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報告書&レポート

2019年10月21日 金属資源技術部生産技術課 古川創 金属資源技術研究所 髙橋達
19-26

第11回Hydroprocess2019参加報告(サンティアゴ、チリ)

<金属資源技術部生産技術課 古川創、金属資源技術研究所 髙橋達 報告>

はじめに

Hydroprocessは、GECAMINが主催する金属および非金属の湿式製錬プロセスに係わる開発および技術革新に関する鉱業大会で、2009年から毎年チリで開催されている。GECAMINは、鉱業に関わる複数の産業部門における技術的・国際的な学際協力を進める会議やセミナーを運営するために1998年にチリで設立された組織である。本大会の他に、GEOMIN・MINEPLANNING、MINEXECLLENCE、watercongress、Tailingsといった鉱業大会も開催している。

金属資源技術部生産技術課では低品位一次硫化鉱を対象とした湿式製錬技術開発を行っており、最新のリーチング技術ならびにリーチング後工程(SxEw)についても情報収集を行うため、今回Hydroprocess2019に参加した。

第11回目となる今大会は、GECAMINとBritish Columbia大学、Antofagasta大学の共催で、サンティアゴ市内のホテルにおいて3日間の日程(2019年6月19~21日)で行われた。参加者約300名中、220名近くはチリからの参加者であり、日本鉱業協会が毎年開催している全国鉱山・製錬所現場担当者会議のような面も備えた会議であった。チリ以外には、日本、ペルー、コロンビア、メキシコ、ブラジル、米国、カナダ、豪州、南ア、スペイン、ベルギーの各国から約70名が集まった。今大会について、今回の実行委員長であるNelson Salazar氏(Centinela鉱山カソードプラントマネージャー)は、「鉱業は複雑な業態であり、資源がなくなる度に、より効率性が求められ、パラダイムシフトが必要となる。学術界の研究開発はそのための基礎である。」と述べ、また、Andrés Hevia氏(Centinela鉱山社長)も「この会議を通して、鉱業界の現状を互いに知ることができ、また新規技術や新プロセスについて情報を得ることができる。」と、産学連携の場として期待している旨を述べた。

写真1.講演会場(Hydroprocess2019)

写真1.講演会場(Hydroprocess2019)

会場では湿式プロセスに関わる資機材を販売する会社のブースが設けられ、新商品の紹介・商談なども行われていた。

発表は以下の12セッションに分けて行われた。

表1.講演・セッション一覧
Hydrometallurgy of Copper Ores and Precious Metal 6件
Hydrometallurgical Processes in Chloride Medium 6件
Electrowinning Operations 6件
Hydrometallurgy of Copper Ores 5件
Hydrometallurgical Processing in Chloride Medium 5件
Solvent Extraction processes 5件
New Reagents, Materials and Technology 6件
Innovation and Developments in Hydrometallurgy 6件
Modeling and Optimization of Hydrometallurgical Operations 5件
Lithium and Rare Earths Hydrometallurgy 5件
Safety in Hydrometallurgical Operations 4件
Innovation and Developments in Hydrometallurgy 5件

前回のHydroprocess2018では、バイオリーチングに関するセッションもあったが、今回はその代わりとして塩化物を使った湿式製錬に関するセッションが設けられており、技術の流行が伺えた。また、リチウムとレアアースに関するセッションもあり、昨今の業界状況を踏まえた構成となっていた。チリ大学教授で今回のプログラムディレクターであるFernando Valenzuela氏は、「硫酸浸出できる酸化鉱はますます少なくなり、次の10年の湿式製錬では硫化鉱が対象となると予想され、浸出工程だけでなくSx工程(溶媒抽出)でも大きな挑戦となる。」と述べており、新規技術の研究開発が活発な印象を受けた。

以下、主な発表内容と「Albion process」に関するワークショップ概要について記す。

1.主な発表内容

(1)The Future of Hydrometallurgy Challenges and Opportunities
(María de la Luz Osses, Director of Hydrometallurgical Processes, CODELCO,チリ)

