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報告書&レポート

2019年4月16日 金属資源技術部 赤堀道弘
19_05_vol.49

コバルト生産技術動向

<金属資源技術部 赤堀道弘 報告>

はじめに

コバルトは、ジェットエンジン・ガスタービン向けの耐熱鋼やスーパーアロイ、永久磁石、炭化タングステンとの超硬合金等に使用されているが、足元では小型家電用および車載用のリチウムイオン二次電池への使用が急増している。

2018年3月から5月にかけて、コバルト価格は車載用リチウムイオン電池向けコバルト量の不足を懸念して一時90,000US$/tを超えていたが、8月以降は大きく下落し12月末までは55,000~60,000US$/tで推移していた。しかし、2019年に入り更に下落し、3月末現在では$31,000US$/t前後にまで低下している。

1. コバルトの概要

1.1 コバルトの特性・用途

表1にコバルト・ニッケル・銅の特性を示す。原子番号順に連続している3成分であるが、銅に対しコバルト・ニッケルは400℃程度融点が高いことが分かる。また密度はほぼ同等である。

これらの特性を活かして、耐熱鋼や超硬合金の添加成分として無くてはならない成分となっている。

表1.コバルト・ニッケル・銅の特性
コバルト ニッケル 備考
原子番号 27 28 29
原子量 58.933 58.693 63.546
融点 1,495℃ 1,455℃ 1,083℃ コバルト、ニッケルの融点は銅より高い
沸点 3,100℃ 2,920℃ 2,570℃
密度 8.90g/cm3 8.91g/cm3 8.95g/cm3
地殻存在度 29ppm 105ppm 75ppm (参考)亜鉛:80ppm

(出典:理化学辞典)

図1に2017年のコバルト用途を示す。バッテリー向けに半分以上が使用されている。続いて、高性能合金・工具材料・触媒向けに使用されている。

図1.2017年のコバルト用途

図1.2017年のコバルト用途

(出典:Roskill データに基づきJOGMEC作成)

図2に2009年以降のコバルト消費量の推移を示す。2016年までの7年間に年平均で約9%の伸びを示したが、内訳を見るとバッテリー向け消費量がほぼ3倍へと大幅に増加している。今後は中国・欧州・北米で拡大している自動車の電動化に比例して、バッテリー向け消費がさらに増加することが予想される。

図2.2009年からのコバルト消費量の推移

図2.2009年からのコバルト消費量の推移

(出典:Roskill データに基づきJOGMEC作成)

1.2 コバルトの鉱石タイプ

表2に世界のコバルト鉱石タイプ・生産比率・含有量・所在地・主な鉱物等を示す。(カッパーベルト銅鉱石を薄茶色、ニッケル硫化鉱を薄青色、ニッケルラテライト鉱を薄緑色でそれぞれ示す。)

アフリカのDRコンゴ・ザンビアのカッパーベルトより産出される銅鉱石中へのコバルト含有率が非常に高いことが分かる。

またこのカッパーベルトより産出されるコバルト量は、世界の60%程度を占めており、銅製錬における副産物として回収されている。残りの40%はニッケル製錬からの副産物として回収されているが、足元はニッケルラテライト鉱からの湿式製錬技術の開発と進化により効率の良いコバルト回収が可能となり、ニッケル硫化鉱からのコバルト回収量よりも増加している。

ただし、ニッケル硫化鉱中のコバルト品位は約0.6%と低いものの、浮遊選鉱により10%以上にまでコバルト分の濃縮が可能となるため、ニッケル製錬プロセスを用いたコバルト回収時にはコスト的に有利となっている。

表2.世界のコバルト鉱石タイプ・生産比率・含有量・所在地・主な鉱物等
鉱石タイプ Co生産比率 Co含有率 所在地 主な鉱物
硫化銅鉱 15~20% 0.1~0.4% DR Congo
Zambia
Carrollite [CuCo2S4]
Linnaeite [Co3S4]
酸化銅コバルト鉱 40~45% 0.1~0.4% DR Congo Heterogenite [CoO(OH)]
ニッケル硫化鉱 10~15% 0.1% Canada
Scandinavia
Australia,Russia
Pentlandite [(Fe, Ni, Co)9S8]
Siegenite [(Co, Ni)3S4]
Cattierite [CoS2]
高ヒ素鉱 1~3% 0.1% Morocco Germany
Norway, E Ontario
Cobaltite [(Co, Ni)AsS]
Skutterudite [(Co, Fe, Ni)As3]
ニッケルラテライト鉱 25~30% 0.05~0.15% Australia, Cuba
New Caledonia
Madagascar, Indonesia
CoO

