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報告書&レポート

2020年7月14日 シドニー 事務所 吉川竜太
20-11

豪州におけるここ数年の新しい鉱化ディスカバリー例について

<事務所 吉川竜太 報告>

はじめに

一般的に豪州は鉱業活動が行われている5つの大陸の中で、最も探鉱が進んでいる「成熟した」大陸の一つと考えられているが、Rio TintoやBHP、Anglo American、Fortescue Metals社、Newcrest社、IOG社、MMG社などの大手・中堅企業や、探鉱のみを事業として実施する小規模なジュニア企業による積極的な探鉱が行われており、ここ数年新しい鉱化のディスカバリーが相次いで報告されている。

豪州鉱業探鉱企業協会(AMEC)の調べによると、2020年5月の時点で豪州証券取引所(ASX)に上場する資源企業は692社で、うち346社が豪州内で探鉱事業を行っており1、その多くはいわゆる「ジュニア企業」である。これらのジュニア企業は鉱山からの生産物による収入を持たず、主に市場で調達した資本金を元手に探鉱活動を行っており、探鉱成果を市場に発表して株価を上げることで投資家にキャピタルゲインの機会を提供している。ディスカバリーを発表したジュニア企業の株価は、一夜にして数倍に高騰することも珍しくない。豪州のコンサル企業であるMinex Consultant社によると、歴史的に西側諸国における探鉱活動では、ジュニア企業がディスカバリーに貢献する割合が年々大きくなる傾向にあり、ここ数年は6割強のディスカバリーがジュニア企業によりなされている状況にあるとされる2。また同社によると、2019年における全世界の総探鉱支出額は11.3bUS$であり、豪州にはそのうちの20%弱が投じられている状況である。図1は1975年以降、地域別に探鉱支出費が投じられた比率の推移を示したものであるが、豪州では安定して世界における総探鉱支出額の10~20%が投じられている状況である。

図1.1975年以降に投じられた探鉱支出額の地域別割合推移

図1.1975年以降に投じられた探鉱支出額の地域別割合推移

(出典:Minex Consulting社2019年11月28日付プレゼン資料)

一方、図2は1990年以降に発見された「金量にして100千oz以上」に匹敵する全鉱種の鉱化ディスカバリーにあたる7,705件の地域別割合の推移を示したもので、豪州は1940年代以降徐々に割合を増加させてきている様子が分かる。図の下部にも注記されている通り、豪州では小規模な鉱化の発見が多い一方、同社が2009年以降の発見で経済的に重要な「Tier 1」にカテゴライズしている19のディスカバリーのうち、4つは豪州に位置している(Fosterville金鉱山Swan鉱床 (2016年)、Pilgangooraリチウム鉱床(2009年)、Earl Greyリチウム鉱床(2016年)、Wodginaリチウム鉱床(2016年))。

図2.1900年以降における鉱化ディスカバリーの地域別割合推移

図2.1900年以降における鉱化ディスカバリーの地域別割合推移

※Minex Consulting社によると、各年のデータは前後2年のデータで平滑化してあるとのこと 。
(出典:Minex Consulting社2019年11月28日付プレゼン資料)

豪州において探鉱活動によるディスカバリーが継続しているのには、多くのジュニア企業が探鉱分野でプレーしていること、またジュニア企業のプレーを促進するため、政府による技術的・資金的援助(例えば、豪連邦による探鉱ジュニアインセンティブ制度や各州政府独自の鉱物資源探鉱支援制度、産学官の共同研究プログラムであるCooperative Research Centerを利用した支援スキーム、基礎的地球科学データや共同研究の機会を提供する豪州地質調査所(GA)や豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)の存在など)や、証券市場(ASXなど)の存在も含め、資金調達を容易とする安定した投資環境が整備されていることなどが影響しているものと考えられる。

本稿では、ここ2年間ほどの間に発表された豪州における銅-金鉱化ディスカバリーのうち、周辺の鉱化ポテンシャル環境に影響を与え、かつ経済的にも将来重要となる可能性がありそうなものを主観的にピックアップし、報告することとする。なお、いずれのプロジェクトも現在探鉱が進行中であり、取得可能な情報が限られていることにご留意願いたい。

