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報告書&レポート

2020年10月7日 シドニー Whatmore康子 報告
20-16

Uranium 2020参加報告

<シドニー事務所 Whatmore康子 報告>

はじめに

Uranium 2020カンファレンスは、大洋州鉱業冶金協会(AusIMM)の主催により2020年6月30日、7月1日、7~9日の5日間にわたって、各日ともにCOVID-19感染防止のためオンライン形式として半日の行程にて開催された。同カンファレンスには110の企業や団体に所属する230名が参加し、現在と将来のウラン市場、原子力に関する今後の政策と戦略、ウラン市場への投資における現状、原子力テクノロジーと小型モジュール原子炉(SMR)、ウラン探鉱へのイニシアティブの5項目に関するトピックについての講演が行われた。オンライン形式による今回のカンファレンスは、講演中に参加者の質問や感想、意見が共有メッセージを通じてリアルタイムに閲覧可能であるという点で、遠隔参加でありながらも通常のカンファレンスと同等、ある面においてはそれ以上の有意義な点を備えていたと思われる。以下に、主要な講演の内容に関する報告を行う。

1.2020年におけるウラン市場のアップデートについて
(Ms. Treva E. Klingbiel – President and principal, TradeTech LLC)

ウランのスポット価格は2020年5月31日の時点で33.85US$/lbと、2020年初頭から35%値上がりした。これはCOVID-19流行により、Cigar Lake鉱山の操業休止やKazatompromによる減産が実施されたことが影響している。

現在、世界のウラン需要は、米国やEUにおいては天然ガスや再生可能エネルギーの利用増加により低下しているが、中国では原子力発電所が現在稼働する45基に加え、COVID-19流行にも関わらず12基で順調に建設が進められていることからも世界全体では増加し、2035年には2018年比で17百万lb U3O8増加すると予測されている。

一方で、現在の市場はウランの供給を促進するための条件が揃っていないことが指摘できる。例えば、米国政府は「ロシアからのウラン輸入量を国内市場における供給量の20%以下に制限する」というRussian Suspension Agreementの期限を2020年末に控え、早ければ同年8月4日にもその更新の是非が決定されるが、これに伴う市場の先行き不安で米国では長期契約による購入控えが起きている。また、米国ではCOVID-19流行に伴う経済低迷により電力会社が顧客から電気代を回収できずキャッシュフローが悪化しており、やはりウランの買い控えが生じている。これらの状況は、ウラン企業が鉱山の新規開発を躊躇する背景ともなっており、探鉱投資も低調な状況が続いている。鉱山開発には10年という長期を要するため、今後5年間に新規ウランプロジェクトからの生産が開始されなければ、ウラン市場の需給バランスは将来にひっ迫すると考えられ、操業休止や減産からの回復や新規プロジェクトからの生産が無ければ、2035年までには年間100百万lb U3O8以上の不足となると予測している(図1)。

以上のような状況において、豪州はウラン鉱山開発において有利な立場にある。これは、豪州におけるウラン埋蔵量が世界全体の27%を占めているほか、豪州が政治的に安定していることや鉱業専門技術の人材が充実していることなどが理由である。また現在、世界におけるウラン供給源の80%は僅か8か国によって占められており、東南アジア諸国は原子力発電のウラン調達先を少数国に依存しないよう多様化する必要があるが、豪州は東南アジアに近接しており、供給国として地理的に有利な立場にもある。一方で、ウラン鉱山の新規開発や操業再開が可能となるには、ウラン価格は少なくとも44US$/lb U3O8にまで値上がりする必要があるが、電力会社は市場の先行き不透明感や在庫が十分であることなどを背景にこの価格でも高いとしており、これが今後におけるウラン鉱山の新規開発の足かせとなっている。

図1.2035年までの需給予測図

図1.2035年までの需給予測図

2035年までに、年間100百万lb U3O8のウラン不足が生じる可能性がある。
(出典:Trade Tech社プレゼン資料)

