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報告書&レポート

2019年9月25日 シドニー 事務所 吉川竜太
19-23

Diggers & Dealers Mining Forum 2019参加報告

<シドニー事務所 吉川竜太 報告>

はじめに

Kalgoorlie-Boulder市はWA州の中南部に位置する、豪州では典型的な鉱山町であり、約3万人が居住している。周辺はいわゆる「Goldfields」地域であり、金やニッケルなどの鉱山や探鉱プロジェクトが数多く存在するほか、BHPが操業するKalgoorlieニッケル製錬所があり、鉱業活動の拠点地となっている。また町の郊外には、世界最大の露天採掘の一つであるSuper Pit金鉱山(写真1)が存在している。Diggers & Dealers Mining Forumは、このKalgoorlie-Boulder市で毎年開催される鉱業関連カンファレンスで、28回目となる2019年は8月上旬に開催され、約2,400人の参加があった。豪州全土、特にWA州で活動する鉱山会社・探鉱ジュニア企業や連邦・州政府機関などの関係者が多く参加する大会であり、50社の発表報告と152社のブース出展があった。Rio Tinto Exploration社やBHP Nickel West社、Gold Fields社、Anglogold Ashanti社、Teck Resources社など、豪州で開催されるほかの鉱業大会ではあまり見かけない大手企業からの参加も毎年認められ、豪州の各企業の動向やプロジェクトの進捗状況の確認、新規案件の発掘にあたって非常に有益な大会である。

写真1.Super Pit金鉱山遠景

写真1.Super Pit金鉱山遠景

ピット底に豆粒のように見えるのは、鉱業用トラックや穿孔機。
画面中央に、2018年5月に発生したピット壁面崩落部が認められる。
(報告者撮影)

主要な講演内容について

(1)Hon. John Howard – 第25代豪州連邦首相

自由党選出で、1996年から2007年まで豪連邦首相を務めたJohn Howard元首相による基調講演(写真2)。豪州経済の現状や雇用情勢、産業、米中貿易戦争、中国政府に対する豪州の対応など、非常に幅広い話題に関する講演であった。

豪州経済に対する鉱業界の長年の貢献は疑いようの無いものであり、2008年の世界金融危機の直撃を回避し、その後の経済回復にも大きく貢献している。鉄鉱石、石炭、ガスなどの資源産業による北アジア諸国との資源貿易により、豪州は経済成長を続けてきたことを忘れてはならない。特に、中国・米国との関係は豪州経済にとって非常に重要であり、両国との親密な関係を継続させなければならないが、共通した価値観を持つことが可能という点で、特に米国との関係が重要視されるべきであろう。一方で中国の豪州への経済的重要性も非常に高いため、常にバランスを意識する必要はあると思われる。

その一方で昨今の鉱業界、特に石炭業界は「気候変動狂信者」による批判にさらされており、自身の存在に関して、また将来に不安を与えていることに対して謝罪を迫られるような立場に追い込まれている。このような状況の背景には、気候変動に対する市民の高い関心と、鉱業が環境面で目立ちやすいということに起因しているものと考えられる。いずれにせよ、豪州コミュニティの中の一部には、これまで自身を繁栄に導き、今後も導くはずの産業を批判せずにはおられないという「集団的意思」を伴う宿痾があるように思われる。

 写真2.Diggers & Dealersで基調講演を行うHoward元首相

写真2.Diggers & Dealersで基調講演を行うHoward元首相

(報告者撮影)

(2)Mr. Stephen McIntosh – Group Executive, Growth & Innovation, Rio Tinto Exploration

Rio Tintoは1990年代から豪州の伝統的土地所有者への支援事業を実施しており、現在は豪州で最も多くの伝統的土地所有者出身の従業員を雇用している。また、作業中の安全確保が探鉱の根幹であると理解しており、20万時間におけるAll Injury Frequency Rateは2011年の1.5から2018年は0.3まで減少させることが出来た。Rio Tintoは世界各国で探鉱を実施しており、2017年と比較しても2018年は活動範囲を広げており、17か国で7鉱種を対象に、67の探鉱ターゲットで試錐を実施し、総試錐延長は97kmにも及んでいる。