(JOGMEC作成)

また表3にニッケルラテライト鉱中の主要成分を示す。

ニッケルラテライト鉱は、地表部から深部に向かい含有するその他構成成分の違いにより、フェリクリート・リモナイト・ノントロナイト・サプロライトに分けられ、ニッケルおよびコバルト品位が比較的高くマグネシウム品位が低いリモナイト・ノントロナイトは、HPALの様な湿式製錬プロセス向け原料となる。またマグネシウム含有量の多いサプロライトは、主に乾式製錬プロセスによりフェロニッケル製造向け原料として利用される。

表3.ニッケルラテライト鉱中の主要成分

表3.ニッケルラテライト鉱中の主要成分

(JOGMEC作成)

1.3 コバルトの鉱床分布状況

図3に世界のコバルト鉱床分布を示す。図中で、カッパーベルト銅鉱石を茶色・ニッケル硫化鉱を青色・ラテライト鉱を緑色でそれぞれ示す。

世界のコバルト生産の大部分は、アフリカのDRコンゴ・ザンビアにまたがる層状銅鉱床、カナダ等に見られる硫化ニッケル鉱床、豪州等のラテライト質ニッケル鉱床の副産物として産出している。この図より、コバルトは偏在性の著しい金属資源となっていることが確認できる。

豪州では硫化鉱も、またブラジルではラテライト鉱もそれぞれ産出するが、図3では鉱量の多い鉱石を主として色分けした。

図3.世界のコバルト鉱床分布(JOGMEC作成)

図3.世界のコバルト鉱床分布(JOGMEC作成)

また図4に世界のコバルト埋蔵量を、図5に2016年のコバルト鉱石生産量をそれぞれ示す。

世界のコバルト埋蔵量の50%以上は、カッパーベルトに位置しているDRコンゴおよびザンビアに存在している銅鉱石が主となっており、生産量もDRコンゴ一国で世界全体の約54%を産出していることから、コバルトは偏在性の著しい金属資源となっている。

ニッケル鉱石では、硫化鉱からの生産国である中国・カナダ・ロシアがDRコンゴの次を占めているが、埋蔵量はラテライト鉱を埋蔵する豪州・キューバ・フィリピンの順となっている。

  • 図4.世界のコバルト埋蔵量

    図4.世界のコバルト埋蔵量

  • 図5.2016年のコバルト鉱石生産量

    図5.2016年のコバルト鉱石生産量

(出典:JOGMEC メタルマイニング・データブック2017)

2. コバルト製錬概略

先述のとおり、コバルトを含有する鉱物はカッパーベルトで産出する銅鉱石(酸化鉱および硫化鉱)と、ニッケル硫化鉱・ニッケルラテライト鉱に区別される。

それぞれの鉱石に適した製錬方法によりコバルトを回収しているため、酸化銅鉱の湿式処理・硫化銅鉱の湿式処理・硫化銅鉱の乾式処理・ニッケル硫化鉱の乾式処理・ニッケル硫化鉱の湿式処理・ラテライト鉱の乾式処理・ラテライト鉱の湿式処理に大きく分けられるが、使用する薬剤の種類やプロセス方法の違いにより、更に細かく分けられる。

そこで、概略を次に示す。

2.1 銅鉱石からの製錬方法

図6に、カッパーベルトで産出される銅鉱石からのコバルト製錬フローの概略を示す。

同じカッパーベルトで産出される銅鉱石でも、DRコンゴでは主に酸化鉱が、ザンビアでは硫化鉱が産出される。そのため、DRコンゴでは酸化鉱をそのまま硫酸で浸出することで銅・コバルトを溶出させ、SxEwにより電気銅を回収し、その電解液からコバルトを水酸化物として回収している。

硫化鉱は、自前で酸化焙焼して酸化鉱に転換させることで硫酸浸出工程へ供給するか、硫化鉱からの処理を行っているザンビアへ輸送することで、ザンビア産出の硫化鉱と共に処理されている。

ザンビアでは、硫化鉱を酸化焙焼により酸化鉱とした後に硫酸で浸出させ、DRコンゴと同様に銅・コバルトを溶出させ、SxEwにより電気銅を回収し、その電解液からコバルトを水酸化物として回収している。

