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報告書&レポート

2019年11月18日 ジャカルタ 事務所 南博志、金属企画部調査課 柴原理沙
19-31

インドネシア政府によるニッケル鉱石輸出禁止前倒しの経緯と今後の影響

―Asian Nickel 2019より―

<ジャカルタ事務所 南博志、金属企画部調査課 柴原理沙 報告>

はじめに

2019年8月30日、インドネシアのIgnasius Jonanエネルギー鉱物資源大臣(当時)がニッケル鉱石を2020年1月より輸出禁止とする改正大臣規則に署名し、制定した。インドネシア政府は2017年に未加工鉱物の輸出禁止を条件付きで緩和したが、その際にこの緩和措置は2022年1月までの期限付きと規定されていたため、今般の規則改正により、予定より2年前倒しでニッケル鉱石の全面輸出禁止の措置が図られることとなった。2022年1月からの全面輸出禁止措置は規定されていたものの、現状新規国内製錬所の建設が政府の意図どおりに進捗していない等の現状に鑑みると、予測できない政策変更であったため、今般の政府による発表は多くの関係者に驚きをもって受け止められた。

LME(ロンドン金属取引所)におけるニッケル価格は、ニッケル鉱石最大生産国である同国における輸出禁止に関する報道や関連大臣の発言等により高騰していたところ、さらに上記のとおり輸出禁止前倒しが正式に決定したことから、世界的な供給減少懸念が価格を押し上げ、9月2日には約5年ぶりの高値となる18,625US$/tをつけた。現在(11月15日時点)は14,990US$/tまで下がっているものの、依然として高値水準を維持している。同国政府による政策変更がニッケル価格に大きなインパクトを与えたことが窺える。

そのような中、2019年9月11日から12日にかけて、インドネシア・ジャカルタにおいてFastmarkets社主催Asian Nickel 2019が開催された。参加者は、鉱山会社・自動車会社・電池会社・リサーチ会社等から約80名(推定)。インドネシア政府による輸出禁止前倒し決定の直後であったため、その影響について関心が高まる中での開催となった。

本稿では、ニッケル鉱石輸出禁止前倒しの経緯について整理するとともに、Asian Nickel 2019で言及された、同政策の変更による今後のニッケル需給への影響等について考察する。

1.ニッケル鉱石輸出禁止前倒しに至るまでの経緯

1.1 2009年鉱業法改正から2020年鉱石輸出再禁止までの経緯概要

表1に、今般のインドネシア政府によるニッケル鉱石輸出禁止前倒しに至るまでの経緯を整理した。

2009年、鉱業権の鉱業事業許可制度への一本化や国内での生産物高付加価値化の義務付け等の内容を含む新鉱業法が制定された。新鉱業法では、鉱物資源の高付加価値化について5年以内に実現することが定められていた。それに基づき2014年、未加工鉱物輸出の全面的禁止を定めた大臣令が発布された。しかしながら、鉱石類の輸出禁止により複数の鉱山が減産や操業休止・閉山に追い込まれ、雇用喪失や財政悪化といった事態が生じたため、インドネシア政府は2017年1月、未加工鉱物の輸出禁止を条件付きで緩和し、品位1.7%未満のニッケル鉱石については5年間(2022年1月まで)輸出可能とする政省令を発布した。同国政府としては、鉱石輸出による収入を原資に国内企業が新規製錬所建設を進めることへの期待、また、海外からの製錬所等への投資の呼び込み促進の意図等を踏まえての判断だったとみられている。

2017年に条件付きで鉱石輸出禁止措置を緩和したものの、現在に至るまで従来同国政府が目的としていた国内製錬所建設の進捗等による高付加価値化は意図どおりには進展していないことから、今般の輸出禁止前倒しは、これら建設促進のための刺激策の一環であると推測される。

表1.ニッケル鉱石輸出禁止前倒しまでの経緯
2009年 インドネシア鉱業法改正
2014年 未加工鉱物の輸出を禁止する政令制定
2017年 未加工鉱物の輸出禁止を条件付きで緩和する政省令を制定・改正
(2022年1月まで品位1.7%未満のニッケル鉱石が輸出可能に)
2019年8月 ニッケル鉱石輸出禁止を2年前倒し、2020年1月からとする改正大臣規則に署名し、制定
2020年1月 ニッケル鉱石輸出禁止実施予定
(対象はニッケル鉱石のみで、銅鉱石やボーキサイトについては言及されていない)