1.メジャーによるディスカバリー例

1.1.Rio Tinto:Winu銅・金プロジェクト(WA州)

Rio TintoがWA州北部Paterson地域に保有する自社鉱区において実施した試錐調査で、100m区間でCu 1.0%程度の鉱化をディスカバリーしたとの噂が探鉱関係者の間で流れ始めたのは、2018年春ごろであったように思われる。その後、この噂は地元紙でもしばしば取り上げられるようになったが、Rio Tintoが公式に発表を行ったのは2019年2月27日になってのことであった3

もともと、Rio TintoはPaterson地域において、2015年10月から当地に広く鉱区を保有していた豪Antipa Minerals社とCitadelプロジェクトにおいてJVを開始している4。Rio Tintoの参入時、CitadelプロジェクトのCalibre鉱床では、予測資源量47.8百万t、品位:Au 0.56g/t、Cu 0.17%、Ag 0.60g/t、W 0.03%が計上されており5、Rio Tintoによる同プロジェクトへの参入条件は60mA$の探鉱支出により最大75%の権益を取得できるというものであった。Antipa社によると、Calibre鉱床の鉱化は「原生代の変堆積岩に貫入した花崗岩に関連し、剪断帯、断層、層準規制の脈状、ストックワーク状、角礫状、スカルン型の硫化物鉱化」とされており、タングステンを伴うことからも、同地域でNewcrest社が操業するTelfer鉱山の鉱化に類似するものと考えられる。

WA州地質調査所のインタラクティブデータシステム「GeoVIEW.WA6」によると、Rio TintoがAntipa社鉱区周辺で数個の自社鉱区を出願したのは2016年9月のことで、Winuプロジェクトはその鉱区の一つ(E45/4833)に所在する。2017年5月に鉱区を取得したのち、同年12月から翌年にかけてRC及びダイヤモンド試錐20孔13,286mを実施し、掘進長68m以深の741m間で品位:Cu 0.45%、Au 0.52g/t、Ag 2.94g/tという比較的低品位鉱化や、掘進長60m以深の60m間でCu 1.03%、Au 1.22g/t、Ag 4.30g/tという高品位鉱化が地表浅部で捕捉されており3、Rio Tintoは比較的大規模な探鉱キャンプや、作業員の通勤のための滑走路を設置して探鉱を継続しているようである。Rio Tintoによると、同地域の地質は新原生代の変堆積岩類や花崗岩類が、顕生代の堆積岩や堆積物に100m近く覆われており、試錐調査では変堆積岩、未変成堆積岩、花崗岩、ドレライトが確認されている。銅-金鉱化の母岩となっているのは、中粒準アルコース質変砂岩と黒雲母に富む変シルト岩で、鉱化はカリ長石-白雲母-黒雲母-緑泥石変質を伴う石英-カリ長石-硫化物脈(写真1)や炭酸塩鉱物-硫化物脈で主に認められ、黄銅鉱、輝銅鉱、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱、輝水鉛鉱やビスマス・タングステン鉱物を伴う。鉱化は複数ステージが確認され、二次富化による富鉱帯も確認されるとのことである7

写真1.Winu鉱床の試錐コアの様子

写真1.Winu鉱床の試錐コアの様子

硫化物を伴う石英-カリ長石脈が黒雲母変質した堆積岩中に産する。
1m間の分析品位はCu 0.58%、Au 0.92g/t。
(出典:2019年8月の鉱業大会会場で筆者撮影)

