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報告書&レポート

2020年1月10日 金属企画部 調査課
20-01

2019年 金属鉱物資源をめぐる動向

<金属企画部調査課 報告>

はじめに

2019年は、米中貿易摩擦の激化や中国経済の成長鈍化を受け、資源価格はベースメタルを中心として下落傾向が続いた一方で、年央からは資源国による高付加価値化政策や計画停電の影響等による需給のタイト感から一部のレアメタルについては価格が高騰するなど、金属市場を取り巻く政治・経済動向の影響が如実に現れた一年であった。

JOGMEC金属企画部調査課では、2019年の金属鉱物資源分野における主な出来事を振り返り、その動向を以下のとおり取りまとめた。

◆ ベースメタル市場:米中貿易摩擦が再び激化や中国経済成長率は鈍化傾向により下落基調続く

2019年の資源価格は、2018年から引き続く米中貿易摩擦で揺れた。2019年当初は米中貿易摩擦の先行きに楽観的な見方が続いたものの、2019年5月以降、米国が200bUS$規模の輸入品に対しての追加関税として、税率を10%から25%に引き上げると、これに対抗して中国は6月1日に25%に引き上げる60bUS$規模の報復関税を発表するなど、米中貿易摩擦の激化に応じて資源価格も下落した。

金属資源の価格に影響を与える中国の経済動向に着目すると、2018年GDP成長率は28年ぶりの低水準となり、3月には中国全国人民代表大会にて発表された製造業に対する減税等の景気刺激策、中国人民銀行の融資促進方針、李克強首相による経済成長方針などが打ち出されたものの、四半期毎の実質GDP成長率は鈍化を見せ、2019年第3四半期の実質GDP成長率は+6.0%(前年同期比)と、1992年以降で最低の伸び率となった。また、毎月のPMIも50.0を超えることが少なく、中国経済成長の鈍化が見受けられた。

鉱種別にみると、銅は2019年年初5,839US$で開始し、米中の貿易協議が比較的良好だったことや、インドTuticorin銅製錬所の再開が同国最高裁で認められなかったことに加えて、Freeport Indonesiaがインドネシアで銅精鉱の輸出許可が一時的に認められなかったことを受けて価格が上昇傾向を見せ、3月1日には6,572.0US$/t(2019年最高値)にまで達した。しかし、5月には米中貿易摩擦激化により価格が下落し、7月26日以降は6,000US$/tを下回り、概ね5,600~6,000US$/tにて推移した。亜鉛は、年初2,462US$/tで開始し、中国市場における逼迫感と1990年以来の水準にまでLME在庫が減少したことを背景として上昇傾向となり、4月1日には3,018US$/t(2019年最高値)にまで上昇したが、その後は、LME在庫の増加や米中貿易摩擦の先行き不透明感や、中国亜鉛精錬所が高いTC/RCを背景に増産を進めているとの情報から下落傾向となった。10月には一時上昇傾向に転じたものの、11月~12月にかけては再び下落した。ニッケルは、年初10,440.0US$/tで開始し、Valeのブラジル鉄鉱山ダム決壊事故を受け、世界有数のニッケル生産量を誇る同社のニッケル鉱山操業への影響懸念等を背景に、13,000US$/t台にまで上昇した。その後11,000~13,000US$/tにて推移したが、7月には後述のとおりインドネシアが2022年に未加工鉱石の輸出を再度禁止する方針を示したことや、LME在庫の減少によって急激に上昇し、9月2日には5年ぶりに最高値を更新した。

表1.2019年ベースメタルLME(settlement)価格概要(US$/t)
  年初価格 最高値 最安値
5,839.0 6,572.0
(3月1日)
5,537.0
(9月3日)
1,975.0 2,267.0
(10月29日)
1,768.0
(5月14日)
亜鉛 2,462.0 3,018.0
(4月1日)
2,211.0
(9月3日)
ニッケル 10,440.0 18,625.0
(9月2日)
10,440.0
(1月2日)
図1.2019年ベースメタル(LME)月平均価格の指標推移

図1.2019年ベースメタル(LME)月平均価格の指標推移

(2019年1月=1.00)

◆ 貴金属市場:パラジウム価格高騰、金超え続く

パラジウム価格(LBMA)は、2017年からプラチナ価格を、2018年から金価格を超える動きが続き、2019年12月13、17日にそれぞれ市場最高値を更新し、1,970.0US$/ozをつけた。

