋蔵量(推定値と確定値の合計)は1,430百万t(平均品位:0.85% Cu、0.29g/t Au)、鉱物資源量(概測値と精測値の合計)は4,881百万t(平均品位:0.62% Cu、0.29g/t Au)である2

プロジェクト価値の内、8割超が坑内掘り対象の鉱体からのもので、現在、坑内掘りへの移行に向けた建設作業が推進中である。採掘はブロックケービング法を予定しているが、第二シャフトの建設の遅れ等あり、操業開始は早くても2021年のQ4と見込まれている3。その後数年以内には、年産500千t(含有銅量ベース)以上を誇る、世界有数の大規模銅鉱山となることが期待されている。

図1.Oyu Tolgoi鉱山位置図

図1.Oyu Tolgoi鉱山位置図

2.Oyu Tolgoi鉱山視察

視察当日は早朝にウランバートルの宿泊先を出発し、空路で約1時間4、その後バスで30分移動し鉱山に到着。到着後、鉱山内の“博物館”、露天掘りピット、重機のメンテナンス施設、選鉱施設、坑内掘りの作業現場を視察した。

2.1 “博物館”5

“博物館”にはOyu Tolgoi鉱山の模型や地質図等が展示され(写真1及び2参照)、一般の訪問者でも視覚的に全体像を理解しやすく工夫されている。今回の視察で印象に残った点の一つに安全性を極めて重要視していることが挙げられる。Rio Tintoグループ保有全鉱山のうちもっとも安全性が高いとのことで、Rio Tintoグループ内の安全性を競うコンテストで優勝した際のトロフィーを飾るスペースが同施設内に設けられていたことが象徴的であった。

  • 写真1.坑内掘り対象鉱体の模型

    写真1.坑内掘り対象鉱体の模型6

  • 写真2.写真1の鉱体図

    写真2.写真1の鉱体図

2.2 露天掘りピット

South Oyu Tolgoi鉱体を対象としたピットをピット上部に設営された見晴らし台より西北西方向に視察した(写真3参照)。ピットのサイズは水平方向に1km×1kmの広さ、垂直方向に300mの深さを展開。採掘された鉱石及び廃石は積載量300t級の大型ダンプトラック30台により運搬されている。

写真3.露天掘りピット

写真3.露天掘りピット

2.3 選鉱施設

一次クラッシャーにて20cm以下のサイズに調整された鉱石が、本施設内のSAGミル及びボールミルにて200µm以下まで磨鉱される(写真4参照)。両ミルの合計処理能力は110千t/日で、現在、ほぼ設計能力一杯で操業しており、今後の坑内掘り操業開始に備え、SAGミル:1基及びボールミル:2基の追加設置を検討中とのことである。ミルによる磨鉱後、7×8=計56台の浮選セルにて硫化銅鉱物を精鉱として回収する(写真5参照)。

写真4.SAGミル及びボールミル

写真4.SAGミル及びボールミル

写真5.浮選セル

写真5.浮選セル

尚、他の銅鉱山と比較した際の本鉱山の特徴の一つとして、精鉱をフレキシブルコンテナバッグに詰めてトラックで出荷する点が挙げられる(写真6参照)。出荷先は中国である。

    写真6.袋詰め施設

    写真6.袋詰め施設

    2.4 地下坑内施設

    第一シャフトより入坑し、坑道開発中の現場や坑内の重機のメンテナンスエリア等、計2km強を徒歩にて視察した。坑内温度は約25℃、換気状態も良好であった。

    坑道は高さ:5.5m、幅:5m(写真7参照)である一方、重機のメンテナンスエリアは高さ:12m、幅:10mと広く、地下1,300mであることを全く感じさせないくらいに行き届いた整備状況であった(写真8参照)。現在の坑道開発の進捗は1,000m/月だが2020年半ばには1,500m/月にスピードアップし、坑内掘りの操業開始時には坑道の総延長距離は200km超に達する予定である。

    • 写真7.坑道開発中の重機

      写真7.坑道開発中の重機

    • 写真8.重機の坑内メンテナンスエリア

      写真8.重機の坑内メンテナンスエリア

    2.5 その他

    Rio Tintoは鉱業界においてデジタル技術の導入に最も積極的な企業の内の一社と見られているが7、本鉱山にて導入されている事例を2点紹介する。まずは重機の運転手がヘルメット内に装着している“SmartCap”(写真9参照)。脳波をリアルタイムに測定し、アラートを発することで居眠りを防止する。もう一つは坑内掘り用重機の運転シミュレーターである(写真10参照)。モンゴルにはこれまで坑内掘り鉱山がなく、本鉱山が同国初の坑内掘り操業を開始するため、作業員の心理的負担を軽減する観点からも、斯かる設備を導入/活用し、地上で十分に訓練を積んだ上で坑内での作業に臨む体制を整備している。

    • 写真9.SmartCap

      写真9.SmartCap

    • 写真10.坑内用重機の運転シミュレーター

      写真10.坑内用重機の運転シミュレーター

    おわりに

    冒頭でふれた通り、本鉱山はRio Tintoの主力事業の一つである銅事業において、主力鉱山に位置付けられている。それは今回の視察の間、規模、力の入れ具合や掛け方において随所に感じられた。

    また、雇用や資材調達において、地元であるモンゴル国及び地域を重視した実践度合いが著しい8ことに驚きつつも感銘を受けた。広大且つ平坦なゴビ砂漠に位置しながら、周辺環境や地域社会への影響に対する考慮が益々重要となる鉱業の、先進的なモデルの一つと言っては過言となろうか。

    最後に、過密なスケジュールにも拘らず、入念な準備/手配の上、当日は万事滞りなくご対応頂いたOyu Tolgoi鉱山関係者及び現地との調整にご尽力頂いたRio Tintoの方々に改めて感謝の意を表したい。


    1. https://www.riotinto.com/investors/results-and-reports-2146.aspx「Annual Report 2018」
    2. 上記1「Annual Report 2018」より計算
    3. https://www.turquoisehill.com/site/assets/files/5016/2019_financial_guidance_and_underground_development_update_final_26_feb_2019.pdf
    4. 同区間は民間航空会社によるフライトなるも、周辺はOyu Tolgoi鉱山以外に目立った商業施設は存在せず、実質的に同鉱山関系者の専用便といえる。
    5. 英文名称が正しく“Museum”であったため、直訳し“博物館”とした。
    6. 鉱体の大きさを視覚的にイメージできる様に比較対象として同じ縮尺のウランバートル市街の模型とともに展示。
    7. http://mric.jogmec.go.jp/news_flash/20180926/89310/
    8. 2018年末時点で従業員に占めるモンゴル人の比率は92.6%。2018年の資材のサプライヤーに占めるモンゴル企業の比率は78%、しかもその内10%強は地元のウムヌゴビ(Umnugovi)県の企業である。いずれもhttp://ot.mn/media/ot/content/scorecard/2018-4/Score_Card_Q4-2018.pdf
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