CODELCOの銅カソード生産では現在、湿式製錬由来が約25%を占める。しかし、処理できる酸化銅の品位低下と資源の枯渇により、新規プロジェクトがなければ今後10年間でその割合は2%になると予測されている。それに伴い、湿式製錬での硫酸使用量は激減する。

しかし、硫化鉱の乾式処理による生産はほぼ維持されることから、このままでは硫酸処理が問題となる。そのため、CODELCOの各プロジェクト(Gabriela Mistral、Radomiro Tomic、Salvador、Ministro Hales、Chuquicamata)から出る選鉱尾鉱、浸出残渣やスラグなどの資源化や、硫化鉱の湿式処理効率を改善するための塩化物浸出、あるいはIn situリーチングなどの技術開発を進めることが重要である。

例えば、CODELCO各Divisionにて確認されている資源量の中で湿式処理可能な鉱石を処理することで、今後10年間、湿式製錬由来の銅カソード生産は全体の30%近くを維持可能としていた。

銅生産量だけでなく、銅製錬能力維持のためにも湿式処理を維持していくというCODELCOの使命感が伺える発表であった。

(2)Dump Leaching at Quebrada Blanca(Hector Lizama氏, Compañía Minera Teck Quebrada Blanca社, チリ)

Quebrada BlancaにおけるROM Dump leachingの浸出機構に関する発表

Quebrada Blanca社では、Sequential assay(硫酸とシアン化物による段階浸出による浸出可能な銅量を分析する手法)で浸出可能な銅品位0.35%以上の鉱石をHeap leaching(破砕、アグロメレーション)により、また、0.15~0.35%をDump leaching(ROM)により処理した上で、0.15%未満はズリとしてきた。Heap leachingによる処理は2016年に終了し、以後、全量Dump leaching処理している。Dump leachingによる銅回収率は67%(720日間)とHeap leachingの75%(450日間)に近く、日数が多くかかるが非常に高い数値であった(図1)。

1m3の容器を使った模擬Dump leaching試験では、粒度の大きい鉱石(粒径6.3mm以上)が多いほど、また、積上げ高さが高いほど浸出速度は遅かった。一方で、浸出が進むとP80(73mm)は小さくなり、粒径6.3mm以下の鉱石が占める割合は増えた(図2)。このことから、浸出が進むにつれて、粒度は小さくなっていると考えられた。

浸出前後の銅品位は各粒度で全体的に低下していたが、予想に反して、浸出が進んでも銅全体に占める6.3mm以下の鉱石中の銅割合はほぼ変わらない一方、粒度152mm以上に含まれる銅割合は減っていた(図3)。

以上から、浸出中に大きな鉱石が堆積している鉱石層の中で小さくなることで、銅浸出に有利な小さな鉱石が供給され(図4)、当初予想より大きな銅浸出率になっていると結論していた。

浸出性に劣る粒度の大きい鉱石が浸出中に小さくなり、結果として銅浸出が維持されるとしていたが、仮にそれが事実だとしても、脈石の組成に依存すると思われ、Dump leaching一般の浸出機構ではなく1事例と考えるべきだろう。

 図1.Dump leaching及びHeap leaching

図1.Dump leaching及びHeap leaching

  • 図2.模擬Dump leaching試験結果

    図2.模擬Dump leaching試験結果

  • 図3.浸出による銅の粒度の分布

    図3.浸出による銅の粒度の分布


図4.ROMダンプリーチングにおける浸出機構

図4.ROMダンプリーチングにおける浸出機構

(図は講演要旨より抜粋、筆者訳)

(3)Heap Leaching Improvements Using a New Leaching Aid Reagent(Hector Yáñez氏, BASF社, チリ)

浸出液の表面張力と鉱石との接触角を小さくする薬剤(LixTRA™、図5)の効果に関する発表

薬剤を加えることで、リーチングに関わる2つの液層、Dynamic film(重力によって下方向に流れる層)とStatic film(鉱石粒子間に保持される層)の間の物質交換を促進し、また残渣の水分を下げる(水の使用量を減らす)効果を期待し、カラム有効性を試験した。

