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報告書&レポート

2020年7月22日 ロンドン 事務所 福田光紀、遊佐茂雄、倉田清香
20-12

Mining Indaba 2020参加報告

―南ア・DRコンゴ鉱業政策、ESG意識の高まり―

<ロンドン事務所 福田光紀、遊佐茂雄、倉田清香 報告>

はじめに

2020年2月3日から6日の4日間にかけて、今年で26回目となるアフリカ最大の鉱業投資会議「Mining Indaba 2020」が南ア・ケープタウン国際会議場で開催され、アフリカ諸国をはじめとする政府関係者、メジャー及びジュニア企業、テクノロジー企業、国際機関、鉱業関係者が集まった。

JOGMECではブース展示を行うとともに、2月3日にJOGMECセッション「将来に向けたクリティカルミネラルのサプライチェーンの確保」を開催した。1

本稿では、Mining INDABA 2020において特に注目を集めていた南ア鉱物資源大臣及びDRコンゴ首相の鉱業政策に関するスピーチ並びにAnglo American及びIvanhoe社のCEOからのスピーチに加えて、昨年のMining INDABAと比較して多くの発表が行われていた、ESGに関するパネルディスカッションの概要について報告する。

1.南アGwede Mantashe鉱物資源大臣によるスピーチの概要

エネルギー問題のため、私達(南ア政府)は真剣な決断を迫られた。それは、政府は鉱業会社が自らのエネルギーを発電することを認可しなくてはいけないということである。この際、ライセンスは必要なく、単に登録するだけでよいこととしたい。第2に、Eskom以外の企業であっても発電を開始してもよいとの決定を行った。これはセキュリティ対策の一環であり、Eskomが問題に取り組む際の安全装置が必要との観点に基づくものである。私達は、エネルギーを発電する必要があるが、エネルギーの需要を上回る供給を確保することで電力間の競争が生まれ、料金が押し下げられる。私たちの見解では、主要な問題は電気の料金だと考えている。さらに電力規制法の改正を検討中である。これにより自家発電が可能になり分散型の発電が促進され、Eskomプラントの性能低下によって引き起こされるエネルギーギャップを埋めることができる。状況に応じて、発電所は登録のみを必要とし、ライセンスは不要とする。さらに2019年12月には、可能な限り迅速に系統に電力を提供するため、革新的なソリューションを電力市場から提供してもらうRFI(Request for information)を発行した。短期、あるいは中期のギャップを埋めるために、3か月後、12か月後、18か月後で利用可能な即時発電オプションに対し、電力取引市場の活用を通じて電力供給を行うことを歓迎する。

鉱業分野においては、新しいタイプの雇用が必要である。2010年、政府が鉱業ライセンスを付与することで、10bZAR(南ア・ランド)分の新しい雇用をもたらす可能性があると試算した。2019年の推進力の1つは、鉱業の安全性を改善することだった。マイニングによる犠牲者は、2018年の81人から2019年の51人に減少した。これは安全性の向上による結果であり、私たちの目標は将来の死亡者数をゼロにすることである。さらに、失業対策を検討する必要がある。Commission for Conciliation, Meditation and Arbitration(CCMA)の2018/19年次報告書では、建設部門に次いで大きい雇用損失の原因として、鉱業部門の解雇が強調される。高い失業率は経済にとって恐怖である。対話をしコミュニケーションをとることは、円滑な経済活動にとって有効であると確信している。

Anglo Platinumと政府は、Mintek社を通じて、鉱業用トラックにおける水素燃料電池の利用に取り組んでいる。ディーゼルの使用を水素燃料電池に置き換えることが目的である。これは低炭素排出と効率化の観点から大きな影響を与える主要な革新的なプロジェクトである。また、政府と企業の良好なパートナーシップの例でもある。

鉱業分野において、地域コミュニティとの関係は重要である。鉱山企業は地域コミュニティを真剣に受け止め、敵ではなくパートナーとして扱うことが必要である。適切に扱うことで、採掘プロジェクトの運営を保護することができ、そうでなければ混乱が生じるであろう。

最後に、鉱業とエネルギーのポートフォリオは、経済成長と発展にとって重要である。2つの政府部門の統合は、相互に補強することになる。これにより、産業と経済のニーズに適切に対応し、効率的で対応力のある政府が生まれるはずである。南アとアフリカ大陸は、世界的な鉱業とその発展にとって重要である。そして、それらは投資家の選択肢となる必要がある。