Rio TintoはWinu鉱床の発見後、Paterson地域において急速に自社鉱区の設定とJV探鉱プロジェクトの立ち上げを行っている。同社は2017年12月と2018年1月にPaterson地域で1万km2以上をカバーする大量の探鉱ライセンスを出願しており、試錐調査の開始後比較的すぐに鉱化が発見された可能性が高いことを示唆している。また、すでにPaterson地域に鉱区を保有していた豪Alloy Resources社とは2018年6月から8、豪Carawine Resources社とは2019年10月から9、それぞれJV探鉱を開始している。これまでのところ、同社はWinu鉱床の鉱化の特徴に関して詳細な報告は実施しておらず、同地域におけるディスカバリーで得た独占的な探鉱知見を最大限に活用し、同地域における次なるディスカバリーに向けた活動を拡大しているものと推察される。Rio TintoによるWinu鉱床のディスカバリーは、Paterson地域における探鉱活動を活性化させており、豪Newcrest社(2.1参照)や豪Fortescue Metals社、豪IGO社などの豪州大手・中堅企業も同地域での探鉱活動に参入している。

図3.Paterson地域における所有者別の鉱区分布図

図3.Paterson地域における所有者別の鉱区分布図

(出典:Greatland Gold社2020年5月プレゼン資料)

1.2.BHP:Oak Dam銅・金・ウランプロジェクト(SA州)

SA州で世界有数のOlympic Dam銅・金・ウラン鉱山を操業するBHPは2018年11月、Olympic Dam鉱山から65km南東の位置に保有する探鉱ライセンス鉱区内(図4)において、試錐調査により顕著な鉱化を確認したことを報告した10 (注:2018年11月の発表時点では鉱床の名前が発表されていないが、その後の同社発表で「Oak Dam鉱床」と記載されている)。この鉱化はBHPが実施した試錐調査4孔5,346mで捕捉されたもので、そのうちの1孔では1,063m以深の425.7m間で品位:Cu 3.04%、Au 0.59g/t、U 346ppmという優勢な結果が得られている。BHPの2019年7~9月四半期報告書11では、Oak Dam鉱床で実施された第2フェーズの試錐調査結果に関して報告がなされており、10孔12,441mの試錐調査により、1,247m以深の205m間で品位:Cu 2.04%、Au 0.43g/t、U 441ppmが確認され、非常に深部での着鉱であるものの、着鉱幅55~230m、品位:Cu 0.63~2.73%程度の鉱化が10孔全てで認められているようである。

図4.Oak Dam鉱床の位置関係図

図4.Oak Dam鉱床の位置関係図

(出典:Auroch社ホームページを編集)

Oak Dam鉱床の鉱化は、Olympic Dam鉱山と同じウランを伴う酸化鉄-銅-金(IOCG)型鉱化である10。同エリアの地表浅部は中原生代以降の後鉱化堆積岩により覆われており、試錐によりこの下部で赤鉄鉱角礫岩や堆積岩類が鉱化の母岩として確認されている。両者の境界部では、礫岩や角礫岩が認められており、後鉱化堆積岩の基底礫岩や断層の存在が想定されている。鉱化部の初生銅鉱物である輝銅鉱、斑銅鉱、黄銅鉱が、酸化鉄に富む角礫岩中に鉱染する様子や、黄銅鉱が酸化鉄-セリサイト変質した角礫状花崗岩中に産する様子が認められており、2つの鉱化はゾーニングしているものと推定されている。

図5.Oak Dam鉱床の地質模式断面図

図5.Oak Dam鉱床の地質模式断面図

(出典:BHP 2019年10月17日付四半期報告書)

通常、BHPやRio Tintoなどのメジャー企業は、このような鉱化ディスカバリーをなかなか公にしない傾向にあるが(実際Rio TintoはWinu鉱床における鉱化の発見から発表まで1年以上を要している)、BHPは発見から比較的早期にOak Dam鉱床の鉱化発見を報告したものと考えられる。この理由として地元メディアは2018年11月、「BHPがこの鉱化の連続性・経済性にそれなりに自信を持っており、今後実施される計画であるOlympic Dam鉱山の生産拡張に寄与する衛星鉱体として探鉱を加速させる中で、比較的早い段階でこの発見が公になる可能性があり、透明性確保のためにこのタイミングで公表する必要があった。」との専門家の解説を報じている12

2.ジュニア企業等によるディスカバリー例

2.1.英Greatland Gold社:Havieron金・銅プロジェクト(WA州)

