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報告書&レポート

2020年8月17日 金属企画部 白鳥智裕、ロンドン事務所 福田光紀、遊佐茂雄、倉田清香 報告
20-14

世界のメタル市場を巡る情勢

―国際非鉄研究会2019秋季会合、LMEウィーク2019 参加報告―

<金属企画部調査課 白鳥智裕、ロンドン事務所 福田光紀、遊佐茂雄、倉田清香 報告>

はじめに1

2019年10月21~25日、ポルトガル・リスボンにおいて国際非鉄研究会(国際銅研究会(ICSG)、国際ニッケル研究会(INSG)、国際鉛亜鉛研究会(ILZSG))の秋季会合が開催され、加盟国や産業団体、企業、専門家等の約100名が参加した。ICSG、INSG及びILZSGでは、2019年及び2020年の銅、ニッケル、鉛、亜鉛に係る世界の鉱石生産、地金生産及び地金消費予測値について、加盟国から提出された数値をベースに検証が行われ、その見通しが報告された2。また、2019年10月31日にはICSG Industry Advisory Panel Meetingがロンドンにて行われ、リスボンでのICSG会合の報告等が行われた。

また、2019年10月28日の週にベースメタルの市場関係者、生産者及び需要家等が英国ロンドンに一同に集い、多くのセミナー、レセプションが開催されるLMEウィークが開催され、銅、ニッケルを中心としたベースメタル市場の見通しや世界経済動向が各社から発表された。

本稿では、国際非鉄研究会及びLMEウィークに参加した中で、非鉄金属市場を巡る情勢としてとしてプレゼンが行われたものの中から、興味深いトピックスを紹介する。

1.ICSG(国際銅研究会)

1.1 Actions of the Copper Industry Related to Climate Change and Energy Transition
(気候変動とエネルギー転換に関連する銅産業のアクション)

説明者:Fernando Nuno氏(Europe Copper Institute, Energy and Climate Portfolio Manager)

銅は、電動モビリティ、送電網、電力など、全てのテクノロジーに使われる。将来的にはエネルギー転換に必要な銅の量は100~300百万tと見込まれている一方で、本需要を満たす供給量が確保できるかどうかが問題である。

欧州ではEUエネルギーロードマップ2050の研究を通して使用されるテクノロジーや、カーボンニュートラルな経済がどのようなものなのかを予測した。この研究からは、銅を最も消費するのは送電網、電力及び電気輸送のカテゴリーだと確認された。

エネルギー転換は一晩で行われることではなく、欧州では最低でも30年ほどかかり、世界中では30年以上かかると思われる。こうした中、銅生産で最もコストがかかるのは電力であるため、銅業界ではこの対策を打ち出している。例えば、チリCODELCOは石油の代わりになる再生可能な太陽光発電施設を、同国のGabriela Mistral鉱山のために建設した。また、独Aurubis社は、同社で発生する熱を近隣の町に提供しながら、140千tほどの二酸化炭素を削減している。

国際銅協会(International Copper Association)は、銅の責任ある調達戦略の基準を策定している。クリーンなエネルギー移行とグローバルなパートナーシップなど、複数のプログラムがある中で、現在の課題はCopper Allianceがクリーンなテクノロジーの活用をどのように促進していくのか、あるいはどの鉱山で何を目的としてクリーンテクノロジーを導入していくか、といった点が挙げられる。

テクノロジーにおいて、私たちは欧州委員会のHorizon 2021によって支援された欧州内のプロジェクトを促進しており、将来的にはレアアースを使用しない電気自動車(EV)を開発しようとしている。パートナーとしては、英・Land Rover社も含まれている。

1.2 Regulatory Issues for the Copper Industry in Europe(ヨーロッパの銅産業に対する制度的課題)

説明者:Bernard Respaut氏(European Copper Institute, Chief Executive)
(1)コントロールされた生産と化学品の使用(REACH)

EUのCO2排出量ゼロ目標とREACH規則は、懸念が大きい物質の使用を禁止・制限している。2018年6月には鉛が同規則の対象のリストに掲載された。最悪のケースだと、鉛の使用が許可されるのは2024年の後半までと予想している。これが銅業界にとってなぜ重要なのかというと、合金と銅のリサイクルに影響を及ぼすからである。EUが鉛の使用を禁止すると、その使用に対する特定の許可が与えられない限り、鉛を単独で又は混合物として使用することができなくなる(特定の濃度制限個体では0.3%、粉末では0.03%)。