2.DRコンゴHon. Prof. Sylvestre Ilunga Ilunkamba首相のスピーチ概要

DRコンゴにおいて制定された新しい鉱業法は、同国の人々が資源を享受し、投資家を引き付けることを可能にするために実施されるべきである。政府としては、この分野での典型的なパートナーシップの促進を継続させたいと考えている。

ここで、私達の鉱業政策の優先事項についてお話したい。鉱業法は、小規模採掘の発展と鉱業の欠陥や弱い立場の児童労働との闘いである。2025年までに、国際機関の推奨事項に従って児童労働などの社会の病気を根絶し、私達の鉱物の消費者に答えを提供する。責任ある鉱業を政府としても強化していくことになる。

(政府の役割は)DRコンゴのすべての管轄区域で、その地域の地球物理学的及び地質学的研究を追求することである。これらの業務を任せることでDRコンゴ人の起業家精神を促進する。

DRコンゴは鉱業分野への投資機会を提供している。鉱業の可能性は非常に大きいが、その開発は遅々としていることから、研究と地質調査への投資が必要である。その文脈において、DRコンゴ政府は将来の世代のために、鉱業部門における改革を始めた。マイニングファンドの運営によって、特にコバルトのような鉱物のトレーサビリティを管理・確保するための戦略が必要である。

持続可能な鉱物資源に対する期待を通じてアフリカの産業組織を引き起こし、その後の国民経済や生活にプラスの影響をもたらすアフリカの鉱業ビジョンを厳密に実行したい。そのために、例えば鉄道、道路、ネットワークなどのインフラの国家間連結を強化する。国家間協力による鉱物政策活動は不可欠であるほか、アフリカの鉱業セクターの連携を強化する必要がある。一方で私達の国の鉱物資源は貧困の撲滅に不可欠であることから、DRコンゴは資源の開発に全面的に関与し、それに関わるすべての参加者に大きな成功を望む。

3.Anglo American Mark Cutifani CEOのスピーチ概要

今日の世界は、テクノロジーのすさまじい進歩によって10年前とは違う社会になっている。

鉱業は人間の進歩を支えるのに不可欠な役割を果たしており、食料の生産、携帯電話の材料の提供、容易な移動、クリーンエネルギーやコミュニケーション、人々の生活の改善等において直接的、あるいは間接的を問わず、世界の経済活動の45%に関係しているなど、現代生活のほとんどの面で明らかに貢献している。本状況にも拘わらず、鉱業の評判については悪い状態が続いている。

今日、我々は鉱業の混乱がコミュニティに何をもたらすのかを認識しなければならない。我々は、急速に成長している世界にとって不可欠な材料を提供するために、これまでとは異なる方法で、より安全で持続可能であり、かつ低コストな方法を見つけなければならない。

鉱業の将来を次世代の社会的価値観に合わせる必要がある。情報提供以上に、議論をリードする必要がある。それは、透明性、責任あるテクノロジーを使った情報、持続可能性と繁栄の共有を高めていくという価値観である。

2020年の鉱業は、私が初めて鉱業界に入った1976年とは別世界である。

1990年代に40kgの銅を生産するためには2tの鉱石を採掘するだけでよかったが、現在では銅の品位が低いため、同じ40kgの銅を生産するためには16倍の量の鉱石を採掘する必要がある。採掘するために必要なエネルギー量も16倍になり、水の消費量は2倍になった。

テクノロジーのイノベーション、デジタル化、AIによるチャレンジは、鉱業界がより安全かつ生産的で環境に優しく、より責任ある持続可能な産業になるチャンスである。Anglo Americanは、鉱業界はより安全で、さらにスマート化を進めることで、より持続可能な未来があると信じており、その未来は私たちが目標にしているものである。

鉱業界としての進歩が促されており、排出量を削減することだけではなく、どのようにして、炭素ゼロとする将来のためオペレーションを変えていくかといった、より積極的なアプローチが取られている。例えば、ディーゼルから炭素ゼロの電気や水素に切り替えることである。鉱業を超えて、サプライチェーン全体において排出量を削減していこうとしている。

鉱業はカーボンニュートラルになることができると信じている。Anglo Americanは2030年までに温室効果ガスを削減し、効率性を30%以上改善するという非常に野心的な目標を立てている。鉱業製品なしではカーボンニュートラルな社会への移行はできない。現代の生活には、私たちが生産している金属や鉱物が不可欠である。排出ガスがきれいな車や水素自動車に使用する白金族から、再生可能エネルギーや携帯電話、他のテクノロジーに必要な銅まで、現代の生活には不可欠である。

