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報告書&レポート

2019年10月9日 金属企画部 調査課 奥村維男
19-25

第2回名古屋オートモーティブワールド参加報告

―軽量化関連技術開発動向のトレンドを中心として―

<金属企画部調査課 奥村維男 報告>

はじめに

自動車を取り巻く電動化(EV化)や自動化については日進月歩で技術革新が進み、いわゆる「CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared&Services:シェアリング、Electric:電動化)」に代表されるように、自動車業界が大きな変革期を迎えている状況下、自動車の最先端技術の展示会として、2019年9月18~20日にかけて第2回名古屋オートモーティブワールドが開催された。3日間の開催期間中には16,000人を超える業界関係者による参加があり、「CASE」の最新動向から軽量化、AI等を題材として自動車・鉄鋼業界等トップ80名による講演がなされたほか、400社を超える展示会においてビジネスマッチングが展開されるなど、本イベントは本邦最大規模の自動車関連技術や動向に関する情報交換の場として位置付けられている。

写真1.第2回名古屋オートモーティブワールドでの展示会の様子

写真1.第2回名古屋オートモーティブワールドでの展示会の様子

EV化に代表される環境規制対応においては、とりわけリチウムイオン電池を取り巻くサプライヤーやエンドユーザーの動向が注目されがちであるが、車体重量の半分近くを占める車両鋼材の軽量化は、CO2排出量の低減や航続距離の延伸(いわゆる燃費・電費)のほか、車体の運動性能向上に大きな役割を果たすことから、昨今では車体のマルチマテリアル化や鋼材の高強度化・最適構造実現にあたっての次世代鋼材の製造・設計に関する技術開発が進められている。

本報告では、上記セミナーにおいて講演されたテーマの中から軽量化に焦点を当て、超ハイテン(Advanced High Strength Steel)の開発及び適用の動向や、本材料適用にあたって必要となる成形や接合等の製造・設計技術における課題を整理するほか、車体のマルチマテリアル化や軽量化設計における研究・開発動向等について俯瞰する。また、まとめにあたっては、軽量化の動機付けにおける主要素たるCO2排出量削減やEV化に関する考察の一端に関しても併せて紹介する。

1.自動車ボディにおける超ハイテン適用の実績と最新動向

【株式会社本田技術研究所 オートモービルセンター 材料開発室第2ブロック 主任研究員 種植隆浩氏】

(1)ハイテン適用の背景と経緯・適用例
図1.各部材におけるハイテン適用の例

図1.各部材におけるハイテン適用の例

出典:本田技研工業株式会社ホームページ

ハイテン適用による軽量化は、燃費向上に対する主要課題であるほか、運動性能の維持・向上にあたっても必須要素となっており、低重心化・ヨー慣性モーメントの低減により、回頭性の向上やロール挙動を抑えるにあたって効果的に働く。

1990年代後半以降、衝突・安全性能に対する要求が強化され車体重量の増加が進んでいることが、鉄鋼板に対するハイテン適用の主要素となっており、株式会社本田技術研究所では引張強度590MPa以上をハイテン、780MPa以上を超ハイテンとして定義している。本田技研工業株式会社では、現在AHSS(DP鋼(Dual Phase、980MPa以上)/TRIP鋼(Transformed Induced Plasticity、580MPa以上))やホットスタンプ(1,400MPa以上)の普及期に入っており、同社の車種に限っていえば、例えばC・Dセグメントの小型・中型車種のうち、2016年以降に発売されたモデルでは980MPa以上の超ハイテンが12~16%、ホットスタンプが10~15%の部位で使用されており、ここ5年程度でその適用比率は急速に伸びている(図1参照)。

(2)超ハイテン部品の設計

超ハイテンは、ボディ各部位の機能に基づく要求性能に応じて、局部変形能・高耐力・破断抑制等といった必要特性が異なるが、780MPa級以上となる場合、局部伸びの数値が25%を下回るとクラックが発生するため成形性の課題が大きくなる。また、引張強度が高まると成形限界が低下(歪・破断が生じる)するほか、反り返り(スプリングバック)が大きくなるため、高精度な設計にあたっては、部位ごとの衝突時の割れ発生や亀裂進展の予測技術の向上、あるいは成形CAE(Computer Aided Engineering)においては金型形状によるパターン分けに基づいて増分解析による評価を行い、高精度化を図ることが必要となる。