これに対し、European Copper Instituteは、欧州の3つの主要な製造業者によるDownstream User Chemical Safety Reportにおけるシナリオの具体化を通して、銅合金製造における鉛の使用に関連するリスクが適切に管理されているかを調査している。また、国際鉛協会(International Lead Association)やEurometaux社と手を組み、社会経済的影響を図解するなどによって、主要なメッセージを伝えながらパブリックコンサルテーションへの対応を行っている。

(2)コントロールされた生産と化学品の使用(銅の職業暴露)

EUと複数のEU加盟国は、銅の職業暴露限界(Occupational Exposure Limits)を大幅に削減しようとしている。これが銅業界にとってなぜ重要なのかというと、過度に保守的な規制がかけられると、業界がこれを順守するために発生するコストが大幅に増加するからである。

これに対し、独立欧州科学委員会がEuropean Copper Instituteに調査計画を策定するためにガイダンスを提供した。これには銅化合物及び粉末の溶解度テスト、インビトロ調査及び現場における疫学と医療に関するデータ調査を実施することが含まれる。これらの調査の結果、人間データでは暴露関連の影響の証拠が示されず、インビトロ調査では現在の職業暴露限界(occupational exposure limits)に関するレベルで毒性の証拠が発見されなかった。

(3)製品環境フットプリント(Product Environmental Footprint、PEF)

ライフサイクル影響評価(Life Cycle Impact Assessment)はEUでも認識されている。これは商品の環境的パフォーマンスを定義するのに好まれる方法である。EUは製品環境フットプリントのカテゴリー規制を策定し、これによってそれぞれの製品カテゴリーにおけるライフサイクルの中で何が最適な環境への影響と活動なのかを特定する。これが銅業界にとって重要な理由として、適切な寿命特性を含む金属の環境パフォーマンスを計算する公式を確立する機会であることや、プラスチックなどの代替物と比べた時に銅のライフサイクル影響評価の基準を確立するために良い機会であることが含まれる。

これに対しEuropean Copper Instituteは、製品環境フットプリントの実装に関する指令と基準(エコデザイン指令、グリーン公共調達指令など)を監視する。また、現在のライフサイクル・環境フットプリント手法の欠点について、規制当局と政策インフルエンサーを教育している。また、ライフサイクル影響評価を実施する際に、銅に関して正しいデータが使われているかの確認も実施している。

(4)環境中立経済へのエネルギー移行―排出量取引制度(Emission Trading System、ETS)

現在の排出量取引制度は欧州委員会が修正中であり(Phase IV -2021年から2030年)、目標は温室効果ガスを2030年までに43%削減することと、間接排出コストの補償対象となる部門を制限しようとすることである。これは銅業界にとって重要であり、その理由は3つある。1つ目は炭素価格の上昇、free allowancesの削減及び電力コストの上昇(排出量取引制度や再生可能エネルギー費用とコストのバランス)により銅の製錬のコストが上がること、2つ目は銅のリサイクルコストが上昇すること(現状より二酸化炭素排出量が多くなること)、3つ目は代替原料と競うための公平な条件が整っていないこと、が挙げられる。

これに対しEuropean Copper Instituteは、Eurométaux社と共同で銅業界の設定価格を受け入れる特性を継続的に確認するようにしている。これは、炭素リーケージ(一国で二酸化炭素排出量を削減したことにより他国で増加してしまうこと)に繋がる。また、銅はコストに占める電力使用の割合が高いため、間接的なコスト補償を行う銅産業に対して継続的な適格性を与えるように支援している。

この結果、追加規制による銅業界への制限が出てくる可能性はある一方で、銅を使用する機会もより多くなる見通しであり、銅業界としては議論に関わっていくことが重要である。

2.INSG(国際ニッケル研究会)

Current and future policy challenges and opportunities for nickel and nickel containing products
(ニッケル及びニッケル製品の現在及び将来の政策課題と機会)

説明者:Veronique Steukers氏(Nickel Institute, Director H&E Public Policy, Head of Office)

ニッケルのような材料は、低炭素化や循環経済などの将来の政策目標を達成するために必要な新技術の開発に不可欠で重要な要素である。資源の最適な利用と、重要なバリューチェーンへのアクセスを確保するために、化学物質管理と低炭素経済・循環経済といった異なる政策目標を調整する必要がある。