2050年までに18%のエネルギーは水素によって作られるだろう。このことは、世界中に400万の新しい仕事が生み出され、新たなクリーンエネルギー供給に貢献するポテンシャルを秘めている。南アには水素社会を発展させ、推進する巨大なチャンスがある。

電力源としての水素の将来的なポテンシャルと二酸化炭素排出量の改善は、鉱山会社がどのように将来を見ているかという点で、重要な投資の正当な理由となる。また、我々は南ア・北Cape州で100MW施設の太陽光発電を行っている。

鉱山会社、政府、地域コミュニティと企業の間のコラボレーションが持続可能な操業へ導くことができる唯一の方法である。

(透明性の話に関して)ブロックチェーンは特に強力なテクノロジーであり、AI、IoTやセキュリティーテクノロジーと共に活用している。

4.Ivanhoe社Robert Friedland CEOのスピーチ概要

都市化が進む中、大気汚染が健康にとって最も環境的なリスクであるとWHOは考えている。その点、銅は環境に優しくウイルスにも強い。抗菌銅で覆われた表面は、患者の感染を58%削減することができる。抗菌銅は抗生物質にも耐性のある「スーパーウイルス」も含むバクテリアも、2時間以内に99.9%の確率で滅菌することができる。

電気自動車向けの銅需要は、2027年までに900%増加する。Tesla Model 3に含まれるバッテリーは過去のModel Sよりも30%以上エネルギー密度が高い。これによって、より銅、ニッケルとコバルトが必要となる。

国際エネルギー機関(IEA)によると、次の30年でエアコンの需要は3倍になると予測されている。エアコン1台におよそ52lb(24kg)の銅が必要であり、2050年までには世界中で80億台のクーラー機器が使用される見込みである。これは2016年の34億台と比べると2倍以上の需要となる。

Ivanhoe社は環境に優しい銅を生産していく。同社では地表面に対する影響の小さい坑内採掘が進められており、55%のテーリングは地下へ戻しているほか、エネルギーはクリーンで環境に優しい水力発電を使うことで、環境への負荷低減策を推進している。保有している銅鉱山の鉱石は高品位であることから、より少ないエネルギーでより多くの銅を生産することができる。

我々は、2020年2月5日にDRコンゴのKamoa-Kakulaプロジェクトの情報をアップデートした。銅の埋蔵量はさらに256百万tに増加し、品位は4.15%が見込まれている。Kamoa-Kakula鉱山はPEA生産レートで18百万tを達成し、世界で2番目に大きな銅鉱山となり、ピーク時には年間700千tの銅を生産することができる見通しとなっている。

2019年8月18日には、ボーリング調査によって孔間として18.86mの区間にわたって品位約18%の銅を捕捉した。

5.パネルディスカッション:Strategic Management of ESG Risks:The One and Only Route to Long-term Success in Africaの概要

司会:Emma Wade-Smith OBE, Her Majesty’s Trade Commissioner for Africa, UK Department for International Trade

スピーカー:
Jeroen Westrik, Global Head of Basic Materials, ABN Amro
Mzila Mthenjane, Executive Head:Stakeholder Affairs, Exxaro
Christopher Sheldon, Practice Manager:Energy & Extractives Global Practice, World Bank
Kaisa Toroskainen, Africa Programme Officer at Natural Resource Governance Institute