2.歴史が語るウラン生産事業における成功の困難さ
(Mr. John Borshoff – Managing Director/CEO, Deep Yellow Limited)

ウラン産業は誕生してから未だ75年の新しい産業であるが、この間、1945~1970年、1971~2000年、2001~2019年において3つの大きなサイクルが生じた(図2)。最初のサイクルでは、東西冷戦による核兵器開発や原子力発電の試験的な操業を背景にウラン探鉱が開始された。第2サイクルでは、1971年の石油ショックにより原子力発電が化石燃料発電の代替として進歩して探鉱とウラン利用が促進されたが、1986年のチェルノブイリ原発事故によりウランの需要と探鉱が激減することで終了した。第3サイクルでは、中国政府が2001~2005年の第10次五カ年計画において原子力発電を年間30%増量するという政策を発表して以来1ウランブームが生じ、世界ではウラン探鉱企業が大小合わせて400社以上設立されたが、2011年の福島原発事故を境に60社以下に激減し、ウラン探鉱の専門家も急減した。そして現在では、ウラン産業が回復の兆しを見せ、第4サイクルが生じようとしている。

予測によると、2023年以降はウランの需要がひっ迫してウラン鉱山開発の機会が訪れるとされている。ここで注目したいのは、過去の3サイクルで大きな成功を収めたジュニア企業は、加Denison Mines社(第1サイクル)、豪Queensland Mines社(第2サイクル)、豪Paladin Resources社(第3サイクル)の3社のみであるということだ。これは、ウラン産業が地質学、エンジニアリング、冶金、供給市場、生産物のマーケティング、環境、財務、臨界状態維持のマネジメント、政治面など様々な分野における理解を必要とし、複雑極まりない産業であるということが関係している。ウラン市場のプレーヤーは、第1サイクルでは政府機関や国営企業が主要を占め、第2、第3サイクルでは民間大手がこれに加わったが、第4サイクルでも同様の状況となると予測される。ウラン市場の今後における成長幅の70~80%はロシアや中国の国営企業、加Cameco社、大手企業の副産物による生産によって占められることは確かであろう。そして、残り20~30%をジュニア企業が補完することになると考えられるが、これまでの経緯が示すように大規模なウラン鉱山の開発を達成及び管理できるジュニア企業は非常に少ないと考えられ、これが懸念材料となっている。特に次世代においては、ウランの安値により利鞘の少ない状況下で、電力会社への供給をいかに確実に行うかが重要となってくる。ジュニア企業がこれらの問題を克服し、ウラン市場で成功を収めるには、上記のようなウラン市場での過去における問題や独特の性質を十分に理解し、将来的な動きに備える必要がある。また、新興ジュニア企業は、過去における供給実績を持たずとも、電力会社に対し長期のウラン供給が可能であることを納得させることが必要となるだろう。

図2.1945年から2020年におけるウラン産業の3つのサイクル

図2.1945年から2020年におけるウラン産業の3つのサイクル

縦軸は、ウランの生産量を表している。
(出典:Deep Yellow社プレゼン資料)

3.価格が全て
(Mr. Mike Alkin – Chief Investment Officer and Founder, Sachem Cove Partners)

世界のウラン市場で40%のシェアを占めるカザフスタンKazatomprom社は、2018年にロンドン証券取引市場に上場する際に初めて同社のウラン生産量に関する詳細を公表したが、これによると同社の生産量は2022年にピークを迎え、その後数年間に低下することが予測されている。また、同社は今後10年以上においてCAPEXや探鉱費用を縮小し、生産調整を図る計画であるともされている。その一方で、ウラン需要は今後も原子力発電所の建設が相次ぐことで増加する見通しであるため、将来的にはウラン供給がひっ迫することが予測される。ウランの供給不足は、新規ウラン鉱山が操業を開始してその後も順調に操業を進めることにより埋めることが可能であるが、そのためにはウラン価格が鉱山のコスト額を上回る必要性がある。ウラン価格は現在33US$/lb U3O8だが、45~50US$/lb U3O8まで値上がりしなければ、二次供給や国営企業の生産量を加味しても、2030年までに累計で600百万lb U3O8、年間で58百万lb U3O8の供給ひっ迫が生じると予測されている。