化学物質管理については、EUにおいて用いられているRMOAs(Risk Management Options Analysis)と科学に基づく決定プロセスが必要である。RMOAsでは特定の化学物質がどのように使用された場合にリスクがあるかを検証し、その物質の代替可能性や社会経済的重要度を勘案し結論を出す。

コバルト塩については、REACH規則の下で作業場における取扱の制限の議論が行われている。ニッケル化合物については、職業暴露限界(Occupational Exposure Limits)の議論が行われている。コバルトの取扱制限が確定すると、企業に莫大なコンプライアンスコストが課せられることから、低炭素経済実現に不可欠なバッテリーバリューチェーンにもインパクトを生じる。そのインパクトを避けるための評価も必要となる。

経口及び経皮を含む全ての暴露経路を考慮したコバルトの発がん性の分類も進められている。ステンレスにはコバルトが不純物として含まれており、ステンレスやスクラップのリサイクルに対するプレッシャーとなる。地金のステンレスについても、不純物のコバルトのために発がん性物質とみなされてしまう。EUにおいては、開発された新しいプロトコル(Bio-elution protocol)が存在していることから、このような新しい科学的発展を認識していくことが重要である。ステンレスはリサイクル率が高い。また、新しい分類によりリサイクル業者はよりコバルト包含率の低いスクラップを求めるようになるかもしれない。これによる循環経済へのインパクトが生じることから、その評価も必要である。

規制の検討に当たっては、1つの政策が別の政策を妨げにならないように全体的なアプローチが必要となる。メタルは重要かつ革新的なバリューチェーンの基盤であり、様々な政策目標に貢献している。適切なリスク管理ツールと規制プロセスを通じて、安定な投資と重要なバリューチェーンの構築を確保すべきである。

3.ILZSG(国際鉛亜鉛研究会)

3.1 A Federal Strategy to Ensure Secure and Reliable Supplies of Critical Materials
(重要鉱物の安全で信頼できる供給に向けた連邦政府戦略)

説明者:Gary Stanley氏、Salim Bhabhrawala氏(Office of Material Industries, Dept. of Commerce, Director)

2017年12月20日、大統領令13817が発行された。重要鉱物のサプライチェーンにおける戦略的な脆弱性への対処を目的としており、内務長官が行政府と協調して重要鉱物のリストを公開すること、商務長官が行政府と協調して次の内容を含む報告書を大統領に提出すること、が定められている。

  • 国家による重要鉱物への依存を減らすための戦略
  • リサイクルと再処理の技術及びこれらの代替技術の開発に向けた進捗状況の評価
  • 同盟国やパートナーとの投資及び取引のオプション
  • 地形、地質、及び地球物理学のマッピングデータとメタデータが改善され、電子的にアクセスできるようにして民間部門の鉱物探査をサポートすること
  • 重要鉱物資源へのアクセスを強化し、重要鉱物の発見、生産、国内精製を増加させること

また、2018年5月18日には、重要鉱物の最終リストが公表され、その分類と鉱種は次のとおりとされている。

  • エネルギー(ハフニウム、レニウム、タンタル、ウラン)
  • 技術(ゲルマニウム、インジウム、ガリウム、レアアース)
  • 産業(ベリリウム、ジルコニウム、タングステン、アルミニウム、白金族、重晶石、蛍石、ヒ素、スカンジウム、ストロンチウム、チタン、炭酸カリウム)
  • 鉄(マグネシウム、クロム、錫、テルル、マンガン、バナジウム、ニオブ)
  • 電池(リチウム、コバルト、アンチモン、グラファイト)
  • 研究(ヘリウム、ルビジウム、セシウム、ビスマス)

その他、2019年6月4日、重要鉱物の安全で信頼できる供給に向けた連邦政府戦略が発表された。6項目の行動喚起、24の目標及び61の提言から成るが、6項目の行動喚起は次のとおりである。

  • 重要鉱物サプライチェーン全体で変革のための研究、開発及び展開を推進する
  • 米国の重要鉱物サプライチェーンと防衛産業基盤を強化する
  • 重要鉱物に関連する国際貿易と協力関係を強化する
  • 国内の重要鉱物資源の理解を改善する
  • 連邦領土における国内重要鉱物資源へのアクセスを改善し、連邦による許可手続期間を短縮する
  • 米国の重要鉱物に関する労働力を育成する

本戦略により次のような点が期待される。これらによって、我が国の輸入依存を減らし、技術革新におけるリーダーシップを維持し、雇用創出を支援し、我が国の安全と貿易収支を改善する。