試験は酸化鉱と硫化鉱を混合した鉱石と硫化鉱だけの2種類(表2)を使用し、薬剤をアグロメレーション時(添加量50g/t)やリーチング時(同25g/m3)あるいは両方などの条件で加え、浸出率と残渣の水分率を調査した。

結果、鉱石によって効果が異なり、Sample2においてアグロメレーション時とリーチング時の両方で薬剤を加えた条件下では、浸出率は最大で12%向上し、残渣の水分率は13%減少した。

また、薬剤添加の溶媒抽出工程への影響をバッチ試験と連続試験で調べ、抽出効率、逆抽出効率、分離時間に影響はなかったとした。

ただし、薬剤導入前に効果を見積もることは難しい旨が言及され、現在はミニヒープにて試験を行っているとのことであった。

薬剤添加の効果が高かった鉱石は、P80の粒径が小さい一方で0.15mm以下の鉱石が少ない。通常の粉砕を行う場合にはあまり考えられない粒度分布と思われ、良い結果を示すために調整された印象がある。

しかしながら、薬剤添加だけで銅回収コストを下げることが可能となれば適用範囲は非常に広く、このような技術開発は今後も続くと考えられる。

図5.浸出液と鉱石の接触角と表面張力(講演要旨より抜粋)

図5.浸出液と鉱石の接触角と表面張力(講演要旨より抜粋)

表2.カラム試験に使用した鉱石
Ore characterization Sample 1 Sample 2
Cu T, % 1.57 0.92
Cu AS, % 0.31 0.55
P80, mm 14 9
% below 0.15 mm 20 14

(講演要旨より抜粋)

(4)Implementation of Secondary Leaching at Quebrada Blanca(Danilo Arrué, Cía. Minera Teck Quebrada Blanca, Chile)

Quebrada Blanca鉱山操業開始期の浸出残渣からの2次浸出に関する発表

Quebrada Blanca鉱山では1994年の操業開始当初、鉱石を入れ替えないStatic Heapによって二次硫化鉱を処理していたが、1998年から2段積み上げたStatic Heapの上からDynamic Heapによる操業に転換した。下層2段のStatic Heapでは銅品位の高い鉱石を処理していたことから、かなりの銅が残っており、その量は約37千t(金属銅量、71.1万m2の範囲の鉱石16.8百万t、銅品位0.22%)と見積もられている。二次浸出として、このStatic HeapからのIn situリーチングの手法による銅回収を試みた。

銅回収の方法は、Dynamic Heap上でStatic Heapまで届くよう縦穴を掘り、配管を挿してSx後のRaffinate液を注入し、Static Heapの排水システムでPLSを回収する(図6)。ただ、二次硫化鉱の浸出には酸化剤である三価鉄イオンが必要であり、二次硫化鉱と反応後に還元された二価鉄イオンを酸化する必要がある。そのため、Raffinate液の注入を2週間行った後、2週間は注入を行わずにPLSを排出させることで上部から空気がStatic Heapに取り込まれるよう、Raffinate注入用配管には空気取り込み用のバルブが付いている。

パイロット試験を3.2千m2の範囲の鉱石59千t(銅品位0.43%)を対象に行ったところ、良好な結果を得られた。商業化規模として60千m2の範囲の鉱石1.2百万t(銅品位0.26%)についても試験したところ、銅回収率は両試験とも30%であり、浸出は単位鉱石量あたりの浸出液注入量に依存した。問題点としては、排出口が偏りPLSの20%が一つの排出口から排出されるなど排水性が悪く(図7)、その結果鉱石中の水位が上昇してしまうために注入する液量を抑えることや法面の補強が必要になることが挙げられていた。

時間が経過し圧密されているとはいえ、破砕・堆積された鉱石に対するリーチングでも液の浸透・排出に課題があることが示された。しかし、リーチング処理が始まった当初の鉱石は高品位の鉱石が多いことから、今後は他鉱山でも同様の処理が試みられると考えられる。

図6.Quebrada Branca二次リーチング概略図(講演要旨より抜粋)