LSEに上場する英Greatland Gold社は、2016年9月に豪州のローカル企業から、参入時に25kA$のキャッシュと自社株約65.5万株(当時価格で225kA$相当)を、開発FID時に自社株約145.5百万株を支払うことを条件に、WA州Paterson地域の南東部に位置するHavieronプロジェクト(図6)の権益100%を取得している13。HavieronプロジェクトではGreatland Gold社の参入時、1km×1km程度の物理探査異常が認識されており、1991~2003年にかけて鉱区を保有していたNewcrest社が実施した試錐により、弱い金-銅鉱化が捕捉されていた。

Greatland Gold社による最初の試錐調査は、物理探査のモデリング結果に基づいて2018年4~5月に実施されており、同社が実施した最初の試錐孔であるHAD001孔において、掘進長497m以深の121m区間において品位:Au 2.93g/t、Cu 0.23%14が、また、その後実施されたHAD005孔において459m以深の275m区間において品位:Au 4.77g/t、Cu 0.61%15が確認されるなど、良好な試錐結果が得られている。

Greatland Gold社は、Newcrest社が6年間の参入期間中に総額65mUS$を支出することで、同プロジェクト権益の最大70%を獲得が可能となることを条件として、2019年3月に同社との間で契約を締結している16。Newcrest社の参入後は同社主導で積極的な試錐活動が行われており、2019年末までに6孔10,000m程度の試錐が行われ、865.7m以深の139.4m間で品位:Au 2.9g/t、Cu 0.39%や450m以深の244.6m間で品位:Au 2.0g/t、Cu 0.40%などの結果が得られている17 。2020年4月、Newcrest社はHavieronプロジェクトの40%権益取得を確定させたことを報告したとともに、今後20,000m程度の試錐を実施して2020年下期を目途に資源量を計上し、探鉱斜坑の開削や採掘方法の検討などを開始するとしている18

Havieron鉱床の鉱化に関する詳細な報告は存在しないが、同地域の地質は鉱化の母岩であり堆積岩類から構成されるYeneena累層群を、顕生代の堆積岩や現代の堆積物が地表下420mほどの範囲を覆っている。鉱化は貫入岩関連型(Intrusion-Related)あるいはスカルン型で、年代不詳の貫入岩と変堆積岩(変砂岩、変シルト岩、変炭酸塩岩など)が鉱化母岩となっており、角礫状、脈状、レンズ状塊状硫化物として認められる。鉱石鉱物は磁硫鉄鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱が認められ、角閃石-炭酸塩鉱物-黒雲母-セリサイト-緑泥石変質を伴うとされている17。

2018年3月ごろ、0.50~0.60GBX(英ポンド)で取引されていた英Greatland Gold社の株価は、Havieronの試錐結果を発表した6月下旬には1.82GBXまで値上がりし、その後もNewcrest社による調査結果が良好であること、金価格が上昇したこと、2019年11月に開催されたNewcrest社の年次総会において、同鉱床が将来Telfer金鉱山クラスに成長する可能性について触れられたこと、などを背景に、2020年5月中旬では9.28GBXにまで値上がりしている。

図6.Havieron鉱床の東西断面図

図6.Havieron鉱床の東西断面図

(出典:Greatland Gold社2020年5月プレゼン資料)

2.2.豪Stavely Minerals社:Stavely銅・金プロジェクト(VIC州)

VIC州東部で斑岩型銅鉱床をターゲットに探鉱を行っている豪Stavely社は、2019年9月にStavelyプロジェクトのThursday’s Gossan鉱床の浅部において、掘進長62m以深の32m区間で品位:Cu 5.88%、Au 1.00g/t、Ag 58g/tの鉱化を捕捉したことを発表した19。この発表の前後で、同年9月20日に0.24A$であった同社の株価は、9月27日には1.07A$まで上昇しており、ディスカバリーを発表したジュニア企業の株価の典型的な値動きとなっている。

図7.Thursday's Gossan鉱徴地の位置図

図7.Thursday’s Gossan鉱徴地の位置図

青枠部がStavelyプロジェクト
(出典:Stavely社2020年2月プレゼン資料に加筆)