一方で、硫化鉱をそのまま自熔炉に供給して熔融させる乾式処理により粗銅を製造し、電解精製により電気銅を回収している。この時コバルトは自熔炉スラグ中に主に分配されるため、このスラグを電気炉内で還元することで銅-鉄-コバルト合金を製造して、これを中間品として回収している。

これら銅鉱石からのコバルト回収プロセスにおいて、浮遊選鉱時におけるコバルトの挙動が不明・浸出時におけるコバルト溶出率の低さ・スラグからのコバルト回収率の低さ等の問題点を含んでおり、未だそれらの解明が不十分である。

図6.カッパーベルトで産出される銅鉱石からのコバルト製錬フロー

図6.カッパーベルトで産出される銅鉱石からのコバルト製錬フロー

2.2 ニッケル鉱石からの製錬方法

図7に、ニッケル鉱石からのコバルト製錬フローの概略を示す。

ニッケル鉱石は硫化鉱とラテライト鉱に分けられるが、その処理方法は非常に多い。詳しくは、JOGMEC金属資源レポートの中村威一「最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(2)―ニッケル―」および新井裕実子「ニッケル市場の構造と動向―2017年需給動向並びに今後の見通しについて―」を参考としていただきたい。大部分の製錬フローでは中間品としてニッケルマットおよび複雑硫化鉱を経由しており、乾式製錬における中間品にニッケルマットが製造され、湿式製錬においては複合硫化物が製造される。その中間品を浸出させ電解によりニッケルカソード、水素還元によりニッケル粉へ還元する製錬方法と、酸化焙焼により酸化ニッケルを製造する方法等に分かれる。また、これら中間品を経由しないフェロニッケル・ニッケル銑鉄の製錬方法に区別した。

これら以外の製錬方法として、ニッケルマットを直接アノードとして電解精製する場合や、アンモニア浸出後に水素還元によりニッケル粉を回収する方法もある。

複合硫化物の処理時にはニッケルマットも合せて処理する場合もあり、塩素ガスによる浸出でニッケル・コバルト・銅は塩酸溶液中に溶出させ、脱銅電解で銅粉として分離した浸出液を溶媒抽出によりニッケルとコバルトに分離して、それぞれ電解採取により電気ニッケル・電気コバルトとして回収している。

酸化鉱は、還元剤を加え電気炉等にて還元熔錬することで、フェロニッケルまたはニッケル銑鉄を製造している。しかし、この場合には原料中に含まれるコバルトは、生産物からは回収できない。また酸化鉱をキルンで乾燥と還元後、硫黄を加えて電気炉で熔錬しニッケルマットを製造する方法もある。

図7.ニッケル鉱石からのコバルト製錬フロー

図7.ニッケル鉱石からのコバルト製錬フロー

2.3 コバルト製錬時のコスト

図8に、コバルト製錬時における各製錬所の生産コストカーブを示す。

コストの傾向としては、この図のとおり、カッパーベルト銅鉱石からの生産が一番安く、次がニッケル硫化鉱、一番高いのがニッケルラテライト鉱の順となっている。これはカッパーベルト銅鉱石中に含まれるコバルト品位が相対的に高いためと考えられ、表2に示すコバルト含有率に関係している。

加えて、DRコンゴおよびザンビアの銅製錬所では、コバルトを中間品である水酸化コバルトとして回収してそのまま外販しているため、金属コバルトのような最終製品まで製造している製錬所よりはコストが安く仕上がっている。中央アフリカの製錬所で唯一金属コバルトまで製造しているザンビアのChambishiのコストは、ニッケルラテライト鉱より回収している製錬所の中間程度のコストになっている。

ニッケルの資源量としては、硫化鉱よりもラテライト鉱の方が多いため、今後のニッケル製錬においては、ニッケルラテライト鉱からのニッケル回収が必須となるが、ニッケル価格およびコバルト価格の動向により生産量が変化することが考えられる。

図8.コバルト製錬時におけるプロダクションコストカーブ

図8.コバルト製錬時におけるプロダクションコストカーブ

(出典:S&P Global Market intelligenceデータに基づきJOGMEC作成)

3. ニッケル製錬におけるコバルト回収フロー

先にも述べたとおり、コバルトの製錬原料としては酸化鉱、硫化鉱、ヒ化鉱およびニッケル製錬からのコバルト濃縮中間産物等があり、原料の性質・含有量に応じて各種の製錬方法がとられているが、まずニッケル製錬の代表例を次に示す。