ガソリン車の排ガス浄化触媒材料となるパラジウムは、ロシアでは銅及びニッケルの副産物、南ア・米国ではプラチナと共に生産されるため、急な増産が難しい。一方で、欧州や中国の排ガス規制強化により触媒性能の向上が求められているものの、需要増加に対して増産が追い付いていない。中国で2020年から実施予定だった規制を一部地域で2019年7月から前倒しで導入したことや、各社の白金族市場調査報告において今後も長期的な供給不足が指摘されたことに加えて、年末には従来から電力不足が懸念される南アにおいて、12月9日から計画停電が実施されたことで一部の鉱山の操業停止により供給不安が増したことも後押しとなり、価格は上昇の一途を辿った。

ディーゼル車の排ガス触媒材料となるプラチナは、特に欧州における脱ディーゼルの動きから需要が減少しており、概ね780~1,000US$/ozにて軟調に推移した。

表2.2019年貴金属LBMA価格(AM/PM平均)概要(US$/oz)
  年初価格 最高値 最安値
1,285.1 1,542.5
(9月4日)
1,271.2
(5月2日)
プラチナ  790.5  979.0
(9月5日)
 783.0
(2月14日)
パラジウム 1,265.0 1,970.0
(12月13、17日)
1,265.0
(1月2日)

◆ バッテリーメタル動向(価格・開発プロジェクト等)

中国を中心に、世界で電気自動車(EV)販売が伸びている中、リチウムイオン電池(LIB)に使用される素材金属(主に正極材の原料となるリチウム、コバルト、ニッケル)の動向は依然として注目を集めている。

中国のEV販売は、2018年には200万台を超過し、2019年上半期も順調に販売は伸びたものの、6月に補助金削減を迎えたことから、2019年には前年のEV販売台数を下回る見込みとなっていた。しかし、依然LIB生産は成長を辿っており、LIB正極材に使用される素材の需給動向に関心が集まっている。日本・中国・韓国の大手電池メーカーは、欧州や米国にも生産拠点を建設するために投資を行っており、今後もEV増産を見据え、LIB生産を拡大していく計画である。そうした中で、LIB素材金属の調達リスク低減のため、電池メーカー各社は高ニッケル-低コバルトの正極材開発にシフトしつつある。

一方、2019年のリチウム及びコバルト価格は軟調な値動きを辿った。リチウムは、欧州や南米における各生産プロジェクトが拡張する中、供給過剰感が高まったことから、価格は弱含んだ。炭酸リチウム価格(中国現物価格)は、2019年年初に70,500元/tだったところ緩やかな下落傾向が続き、2019年6月以降中国におけるEV販売が落ち込み始めると下落スピードは加速し、8月には50,000元/t、10月には40,000元/t台へと値を下げ、12月下旬は30,000元/t台で推移した。価格の低迷を受け、豪Galaxy Resources社や豪Mineral Resources社は2020年のリチウム精鉱減産計画を明らかにした。また、コバルトは、コバルトレスのLIBが志向される中で需要減が意識され、2018年はLME現物価格として最高値94,500US$/tまで高騰したところ、2019年年初の58,000US$/tから大きく下落傾向を辿り、2019年7月末には26,000US$/tの安値をつけた。その後は30,000US$/t台で推移し、2019年12月は32,500~35,500US$/tにて推移した。

◆ インドネシア政府、ニッケル鉱石輸出禁止の2年前倒しを決定

2019年8月30日、インドネシア政府はニッケル鉱石を2020年1月から輸出禁止とする改正大臣規則に署名し、制定した。同国政府は、2014年に未加工鉱物の全面的な輸出禁止を定めた大臣令を発布したが、2017年には輸出禁止を条件付きで緩和した(ニッケル鉱石については品位1.7%未満のものに限る)。2017年の時点では2022年1月までの5年間、条件付きの輸出が許可されたが、今般の決定によりニッケル鉱石については輸出禁止が2年前倒しとなった。

インドネシア政府が輸出禁止前倒しを決定した最大の要因は、国内で製錬所建設が遅々として進んでいない点にあるとの見方が強い。同国政府は鉱物の高付加価値化を意図しているものの、製錬所建設に関しては政府の想定通りには進捗せず、建設中断や着工見送りとなった案件も多い。製錬所建設が進まずに付加価値のない鉱石が国外に輸出されている現状を見かねて、輸出禁止前倒しという判断に至ったとみられる。

また、ニッケル鉱石の最大生産国であるインドネシアによる輸出禁止前倒しは、LMEニッケル価格にも影響を及ぼした。本措置に関する報道が散見されるようになった2019年7月頃よりLMEニッケル価格は高騰し、9月2日には約5年ぶりの高値となる18,625US$/tをつけた。その後は米中通商関係の不透明感や中国のステンレス鋼需要低迷の懸念などにより下落傾向が続き、2020年1月7日時点で13,795US$/tとなっている。なお、これらの動きは必ずしも実需が反映されているわけではなく、投機筋による動きも影響を及ぼしているとみられている。