Thursday’s Gossanは1970年代ごろから企業により斑岩型銅-金鉱化を対象とした探鉱が行われてきた。Stavely社は2013年に同プロジェクトを取得しており、同年JORC 2012基準の資源量計算が地表浅部の二次富鉱帯に存在する輝銅鉱鉱化を対象に実施され、予測資源量28.1百万t、品位:Cu 0.4%が計上されている(金、銀の鉱化はこの時は資源量として計上されず)20。Stavely社はプロジェクト取得後断続的に試錐調査を実施しており、2018年1月には248m以深の9m区間で品位:Cu 2.62%、Au 0.28g/t21や、2019年3月には583m以深の10m間で品位:Cu 2.43%、Au 0.30g/t22などの着鉱を報告していた。

同社のホームページによると、同鉱区周辺の地質は、カンブリア紀のカルクアルカリ系海洋性火山岩類が、それより古い砂岩、蛇紋岩と断層で接しており、後期カンブリア紀のDelamerian造山運動により変形を被っている。カンブリア紀の火山岩類の形成には、沈み込み帯に関連したStavely弧の形成が関与していると考えられ、Cadia金鉱山やNorthparkes銅・金鉱山が存在するNSW州のMacquarie弧と同様、Stavely弧の火成活動がこの地域に銅-金鉱化をもたらしているものと解釈されている。

同社が2018年以降報告している着鉱は、当初ターゲットとしていた斑岩型鉱化や、資源量が計上されている二次富鉱帯の鉱化とは明らかに異なるもので、構造規制型の脈状銅-金-銀鉱化となっている(図8)。特に、蛇紋岩化した超苦鉄質岩と断層で接する構造において比較的着鉱幅の広い高品位鉱化が捕捉されており、蛇紋岩の中ではニッケル-コバルトの鉱化も捕捉されている。銅-金-銀鉱化は、黄鉄鉱-黄銅鉱-斑銅鉱-銅藍-輝銅鉱などで構成されており、石英、磁鉄鉱、赤鉄鉱脈に伴われることもあれば、ほぼ塊状硫化物の様相を呈することもある。同社は、このような構造規制型の鉱化を、深部に潜在する斑岩型鉱化の上部に存在する鉱化であると解釈している模様である。

図8.Thursday's  Gossan鉱床の構造規制型の鉱化に関する模式断面図

図8.Thursday’s Gossan鉱床の構造規制型の鉱化に関する模式断面図

(出典:Stavely社2020年5月8日付ASXニュースリリース)

同プロジェクトは、Stavely社が鉱区を取得して以来数年をかけて継続的に探鉱を実施した結果、ディスカバリーに至った点で興味深い。同社は、豪連邦政府の探鉱ジュニア企業インセンティブ制度やその前身の探鉱開発インセンティブ制度を活用しているほか、VIC州政府の探鉱促進制度であるTARGETも活用しており、これらの政府からの援助が最終的にディスカバリーにつながった好例の一つと言えるかもしれない。

2.3.豪Alkane Resources社:Northern Molong銅・金プロジェクト(NSW州)

オルビドス紀の沈み込み帯で形成されたMacquarie弧はNSW州の中東部に所在しており、Newcrest社が操業するCadia East鉱山(鉱石埋蔵量1,400百万t、品位:Au 0.47g/t、Cu 0.30%23)やChina Molybdenum社が操業するNorthparkes鉱山(鉱石埋蔵量140.27百万t、資源量:Cu 0.55%、Au 0.21g/t24)など、斑岩型鉱化を対象とした大規模な坑内採掘(ブロックケービング法やパネルケービング法)鉱山が存在している。NSW州内のMacquarie弧分布域においては、このような斑岩型鉱化をターゲットとして、豪Fortescue社、米Freeport社、米Newmont社など大手企業も探鉱を行っている。