AISC(All-in-Sustainable Cost)が現在のウラン価格33US$/lb U3O8を上回る鉱山の生産量は合計105百万lb U3O8/年で、それ以下である鉱山の生産量は合計100百万lb U3O8/年、AISCが50US$/lb U3O8以下の鉱山の生産量は合計140百万lb U3O8/年であるとされている。また現在、ウラン安値を理由に操業が停止されている鉱山の名目上の年間生産量は総計2.3百万lb U3O8/年、今後2年間に資源枯渇によって生じる減産量は合計3百万lb U3O8/年で、過去の備蓄や解体された核兵器から供給されるウランなどによる2次供給量は25百万lb U3O8/年となると予測される。ウラン鉱山の操業開始には10年間という長期を要するということを加味して、この先10年間のウラン市場を予測すると、少なくとも毎年25百万lb U3O8、さらにコスト高による減産や閉山を考慮に含めると、それ以上のひっ迫が生じると考えられる。供給不足はもう既に始まっており、2021年に電力会社への長期契約に基づく供給量が前年比で約30%減と大幅に低下することを皮切りに、今後5年間で著しく需給バランスがタイトになると予測される。これらの供給ひっ迫においては鉱山からの1次供給量の増加が重要となるが、そのためには上記のようにウラン価格が値上がりする必要がある。鉱山操業の新規開始や持続のためには、ウラン価格は少なくとも55US$/lb U3O8となる必要性があると考えられるが、この価格でも供給ひっ迫は軽減されるのみで、需給均衡のためには65~75US$/lb U3O8となる必要があるだろう。この先10年間の供給不足は、ウラン鉱山の操業開始には10年間を要するという事実からも既に避けられないと考えられ、原子力発電企業は燃料確保のために、高値で長期供給契約を受け容れる傾向となることが予測される。

4.豪州のウラン供給と中国需要
(Mr. Guy Keller Commodity – Specialist and PM, Tribeca Investment Partners)

豪州は、ウラン資源量が世界シェアの約30%を占め、2019年のウラン生産量は7.8千tUとカザフスタンとカナダに次いで多かった。一般に、豪州はウラン開発に対する投資環境は非常に良好であるとされているが、これは連邦政府に対する評価であり、個々の各州における事情はそれぞれ異なる。例えばSA州政府はウラン採掘には担当大臣の認可を必要とするが、基本的に賛同の姿勢を取っている。一方、VIC州政府は州法(Nuclear Activities(Prohibitions)Act 1989)によってウラン開発を完全に禁止しており、NSW州政府も探鉱は認めているが、採掘は副産物としてのみと州法で定められている。また、WA州とQLD州は、ウラン開発を禁じる州法は特に存在しないが政府の方針による影響が大きく、現政府の政策により採掘が禁止されている(図3)。この状況に関しては、QLD州で2020年10月、WA州で2021年3月に州選挙が実施されるため、政権が交代すれば新たな変化が生じる可能性がある。

豪州ではこれまで、ウラン探鉱や原子力発電の規制を緩和するための見直しが連邦政府や州政府によって数回行われており、これらの大半においてはこれといった改革も行われなかったが、2019年にVIC州政府、NSW州政府、連邦政府がそれぞれ行った見直し調査2では、規制緩和に前向きな結果や、世論からの好反応が得られている。また、豪連邦政府はCOVID-19流行後の経済刺激政策を実行する計画であるが、ウラン産業はこの政策に乗じ、同産業が炭素排出量ゼロやベースロード発電というメリットを備えているうえ、GDPへの貢献度も高いことをアピールする機会が生じている。