図6.Quebrada Branca二次リーチング概略図(講演要旨より抜粋)

図7.ヒープ上部(左)と下部(右)の比抵抗トモグラフィー(講演要旨より抜粋)

図7.ヒープ上部(左)と下部(右)の比抵抗トモグラフィー(講演要旨より抜粋)

(5)Evaluation of Changes in the Design of Solvent Extraction After Implementation of Leaching Process of Copper in Supergenes(Roberto Gutiérrez氏, Minera Spence, BHP, チリ)

二次富化帯の処理に伴い塩化ナトリウムを添加したことによるPLS中の塩化物イオンの増大に対するSx工程の対処に関する発表

Spence鉱山では、2015年より二次富化帯の処理に伴い、アグロメレーション時に塩化ナトリウムを加えた処理(Full Sal Process)を始めた。これにより、銅回収までの時間短縮と回収率の改善が期待されたが、溶媒抽出工程へ入る塩化物イオンが増えることで電解工程の腐食が懸念されたため、抽出後の既存の洗浄槽の前に予備洗浄槽1つを導入した。また、次の抽出工程において、抽出剤として従来のcetoximeに一部aldoximeを混ぜた(aldoximeは銅を抽出しやすいが、銅の逆抽出が不完全となり易い)。

以上の対応で、現在のPLSは塩化物イオン濃度40g/L未満と、当初想定した70~80g/Lには達していないが、現状で電解工程に問題なく(塩化物イオン濃度30ppm未満で電解できている)、2018年は過去最高の銅生産量を達成したとのことだった。

硫化鉱リーチングに塩の添加が効果的とされているが、Spence鉱山のような大規模鉱山でも検討され、実操業に適用されていた。

本発表で想定していた塩化物イオン濃度70~80g/Lは、現在幾つかの鉱山の酸化鉱リーチングで使われている海水の塩化物イオン濃度(20g/L前後)よりもかなり高いが、適切に前処理することで従来のSxEw工程が使えることがわかった。

(6)Big Data Analysis System in Copper Electrolytic Refineries for Improvement of Automation and Operational Management(Juan Carlos Salas氏, Pontificia Universidad Católica de Chile, チリ)

Chuquicamata鉱山の銅電解精製工場におけるRecurrent Neural Network(RNN)を用いた不良カソード率、電流効率、不純物含有率(銀)の予測モデルの構築に関する発表

近年、銅電解工場の機械化、自動化がトレンドだが、工程管理の自動化は低水準である。安定操業と品質向上を通した生産効率改善を目指して、Chuquicamata鉱山の操業データを利用し、ディープラーニングの一種であるRNNを用いて、不良カソード率、電流効率、不純物含有率(銀)を予測するモデルを構築した。将来的には、操業中に工程管理について助言するシステムの開発を目指している。

説明変数は、ラボデータとしてアノード組成、電解液組成、操業データとして水の流量、硫酸流量、液温、ショートの有無、電流が入力され、目的変数は不良カソード率、電流効率、不純物含有率(銀)である(図8)。目的変数が得られるのは電解精製が終わる8~13日後だが、説明変数はセンサーやラボサンプルから日々得られ、RNNは説明変数を目的変数の予測に使う。構築したモデルの評価を2013~2018年の操業データからランダムに選んだ288槽の操業データを用いて検証した。

その結果、電解精製が進み、予測に使えるデータが増えるに従い、モデルによる予測値が教師データ(目的変数の値)に収斂した(図9)。予測の精度を評価するため、予測値と教師データの決定係数と正規化平均平方二乗誤差を見ると、不良カソード率、電流効率、不純物含有率(銀)共に良い精度であり、特に不良カソード率の精度が良好だった。

RNNの構造(層の深さなど)やモデル作成に使用したデータ数の言及がなく、どのようにBig Dataを活用したかの詳細が不明であった。しかし、今後は鉱山ドラックの自動走行などだけでなく、工場操業においてもAIの活用が進んでいくことが予想され、このような取り組みは増えていくものと思われる。

 図8.予測モデルのスキーム(講演要旨より抜粋)