3.1 硫化鉱の乾式製錬

図9に硫化鉱の乾式製錬フローを示す。

ニッケル硫化鉱の乾式製錬は銅製錬と同様、鉄とニッケルの酸素・硫黄との親和力の差が大きいことを利用してマットとして濃縮する方法をとっている。

焙焼された含銅ニッケル精鉱は、自熔炉・反射炉・電気炉にて熔錬され、ニッケルマットおよびスラグに分離される。この時、ニッケル精鉱中にはNiの他にFe、Cu、S、SiO2を含むので、FeSの一部を酸化してFeOとし、SiO2とスラグを作って除去し、NiとCuを硫化物のままマットとして濃縮する。

高温雰囲気下における熔錬操業では、

① ニッケル硫化鉱は銅硫化鉱よりも酸化し易いので、銅製錬の様に酸化熔錬による金属ニッケルを得ることも、ニッケルと銅を分離することも難しい。

② 硫黄の酸化を続けると生成するスラグ中のNi, Cの相当量が損失する。
(そのため、棄却可能なスラグを得るためには酸化熔錬反応を途中で止める必要がある)

③ ニッケル製錬では銅製錬の様に、転炉で金属ニッケルを得ることは出来ない。

その後ニッケルマットはPS転炉に送付され、熔剤、空気を吹き込むことで残留する鉄を転炉スラグとして除去、また硫黄を酸化しSO2として除去し、ニッケル、銅、貴金属、コバルトおよび硫黄を含む精製マット(ベッセマーマット:Bessemer matte)を作製する。転炉で生成された転炉スラグは、その中の金属を回収するために製錬炉に繰り返される。

この工程において、コバルトはニッケルと共にスラグ中に若干のロスを生じるが、大部分は精製マット中に濃縮し、次工程であるニッケル精製工程へ移行される。

図9.硫化鉱の乾式製錬フロー(Kalgoorlie製錬所(BHP))

図9.硫化鉱の乾式製錬フロー(Kalgoorlie製錬所(BHP))

3.2 酸化鉱の湿式製錬

図10に酸化鉱の乾式製錬フローを示す。

ニッケル酸化鉱はフェロニッケル製造時の原料として使用されており、Ni品位が低いがCu・Sなどの分離が困難な成分を含まない利点がある。ニッケル酸化鉱は選鉱でNi品位を高めることは出来ないため、そのまま原料(Ni品位約2%)をロータリーキルンで乾燥し還元焙焼した後にコークス・溶剤を加えて電気炉で還元しフェロニッケルを製造するのが一般的な方法となっている。またキルン出口で硫黄源を加え電気炉内で還元熔錬を行うことでマットを製造し、以降硫化鉱と同じ処理方法をとる場合もある。

フェロニッケルは、電気炉での還元熔錬反応により

① 焼鉱中の還元剤によりニッケルの全量および鉄の55~65%を還元し粗フェロニッケルを製造する。

② 粗フェロニッケルは0.3~0.4%の硫黄を含むため低周波誘導炉の電磁誘導撹拌作用を利用してカルシウムカーバイドで硫黄を≦0.02%に脱硫し、フェロニッケルを製造する。

③ 低炭素フェロニッケルの製造時には、脱硫後の溶湯を上吹き転炉で純酸素にてC、Si、P、Crを除去する。

この工程においては、コバルトはニッケルと分離する工程を持たないため、全量フェロニッケル中に含有される。

図10.酸化鉱の乾式製錬フロー(日向製錬所(SMM社))

図10.酸化鉱の乾式製錬フロー(日向製錬所(SMM社))

3.3 酸化鉱の湿式製錬

図11に酸化鉱の湿式製錬フローを示す。

Ni品位2%以下の酸化鉱を処理する場合には、エネルギーコストの面で乾式製錬よりも湿式製錬が経済的に有利となる。そのため、フェロニッケルへの製錬以外としては、湿式製錬方法により処理されている。

大きく分けると、還元焙焼によりニッケルを優先還元し、アンモニア・炭酸アンモン溶液で浸出するニカロ法と、マグネシウムの少ない酸化鉱を直接硫酸で加圧浸出するモア・ベイ法(HPALはその発展型)の2種類に分けられるが、ここでは、HPAL法について説明する。