◆ 中南米地域(パナマ、エクアドル)における新規鉱山開発

これまで鉱業が盛んに行われてこなかった中南米地域の国々において、新規鉱山の開山が相次いだ。

ひとつはパナマのCobre Panamá銅鉱山である。本鉱山は、Panama Cityから西へ約120kmに位置し、加First Quantum社が保有、2019年9月1日に生産を開始した。マインライフは36年、粗鉱処理量は最大220千t/日とし、年間の粗鉱処理量として2019年末には72百万t/年、2020年には85百万t/年、2023年には100百万t/年のフル生産を目標としている。精鉱は、カリブ海側に位置するPunta Rincón港から輸出され、チリCODELCOのChuquicamata銅鉱山にて製錬される。権益は、加First Quantum社が90%、韓国鉱物資源公社(KORES)が10%であるが、KORESは保有権益の売却を希望しており、2019年8月には入札が行われたものの不調となったため、今後再入札が実施される予定となっている。

もうひとつは、エクアドルにおける初の大規模鉱山となるMirador多金属鉱山及びFruta del Norte金・銀鉱山である。Mirador多金属鉱山はZamora Chinchipe県に位置し、2019年7月18日に商業生産を開始した。EcuaCorriente S.A.社、中国安徽銅陵有色金属集団持株有限公司、中国鉄建投資集団有限公司が共同投資し、当初の粗鉱処理量は10千t/日とされているが、半年後には30千t/日、1年以内には60千t/日への増産が計画されている。なお、2019年6月時点での投資額は1,248mUS$で、約2,500名の雇用を創出した。Fruta del Norte金・銀鉱山もZamora Chinchipe県に位置し、推定金埋蔵量は5.02百万oz(約156t)である。Lundin Gold社が前権益保有者Kinross Gold社から2014年12月に240mUS$で買収した。2019年11月14日に生産を開始し、年間推定生産量は金が310千oz(約9.57t)で、マインライフは15年である。同国政府によると、この2つの鉱山操業は国内総生産の1%に相当するという。

◆ 豪州における大規模銅鉱床の発見

近過去10年間の探鉱投資は、それまでの10年間と比較して資金面ではより多額の予算が割り当てられるも、結果として新規鉱床の発見は案件数、規模ともに大幅に下回り、特に大型の有望案件は乏しい状況が続いていたが、かねてより大規模な鉱化の発見が噂されていたWA州北部Paterson地域における探鉱プロジェクトに関し、2019年2月にRio Tintoより発表があった。

同プロジェクトはWinuプロジェクトと称され、2017年末から2018年にかけてRC試錐8孔、ダイヤモンド試錐20孔の計13,286mを実施、地表下比較的浅部の741m間での品位:Cu 0.45%、Au 0.52g/t、Ag 2.94g/tの比較的低品位の鉱化や、60m間でのCu 1.03%、Au 1.22g/t、Ag 4.30g/tの高品位の鉱化が捕捉されている。

また、同年9月には、豪Stavely Minerals社がVIC州で推進するStavely銅・金プロジェクトのThursday’s Gossan鉱徴地において実施した試錐調査により、掘進長62m以深の32m間で品位:Cu 5.88%、Au:1.00g/t、Ag 58g/tの有望な鉱化を捕捉したとの発表があった。本発表後、同社の株価は一時、3.5倍以上の急騰を記録した。

時期や規模については諸説あるものの、EV普及の拡大傾向についてはほぼ意見の一致が見られる状況下、それに伴う需要増が最も期待される鉱種である銅ゆえ、これらに続く更なる初期探鉱の進捗及びその成果発表が大いに期待される。

◆ 大型銅鉱山の露天採掘から坑内採掘への移行

複数の露天採掘大規模鉱山で坑内採掘への移行が進んでいるところ、2019年には、チリChuquicamata銅鉱山及びインドネシアGrasberg銅鉱山の2つの大規模露天採掘鉱山において、露天採掘から坑内採掘への移行が進んだ。