Jeroen Westrik, Global Head of Basic Materials , ABN Amroからの発言
  • 5年前は化石燃料が最適で最安の選択肢であり、再生可能エネルギーはお金にならなかった。しかし、長期的な価値観として、皆ESGに注目し始めた。
  • 目標は明確だが、どのように目標達成するのかのコンセンサスがない。異なる報告基準、ステークホルダーからの様々な需要があり、難しい状況にある。
  • Anglo AmericanやBHPのような大手であれば、十分な資源があるため多数の報告基準に対応することができるが、より小規模な企業においては、多数の報告基準を遵守することは極めて重荷になる。これを考慮に入れることが重要であり、業界の中でも平等にすることが大事である。
  • 我々にとっては、ESGをしっかりと実施しないことによるリスクが大きい。
  • ESGのリスクはアフリカ対世界ではなく、大規模企業対小規模企業となると思う。小規模企業は、多数の報告基準や他に求められるものによって苦しむことになるだろう。
Mzila Mthenjane, Executive Head:Stakeholder Affairs, Exxaroからの発言
  • 企業が何をするのか、政府が何をするのかが明確であることが、ESGのパフォーマンスを高め、リスクを軽減することに役立つ。
Christopher Sheldon, Practice Manager:Energy & Extractives Global Practice, World Bankからの発言
  • ESGは企業がポジティブなことをするための素晴らしい機会だと思う。
  • しっかりとESGを実施することで、より魅力的な国になり、投資や資金を得られるようになる。これは企業にとっても政府にとっても紛れもない事実である。また、投資のリスクを軽減するためにもいい機会だと思う。政府にとっても自身の国のリスクを軽減することにつながることから、政府とその国の国民にとっても良いものだと考えている。
  • ESGは世界的な問題である。アフリカではかなり具体的な課題がある一方で、素晴らしいチャンスでもある。
  • 世界中のどこでも違う問題はあるが、原則と基準は同じである。アフリカで企業が正しいことを実践し、政府がどの規制を実施するか明確にすることで、アフリカは金属生産大陸となることに成功することができると思う。
  • ESGに関するデータは、地域コミュニティレベルにも良いことだと思う。採掘プロジェクトの多くのリスクはコミュニティに関することである。すなわち、プロジェクトがコミュニティにどのような影響を与え、どのくらい利益を与えたのか、という点についである。ESGに関するデータはこのような問題を把握するのに役立ち、これはとても重要なことだと思う。
William Scholes, Investment Director:Global Emerging Market Equities, Aberdeen Standard Investmentからの発言
  • ESGが価値を上げるという意見に対して、投資家たちの間ではESGの枠組をファンドに取り入れることにまだ不安があり、リターンに悪影響を与えるのではないかと思われており、まだこのような投資には積極的ではない。
  • 最近では下流がどのようにしているのかを監視している上流側から、多くのプレッシャーがある。
  • 金属に対する価格の面で、(ESGの)需要に差をつけるようになるエンドユーザーを私はもっと見てみたい。
Kaisa Toroskainen, Africa Programme Officer at Natural Resource Governance Instituteからの発言
  • ESGはより広い範囲のものである。リスクを測るために投資家たちが用いる方法の一つである。

おわりに

南ア鉱物資源大臣からは、同国におけるエネルギー問題のため、政府は鉱業会社が自らのエネルギーを発電することを認可する発表があり、参加者から拍手で歓迎されていた。DRコンゴの首相は同国での採掘における責任ある鉱業をアピールし、投資を引き寄せたい意向を強調していた。

企業は去年と同様に電気自動車関連の金属にフォーカスしつつも、今年は、企業が投資している金属が環境に優しく、社会的な貢献をすることができることを考慮に入れている点を強調することが多く、少なくともこの点について触れる講演が多い印象だった。Anglo AmericanのMark Cutifani CEOは、同社のプラチナ資産がどのように水素社会に貢献できるかを強調したほか、Ivanhoe社のRobert Friedland CEOは、同社が超高品位の銅を保有し、エネルギー消費をより少なくし、将来のエネルギー転換に貢献できるのかについて発表していた。

一方、投資家側であるABN Amro社のJeroen Westrik氏は、ESGはまだ多数の報告基準が出回っており、大手企業は資源があるためESGの要求に対応できるが、小規模企業にはそこまでの資源がないとコメントしていた。Anglo AmericanやIvanhoe社のように、ESGにしっかり対応しているというアピールはリスク管理の一つの方法でもあり、投資家側からも投資する企業のリスクを測る方法の一つでもある。アフリカに限らず、ESGのリスクは世界全体に共通するものであり、国別、大陸別で特有なESGリスクがあり、投資家や消費者からのプレッシャーによりESGの重要さが増していると感じた会議だった。一方で、小規模企業がESGに十分な対応を行えず、鉱業界の寡占化が進むのではないかという懸念も感じた。


  1. カレント・トピックスNo.20-05:Mining Indaba 2020 参加報告JOGMEC セッション ―将来に向けたクリティカルミネラルのサプライチェーンの確保―
    http://mric.jogmec.go.jp/reports/mr/20200619/125668/
    http://mric.jogmec.go.jp/wp-content/uploads/2020/03/current_20_05.pdf

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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