図8.予測モデルのスキーム(講演要旨より抜粋)

図9.予測精度の変化(講演要旨より抜粋)

図9.予測精度の変化(講演要旨より抜粋)

(7)Kell Hydrometallurgical Extraction of Precious and Base Metals from Sulfide Concentrates
(Lisa Smith, Lifezone;Mauritius)

ベースメタル精鉱に含まれる貴金属を回収する湿式製錬法の1つ「Kell process」に関する発表

製錬は、鉱石を浮選選鉱後、まずは硫酸と酸素により高圧環境下で酸化させて、硫酸リーチングを行い、ベースメタルを溶解・回収する。次に残渣に対し塩素と塩酸によりリーチングを行うことで貴金属を溶解させ回収するものである(図10)。このプロセスは特に南部アフリカに賦存するプラチナ鉱石に対し非常に効果的に白金族元素を回収できるとされている。

発表ではPilanesberg白金鉱山の例を挙げており、ここでは年間11万tのPGM精鉱をKell processにより処理するプラント建設についてBFSが行われ、ポジティブな結果が得られていることを報告していた。

質疑応答ではEnargiteの処理の可否について質問があり、実例は少ないようだが、原理的にはScorodite化が可能のため、含ヒ素銅鉱に対しても有用なプロセスであることを強調していた。

Kell processは1998年に南アで特許出願されており、2000年代に複数のプロジェクトにおいてパイロット試験が行われているなど、銅・ニッケルや白金族の処理法としてはすでに知られている技術である。一方で、実操業では導入が進んでいないこと、また銅が主な資源であるチリにおいて知名度を上げるため、同技術のプロモーションとして発表をしたものと思われる。銅リーチングの発表が多い中、白金族のリーチングについてはこの発表の他、後述Albion processの1件のみだった。

図10.Kell processフロー(講演要旨より抜粋)

図10.Kell processフロー(講演要旨より抜粋)

(8)Pretreatment:A Stage Favouring Copper Extraction from Chalcopyrite in Chloride-Acid-Nitrate Media(Pía Hernández, Department of Chemical Engineering and Mineral Processes, Universidad de Antofagasta;Chile)

黄銅鉱主体の銅鉱石に対し、硝酸イオンと塩化物イオンの混合系酸性溶液により前処理「Curing」を行った銅リーチングに関する発表

硝酸塩はカリーチ(表層に生じたCaCO3+MgCO3により膠結された土壌1)由来のもの、塩化物イオンは海水やかん水を供給源として想定されている。安価で豊富に手に入る硝酸イオン、塩化物イオンを利用した黄銅鉱主体の銅鉱石のリーチングについては、過去にHernández氏により45℃7日間で80%の浸出率を達成したことを報告している(ビーカースケール)。銅の浸出速度を高めるための前処理であるCuring(日本語では馴化または熟成)は、少量の酸と鉱石を混合して静置することで、鉱石の酸化を促すものである。硫酸による事例が多いが、今回は硝酸イオンと塩化物イオンの混合系酸性溶液をCuringに適用し、その効果を確認する内容であった。

鉱石試料をCuring後に水道水で2時間撹拌したときの浸出率で評価しており、Curingを40℃45日、12kgNaCl/t、20kgNaNO3/t、70%H2SO4溶液を含水率15%になるよう添加した条件で行ったとき、浸出率が最大の73.8%となった(図11)。

溶出対象が黄銅鉱であることを考えると、浸出時間がわずか2時間で70%を超えるデータは非常に興味深かった。一方、実操業を考えるとヒープリーチングに近い環境での試験が必要となり、ビーカースケールの試験結果はヒープにそのまま当てはまらない。この発表の試験では2時間の浸出であったが、インペラで撹拌させた環境での浸出であったため、スケールアップさせたときの試験結果やコストが気になるところである。

図11.浸出率とCuringの時間の関係(講演要旨より抜粋)

図11.浸出率とCuringの時間の関係(講演要旨より抜粋)