鉱石中の有価金属であるニッケルおよびコバルトを、200℃以上・3MPa以上の高温高圧条件下でオートクレーブを用いて浸出する。この高温高圧下での反応により、ニッケルの浸出と鉄の固定の反応を同時に促進させている。

(1)浸出反応

① ニッケルおよびコバルトの浸出反応

・Ni(Co)O + H2SO4 = Ni2+(Co2+) + SO42-[NiSO4, CoSO4] + H2O

② 鉱石の浸出時には酸を消費するが、Fe浸出の反応時には酸を消費しない

・2FeOOH + 3H2SO4 = 2Fe3+ + 3SO42- + 4H2O

・Fe2(SO4)3 + 3H2O = Fe2O3↓ + 3H2SO4

③ ただし、Mg, Al浸出時には酸を消費する

・MgO + H2SO4 = Mg2+ + SO42- + H2O

(2)沈殿反応

④ ニッケルおよびコバルトの硫化沈殿反応

・NiSO4 + H2S = NiS↓ + H2SO4
(CoSO4 + H2S = CoS↓ + H2SO4

硫化沈殿の工程においては、コバルトはニッケルと同じ挙動を示すため、全量Ni/Co混合硫化物中に含有される。(例:Ni品位約57%、Co品位約4%、S品位約35%)

図11.酸化鉱の湿式製錬フロー(Coral Bay Nickel Corporation(SMM))

図11.酸化鉱の湿式製錬フロー(Coral Bay Nickel Corporation(SMM))

3.4 ニッケルマットおよび混合硫化物の湿式製錬

図12に混合硫化物の湿式製錬フローを示す。

乾式製錬で製造したニッケルマットおよび湿式製錬で製造したNi/Co混合硫化物からのニッケルとコバルトの分離は、一般的に湿式法による処理が主流となっている。またニッケルの回収は、ニッケル水溶液からの電解採取により金属ニッケルを製造している。

ここでは、混合硫化物の湿式製錬法について説明する。MCLE法(マット塩素浸出電解採取法)は、混合硫化物ならびにニッケルマットを原料とし、塩素ガスによりNi/Coを浸出するものである。ただし、Ni/Coは塩素と直接反応して浸出されるのではなく、同時に溶解する銅が酸化剤(Cu2+)となってNi/Coが酸化浸出される。

図12における赤枠内での反応について、若干補足説明する。本プロセス中においても、コバルトはニッケルと同じ挙動を示す。

まずNi/Co混合硫化物は、塩素浸出工程で塩素によりニッケルが浸出される。

(1)塩素浸出反応(硫化物浸出)

・Cu2S + 2Cu2+ → 4Cu+ + S0

・2Cu + Cl2 → 2Cu2+ + 2Cl

・Ni(Co)S + 2Cu2+ → Ni2+(Co2+) + 2Cu + S0

次のセメンテーション工程では、未浸出残渣と銅を含んだ塩化ニッケル溶液が混合され、原料のニッケルマット中に含まれるニッケル硫化物や金属ニッケルが、溶液中の銅イオンとの置換反応によりニッケルを溶液中に浸出するとともに銅イオンを硫化銅として沈殿させる。

(2)セメンテーション反応(マット浸出)

・Ni3S2 + 2Cu2+ → Ni2+ + 2Cu + 2NiS

・Nio + 2Cu2+ → Ni2+ + 2Cu

・Nio + 2Cu + S0 → Ni2+ + Cu2S

セメンテーション工程における浸出残渣中にはニッケル分が50%程含まれているため、塩素浸出工程へ繰り返し完全に浸出している。混合硫化物中の硫黄は、単体硫黄として分離される。また浸出反応では銅を繰り返して利用していることから、適正な銅濃度に維持するため、過剰分については電解採取により銅粉として析出除去している。

脱鉄工程ではセメンテーション工程で得られた溶液を、中和反応により鉄を分離除去している。

鉄を分離した浸出液は、次の溶媒抽出工程でニッケルとコバルトをそれぞれ分離し、電解採取により電気ニッケルと電気コバルトとして回収されている。電解採取工程で発生した塩素ガスは、浸出工程へ繰り返され再利用されている。