1.2 2019年7月以降の動き

図1に、2019年6月以降のLMEニッケル価格と在庫の推移を図示する。また、表2に同年7月以降の主な報道情報を示す。

2019年7月頃より、ニッケル鉱石輸出禁止に関する報道が散見されるようになったが、この時点では、2017年の政省令に定められていたように、エネルギー鉱物資源省が2022年からの輸出禁止の実行に言及した(再確認した)というものであり、前倒しに関する報道ではなかった。真新しいニュースではなかったものの、この報道はニッケル市場に影響を与え、7月18日には7月初めと比較して約16%高い14,685US$/tの高値を付けた。2019年8月に入ってからは、ニッケル鉱石輸出禁止の前倒しに関する関連大臣の発言等が報道されるようになり、遂には8月30日に正式に改正大臣規則が署名され、同規則は制定された。

また、2019年10月29日には、Bahlil Lahadalia投資調整庁長官がインドネシア国内のニッケル生産民間団体との間で、輸出禁止をさらに2か月前倒しして同日よりニッケル鉱石の輸出停止を実行することで合意したとの報道があった(※但し、実際には法的な根拠は無いものであった)。これにより一時的に市場は混乱を見せたが、翌30日、Luhut Pandjaitan海事・投資調整大臣は、措置は違法輸出を取り締まる実態調査のため、1~2週間ほどニッケル鉱石の輸出を停止するものであるとして、即座に修正した。また、現行規則どおりに2020年1月1日から輸出禁止措置を発動することに変わりはないとも述べた。Arifin Tasrif現エネルギー鉱物資源大臣も、この一時停止期間中は新たな輸出許可を与えない方針を表明した。この一時的な輸出停止措置には、8月から9月にかけてインドネシアから中国向けの鉱石輸出量が急増し、違法輸出の疑いが生まれてくる状況になったことが背景にあるとみられる。なお、この措置に際して国内のニッケル業界団体は、国内向けの鉱石販売価格を輸出価格と同水準に設定する等の条件に合意したと報道されている。

図1.LMEニッケル価格・在庫推移(2019年6月3日~11月15日)

図1.LMEニッケル価格・在庫推移(2019年6月3日~11月15日)

表2.輸出禁止前倒しに至る2019年7月以降の報道情報
2019年7月上旬 政府高官がインドネシア議会で2022年からの鉱石輸出禁止再開に言及
8月8日 インドネシア・ニッケル鉱業協会(APNI)は鉱物の輸出禁止の前倒しをしないよう政府に要望
8月9日 Enggartiasto Lukita商業大臣(当時)が政府内で鉱石輸出禁止を繰り上げ実施する可能性を議論していることに言及
8月13日 Luhut Pandjaitan海事担当調整大臣(当時は海事のみ担当)は、Joko Widodo大統領が近く鉱石輸出禁止の前倒しの是非を決定するとの見通しを示す
8月30日 Ignasius Jonanエネルギー鉱物資源大臣(当時)が2020年1月から輸出禁止すると定めた改正大臣規則に署名し、制定
9月2日 エネルギー鉱物資源省Bambang Gatot Ariyono石炭鉱物総局長が2020年1月1日からの低品位ニッケル鉱石の再輸出禁止を公式発表
10月29~30日 鉱石輸出禁止をさらに2か月前倒しと報道されたが、Luhut Pandjaitan海事・投資調整大臣等は、これは一時的輸出停止措置であり再輸出禁止が2020年1月1日であることに変更はないと修正

(出典:各種報道情報、JOGMECニュース・フラッシュを基に筆者作成)

2.輸出禁止前倒しの背景

今般の輸出禁止前倒しは、2014年当時とは異なり、ニッケル鉱石のみが対象となっている(洗浄工程後ボーキサイトの輸出禁止前倒しも検討されているとの報道があるが、11月15日時点では正式には発表されていない)。この理由・背景について、インドネシア政府による発表内容を踏まえ、以下のように整理する。