Alkane Resources社は、NSW州にて開発を検討中のDubboジルコン・レアアースプロジェクトを保有しているほか、2014年からNSW州のTomingley鉱山で小規模ながら金を生産しており、純粋な探鉱ジュニア企業とは言えないものの、金・銅をターゲットとした探鉱ライセンスをNSW州内のMacquarie弧分布域に複数保有している。同社がNorthern Molong鉱区(EL4022)をRio Tintoから取得したのは2004年のことで、同社によると同鉱区内のBoda(あるいはBodangora)鉱徴地(図9)では1876年から1917年にかけて200千ozの金が生産されており、Rio Tintoにより地化学探査、エアコア試錐、RC試錐などが行われていた25。同社は周辺鉱区の探鉱を優先させていた模様で、同鉱区の探鉱は2012年ごろから開始され、試錐調査が断続的に実施されており、弱い金-銅鉱化が捕捉されている26。2019年1月、同社はCadia鉱山の鉱化に基づいて同地域における地質鉱化モデルを構築し、これまでBoda鉱徴地などで捕捉されている弱い金-銅鉱化は、斑岩型鉱化や浅熱水性鉱化を規制する磁性岩体の変縁部に相当するとして、IP物理探査と試錐調査を計画した。また、2019年9月には、Boda鉱徴地で実施したダイヤモンド試錐において、掘進長211m以深の502m区間で品位:Au 0.48g/t、Cu 0.20%が捕捉されたことを発表している27。同社は、その後も試錐調査を行っており、2020年3月には掘進長75m以深の1,167m間で品位:Au 0.55g/t、Cu 0.25%の着鉱を報告している28

図9.Boda鉱徴地の位置図

図9.Boda鉱徴地の位置図

(出典:Magmatic Resources社2020年5月プレゼン資料に一部加筆)

Northern Molongプロジェクトの地質は、オルビドス紀の玄武岩~安山岩質火山岩や火山砕屑岩、炭酸塩岩に、シルル紀のアルカリ系列モンゾニ岩が貫入し、鉱化をもたらしたものと解釈されている29。変質は、深部では黒雲母-アクチノ閃石-緑簾石-磁鉄鉱などのcalc-potassic変質が鉱化部周辺で認められており、鉱化は石英-黄銅鉱-斑銅鉱脈に伴われ、変質は辺縁部に向けて曹長石-緑簾石-緑泥石-黄鉄鉱などで構成されるプロピライト変質に移行する。また、同鉱徴地の浅部で認められる鉱化は、より黄鉄鉱が強く、浅熱水性の環境にあったものと推定されている30

Boda鉱徴地における着鉱は、他地域の斑岩型鉱化と比較するとやや低品位のように感じられるが、鉱業系メディアにより比較的大きく報じられ、豪州株式市場関係者の間ではポジティブに受け止めらており、2019年9月初頭に0.37~0.40A$で取引されていた同社の株価は、同社による鉱化ディスカバリーの報告後、9月下旬には0.79A$にまで上昇している。前述のCadia鉱山、Northparkes鉱山が比較的低品位の鉱石埋蔵量で操業を行っていることが、この着鉱が開発ポテンシャルのある鉱化であるとイメージさせているのかもしれない。

2.4.その他

前項までに、ジュニア企業等による銅-金鉱化の主要なディスカバリーに関して記載したが、その他の鉱種においても、ここ数か月だけで以下のような発見例が報告されている。

  • Legend Mining社(2019年12月):WA州Rockford ニッケル・銅・コバルトプロジェクトのMawsonエリアにおいて実施した試錐で、掘進長114m以深の14.9m間で、品位:Ni 1.07%、Cu 0.75%の鉱化を捕捉31
  • Chalice Gold Mines社(2020年3月):WA州Julimar ニッケル・銅プロジェクトで実施した最初の試錐調査により、48m以深の19m間で品位:Ni 2.59%、Cu 1.04%、Pd 8.37g/tの鉱化を捕捉32
  • Impact Minerals社(2020年5月):NSW州のRed Hill鉱徴地で過去に実施された試錐の再分析で、29m間における品位:Au、Pd、Pt、Rh、Ir、Os、Ru(7PGM)10.9g/t、Cu 2.3%、Ni 0.4%や、25m間における品位:7PGM 5.7g/t、Cu 0.9%、Ni 0.6%が含まれていたことを報告33