(3)超ハイテンの成形・溶接

超ハイテンのスポット溶接における加圧・通電・発熱(溶融)のプロセスにおいては、引張強度が高まると鋼板の抵抗発熱が小さくなるため、加圧力を高めて溶接電流値を上げ、接合面におけるジュール熱の発生を促進させる。また、冷却プロセスにおいては、接合させる鋼板厚の差異が大きいと薄板側に発生するナゲット(接合部のボンドの役割を果たす溶融部)の成長が妨げられるため、加圧のサイクルタイムを増やすなどの対策が講じられる。但し、メッキ鋼板同士の溶接の場合には、鋼板表面の過入熱や加圧電極部の局所発熱、あるいは冷却プロセスの電極開放時における引張応力等により鋼板に割れが生じるため、通電の際の初期電流を高密度化することによって薄板側界面の発熱性を向上させ、薄板側のナゲット成長を促す等の対応が図られる。

ホットスタンプの製造にあたっては、炉加熱(約900℃)での熱間成形後に金型内で熱間加工及び冷却プロセスを経ることで、複雑な形状部品の高強度化を図ることが可能となるが、加熱温度や加熱時間といった条件(プロセスウィンドウと称する)が硬度基準・合金化基準の適合範囲や母材の溶接性・塗装後耐食性といった性能保証面に影響を与える。また、ホットスタンプのスポット溶接においては、溶接部のHAZ(Heat Affected Zone)硬度は980MPa級と同等になることから、必要強度に応じた打点数の設定が必要になる。

(4)今後の方向性

高強度(引張強度1,500MPa以上)と高延性(全伸び20%)のバランスを兼ね備えた第三世代のハイテン開発が求められており、ISMA(新構造材料技術研究組合)の開発目標としては、引張強度1,500MPa以上・全伸び20%が掲げられている。但し、高強度化が進むと遅れ破壊(高強度鋼部品が、静的な負荷応力下において塑性変形を伴うことなく破壊を起こす現象)対策が課題となる。

2.ハイテン開発の現状と今後の展望

【講演者:日本製鉄株式会社 技術開発本部鉄鋼研究所長 藤田展弘氏】

(1)鋼の特徴とハイテン開発

自動車用鋼板の引張強度は現状300~1,500MPaと広いカバレッジを有するが、鋼の実用化最高強度は約4,000MPaであり、自動車用鋼板としては更なる高強度化が可能である。鋼板は他の素材と比較して比強度(質量あたりの強度)が高く引張りに対するバランスが優れていることから、部品成型が容易で衝突時にエネルギーを吸収する(大きく変形するものの破断しない)特性を有する。強度-引張りのバランス向上の一例として、TRIP鋼では、引張加工によって硬質のマルテンサイトに変わるオーステナイトをミクロレベルに分散させた組織制御を行うことで、引張時のくびれや破断進展を抑制している。

(2)高強度・高機能ハイテン

自動車の各部材には、その機能に応じた様々な鉄鋼材料が使われており、部材の特性に合わせたハイテンの開発が進められている。その一例として、衝撃吸収骨格部材(フロントサイドメンバー、リアクロスメンバー、エプロンアッパーメンバー等)には引張強度980~1,310MPaの冷延ハイテンを適用し、衝突時の衝撃エネルギー吸収機能を持たせているほか、キャビン骨格部材(フロント・センターピラー、ロッカーパネル、フロントクロスメンバー等)には引張強度1,470MPaの冷延ハイテンのほか、同1,800MPa級のホットスタンプの適用により、衝突時の変形抑制を確保している。

また、アルミニウム鋼板との比較において、骨格部材においては引張強度980MPa以上であれば単位長当たりの質量はアルミニウム(約6kg/m)よりも下回るとされている。その他、ホットスタンプ用鋼板の衝突特性として、引張強度1,800MPa級鋼板のバンパー衝突特性は同1,500MPa級鋼板と比較して荷重が26.5%向上し、板厚を1.6mmから1.4mmに減少させても1,500MPa級鋼板と性能が等価で12.5%の軽量化を果たすことが可能とされている。