世界最大の銅鉱山であったChuquicamata銅鉱山は、2013年にはピットの深さが1,100mに達し、露天採掘による深部採掘では採算性が著しく低下することが予想されていたことから、2004年8月に露天採掘から坑内採掘への移行が正式に発表された。以来、坑内採掘への準備が進められてきたところ、2019年8月に坑内採掘を正式に開始した。これに伴い、現在も継続中の露天採掘は2020年中には終了する予定である。同鉱山は1915年に操業を開始したが、坑内採掘を行うことによってマインライフを少なくとも40年延長することを予定しており、2057年までは操業続けられる予定である。

完全に坑内採掘に移行した後は、銅の年間生産量は320千t、モリブデンの年間生産量は15千tが計画されている。なお、露天採掘であった2018年の銅生産量は、320千tであった。

Grasberg銅金鉱山では、2019年6月に露天採掘していた鉱体の直下に位置している鉱体(Grasberg Block Cave)にて坑内採掘を開始した。本坑内採掘は、2023年には最大で平均130千t/日の鉱石採掘が見込まれ、平均品位はCu 0.96%、Au 0.72g/tで、生産量は銅385千t/年、金21.8t/年が予定されており、露天採掘は2019年中に終了する計画である(本トピックス執筆の時点で、終了の発表はなされていない)。また同月には、採掘中のDeep Ore Zone(DOZ)の直下にあるDeep Mil Level Zone(DMLZ)でも平均約9千t/日の鉱石採掘を開始した。2022年には平均80千t/日の鉱石採掘が予定されており、平均品位Cu 0.92%、Au 0.76g/tで、生産量は銅226.8千t/年、金15.9t/年が見込まれている。

図2.Grasberg銅金鉱山

図2.Grasberg銅金鉱山

(出典:Freeport McMoRan社 WEBサイト)

◆ JOGMEC、南ア・ウォーターバーグ白金族プロジェクトの進展やヨハネスブルク事務所の開設により、金属資源の供給安定性の向上を促進

JOGMECでは、南ア・ブッシュフェルド複合岩体北部において、加Platinum Group Metals社及び南アMnombo社とウォーターバーグ白金族プロジェクトを共同で立ち上げ、2011年11月に白金族金属鉱床を発見した。2017年10月には、南ア白金族金属生産量第2位のImpala Platinum社を新たに開発パートナーとして迎え入れた。

その後、JOGMECは本プロジェクトにおける契約者としての地位21.95%のうち、9.755%を日本企業に譲渡すべく、2018年2月に入札を行った結果、阪和興業株式会社が落札し、2018年10月に譲渡契約の締結に至った。2019年3月には南ア関係当局から承認が得られ、譲渡手続きが完了した。また、2017年11月から実施していた最終フィージビリティ・スタディ(実行可能性調査)は、2019年10月にポジティブな評価を得て、2019年12月にパートナー各社で内容の確認を行った結果、承認された。

今後、開発が決まれば、阪和興業株式会社は本プロジェクトからImpala Platinum社が生産する地金を安定的に購入する権利を有することから、将来の日本の自動車用排気ガス浄化触媒と燃料電池に使用される白金族金属、二次電池に使用されるニッケル等の金属資源の安定供給が期待される。

本プロジェクトによる金属資源の安定供給に対する期待のほか、供給源の多角化や安定性の強化に向けて、アフリカの重要性が今後も増大すると予想される状況下、その活動を加速させるため、アフリカにおける新たな拠点として、JOGMECでは2019年2月にヨハネスブルグにて事務所を開設した。JOGMECでは、2008年度よりボツワナに地質リモートセンシングセンターを設置しており、SADC加盟国を対象として鉱物資源探査のための衛星画像解析の技術移転や人材育成等を展開しているが、今般の新事務所開設によってアフリカ各国との関係をより一層強化させることで、我が国への資源の供給安定性の向上を促進する。

◆ 米国を中心とするクリティカルミネラルの安定確保に向けた動き

2018年6月の米国による中国からの輸入品に対する追加関税措置の発表以来、今も継続する米中貿易摩擦を背景に、国内の主要産業に必要な鉱物資源(クリティカルミネラル)を安定確保するための具体的な動きが米国を中心に見られた。

その米国においては、6月にまず「安全で信頼できるクリティカルミネラルの供給に向けた連邦政府戦略」が発表され、その後、レアアース等、供給の輸入依存度が高い鉱種(特に中国への依存度が高いもの)の国内生産体制を整備するため、鉱石採掘から精製錬までの工程に対する連邦政府による助成等の具体策が発表された。

米国の同盟国かつ主要資源産出国である豪州では、連邦政府が同国のクリティカルミネラルの現状と課題に関する報告書及びその探鉱から加工までの工程に関する長期戦略を3月に発表した。さらに11月には米豪両国間でクリティカルミネラル関連の資源調査等を共同で行う旨の協定が両国の政府系調査研究機関の間で締結された。また、続く12月に米国はカナダともクリティカルミネラル関連の包括的な覚書を締結した。