(1)国内製錬所建設の進捗加速への圧力

インドネシア国内には11の製錬所が稼働中であり、さらに25の製錬所が建設中であると発表されている。しかしながら、前章で述べたように、政府の想定通りには製錬所建設は進捗していない。製錬所建設の進捗が遅々として進まない現状を見かねた政府が、製錬所建設に拍車をかけるために鉱石輸出禁止を前倒しという決断に至ったのではないかとの見方がある。

また、同国政府は輸出禁止前倒しを正式発表する直前(8月26日)に、製錬所建設計画に関する大臣通達を発布した。同通達では、新規製錬所建設計画の進捗要件を満たしていない事業主に対して罰金を科す等の細則が規定された。同通達と併せてニッケル鉱石の輸出禁止を前倒しにすることで、製錬所の建設を本格的に進展させたいという政府の意図が表れていると見られる。

(2)国内ニッケル埋蔵量に限りがあるとの認識

インドネシア政府は、同国におけるニッケルの確定鉱石埋蔵量(Proven reserves)は698百万tであり、新たな探鉱活動がなければインドネシア国内の製錬所で処理できるニッケル鉱石の量は7.3年分しかないとコメントしている。2019年9月には、エネルギー鉱物資源省が鉱物資源を採掘する企業に対し、鉱物資源探査を義務づける内容の新規制を準備しているとの報道があり、政府として新たな探鉱開発を促進し埋蔵量を増加させたいという意図があるとみられる。

埋蔵量が限られているため、当初定めていた2022年まで高付加価値化の実現を待てない状況にあることが輸出禁止前倒しの1つの理由として説明されている一方で、埋蔵量が限られている点をアナウンスすることにより、政府が本来意図する国内製錬所建設の投資に対する意欲減退に繋がるのではないかという見方もある。

(3)国内EV産業発展戦略の中でEV原料としてのニッケル確保および対外投資の呼び込み

2019年8月12日付で、電気自動車(EV)開発促進に関する大統領令(No.55)が施行された。同大統領令では、インドネシアをEV向けリチウムイオン電池(LIB)の生産拠点として発展させることを目的とし、具体的な目標として、国産EV構成部品の現地調達率を四輪車は2021年までに35%以上(2030年以降に80%以上)、二輪・三輪車は2023年までに40%以上(2026年以降に80%以上)とすることが掲げられている。世界的にEVの普及が見込まれ、LIBの正極材料として用いられるニッケルへの注目が高まっている中、ニッケル資源を有するインドネシアにおいてEV構成部品を生産することで、高付加価値製品の輸出による外貨獲得・経済発展が期待できるという目論見である。

また、鉱石輸出を禁止にすることで、インドネシアにおいてさらなるLIB工場建設等の投資を呼び込みたいという意図もある。実際、インドネシアではPT QMB(中国GEM社、青山集団、阪和興業等が参画)によってLIB材料の工場が建設中である。さらに、韓LG Chemical社や他の中国企業、また国営石油会社PT PertaminaまでもがLIB工場建設を計画しているとの報道もあり、現在のところ上記意図に沿って進んでいるものと見られる。

インドネシア政府による最大の狙いは、国内製錬所建設を進展させることにあると思われるが、それに加えて昨今のEVブームを受けて、国内ニッケル資源を活用した新規分野での利益獲得に向けた期待が高まったことが、今般の輸出禁止前倒しの背景にあるものと考えられる。

なお、輸出禁止前倒しについて報道がなされてから、公式発表に至るまでの期間が短く、非常に速いスピードで前倒しの決断に至ったと感じられた。本決断の背景としては、あくまで推測の域は出ないものの、2019年10月20日にはJoko Widodo大統領第2期政権の新内閣発足が予定されていたことから、第2期政権の円滑なスタートのための国民へのアピール材料として用いられた可能性もあるように感じられる(実際には新閣僚人事発表・任命は10月23日となった)。

3.ニッケル需給への影響-Asian Nickel 2019講演者の見解

ニッケル鉱石輸出禁止の2年前倒しによる今後のニッケル需給への影響について、ジャカルタで開催されたAsian Nickel 2019の中で言及された内容に基づき考察する。