(3)ライフサイクルに基づくCO2排出量の試算・リサイクルの考え方

車体の軽量化にあたっては、鉄鋼板、アルミニウム鋼板、CFRPといった素材ごとの環境負荷低減の効果を評価する必要があるが、各素材の製造時負荷・使用時負荷・廃棄処理負荷(リサイクル効果)等を踏まえたライフサイクル全体での総合負荷によって評価されるべきである。本観点に基づき、各素材製造時の単位重量ごとの温室効果ガス発生量に関して、発電ソースを各化石燃料のバランスを考慮した条件下で比較すると、鉄鋼板のそれは2.0~2.5kg-CO2当量/kg-素材であるのに対し、アルミニウム鋼板は11.2~12.6kg-CO2当量/kg-素材、CFRPは21.0~23.0kg-CO2当量/kg-素材と、いずれも鉄鋼板に比して顕著に高い傾向を示す。鉄鋼板とアルミニウム鋼板の走行時のライフサイクルCO2排出量を比較すると、アルミニウム鋼板の方が低い値を示す傾向にあることから、一見すると環境負荷低減効果が高いものと認識されがちであるが、前述の製造時のCO2発生量を含めた総合負荷に基づき比較すると、鉄鋼板のそれはアルミニウム鋼板と比較して2%程度低くなることから、ライフサイクル全体での環境負荷低減の効果を検証する必要がある。

また、リサイクルプロセスにおいて、鉄鋼板中の混入元素はガス(Pb・Znはガスとしてトラップ)あるいはスラグ(Ce、Ti、Nb、Cr、B、V、Si、Mn、Al等はスラグ中に分離)として除去できるが、アルミニウム鋼板やマグネシウム等の混入元素の大半は除去が困難である。本観点からすると、他材料への転用が比較的容易な鉄鋼板は環境負荷に対する影響が低い素材であると言える。

(4)次世代ハイテンの開発

NEDOの革新的新構造材料等研究開発プロジェクトでは、輸送機器の軽量化に向けた革新鋼板や材料・接合技術の開発を行っており、引張強度1,500MPaで590MPa級鋼板と同等の伸び(伸びEL20%)のラボレベルでの実現を目標としている。また、異材接合技術の観点では、図2に示すとおり、溶接接合(抵抗スポット溶接、アーク溶接、レーザー溶接)、固相接合/溶着(摩擦接合、摩擦重ね接合、レーザー溶着)及び接着接合といった項目が本プロジェクトにおける開発課題となっている。

図2.マルチマテリアル構造に対応した接合技術

図2.マルチマテリアル構造に対応した接合技術

出典:ISMA Report No.7(2017)

さらに日本製鉄株式会社では、鉄鋼材のみの適用を基本として、鋼板薄肉化及び高強度化(最大引張強度2,000MPa)により、約30%の軽量化を達成した次世代自動車構造コンセプト「NSafe-Auto Concept」を提唱しており、欧州メーカーのオールアルミニウム車体モデル相当の等価質量となる鋼製軽量化アイテムの開発を主眼とし、燃費性能のほか、衝突安全性能や走行性能の向上、あるいは騒音・振動性の低減といった自動車としての付加価値向上を目指した軽量化プロジェクトを推進している。

3.マルチマテリアル化動向と今後求められる技術

【講演者:株式会社SUBARU 第一技術本部材料研究部 部長 河合功介氏】

(1)マルチマテリアル化による軽量化技術動向

毎年10月にドイツにて開催される、車体の設計技術と生産技術に関する情報交換のイベント「Euro Car Body」において出展される車両においては、軽量化指数1(LWI)3.0以下の軽量・高剛性を謳う鉄鋼板を主体とする車体の軽量化・高剛性化が進んでおり、引張強度590MPa以上の超ハイテンの高強度材比率が急速に拡大している。また、スチール適用比率が75%未満の車体でも、ホットスタンプの適用比率が増加している。

商品コンセプト、車両価格、要求性能によってマルチマテリアル化の手法は異なり、欧州メーカーではCセグメントの中型車以上においてアルミ材の適用が増加しつつある。また、アルミスペースフレーム工法による車体骨格一体成型により、アルミダイカスト部品の大型化が進んでいる。それに伴い、異材接合技術の発達も進んでおり、機械締結や摩擦接合が主流ではあるところ、欧州ではCFRPとアルミニウムを接合する特殊リベットや3枚継手といった技術的にハードルの高い接合技術の適用も可能になりつつある。

(2)今後のクルマの変化と課題

安全性・快適性の向上にあたり、ワイヤーハーネスや電動部品点数の増加等によって車両重量は今後も増加の一途をたどり、2030年には2014年比で約130kg増加する見通しとされ、特にEVはガソリン車と比較してバッテリー・モーター・コンバーター等を主要因として、約300kgの重量増が見込まれている。また、燃費・電費向上にあたっては軽量化と併せて消費電力量の抑制がカギとなるが、EVの場合にはエンジンの熱を暖房に使用できず消費電力量が大きくなるため、軽量化に加えて車体の熱伝達損失の低減も重要な課題となる。