米中貿易摩擦が継続する状況下、万が一の事態に備えた供給網/調達網の拡充及び体制整備のための動きは引き続き継続するものと思われる。

◆ Vale廃滓ダム決壊事故と環境対策

2019年1月25日、ブラジルMinas Gerais州Brumadinhoに位置し、1976年に建設されたValeのCórrego do Feijão鉄鉱石鉱山において、廃滓ダムの決壊事故が発生した。決壊した廃滓ダムの容積は1,270万m3で、2015年に事故を起こしたSamarco鉄鉱石鉱山の廃滓ダムの容積5,000万m3と比較して規模は小さいものの、2月4日時点で死者は134名、行方不明者は199名となり、Samarco鉄鉱石鉱山の事故(死者19名)を上回る惨事となった。

事故発生を受け、同社は1月29日、事故を起こした廃滓ダムと同じタイプの19の廃滓ダムについて、今後3年間で5b億BRL(ブラジルレアル:約1.3bUS$)を費やし廃止することを発表した。また裁判所の業務改善命令を受け、Brucutu鉄鉱石鉱山及びVargem Grande Complexでの操業一時停止を発表した。本措置により鉄鉱石40百万t/年及び鉄ペレット11百万t/年が減産見込みとなり、鉄鉱石供給不安の引き金となった。

また、本決壊事故を受けて、鉱山大手各社においては鉱滓及び鉱水ダムの管理基準の見直しや鉱滓ダム建設や運営を監督する国際的な独立組織設立に関する検討のほか、ダム管理費の増額といった動きが見られた。

◆ 廃鉛バッテリーの動向

2017年6月、改正「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(バーゼル法)が公布され、2018年10月1日付けで施行された。

日本は、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(バーゼル条約)に批准しており、その国内法であるバーゼル法が2002年に制定された。世界の資源消費拡大に伴ってバーゼル法該当製品の貿易量は拡大し、当該法律見直しの必要性が高まっていたところ、2016年6月に当時日本から大量の廃鉛バッテリー(特定有害廃棄物)が輸出されていた韓国にて、廃鉛バッテリーが環境上不適正に処理がされていたことが明らかとなった。これを受け、当該法律について環境汚染等が生じるリスクに応じた規制水準の適正化が図られ、法改正に至った。

バーゼル法改正により、輸出先での環境汚染防止措置について環境大臣による確認事項が法的に明確化された結果、韓国向けを中心とする国内の廃鉛バッテリー輸出量は大きく減少した。輸出業者のライセンスが失効し、法改正後の基準への適合が進まないため、新規ライセンス取得が止まっているためである。これにより、2019年にはこれまで海外に大量に流出していた鉛地金の二次原料(リサイクル原料)となる廃鉛バッテリーの国内資源循環が進み、国内需給が緩んだことで、これまで原料不足に陥っていた国内二次鉛精錬所においては安定調達が可能となった。

図3.廃バッテリー輸出量推移

図3.廃バッテリー輸出量推移

(※2019年統計は1~11月)

おわりに

米中貿易摩擦に関しては、2019年12月15日に米国が対中制裁関税の「第4弾」として予定していた対中輸入額160bUS$相当分に対する追加関税発動を見送り、貿易交渉の「第1段階の合意」に至ったことを受け、ひとまずの落ち着きを見せている。但し、当面は摩擦が解消する見込みがないとの意見も散見されるほか、中国の経済動向が資源価格や需給に影響を与える状況は継続すると見られていることから、これら政治・経済の動きが、長期的な周期で変動を繰り返す金属資源業界の動向に対してどのようなインパクトをもたらすかについては、引き続き注視が必要である。一方で、比較的動きの早い資源国における政策やバッテリーメタル等の自動車関連素材に代表される次世代分野の発展において必要とされる金属鉱物資源の需給動向など、動きが益々複雑化するこれらのパラメータに関しては、よりマクロ的な視点での状況把握・認識が求められていると言えよう。その他、2020年年始以降緊張状態がさらに高まっている米国とイランの関係など、地域の情勢や安定化に対して直接的な影響をもたらす動向に対する注視の必要性についても言わずもがなである。

本状況下、我が国に対する継続的な資源確保への取り組みに向けて、JOGMECとしては本邦企業のニーズに則した支援を継続してゆくと共に、金属企画部においては2020年も金属資源の安定供給確保に資する情報提供に引き続き務めて参りたい。

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