閉じる

報告書&レポート

2019年11月13日 金属資源技術部 神谷太郎、今野広祐、ロンドン事務所 福田光紀、遊佐茂雄、倉田清香
19-29

Third Minor Metal Symposium参加報告

<金属資源技術部 神谷太郎、今野広祐、
ロンドン事務所 福田光紀、遊佐茂雄、倉田清香 報告>

はじめに

近年、銅原料中の不純物、特にヒ素の増加が問題となっており、JOGMECでも銅原料中のヒ素を低減するための技術開発を行っている。この問題は我が国のみならず、世界的な関心事であり、2017年に第1回の銅原料中の不純物に関するシンポジウムがチリEcometales社の主催により、サンティアゴで開催され、2018年にはJOGMECが主催し、東京で第2回のシンポジウムを開催した。今般、第3回のシンポジウムが、ヒ素のみならず、その他微量金属への対処なども含め、ドイツの銅製錬会社であるAurubis社の主催により、2019年10月21日にポルトガル・リスボンで開催された。シンポジウムには各国から75名以上が参加し、パネルディスカッションなどで活発な討議が行われた。

写真.シンポジウムの様子

写真.シンポジウムの様子

シンポジウムは4つのパートに分かれており、1.鉱山側の視点、2.製錬側の視点、3.アカデミアの視点、4.エンジニアリング会社からの視点、で発表及びディスカッションが行なわれた。

最初に国際銅研究会の経済・環境部長のRisopatron氏から近年の銅生産における不純物に関するトピックスについて講演があった。同氏によれば、鉱山における銅鉱石の銅品位は低下傾向にあるが、ヒ素濃度は上昇している。このような中、中国の技術が進展しており、従来の自溶炉に代わって、Bath smeltingによる生産が増え、銅の生産量も増大している。その上で、銅製錬におけるminor metalの挙動に関する統計の必要性が提案された。

1.鉱山側の視点

豪州の鉱業コンサルタント会社であるMineralis社のJoe Pease氏から、選鉱によるヒ素低減技術について講演があった。同氏によれば、銅精鉱の40%以上は銅鉱物ではなく、新浮選技術として、銅精鉱を全て再磨鉱して、Froth washingを行う手法がある。Salobo鉱山(ブラジル)、Prominent Hill鉱山(豪州)、Carrapateena鉱山(豪州)、Lumwana鉱山(ザンビア)などで採用されている。この手法については、再磨鉱を行うことに対する経済性、不純物を取り除くことに対する市場からみた必要性、微粉の取り扱いなどの面で欠点がある。同氏は、不純物は鉱山サイトに貯蔵するのがもっとも良いとし、ブレンディングは根本的な解決策ではなく、不純物を低減できる選鉱技術により、新たな鉱山開発にも繋がるとした。

Pease氏の講演ののち、Lundin Mining社、Buenaventura社、Minmetals UK社、Rio Tintoから講演があり、ヒ素だけでなく、水銀も問題となっていることなどが挙げられた。

2.製錬側の視点

Helmholtz Institute Freiberg for Resource TechnologyのMarkus Reuter博士から鉛製錬の重要性について講演があった。鉛は有害物質とみなされることが多いが、鉛はIn、Bi、Teといったクリティカルメタルに対するコレクターメタルとなるとともに、他の有用金属の回収にも重要な役割を果たしているため、鉛の使用を禁ずるのではなく、上手に使っていくことが重要であるとした。

Reuter博士の講演ののち、Peñoles社、Aurubis社、JX金属、Atlantic Copper社から各社における取り組みについて講演があり、ヒ素については、鉱山側と製錬側でその処理コストをシェアすることが必要などとの提案があった。

3.アカデミアの視点

チリのキリスト教皇大学(Pontificia Universidad Católica)のJuan Carlos Salas教授の講演があった。同教授は長い間企業で働いたのち、大学教授となったが、企業で働いていた時に抱いていた印象と実際に大学で行っていることはかなり違うとし、大学の役割について明確にすべきとの見解を示した。

この後、4人の大学教授などから講演があり、それぞれの研究機関の取り組みなどを講演された。

4.不純物処理を実施するプラントからの視点

プラントメーカーであるOutotec社、Hatch社、チリで含ヒ素煙灰処理などを行っているEcometales社から、ヒ素処理の実例について紹介があった。

おわりに

最後にシンポジウムを主催したAurubis社からシンポジウムの総括が行われ、鉱山側と製錬側の対話の必要性、産業界からの明確なロードマップ作成の必要性、次世代の技術者育成の必要性、不純物残渣の取り扱いに関する標準化の必要性、政府などによる規制よりも民間による透明性の必要性、が提案された。

銅鉱石の採掘に伴い不可避的に産出されるヒ素を、山元と製錬所のどちらで処理するかは、論点のひとつであるが、今回のシンポジウムでは、ヒ素の拡散などを考慮すると山元で処理するほうが現実的という方向であったように感じられた。ただし、その処理費用を鉱山側と製錬側でどのように負担するかという点に関しては、まだ方向性が見えていない。本シンポジウムのような機会を通じて、共通認識が深まっていくことが望まれる。

ページトップへ