(9)The impact of redox potential on the surface sulfide species of chalcopyrite on sulfate and chloride leaching systems(Miao Chen, CSIRO Mineral Resources;Australia)

黄銅鉱の溶解反応について、S K-edge XANESによる表面分析を行って評価した発表

既往の報告の通り、塩化物イオンの存在は黄銅鉱の浸出に効果的であることを、表面分析結果から示した。また、酸化還元電位と表面の元素硫黄の量は相関があり、80℃の条件下では元素硫黄は硫酸イオンにまで酸化が進むことを報告した。

この報告において、ヒープのモニタリングにSENSEIという装置が使用されていた。この装置はpHやORP、温度、導電率、圧力などが測定可能であるが、最大の特徴として装置は塩化カリウム溶液などの液体が不使用のため、堅牢で小型である。これにより最大20気圧まで分析が可能で、校正の頻度も従来よりも少なくてすむ。会場で開発者の1人に話を伺うことができたが、元々は地下水のモニタリング用として開発されたもので、それを今回ヒープリーチングに応用したそうである。筆者は、過去に鉱害防止の事業の一環で休廃止鉱山堆積場の地下水調査に従事した経験があるが、この時に使用したセンサーは水酸化鉄による汚染で計測器のメンテナンスが大変だった記憶がある。SENSEIは凹凸が少ないことからも、メンテナンス性は優れていると思われる。

写真2.SENSEI

写真2.SENSEI

2.「Albion process」に関するワークショップ概要

大会期間中の2019年6月21日13~14時には、「Albion process」に関するワークショップが同会場にて開催された。以下に概要を記す。

Albion ProcessTM Atmospheric Leaching(Glenn Stieper, Glencore Technology; Australia)

IsaMillにより精鉱を微粉砕し、大気圧下で溶解させるプロセス「Albion process」に関するワークショップ。

IsaMillによりP80を10~20µm程度にすることで、目的鉱物の比表面積を増大できるため、従来では高圧環境下で溶解が必要な精鉱に対しても大気圧下で溶解が可能となる。

浸出工程では硫酸と酸素が必要だが、硫酸は電解採取工程の電解液を再利用することで消費量を抑えることができる。また、発熱反応のため、加熱する必要がない。(図12)

上記の特徴より、あるエンジニアリング会社の試算ではHPAL(High Pressure Acid Leach)よりもコストメリットがあるとされた。

本ワークショップは事前申し込みが必要で、当初の参加予定者は25人だった模様であるが昼食時間に行われたことや本会議の発表の部屋と離れていたこともあり、当日の聴衆は7名と小規模で開催された。そのため、逆に発表者と聴衆の距離も非常に近いワークショップとなり、発表中に適宜質疑応答が可能な状態だった。発表者に「IzaMillの初期費用は一般に高いと言われており、粉砕にもエネルギーを使うことから、本当にコストメリットはあるか」を尋ねたところ、「従来よりも高い回収率が得られ、また浸出工程で高圧を必要とせず安全性も高いことから、メリットの方が大きい」と回答された。また、このプロセスはPGMを含む銅ニッケル精鉱にも適用可能で、アメリカでそのプロジェクトが行われているそうである。

図12.含金銅精鉱のAlbion processによる処理例(講演発表スライドより)

図12.含金銅精鉱のAlbion processによる処理例(講演発表スライドより)

おわりに

本大会は、湿式製錬がテーマでありながらも、チリの団体主催によるチリにおける開催ということもあり、ほとんどの発表が銅に関するものであった。チリでは、自国の銅乾式製錬から発生する硫酸の消費を促進する必要があるという事情があり、現在は主に酸化鉱、二次硫化鉱の浸出に対して硫酸を消費しているものの、それらの資源量の減少が見込まれるため、積極的に一次硫化鉱の湿式製錬技術の開発が産学で進められている様子であった。最新の技術動向としては、塩化物イオンを利用した浸出に関心が高まっていた。

当課でも湿式製錬技術開発を行っていることから、今後も引き続きチリの技術開発動向に注目していきたい。


  1. 石油技術協会誌Vol40No.5p. 246-267(1975年)
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