需要面においては、中国における原子力発電所の操業や建設の順調な継続が、豪州におけるウラン産業の駆動力となるだろう。中国では現在47基の原子炉が稼働し、2019年のウラン需要は25百万lb U3O8/年とされるが、今後予定される原子炉建設で2025年には42%増の35百万lb U3O8/年、2030年には実に300%増の75百万lb U3O8/年に増加する見通しであるとされる。

その一方で供給面は現在、COVID-19流行により月間供給量の50%以上が減産となるなど、原子力発電企業が供給源を特定の国や地域に依存することが危険であることが明らかとなっている。豪州ではこの状況において、ウラン産業がロビー活動を行い、ウラン開発への規制を緩和するよう連邦・各州政府に働きかけていく時代が来ていると言える。

図3.豪州連邦・州政府におけるウラン鉱業政策について

図3.豪州連邦・州政府におけるウラン鉱業政策について

(出典:Tribeca社プレゼン資料)

5.豪州の原子力テクノロジー政策
(Ted Obrien MP – Chair of the House of Representatives Environment and Energy Committee)

豪州では、1998年に豪連邦政府によってモラトリアムとされて以来、原子力発電所の建設や操業が禁止されており、原子力に対する一般的なイメージもチェルノブイリや福島の原発事故など否定的なものが主流であった。だが最近では、気候変動の問題やテクノロジーの発達によってこの風向きが変わってきている。原子力発電は発電時の温室効果ガス(GHG)排出が無く、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって、GHG排出を緩和する発電システムであるとされている。また、原子炉はテクノロジー面において小型モジュール原子炉(SMR)など、第1~第3世代よりもはるかに安全性や建設面で優れた第3+世代に移行しており、将来的には第4世代へと移行する。豪連邦政府はこれらの動きに鑑み、2019年8月に与野党で構成される環境エネルギー常設委員会(Standing Committee on the Environment and Energy)が豪州における原子力エネルギー利用の前提条件に関する調査を実施し、同年12月に発表したこの調査の報告書で以下の3つの提言を行った。

  1. 1)原子力エネルギーを豪州の将来的なエネルギーミックスの一つとして検討する
  2. 2)原子力発電について理解を深めるため、テクノロジーや経済性に関する調査などの作業を進める
  3. 3)モラトリウム分野やテクノロジーの種類に関して一定の制限を設け、原子力利用を進める。

これらの提言においては、安価なエネルギーの安定的調達やGHG削減を優先し、原子炉を導入においてはSMRなど第3+世代以降のテクノロジーのみを利用することなどが重要視されたほか、原子力利用を発電だけでなく医療なども含め体系的かつ戦略的なものとすることや、コミュニティと人々を最重要視する点なども掲げられた。

豪州では過去12か月間において、上記のように気候変動や原子力テクノロジーの飛躍的な発展を背景に、原子力エネルギー利用に関する論議が大きく進歩した。しかしながら、この論議は、例えば政治的にはモラトリアム解除においては与野党の意見一致が必要とあれるなど、長い道のりを要するだろう。豪州政府が原子力の利用を決定するにしても、それは10年を要し、2030年以降となることが予測される。

6.原子力発電における科学の利用(Mr. Adi Paterson – CEO, ANSTO)

原子力テクノロジーは近年飛躍的な発展を遂げており、SMRを含む現在の第3+世代を経て、更に技術が進んだ第4世代へと入ろうとしている。未来の原子力エネルギーは、コンパクト性、工場での組み立て、建設の短期化、地下への設置 、パッシブセーフティなどの特徴を備えたものとなる。SMRは最大容量で300MW、小型のものは70MW以下と30MW規模の風力発電プラント2基分に相当するコンパクトな設計であるが、非常に強力なパッシブセーフティ機能を備えており、次世代における原子力発電の主流となるだろう。パッシブセーフティとは、原子炉自体に安全装置が備わっており、発電所の保安をオペレーターに頼らずに確保することが可能な「内在的保安」のことである。SMRの開発により、原子力発電所は保安面や社会面での受容に大きな変化が生じると考えられる。