大きくは、ニッケル価格への影響と、中国向けの鉱石輸出国としてフィリピンがインドネシアに代替するポテンシャルがどの程度あるのか、という2点に関心が集まった。

ニッケル価格については上昇を見込むという内容の講演が大勢を占め、LMEやSHFE(上海先物取引所)におけるニッケル在庫が減少していることに加えて、インドネシアによる鉱石輸出禁止前倒しを踏まえると今後も上昇傾向が続くとの見方が多かった。

また、フィリピンの生産については、インドネシアによる輸出分を完全に補填することは難しいとの見解が示された。インドネシア産鉱石のほとんどは中国向けに輸出されており、2014年にインドネシアが鉱石輸出を全面禁止にした際には、フィリピンが中国向けの鉱石輸出を増やすことで補填した。しかし、昨今、フィリピンでは環境規制の強化による採掘面積の制限といった問題が生じているため、今回はインドネシアの輸出分を一部しか補填できないものと推測されている。

以下、Asian Nickel 2019におけるいくつかの講演内容を紹介する。

3.1 (講演)Will there be sufficient nickel for the battery market to support the surge in global EVs and ESS demand? What role will Asia play?

(講演者:William Adams氏, Fastmarkets社)

インドネシア政府による鉱石輸出禁止の前倒しによる影響として考えられるものは以下の通りである。

表3.ニッケル鉱石輸出禁止前倒しにより考えられる影響・課題
ポジティブな影響 今後の課題
  • ニッケル価格が上昇し、NPI(ニッケル銑鉄)やHPALプロジェクトへの投資が促進される
  • 高ニッケル価格+コバルト価格の反発でニッケル・コバルトプロジェクトへの投資が促進される
  • 中国がインドネシアからの輸入鉱石(240千t、Ni量)分を補填できるか
  • 価格が上昇しても、新規プロジェクトが立ち上がるまでにはタイムラグがある
  • Class1ニッケルの在庫の減少がさらに加速すると、バッテリー産業への供給余力がなくなる

(出典:Asian Nickel 2019におけるFastmarkets社講演資料を基に筆者作成)

ニッケル価格の上昇はプロジェクトへの投資を加速させるが、プロジェクトは順調に進展するものではない。特にHPAL製法(品位の低い酸化鉱からニッケルを回収する技術)は技術的に難易度が高く、プロジェクトの遅延や生産能力に達しないことが度々発生するため、供給増加はすぐには見込めない。新規HPALプロジェクトのインセンティブ価格は20,000US$/t程度であるとみている。また、インドネシアではGrasberg銅金鉱山や錫鉱山において環境規制が強化されていることから、今後ニッケル鉱山についても環境許認可のためにプロジェクトの進展が遅れる可能性がある。

3.2 (講演)Pricing: what developments in Asian markets could impact global nickel prices?

(講演者:Andy Farida氏, Commodities Research Analyst, Fastmarkets社)

ニッケル鉱石輸出禁止前倒し決定直後の9月2日のニッケル価格は18,850US$/tで、2019年初めと比較して79.1%上昇した。鉱石輸出禁止に関する報道が出る直前(6月)から比較すると62.4%の上昇となっている。2014年の鉱石輸出禁止の際にもニッケル価格は62%程上昇しており、2019年6~9月の上昇幅と同程度である。前回の鉱石輸出禁止以降、2015年にかけてニッケル価格は下落したが、この時点では、現在と違ってEV需要の拡大によってニッケル需要が増加するという見込みがなかった。フィリピンがインドネシア分を補填するほど鉱石を供給できないことに加え、EV需要が拡大していることが2014年との違いである。ステンレス鋼向けのニッケル需要が堅調に推移していることに加えてバッテリー向け需要が拡大する状況下、今般の鉱石輸出禁止が発表されたため、ニッケル価格の高止まりが継続すると考えられる。

フィリピンの鉱石生産量は2014年に増加したが、その後は減少傾向となった。Duterte大統領が環境規制強化策を講じたことも要因の一つである。2014年の時には、中国企業は鉱石輸入元をインドネシアからフィリピンに切り替えたが、2020年はフィリピンからの輸入に頼ることは難しい状況にある。

Fastmarkets社としては、2019年は64千tの供給不足となり、ニッケル平均価格は2019年13,603US$/t、2020年は16,375US$/tと予測している。

3.3 (講演)Government and regulatory update – how is the Indonesian nickel industry faring under the new presidency?