  • 重要鉱物の新しい資源の特定に資する。
  • サプライチェーンの全てのレベルで研究開発を含む活動を強化する
  • 国内の下流産業における加工と製造の付加価値化による民間部門の投資と成長を刺激する
  • 鉱山会社、生産者、土地管理者が最新のマッピングデータにアクセスできるようにする
  • 安全で環境に配慮した形でリース及び許可プロセスを合理化する

3.2 U.S. Regulation, Legislation and Lead: The Current Position and Future Challenges
(米国の規制と鉛に関する現状と将来の課題)

説明者:Roger H. Miksad氏(Wiley Rein社, Attorney at Law)
(1)これまでの米国における状況

米国の鉛に対する関心は、今に始まったことではない。古くは、1971年鉛含有塗料予防に関する規則から、最近では子供向け製品内の鉛含有量は100ppmに制限するという政策(2011年)が行われてきている。また、トランプ政権になってからも「鉛に対する戦い(War on lead)」が立ち上がり、2020年の民主党大統領候補戦でも鉛中毒予防に関するTV討論が行われ、選挙政綱では4人の候補者が水道中の鉛について言及していた。

州レベルや地域での鉛に関する取り組みも行われており、例えば、2019年には鉛関連の立法措置が多く見られた(32州で208法案)。その殆どは、鉛パイプ、鉛含有塗料、子供関連の法案であった。

一方で、2010年にはUSA Todayが、400以上のGhost Smelters(既に閉鎖した製錬所で、土壌が鉛汚染されている。)が存在すると報道した。特にCA州では14以上が存在し、同州のVernonではバッテリーのリサイクル工場での鉛汚染もあった。なお、現在同州では、鉛バッテリーを購入する際には、鉛汚染除去ためにバッテリー1つに付き2US$支払わなければならず、2022年に4US$に増加する計画である。

(2)連邦政府の活動

有害物質規制法(TSCA)が2016年に改正されたことに伴い、米国環境保護庁(EPA)は今後数年間、有害物質として代表的な鉛等を含む化学物質のレビューを開始することとした。ただし、レビューの第1回ラウンドでは、鉛を含むどの金属もレビューの対象としないことを決定した。

連邦政府の活動はほとんどバッテリーとは関係ないもので、EPAの“鉛に対する戦い”は、現在“アクション・プラン”となり、子供への鉛曝露の減少、曝露した子供を特定すること及び健康回復への改善、より効果的なコミュニケーションと教育、曝露/健康リスクの低減を知らせるための研究、家庭の粉じん管理と鉛削減、飲料水の鉛レベルの削減、空港エリアにおける空気中の鉛への注意に取り組んでいる。

EPAは、鉛粉塵規則(1996年の更新が最新だった子供の暴露レベルの設定、床上では、鉛粉塵は40~10μg/ft2とすること等)の策定(2019年6月)、鉛と銅のパイプに関する規則(水道システムにおける鉛パイプの交換の要件を設定等)の策定(2019年10月)をもって、鉛を規制する取り組みの主要なものを終了した。

その他の取り組みとして、有害物質疾病登録局(ATSDR)は、鉛に関する毒物学を更新(2019年に最初の案を公開)し、他の連邦政府の評価へ影響を与えている。EPAもまた、総合的な曝露・吸収生物動力学(Integrated Exposure Uptake Biokinetic:IEUBK)、全世代鉛モデル(All-Ages Lead Model:AALM)といった主要なモデルを更新し、EPAの土壌汚染浄化レベルの変更を加速しようとしている(400ppmの汚染浄化レベルを減少しようとしている等)。また、米国環境大気標準は、2021年までにその後5年間の見直しが図られる。

(3)まとめ

ひとつの出来事が、大きな変化の引き金となることがある。連邦レベルでは、MI州Flintの水道危機によって新たな鉛水道管規則が策定され、NGOの立法活動が鉛粉塵基準を作り出した。また、CA州のVernonの鉛汚染では、新しい労働安全衛生規則、税金、有害物質管理局によるグリーン化学規則が制定された。WA州では、射撃練習場での鉛曝露によって、同州で新しい労働安全衛生規則が策定された。

鉛は時代に合わなくなってきており、鉛に対する一般の注意を加速させるだろう。しかし、連邦政府の活動は十分でないので、州がアジェンダを策定している。今後は特に問題が生じたとき、産業政策との調整を継続することが必要である。