原子力発電は、炭素排出量がゼロに等しく発電燃料としての効率性が高い面から、再生可能エネルギーとの併用が理想的とされる。例えば、風力タービンの発電容量は1基につき1~2MWで、1タービンの重さは約176tである。これらのタービン1基の1日における発電量をリチウム電池に蓄積すると、196tというタービン以上の重さの電池が必要となり、コスト効率が悪い。また、豪州人の1日における電力消費量は平均8.5kWhだが、この電力量を石炭火力発電する場合、3kgの石炭が必要とされる。一方、これと同等の電力を原子力発電で行えば、これに必要とされるウランはわずか15mgである。このように、原子力発電が効率的である点は、今も過小評価されている。

世界エネルギー機関(IEA)の調べによると、2017年に世界の発電量で各発電源が占めた割合は、石炭44%、天然ガス23%、原子力13%、水力7%であり、太陽光・潮力・風力は合計4%と非常に少なかった。これに基づくと、炭素排出の削減が達成されるのは遠い将来であると予測されるが、世界の多くでは2030年をGHG排出量削減の目標値達成における時期としており、これが目の前に迫っている。この状況において、発電源を再生可能エネルギーや蓄電池のみに依存することが上記の理由からも現実的でないことから、原子力発電のGHG排出削減における貢献やコストなどについての具体的な論議を、早急に始める必要がある。

7.豪州における小型モジュール原子炉
(Mr. Tony Irwin – Technical Director, SMR Nuclear Technology)

現在、世界で建設されている原子力発電所の数は54基であり、発電規模は平均的なもので1,100MW、場所によっては1,700MWのものとなるが、これらの規模において3つの問題が付随する。その1つ目は、当初のCAPEXが大きいということである。英国のHinkley Point C発電所を例に取ると、その額は約25bUS$である。2つ目は、建設期間が平均で5年間以上と長いことである。そして3つ目は、送電網への供給に関する問題である。豪州では、発電所から電力供給先への送電線が最長4万kmと非常に長く、送電能力量は多くても750MW程度となり、通常の原子力発電所では送電能力量に対して過大規模となってしまう。

以上の点からも、豪州では現在、発電容量が300MW以下の小型モジュール原子炉(SMR)に政府やメディアの関心が寄せられている。SA州政府が2016年に行った調査では、SMRがコスト面でメリットが大きいという結果が得られており、NSW州政府が2000年3月に発表した調査報告書でも、SMRが豪州の環境下においても適切であり、発電時の発熱を海水淡水化に利用するなど多目的利用が可能であるという点でメリットが高いと提言された。

SMRはもともと、原子力潜水艦や砕氷船で使用されることを想定したものであるが、小型モジュールであるため工場での組み立てが可能であり、品質の確実性が高い。SMRは、二酸化炭素排出量が12kg/MWhと風力と同等であり、太陽光よりも少ない上、発電出力の安定性が90~95%と高い。また、SMRは必要とされる核燃料の量が少ないことから地中に原子炉を建設することが可能であり、発電所の外側に緊急避難ゾーンを併設せずとも防護性を備えているため、用地の選択肢が広い。また、SMRは燃料補充においても、所要時間は1原子炉につき1時間程度で、その間は他の原子炉が引き続き稼働するため、シャットダウンをする必要がない。

SMRはこれらの要素に基づき、豪州においては小規模な送電網システムやディーゼル発電が高コストである遠隔地に適していると考えられる。また、豪州では2030年代に多くの石炭火力発電所が寿命を迎え閉鎖されることから、これらの発電所に替わるものとして利用されるポテンシャルも備えている。

8.地質学的観点におけるウラン探鉱の将来
(Mr. Andy Wilde – Chief Geologist, Deep Yellow Ltd.)