(講演者:Bill Sullivan氏, Christian Teo & Partners社他)

4月の大統領選挙で再選して以降、Joko Widodo大統領は、第1期政権では実行できなかった野心的な決断も行いやすくなっている(3期目の大統領選には立候補できないため)。同大統領は経済政策を重視しており、インドネシア政府は年7%のGDP成長を目指している。中国から東南アジア諸国、特にベトナムへの投資や生産拠点の移動が進んでおり、同大統領はインドネシアもベトナムのように海外からの投資や生産拠点の誘致の積極化を図りたいと考えている。

ニッケル鉱石輸出禁止の前倒しは、(1)製錬所建設への投資を呼び込むこと、(2)経常赤字の軽減、(3)国内製錬所で処理可能なニッケル鉱石埋蔵量の見通しをつけること、(4)EVバッテリー向けのニッケル確保により新規分野で利益を得ること、の4点が背景にあると考えられる。

インドネシアでは過去12か月間、経常赤字の状態が続いている。商業省は、鉱石輸出禁止が経常赤字の改善につながるかどうか懐疑的な見方を示している。

今回の決定は、これまで条件を遵守してニッケル鉱石を輸出してきた会社にとっては不公平な決断である。ニッケル鉱石生産者にとっては国内価格以外の選択肢がなくなる(※講演時における講演者の意見であるため、10月29日以降、第1章で述べたとおり現状とは異なる)。

また、今般の輸出禁止前倒しによってインドネシア政府の主張の一貫性のなさが露呈したため、政府に対する評判が下がる可能性がある。高付加価値化を達成したければ、アプローチの方法に改善の余地があるのではないか。

おわりに

従前2022年から鉱石輸出禁止と定めていた方針を2年前倒しするなど、インドネシア政府による方針が変更されることは、対外投資を呼び込む上でネガティブに働く懸念がある。そういったリスクを考慮した上でも今回の輸出禁止前倒しに踏み切ったということは、同国政府は鉱業による収入の増加に関してよっぽど焦りがあるのだろうか。あるいは、自らが国民から支持を得るための手段として半ば資源ナショナリズムの観点で鉱物資源確保という政策実行を優先させたのであろうか。いずれにせよ、インドネシア政府は現在の高付加価値化政策についての自己評価も高く、その揺るぎない方向性を迅速な政策の実行という形で具体化させている。現時点で世界最大のニッケル生産量・埋蔵量を誇るインドネシアの政策動向には、今後も注視が必要である。

Asian Nickel 2019では、インドネシアから多くの鉱石を輸入してきた中国企業がどういった対応をとるかという論点が多く見られた。日系企業に関しては、2014年に一旦鉱石輸出全面禁止になった際に、鉱石の調達先をインドネシアからフィリピンやニューカレドニアに変えているため、2018年のインドネシアからの鉱石輸入量はほぼゼロに近く、今般の輸出禁止前倒しによる鉱石調達に対する影響は当面ないとみられる。しかしながら、中国との鉱石調達競争となった場合に、影響が波及する可能性はある。

今般の輸出禁止前倒しの影響もあるのか、LME在庫は減少の一途をたどり(中国青山集団がこの在庫の引き出しに関与しているとの報道も有り)、足元64,566t(2019年11月15日時点)と記録的な低水準となっている(図1参照)。ニッケルの主な用途であるステンレス向けの需要が中国やインドネシアを中心に堅調に伸びている中、世界的にはEV向け需要も拡大しており、ニッケルの供給不足が懸念されるとの見方が多いが、中長期的にはインドネシアから鉱石が出なくなることはニッケル市場にどのように響いてくるのか。インドネシア政府の動向をフォローするとともに、中国の需要、フィリピンからの供給等も含めて、世界的なニッケル需給・市場動向について引き続き情報収集に努めていきたい。

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