Rio Tintoは歴史的に、地表が新しい堆積物で被覆されているエリアでの探鉱に取り組んできた。新技術の導入は探鉱活動にとって非常に重要であり、例えば地表下250mまでのバルク試料採取が可能な「Bauer BC 50 cutter」という機器を、カナダにおけるダイヤモンドの探査向けで活用している。

WA州Paterson地域で2018年に新しく発見したWinu銅・金鉱化については、現在も積極的に試錐活動を実施している。現時点で、走向延長2.1km、地表下100m以浅の比較的浅部で鉱化が確認されている(写真3)。Rio Tintoでは同プロジェクトの試錐コア全てにハイパースペクトル分析を実施しており、AIによる選鉱実収率の予測などに活用している。

写真3.Rio Tintoのブースで展示されていたWinuプロジェクトの試錐コア

写真3.Rio Tintoのブースで展示されていたWinuプロジェクトの試錐コア

緻密な石英・長石脈の割れ目に黄銅鉱、黄鉄鉱、斑銅鉱が産する。
金や銀は必ずしも銅鉱化と調和的ではなく、いくつか鉱化ステージがある模様である。
母岩は堆積岩で、ここでは黒雲母変質を被っている。
(報告者撮影)

(3)Mr. Eddy Haegel – Asset President, BHP Nickel West

BHPは、保有する資産の中におけるNickel West部門の位置づけに関して、現状では低リスク・高リターンな資産であると認識している。同部門が保有する過去10年間における埋蔵量中の金属ニッケル量の推移を見てみると、2016年の654千tを底に、2019年には1,506千tまで回復しており、ここ数年の投資が実を結んだ形となった。Nickel Westでは、既存鉱床の周辺探鉱を進めている他、WA州の中南部に13,000km2の探鉱ライセンスを取得し「Seahorse」プロジェクトと名付けたグラスルーツ探鉱も実施している。

Kalgoorlieニッケル製錬所では、2026年に溶鉱炉の改修を予定している。現在の操業においても、コスト削減に向けたいくつかのボトルネック解消に向けた取り組みを実施しており、マット中ニッケル生産量は数年の内に110~120千t/年となる見込みである。また、High Pressure Oxidation(HPOX)と呼ばれる技術の導入を検討しており、Kalgoorlieに実証プラントを建設して商用スケールでの技術試験を実施する予定である。これまでスラグや精錬残渣の中に残留していたニッケル回収を目指すほか、高ヒ素、高タルク鉱石など、溶鉱炉では処理の難しい鉱石の代替処理方法となる可能性がある。

同じくWA州Kwinanaのニッケル精錬所における金属ニッケル生産量は、現在の操業許可における生産能力は80千t/年であるところ、90千t/年に拡張する計画で、これによりコスト削減を期待している。2016年にはリチウムイオン電池(LIB)向けの金属ニッケル販売は10%以下であったが、足元では75%がLIB産業向けに販売されており、さらに増加する予定である。Kwinana精錬所では、ニッケル・コバルト硫化物(ミックスサルファイド)も生産している。

Kwinanaでは、金属ニッケルに硫酸を加えることで生成する硫酸ニッケル工場の建設が順調に進んでおり、2020年第2四半期には生産が開始される見込み。既にオフテイク契約も締結している。コバルトに関しても、金属ニッケル生産前の中間生成物を対象に電解工程を組み込み、硫酸コバルトとして回収する工程の導入を検討しているところである。

図1.WA州における、ニッケル生産物の動きに関するフロー図

図1.WA州における、ニッケル生産物の動きに関するフロー図

(出典:Mincor社プレゼン資料)