(3)今後求められる軽量化技術

マルチマテリアル技術の適用にあたっては、多機能材料(複合材)を適材適所で活用し、部品点数の削減や工程削減につなげることで、コスト低減や投資抑制につながる。その具体例としては、機能樹脂材料を鋼板あるいはアルミ板で挟んでアウター・フロアー板金部品に適用させる、あるいは鋼板等に機能表面処理を施すことで電食防止・接着剤劣化抑制・防錆性能向上を図りつつ、工程削減にもつなげる技術の開発が大きく寄与する。

生産効率の高い工程においては、同一工程での異材混流生産方式の実現が求められているが、例えば同一工程あるいは設備における異材接合においては、接合方法(接着・スポット溶接・摩擦攪拌接合(FSW))によって品質安定性、耐久信頼性、生産性を向上させるにあたり、表1のような課題に対する技術の確立が必要となる。

表1.同一工程・設備における異材接合実用化に向けた課題と技術
接合方法 望まれる技術(スチールとアルミを接合する場合)
接着 ①品質安定性
②耐久信頼性
③生産性
接着剤の塗布バラツキ抑制・非破壊検査
経時劣化の防止
接着剤硬化時の熱歪み抑制
スポット溶接 ①品質安定性
②耐久信頼性
③生産性
材料・部品精度・生産条件等のバラツキに対する品質安定化
ガルバニック腐食の防止
スチール-スチール・スチール-アルミの同一設備での接合
摩擦攪拌接合 ①品質安定性
②耐久信頼性
③生産性
材料・部品精度・生産条件等のバラツキに対する品質安定化
ガルバニック腐食の防止
生産タクトの短縮・工具の長寿命化(特にスチール接合の場合)

出典:講演資料に基づき筆者作成

また、材料の高強度化においては、応力腐食割れや水素脆化(鋼材中に水素が吸収されることによって、鋼材が脆くなる現象)のほか、異材接合の適用拡大に伴ってガルバニック腐食2による強度低下がリスクとなることから、実用環境における信頼性の予測・評価技術(実用環境における定量的なデータ蓄積や破壊・劣化等の現象のラボでの再現)の確立が必要となる。

4.マルチマテリアルトポロジー最適化による自動車ボディ構造の高性能化・軽量化

【講演者:京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻 教授 西脇眞二氏】

(1)トポロジー最適化の考え方

自動車構造を対象とした構造最適化技術の適用にあたり、形態(トポロジー)の最適化に関しては1980年代からソフトの開発・導入と共に浸透してきた経緯があるが、マルチマテリアルを対象としたトポロジーの導入に関しては未だ研究段階の途上にあり、NEDO-ISMA(新構造材料技術研究組合)のプロジェクトとして、2018年度よりシステム開発が進められている。本構想の導入により、構造最適化問題を材料分布問題として置き換えることで、①抜本的な性能向上を可能とする構造設計の立案、②構想設計段階における最適な材料選択・配置の設計、③勘と経験による判断ではなく、力学的見地に基づく設計案の創出、が可能となる。

マルチマテリアルのトポロジー最適化の評価結果を車体設計に展開するにあたっては、①トポロジー最適化による構想設計、②非線形CAEによる性能の定量的評価・改良、③部分構造の詳細設計、④形状最適化による設計案の改良、⑤車体全体への適用、のプロセスを経ることで、剛性適正性(適切な位置に剛性を配置)を目指した構造・材料の基本配置案の提案につながる。

(2)レベルセット法によるトポロジー最適化

トポロジー最適化にあたっては、これまで均質化設計法や密度法といった手法が適用されてきたが、幾何学的に複雑な形状を伴う場合にはグレースケール(構造上の形態(剛体もしくはコンポジット)がはっきりしない領域)を許容してしまう、あるいは設計領域内において境界条件を設定することができないといった課題が指摘されてきた。このような課題に対して、本研究では従来のトポロジー最適化の定式にレベルセット法による形状表現を導入することで、グレースケールを含まない明確な境界を持つ最適構造の定量化を図る、あるいは幾何学的な複雑さの制御を目指す取り組みがなされている。これまでの研究においては、単一材料によるトポロジーの最適化にあたって、自動車の部位(サスタワー・ピラー・バンパー等)ごとに構造上の形態の三次元可視化が進められてきたが、マルチマテリアルによる同最適化にあたっては、MMLS(Multi-Material Level Set)法の適用により、適切な界面状態を有する最適構造を求める試みが図られている。