豪州地質調査所は、豪州内において確認されている主要鉱種の資源量や鉱石埋蔵量、経済的実証資源量(EDR)をまとめた「Australia’s Identified Mineral Resources」や、試錐調査で得られた顕著な結果をまとめた「Australian Mineral Exploration Review」を、毎年更新して報告している34

おわりに

豪州においては、メジャー企業やジュニア企業が活発に探鉱活動を実施しており、豪連邦・州政府による積極的な支援もあり、新しい鉱化が発見されている。このようなディスカバリーが報告されると、その周囲に鉱区を保有するジュニア企業の株価も上がり、周辺での探鉱が活発化することが一般的である。一方で、国土の8割を新規の堆積物で覆われている豪州大陸では、今後はこのような被覆層の下部に潜在する鉱化の探鉱が重要となることが必然とされており、産学官を上げた研究や探鉱への取り組みが続けられている状況である。こうして豪州内で培われた技術やノウハウは、他の大陸で活動する豪州企業により世界中に伝播していくものと考えられる。探鉱による鉱化ディスカバリーは鉱業活動の持続性に不可欠なものであり、今後も豪州で鉱化ディスカバリーが継続されることが期待される。


  1. https://amec.us4.list-manage.com/track/click?u=840f4bc3c645784a33b75df87&id=d1dbc2ba44&e=532750332f
  2. http://minexconsulting.com/wp-content/uploads/2019/12/AusIMM-Long-term-trends-in-gold-Explorn-Nov-2019-1.pdf
  3. Rio Tinto 2019年2月27日付ASXニュースリリース
  4. Antipa社2015年10月9日付ASXニュースリリース
  5. Antipa社2015年3月30日付ASXニュースリリース
  6. https://www.dmp.wa.gov.au/GeoView-WA-Interactive-1467.aspx
  7. Rio Tinto 2019年8月1日付ASXニュースリリース
  8. Alloy社 2018年6月19日付ASXニュースリリース
  9. Carawine社 2019年10月28日付ASXニュースリリース
  10. BHP 2018年11月27日付ASXニュースリリース
  11. BHP 2019年10月17日付四半期報告書
  12. 2018年11月28日付Australian Financial Review “BHP”s new world-class copper strike in South Australia”
  13. 2016年9月26日付 Greatland Gold社 LSEニュースリリース
  14. 2018年6月25日付 Greatland Gold社 LSEニュースリリース
  15. 2018年11月19日付 Greatland Gold社 LSEニュースリリース
  16. 2019年3月12日付 Greatland Gold社 LSEニュースリリース
  17. 2019年9月10日付 Newcrest社 ASXニュースリリース
  18. 2020年4月1日付 Newcrest社 ASXニュースリリース
  19. 2019年9月26日付Stavely社ASXニュースリリース
  20. 2015年9月8日付Stavely社ASXニュースリリース
  21. 2018年1月19日付Stavely社ASXニュースリリース
  22. 2019年3月12日付Stavely社ASXニュースリリース
  23. Newcrest社2019年Annual Report
  24. China Molybdenum社2018年Annual Report
  25. Alkane社2004年1月8日付ASXニュースリリース
  26. Alkane社2017年8月15日付ASXニュースリリース
  27. Alkane社2019年9月9日付ASXニュースリリース
  28. Alkane社2020年3月23日付ASXニュースリリース
  29. P. Duerden. 2015. A geological framework for the northern Molong Volcanic Belt, Lachlan Orogen, NSW, Mines & Wines 2015プレゼン資料.
  30. Alkane社2020年5月19日付ASXニュースリリース
  31. http://mric.jogmec.go.jp/news_flash/20191213/121859/
  32. http://mric.jogmec.go.jp/news_flash/20200330/124008/
  33. http://mric.jogmec.go.jp/news_flash/20200513/124859/
  34. https://www.ga.gov.au/scientific-topics/minerals/investing-in-australian-mineral-exploration/exploration-statistics

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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