(4)Ms. Elizabeth Gaines – Chief Executive Officer, Fortescue Metals Group(FMG)社

FMG社は、2018/19年度に167.7百万tの鉄鉱石を出荷。C1コストは13.11US$/wmtで、ほぼ当初の目標通りの結果となった。現在、Western HubのEliwanaプロジェクトで鉱山・インフラ開発を実施しており、2020年12月の生産開始以降、30百万t/年の鉄鉱石を20年以上にわたって生産する見込みで、将来にわたってFMG社のWest Pilbara Finesブランドの販売に寄与することを想定している。また、Iron Bridge磁鉄鉱プロジェクトも開発中(年産22百万wmt)で、2022年第1四半期に最初の磁鉄鉱精鉱(鉄分含有率:67%)が出荷される予定である。

FMG社は技術革新にも力を入れている。WA州の鉄鉱石鉱山で導入している自動運転トラックの累計走行距離は既に32百万km以上となっているほか、豪連邦科学産業研究機構(CSIRO)とは水素の輸送テクノロジーの共同研究を実施中である。また、豪州内ではWA州、NSW州、SA州で探鉱鉱区を保有して銅やリチウムの探鉱を実施しているほか、海外では南米エクアドル、コロンビア、アルゼンチンで銅とリチウム、ポルトガルでリチウムの探鉱を実施している。

(5)Mr. Peter Bradford – Managing Director & CEO, Independence Group(IGO)社

WA州にTropicana金鉱山をAngloGold Ashanti社とのJVで保有しているほか、Novaニッケル・銅鉱山を100%保有し操業している。従業員の安全確保はIGO社にとっても極めて重要なファクターで、100万時間当りのLost Time Injury Frequency Rateは、過去2年で半分程度まで低下させることを実現している。Nova鉱山では、2018/19年度には精鉱中ニッケル金属量として30.7千tを生産。Cash Costは2.07A$/lbと、豪州でも最も低コストのニッケル鉱山の一つであると言える。これを支えているのは継続的な操業改善の努力であり、銅、ニッケルともに回収率は2018年7~9月四半期の78~82%から2019年4~6月四半期の86~89%まで改善している。また、Tropicana鉱山はIGO社にとって安定的にキャッシュを生み出してくれる優良資産である。2018/19年度に同鉱山からは518千ozの金が生産され、AISCは951A$/ozであった。

今後のニッケル市場は、電気自動車の普及に伴うLIB需要の拡大や正極材にニッケルをより多く利用するタイプの普及が予測されており、ニッケル需給は更にタイト化することが予想されている。IGOはLIB向けニッケル需要の拡大に備え、硫酸ニッケル生産の可能性を検討しているところ。2020年第2四半期のPFS完成を予定している。

IGOは引き続き探鉱にも力を入れている。Nova鉱山周辺で3D地震探査を実施して貫入岩体を確認し試錐ターゲットを抽出したほか、WA州、NT準州、SA州、グリーンランドなどにプロジェクトを保有しており、2019/20年度の総探鉱予算は66mA$を計上している。

(6)Mr. Simon Collins – Chief Development Officer, South32社

2015年の設立以来、ボーキサイト、アルミナ、石炭、マンガン、ニッケル、ベースメタルなどを世界中で生産しており、ここWA州ではWorsleyアルミナプロジェクトを操業している。現在は、ブラジルでのアルミナプロジェクトや米AZ州のHermosa鉛・亜鉛プロジェクトに注力している。Hermosaプロジェクトは2018年に買収して以降、QLD州のCannington銀・鉛・亜鉛鉱山の操業で得られた知見を活かして探鉱を進め、JORC基準で資源量155百万t、亜鉛品位3.39%、鉛品位3.67%が確認されており、2019/20年度末までにPFSを完成予定である。また、QLD州では休山中であったEagle Downs原料炭プロジェクトを2018年に買収して再開発に向けた評価を実施しており、2020/21年度上半期には最終投資判断を行う予定である。

一般炭に関しては、比較的新しい石炭火力発電所を保有、または建設を計画している国で需要が見込めると認識しているが、その認識から外れる南アの一般炭事業からは撤退する予定であり、現在売却に向けたプロセスを続けているところである。南アに保有するマンガンやアルミニウムなど他の事業は、継続して保持する意向である。

探鉱に関しては豪州、AK州を含むアメリカ本土、中南米などにおいて、JVやパートナーシップを軸にベースメタル探鉱を実施しており、2018/19年度の初期探鉱への投資額は34mUS$であった。今後も、アフリカ以外の地域において積極的に探鉱ジュニア企業との協力による探鉱事業を実施していきたい。