本研究では、3材料(鋼・アルミニウム・マグネシウム)を対象として、各材料の体積・質量の制約を条件付けながら各材料の配置・構造上における三次元の最適解が図3のような形で可視化されているほか、適用する各材料の質量割合や単位質量あたりのコスト・質量密度から、コスト評価が行われているところである。現状ではまだシステム開発の段階ではあるものの、剛性適正化を目指したトポロジー最適化によって、構造・材料の基本設計案の導出につながり、形状最適化による設計案の改良を重ねることで、車体設計全体としてまとめ上げるための解析手法としての確立が期待されている。

図3.マルチマテリアルトポロジー最適化における解析結果(三次元可視化)の例

図3.マルチマテリアルトポロジー最適化における解析結果(三次元可視化)の例

出典:TFC Foresight マルチマテリアル設計技術の現状と課題(NEDO)

おわりに

今般の講演では、軽量化にあたっての目標値を具体化させた事例の紹介は少なかったが、2030年の欧州におけるCO2排出規制値(66 CO2-g/km)をベンチマークとし、当該値をクリアするにあたって必要とされる軽量化の目安を算出すると、Cセグメントの小型車の場合には現行よりも約30%の軽量化(1,190kg→830kg)が求められるとの試算結果が、軽量化の目標値を決めるにあたっての一例として具体化されている。但し、ボディシェル(車両骨格)が重量全体に占める割合(約22%)から先の目標値を達成しようとなると、ハイテン等の鉄鋼板のみの対応では困難となりマルチマテリアル化が必要との見解が示されており、アルミ化によって最大40%程度の軽量化の可能性についても論じられている。

一方、CO2排出量削減の議論に目を転じると、Well To Wheelの観点でのCO2排出量から、エネルギーミックスを踏まえた最適解を求める規制の在り方や排出抑制策を検証する必要性について、単位走行距離当たりのCO2排出換算量(CO2-g/km)やEV化が進むことによる電力需要の見通しを踏まえた考察が進められている。本考察においては、小型ガソリン車(実用燃費:18.4km/L)とEV試作車(実用電費:17.2kWh/100km)から換算されるWell To Wheel におけるCO2排出量(小型ガソリン車:148 CO2-g/km、EV試作車:108 CO2-g/km)を比較した結果、車両単体ではEV試作車の優位性が認められるものの、発電方法別のCO2排出量の観点では、特に石炭火力発電のCO2排出量(162 CO2-g/km)の影響が大きく、同排出量の低い発電方法をエネルギー源とするEV化の議論に基づいて環境に対するインパクトが議論されるべきとされている。また、EV化が進むことによる電力需要の見通しを踏まえた考察においては、現行の内燃機関自動車による燃料消費量のうち、50%をEVにより賄うと仮定する場合には1.5億kWhの追加電力が必要となり、当該電力を再生可能エネルギー(太陽光・風力等)で対応するとなると、約1.3億kWの発電能力の増強が必要であることに加え、これらEVの充電時間の短時間集中化によってピークに合わせた発電能力の増強が必要となり、結果的に発電コストが上昇し、それがエンドユーザーに転嫁されることでEV化の減退につながる可能性が言及され、急激なEVシフトに対するアンチテーゼが示唆されている。

今般のセミナーへの参加により、「CASE」に代表されるような大変革期において自動車を取り巻く環境が益々複雑性を増している中、軽量化の更なる推進に向けて、各サプライヤーやエンドユーザーとしては現状の課題や将来的見通しの確実性を模索しながら、限りなくプリミティブなアプローチによって、「高剛性・高品質で1gでも軽く」を追求している状況にあることを認識するに至った。このような状況の中、自動車関連部材の資源や素材の需給を見通す上では、今後も上記のような多角的な視点に基づく自動車メーカーによるアプローチや技術開発動向に触れる機会を通じて、モビリティの形態や社会インフラとのコネクティビティの将来的展望に立った視点に基づく解析を進める必要があり、サプライチェーンの下流側からの情報収集の重要性を改めて感じる機会となった。


  1. ホールベースとトレッドでボディサイズを代表し、ねじり剛性とともに車体重量効率を評価する指標で、以下式によって表される。
    LWI=m/(A×Ct)
    m:車体重量、A:ホイールベース×トレッド、Ct:ねじり剛性
  2. 異種金属を導電性のある溶液中で接触させた場合、イオン化傾向の高い金属がアノード(陽極)となって腐食が助長され、イオン化傾向の低い金属がカソード(陰極)となって腐食が抑制されることで、アノード側の金属の選択的な腐食が進行する現象。
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