MCLE法は、一般に実施されている硫酸浴における電解採取法と比べると、

① ニッケルの溶解度が大きいため、コンパクトな設備設計が可能となる。

② 溶液の電気伝導度が高いため、電解電圧が低下するため電力原単位が削減できる。

③ Co・Feは錯イオンを形成するため、錯イオンと金属イオンとの分離ができる。
等の利点がある。

図12.混合硫化物の湿式製錬フロー(新居浜ニッケル工場(SMM社))

図12.混合硫化物の湿式製錬フロー(新居浜ニッケル工場(SMM社))

4. カッパーベルト産出銅コバルト鉱石からのコバルト回収フロー

カッパーベルトにおける銅コバルト鉱石は、DRコンゴおよびザンビアの鉱床タイプにより差があり、その鉱石を処理するために主な製錬方法が確立している。

それぞれの鉱床の特徴、銅コバルト鉱山・コバルト製錬の代表例を次に示す。

4.1 カッパーベルトにおける銅コバルト鉱床と製錬方法

アフリカ中央部に隣接するDRコンゴとザンビアにおけるカッパーベルトの銅コバルト鉱床には、次に示す通りCu/Coの含有量および含有金属の形態に違いが見られる。

表4にカッパーベルトにおけるDRコンゴとザンビアの鉱床タイプを示す。コバルト含有量はDRコンゴタイプの方が高く、コバルトリッチな鉱石となっている。またDRコンゴタイプの鉱床は風化などでより酸化が進んでいるため、金属分は酸化物の形態を主体となっており、DRコンゴタイプは酸化鉱、ザンビアタイプは硫化鉱と大きく分類できる。

カッパーベルトにおけるコバルト鉱量としては、DRコンゴ側に約3/4、ザンビア側に約1/4の比率とDRコンゴ側に大量に存在していると推定されるが、銅鉱量は逆にDRコンゴ側に約40%、ザンビア側に約60%の比率と推定されている。

表4.カッパーベルトにおける鉱床タイプ
DRコンゴ ザンビア
鉱床 DRコンゴタイプ ザンビアタイプ
Co/Cu比 1:13(Co rich)
ザンビアタイプより酸化している
1:57(Cu rich)
Co鉱量(推定) 6Mt×77%≒4.6Mt 6Mt×23%≒1.4Mt
Cu鉱量(推定、Cu≧1%) 140Mt×42%≒58Mt 140Mt×58%≒82Mt

表5にカッパーベルト産出鉱石の製錬方法を示す。DRコンゴタイプの鉱床は酸化鉱のため直接酸浸出が可能であることに対し、ザンビアタイプは硫化鉱のため酸化焙焼により酸化物とした後に浸出を行うか直接自熔炉等の乾式製錬炉に供用し熔錬している。

この製錬方法の違いにより、コバルトの回収プロセスも違ってくる。

表5.カッパーベルト産出鉱石の製錬方法
DRコンゴ ザンビア
Cu製錬方法 湿式法が主(Coを積極回収)
(硫化鉱処理製錬設備無し)
乾式法が主
(DRCより硫化鉱を受け入れ処理)
浸出→SxEw 熔錬→電解精製 or Ew
Cu回収方法 Co塩として回収 Cu-Co合金として回収
製錬過程でのCoロス 浸出残渣中に未溶出のCoあり スラグ中にCoロスあり

表6に各製錬方法におけるコバルト回収物と一般的なコバルト品位を示す。現在乾式製錬によりコバルトを回収している箇所は、Konkola Copper Mines(KCM)社のNchanga製錬所とGroupement du Terril de Lubumbashi(GTL)社のLubumbashi製錬所で、Cu-Co合金として回収している。

また湿式製錬での回収箇所は、Eurasian Resources Corp.(ERG)社のChanbishi製錬所のみが電気コバルトとして回収し、その他の製錬所ではコバルト化合物として回収している。コバルト化合物としては炭酸塩や水酸化物があるが、大部分は水酸化物として回収されている。

表6.各製錬方法におけるコバルト回収物
製錬方法 Co回収物 Co品位
乾式製錬 電気炉 Cu-Co合金 3~10%
湿式製錬 電解採取 Coメタル・粉末 > 99%
沈澱析出 炭酸Co 35~45%
水酸化Co 18~45%

4.2 カッパーベルトの銅コバルト鉱山・製錬所

繰返しとなるが、ザンビア中部カッパーベルト州からDRコンゴ・カタンガ州にかけて、世界有数の銅コバルト鉱山が存在している。図13にカッパーベルトの銅コバルト鉱山と製錬所の所在を示す。