(7)Mr. Fraser MacCorquodale – General Manager – Exploration, Newcrest Mining社

Newcrest社は、他社と比較すると探鉱において大きなアドバンテージを有していると考えており、それは探鉱の経験、探鉱対象となる鉱床タイプの鉱山操業経験、技術革新の3点で構成される。豪州のCadia鉱山やTelfer鉱山、インドネシアのGosowong鉱山、PNGのGolpuプロジェクトなど、探査での発見から鉱山開発までの一連の流れを幾度となく経験しており、その採掘方法も露天掘りからブロックケービングまで各種の操業実績があり、それぞれの鉱床での選鉱技術の知見も蓄積している(図2)。鉱床胚胎深度を問わず、Newcrest社は適切に対応可能である。

好例として、2019年に70%の権益を買収した加Red Chris銅・金鉱山が挙げられる。Newcrest社は、同鉱山の地質セッティングは豪NSW州で長年操業しているCadia金・銅鉱山と類似しており、Cadia鉱山で培った知見と技術を探鉱や操業に活用できると考えている。Cadia鉱山は、Ridgeway鉱床からCadia East鉱床まで5.5kmの広がりがあり、Red Chris鉱山の周辺にも未評価の変質帯が存在していることから、大きなポテンシャルを期待している。

Newcrest社は探鉱現場におけるリアルタイムでの分析と、それに基づいた探鉱計画を立案するための技術を開発中であり、試錐現場で実施した成分分析やハイパースペクトルの結果を即座にデータベース化している。また、大陸スケールでの衛星画像解析とAI解析技術を組み合わせることによる有望地抽出を、グラスルーツレベルや周辺探鉱でも活用を始めたところである。

図2.Newcrest社がノウハウを保有する採掘法や選鉱方法について

図2.Newcrest社がノウハウを保有する採掘法や選鉱方法について

(出典:Newcrest社プレゼン資料)

(8)Mr. Simon Finnis – Managing Director and CEO, Metro Mining社

2018年からQLD州北部のBauxite Hillsボーキサイト鉱山を操業しており、現在は3百万t/年の生産能力であるが、拡張を実施し2019年は3.5百万tを生産予定である。ボーキサイトはアルミニウムの原料であるが、一般的にはボーキサイト4~6tからアルミナ2tが製造され、アルミニウム1tが製錬される。

中国のアルミニウム生産能力は急成長しており、2017年時点では世界全体の6割に相当する47.9百万tまで生産能力を拡大。それに伴いボーキサイトの輸入量も急増し、2018年には82.6百万tが輸入された。今後は同国内のボーキサイト生産量の減少を受け、2024年には180百万t弱まで急増するという予測もある。なお、2018年に中国が輸入したボーキサイトの36%は豪州から輸入されており、その他ではギニアが46%、ジャマイカが12%、インドネシアが9%の割合となっている。

おわりに

豪州では数多くの鉱業関連カンファレンスが一年を通じて開催されているが、Diggers & Dealers Mining Forumはその中でも豪州で活動する鉱山企業の動向やプロジェクトの進捗状況をまとめて確認できるという点で貴重な機会であり、主要な鉱業大会の一つとして挙げられる。またジュニア企業の参加も多く、新しいプロジェクトの発掘にも適している。

地方都市での開催であるため、特に宿泊施設の確保と市内の移動にあたっては労を要するが、本Forum開催期間中は航空会社がKalgoorlie空港への特別便(例えば、Sydney-Kalgoorlie間の直行便)を運行しているほか、ホテルなどの宿泊施設の不足に対しては、大会事務局が手配する民泊(住民が居住している家屋を、大会期間中参加者のルームシェア用に貸し出すという形式で、1名からでも申込み可能)をアレンジする点がユニークであるほか、市内移動用のバスも用意されており、それらも踏まえて参加する価値は大きいと考えられる。豪州の鉱業に関心があれば、一度参加されることをお勧めしたい。

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