世界のウラン市場は今後、供給ひっ迫が生じ、2040年には160~260百万lb U3O8の供給不足となると予測され、新規ウラン鉱床の発見が必要とされている。ウラン探鉱には、地質学、鉱業、冶金、環境、経済などの総合的な情報を備えた「Geometallurgy」の知識が重要となるが、現在はウラン専門の地球科学技術者など、これらの知識を備えた専門技術者が不足している上、その育成も遅れている。この背景には、1983年のチェルノブイリ原発事故によってウラン価格が急落し、1985~2005年にウラン投資が激減したことがある。

ウラン探鉱においては、機械と人間との共同作業によって有望地の抽出を行うことが、今後更に重要となるだろう。これらのテクノロジーには、低コストで地球化学データの収集がリアルタイムで可能な携帯型蛍光X線分析装置(XRF)や、これを補完する役割を果たす携帯型レーザー誘起ブレークダウン分光分析装置(LIBS)などの例が挙げられるが、特に重要なのはマシーン・ラーニングやAIの活用である。

探鉱においては、限られた予算内で利益性を高めるために、膨大なデータを統合して分析して大陸規模の大掛かりな有望地抽出を行うことが重要とされるが、その分析に近年発展の目覚ましいマシーン・ラーニングやAIを活用することが非常に有用である。この5年間で、マシーン・ラーニングやAIによる探鉱を行うスタートアップ企業が世界中で9社誕生しているが、残念ながらいずれもウランはターゲットとされていない。一方で豪州では銅金鉱化を対象とし、豪OZ Minerals社やSA州政府がマシーン・ラーニングやAIを活用した有望地抽出の提案を競うコンテストを実施しており、特にOZ Minerals社のコントストには1,000人以上の参加者があり、400以上の有望地が発見されるという成功を収めた。

今後のウラン産業の発展に向け、経済・探鉱知識に特化した地質学の学位の設置などを通じて地球科学技術者の育成を行うことや、最新テクノロジーを駆使してグラスルーツ探鉱の発見確立を挙げること、ウランに関するGeometallurgyのモデル確立に向けた取り組みを行うことなどが重要と思われる。

おわりに

本カンファレンスは、ウラン市場や原子力に関する政策、技術、探鉱など幅広いトピックを扱ったものであったが、各講演において、専門的な情報を具体的な事例を挙げて理解し易く説明されており、これらのトピックを相関的に捉えることが可能となる構成であった。特に、これらの講演に基づき、世界で多くの国々や地域がGHG排出量削減の目標達成年と定める2030年が10年後に迫る中、二酸化炭素の排出がほぼゼロであることやSMRなどの技術革新などから原子力発電への関心が高まる一方で、新規鉱山の操業開始までに必要な年月として10年先を見据えることが必要なウラン産業では既に供給ひっ迫が生じ始めているという現状があり、今後もウラン産業や市場の動向を注視する必要がある。また、本カンファレンスではCOVID-19流行により不測の影響がウラン産業やウラン市場に生じたという指摘も多かったが、これに鑑みて予測や分析におけるシナリオの範囲を広げることも重要である。


  1. Nuclear power in China’s development plans
    https://www.chinabusinessreview.com/a-boost-for-nuclear-power/
  2. VIC州政府がウラン開発の解禁に関する調査Nuclear prohibition inquiryを2019年11月に開始。https://www.parliament.vic.gov.au/images/stories/committees/SCEP/Inquiry_into_Nuclear_Prohibition_Inquiry_/Media/6_NOV_2019_Nuclear_prohibition_inquiry_launched.pdf
    NSW州政府が2019年6月6日にウラン採掘と原子力施設を禁止する法律Uranium Mining and Nuclear Facilities(Prohibitions)Act 1986の廃止草案に対する調査を開始。https://www.parliament.nsw.gov.au/committees/inquiries/Pages/inquiry-details.aspx?pk=2525
    豪連邦政府が2019年8月に豪州における原子力エネルギーの前提条件(prerequisites for nuclear energy in Australia)の調査を開始。https://www.aph.gov.au/nuclearpower

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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