まずDRコンゴでは、Kamoto鉱山やMutanda鉱山を中心とする西グループ、Tenke Fungurume鉱山やShituru鉱山を中心とする中央グループ、Ruashi鉱山を代表とする南グループに大きく分けられる。4.1に示した通り、DRコンゴ側でのカッパーベルトで産出される銅コバルト鉱石は酸化鉱が主体となっているため、選鉱により酸化鉱を回収して硫酸浸出・SxEwにより電気銅を回収している。

選鉱で分離された硫化鉱は、硫化鉱が主体として産出するザンビアへ送られ、ザンビア産出の鉱石と合わせて乾式製錬で処理されている。その際には同じ系列の会社間で鉱石のやり取りがなされており、Glencore系であればKamoto鉱山・Mutanda鉱山からの硫化鉱は、ザンビアのMopani Copper Minesで処理される。またERG系であればBoss鉱山からザンビアのChanbishi Metals Plc.で処理される。

次にザンビアでは、Konkola鉱山・Chanbishi鉱山・Mopani鉱山を中心とする北部カッパーベルトとNkana鉱山を代表とする南部カッパーベルトに大きく分けられる。

繰返しとなるが、ザンビア側カッパーベルトでは銅が主体となる硫化鉱が産出されるため、乾式による熔錬プロセスが主体となっており、自熔炉やISAプロセスにより粗銅-電解精製により電気銅を産出している。

図13.カッパーベルトの銅コバルト鉱山・製錬所

図13.カッパーベルトの銅コバルト鉱山・製錬所

(出典:平成28年度エネルギー使用合理化鉱物資源開発推進基盤整備事業/未回収コバルトの回収技術調査)

4.3 カッパーベルトにおけるコバルト回収製錬所

表7にDRコンゴおよびザンビアにおける銅・コバルト製錬所とコバルト回収物を示す。またコバルト回収を現在実施中の製錬所を黄色で示す。

DRコンゴにおいては、銅製錬の副産物として足元実際にコバルトを回収している製錬所は6か所程度と見られる。銅の回収方法としては、銅のSxEwプロセスより発生する電解尾液中に含まれるコバルトを、その他の不純物を分離後に沈殿析出物としての水酸化コバルトによる回収が主流となっている。

ザンビアの製錬所では、現在2か所においてコバルト回収を実施しており、電解採取によるCoメタル回収が1か所と、銅製錬スラグを電気炉還元してCu-Co合金としての回収が1か所行われている。

その他、2000年代初めのコバルト価格が低下した時代に、銅の回収を優先させて選鉱せずに銅製錬を行った際の残渣中からのコバルト回収も実施されている。

表7.DRコンゴおよびザンビアにおける銅・コバルト製錬所とコバルト回収物

表7.DRコンゴおよびザンビアにおける銅・コバルト製錬所とコバルト回収物

(出典:世界の鉱業の趨勢2017(JOGMEC)、2014 Minerals Yearbook Cobalt(USGS)等より)

4.4 カッパーベルト銅コバルト鉱の湿式製錬(従来法)

銅コバルト鉱の湿式製錬の従来法の例として、図14にカッパーベルト西グループのKamoto Copper Company社Luile製錬所のフローを示す。

選鉱により分離した硫化銅精鉱を焙焼して焼鉱とした後に、酸化銅精鉱と合わせて硫酸で浸出し、固液分離した硫酸銅溶液をSxEwにより銅カソードを生産している。

コバルトの回収は、銅電解尾液の一部をコバルト回収プラントに送り、種々なる浄液工程によりFe、Al、Ni、Zn等の不純物を除いた後に中和により回収した水酸化コバルトを再度酸に溶解してコバルト溶液に、または溶媒抽出工程によりコバルト溶液を精製した後に、電解採取によりカソードとしてコバルトを回収していた。しかし、現在ではコバルトカソード精製にまでは手間をかけず、中間品である水酸化コバルトとして回収しそのまま出荷する方法が主流となっている。

図14.銅コバルト鉱石湿式製錬フロー(Kamoto Copper Company社 Luile Plant)

図14.銅コバルト鉱石湿式製錬フロー(Kamoto Copper Company社 Luile Plant)

(出典:Katanga Mining Limited Technical Report & News releases)

4.5カッパーベルト銅コバルト鉱の湿式製錬(現行法)