3.3 The Lead Industry – Overview of Recent Developments(鉛産業の最近の情勢)

説明者:Andy Bush氏(International Lead Association, Executive Director)

EU法は、鉛とその使用にとって平等な競争の場を目指している。様々の規制において、2020年と2021年はかなり忙しい年である。ELV(End of Life Vehicle、使用済み車両)指令の免除規定及び指令自体の改正が2021年に予定されているのをはじめ、バッテリー指令の改正は2020年に予定されている。また、REACH規則においては、2020年に鉛の認可リスト並びに弾薬及び漁具の鉛禁止に関する決定が予定されているほか、2021年にはEUにおける職業暴露限界(Occupational Exposure Limits)規制が決定される予定である。

鉛とその使用に関する利点の認識を深めるため、これらに関する様々なコミュニケーションのためのイニシアティブが存在する。世界的なイニシアティブとして、Product Stewardship、Consortium for Battery Innovation、国際鉛協会(International Lead Association)がある。これらが対象とする利害関係者は、政策立案者とエンドユーザーの両方である。また、地域的なイニシアティブとして、Charge the Future、Essential energy everyday、Lead Mattersがある。これらの対象は、政策立案者である。こうしたイニシアティブを通じて、鉛については次のような説得力のある主張を行っている。

  • 欧州は経済を低炭素、高成長、循環型社会を実現する世界的な原動力となるよう準備している。
  • 鉛が環境中立的で、経済的・社会的に重要な製品とサービスを生み出し、安全かつ持続可能で、代替手段が他にない不可欠な用途がある。
  • 循環型社会、クリーンエネルギー、クリーンモビリティ、イノベーション、産業の成長という5つの主要なEU政策テーマと目的に歩調を合わせている。
  • 鉛電池は必要不可欠で安全で、持続可能で、信頼性が高く、革新的で、費用対効果が高い。

また、マテリアルスチュワードシップ(Material Stewardship)は鉛電池のバリューチェーンに関する利害関係者の懸念に対処している。国際鉛協会(International Lead association)、Eurobat、Association of Battery Recycles、Battery Council Internationalの4団体が共同で、世界的なイニシアティブ、The Material Stewardship Programを実施している。これは、持続可能な鉛のサプライチェーンのための方法であり、鉛電池産業の未来を守るための主要な鉛生産者とユーザーの共通のアプローチである。エビデンスをもって、基本原則の下で持続可能なバリューチェーンを目指し、責任ある調達、バリューチェーンのEHS(環境(Environment)、健康(Health)、安全(Safety))実績、責任あるリサイクルについての主要な業績指標を示すものである。

4.LME Week

4.1 LME Metals Seminar(2019年10月28日)

講演者:Jean-Sebastien Jacques氏(Rio Tinto, CEO)

ここ10年で、トップ40社の鉱山会社の保有者は400bUS$のキャッシュリターンを受け取っている。

長年事業を行ってきて明確になったことが5つある。1つ目は、量の成長と大規模M&Aは価値を創造することと同義ではない。2つ目は、中国の重要性は高く、弊社の商品の消費者という地位だけではないということ。3つ目は、大規模だから美しい、成功というわけではないということ。4つ目はパートナーシップが成功に導くということ。5つ目は適応性が重要ということである。

社会が変化していく中で考慮に入れなければいけないことは、資源が限りある世界でどのように成長していくか、新しいテクノロジーを活用してどのように変化していくべきなのか、そして社会やパートナーとどのようなに繋がっていくべきなのか、といった点である。

環境に関しては、鉱山会社はより積極的な役割を果たさなければならない。私たちはいくつかの地球上で最も辺境にある場所を開発してきた。今、私たちは21世紀の問題と機会に心を向ける必要がある。

4.2 CRU Breakfast 2019(2019年10月29日)

Technology Metals – a Risky Business(テクノロジー・メタル-リスキービジネス)
講演者:Rebecca Gordon氏、George Happel氏、Hamish Sampson氏、Neil Hawkes氏(CRU社)
(1)需要リスク(コバルト、ニッケル、リチウム)

前例のない新たなモビリティ・ソリューションへの移行にリスクが存在する。

LIB(リチウムイオン電池)の正極材として、ニッケルマンガンコバルト酸リチウムが急速に“既定のバッテリー(default battery chemistry)”になりつつあるが、EVの中国での販売は低迷している。長期的な視点でみると、ライドシェアリングとウーバーライゼーションが、自動車とバッテリーメタル需要における最も大きなリスクである。

(2)供給リスク(銅、コバルト、リチウム、ニッケル)

生産能力増加へのリードタイムを少なく見積もることは出来ない。また、生産者の創意工夫がコスト競争力を維持するために重要となる。

多くのリスクがテクノロジー・メタル・ビジネスに忍び寄ってきている。銅についてはペルーやチリでのストライキや抗議活動、DRコンゴやザンビアでの資源ナショナリズムの発生、コバルトについては技術の変化とDRコンゴでの零細採掘、リチウムについてはリチウム・トライアングル(チリ、ペルー、ボリビア)での環境への懸念と生産コストの上昇、ニッケルについてはインドネシアでの鉱石輸出禁止令等の産出国政府の政策や市場バランスがリスクとなり得る。

(3)サステナビリティ(鉛)

意味のあるリサイクル率を算出することは、新しくかつ複雑なアプリケーションで成し遂げることは困難である。

鉛は、最もリサイクル率の高い金属で、鉛バッテリーの90%以上がリサイクルされている。また、他の金属と異なり、鉱山生産によるものよりリサイクルからの生産が大きい。しかし、製錬所の処理能力がフォーマルであろうとインフォーマルであろうと過剰に拡大し、世界の鉛はスクラップの奪い合いになっているため、地域内でも地域間でも、鉛スクラップの価格が高騰し、貿易が重要なものとなっている。

4.3 Roskill Rare Earth Symposium(2019年10月29日)

NdFeB: Fatal attraction or key to new-energy technologies?
(NdFeBは新しいエネルギー技術の危険因子か鍵か。)
説明者:Nils Backeberg氏(Roskill社, Deputy Manager, Steel Alloys)

EVによりネオジム、プラセオジム、ディスプロシウムが注目を集めている。レアアースの約3割はマグネットに用いられている。xEVの販売台数の伸びがNdFeB(ネオジム磁石)の需要の拡大を促しており、5年で5~7%の成長が予想されている。レアアース磁石はモーターや発電機に用いることで、高いエネルギー効率を実現することができる。

重希土類については、ミャンマー国境閉鎖後に原料が必要となり、中国内を刺激することになった。また環境規制が開発の制限となっている。現在、中国外では重希土類は供給が限られている状況である。

2018年に中国ではレアアースのリサイクルに関し、80以上のオペレーションと60以上のプロジェクトが行われた。NdFeBに焦点が当てられており、その中心地は江西省と山東省である。

レアアースの需給を見ると、磁石用材料か否かで傾向が異なる。磁石用材料の中ではディスプロシウム及びテルビウムのひっ迫度合が、他の材料よりも敏感に反応している状況である。

おわりに

本稿では、国際非鉄研究会が発表したもののうち、特に金属それ自身や金属のサプライチェーン過程で発生する自然環境や人体への影響を如何にして軽減するかといった点に着目し、各国の規制や各団体による取り組みを報告した。また、LMEウィークの紹介では、Rio Tinto CEOのJean-Sebastien Jacques氏が、同氏これまでの事業への取り組みを通じて、鉱業を行うにも社会から変化が求められていることが公演された。CRU社が述べるリスクやRoskill社によれば、モビリティ・ソリューションへの移行や生産者の創意工夫が必要であり、変化に対応することがリスク回避の一つの手段であるとされている。

従前より非鉄金属業界では、自然環境や人体への影響や地域のコミュニティへ配慮しながら、生産や消費を行っていくことが求められている。また、非鉄金属各社もこれらに対応して、CSR等で自社の取り組みを報告している。しかしながら、社会や環境は変化し続けており、国際非鉄研究会においてもLMEウィークにおいても、非鉄金属を取り巻く環境の変化に如何に対応するかが今後も必要なこととして述べられていたように思う。


  1. 2020年における新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大を受け、非鉄金属市場については急激に情勢が変化している。本稿の情報については長期的なテーマが多いものの、2019年時点の情報であることについて注意されたい。
  2. 発表された見通しの内容についてはJOGMECのニュース・フラッシュで報告
    銅:2019年11月5日付 ICSGの銅需給予測、2019年は320千t供給不足、2020年は281千t供給過剰
    鉛、亜鉛:2019年11月7日付 ILZSGの鉛需給予測、2019年は46千t、2020年は55千t供給過剰
    ニッケル:2019年11月6日付 INSGのニッケル需給予測、2019年は79千t、2020年は47千tの供給不足

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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