同じくKamoto Copper Company社 Luile製錬所の、2017年後半より操業を再稼働している現状フローの一部を、図15に示す。

Kamoto Copper Company社は、既存の銅SxEwのプロセスは変更せず、鉱石からのCu・Co回収率の向上と堆積残渣中に含有しているコバルトの再回収に対応するため、新たにWOL(Whole Ore Leach)法による浸出方式を採用した。これは、酸化銅鉱石を硫酸と共に大型の撹拌機付きタンク内で空気を吹込みながら銅を酸化浸出させ、その後に還元剤を用いてコバルトを溶出させる還元硫酸浸出方法である。またCopper Cobalt Africa 2018におけるSENET社からの報告では、同様のプロセスが他社でも計画・採用されているとのことである。

従来法における銅コバルト鉱石から水酸化コバルトまでの回収率は、酸化鉱の選鉱段階での採収率:58%、硫化鉱の焙焼段階での採収率:92%となり、浸出工程での抽出率:50%で、総合採収率は34%程度であった。

これが、WOL法を採用した結果、精鉱からのコバルト抽出率は85%にまで向上し、その結果総合採収率は65%となっている。これにより約30%のコバルトの増産に寄与しているが、合わせて銅の総合採収率も85%となり、従来法より約10%の増産となる。

今後WOL法が他の製錬所でも採用され設置されれば、コバルトの採収率は向上しコバルト生産量は増大してゆくものと考えられる。

しかし、WOL法では、還元剤・硫酸・電力等の消費量が増大するため、それに対応する大掛かりな設備改造・投資が必要となっている。消費量が増大する試薬の手当てリスクについては、後ほど述べる。

図15.銅コバルト鉱石湿式製錬フロー(Kamoto Copper Company社 Luile Plant)

図15.銅コバルト鉱石湿式製錬フロー(Kamoto Copper Company社 Luile Plant)

(出典:Katanga Mining Limited Investors Presentation 2016 & Technical Report 2018)

4.6 WOL法によるコバルト浸出条件

WOL法は、まず空気酸化により銅の溶出を向上させ、その後還元剤の添加によりコバルトを二価に還元することで沈殿残渣からの再溶出回収を行う方法であり、併せて、鉄も二価に還元することで浸出液中にて硫酸を副生させる反応を行っている。

コバルト溶出時の価数は三価となり、

Co2O3 → Co3+

CoOOH(=HCoO2) → Co3+

一般にCo3+は硫酸では溶け難い。またCo3+として溶出しても酸化還元電位が高い場合にはCo3+はCo(OH)3となり澱物となってしまうため、Co2+として浸出液中に存在させるためには電位を下げる必要がある。

2CoOOH + 2FeSO4 + 3H2SO4 → 2CoSo4 + Fe2(SO4)3 + 4H2O

Fe2(SO4)3 + SO2 + 2H2O → 2FeSO4 + 2H2SO4

コバルトを二価に還元するため、還元剤(SO2、他にSMBS[Sodium Metabisulfite]、Cu粉、Fe屑等)の添加により、Co3+・Fe3+を還元し硫酸を副生させるが、この際の電位は溶液中にCu2+を存在させるため350mVを下回らないように500mV前後を維持する必要がある。

Feは中和時に濾過性の良いFe(OH)3として生成させ濾別させるが、そのためにもこの辺りの電位を維持させる必要がある。

図16にコバルト・ニッケル・銅・鉄のEh-pH図を示す。銅の抽出率を高めるために空気酸化を行っているが、この際に酸化還元電位が1,800mV以上となると溶出していたコバルトは三価となり水酸化物として沈殿してしまうため、還元剤により電位を低下させることで二価のコバルトとして溶液中に残存させることが出来る。またCoOOHの様な形態を取るコバルト鉱石は溶解時に三価のコバルトとして溶けるため、直ちに水酸化物になると推測される。電位を下げることで、この三価のコバルトも再溶解させることが出来る。

図16.コバルト・ニッケル・銅・鉄のEh-pH図

図16.コバルト・ニッケル・銅・鉄のEh-pH図

(出典:日本金属学会 非鉄金属製錬)

先のLuilu Plantでは、硫黄燃焼硫酸設備をWOL法の導入に合わせて、硫酸(1,900t/日)・SO2(200t/日)およびCogenerationによる電力(17MW)製造設備を2018年に設置する。これにより、Luilu PlantのCo生産能力は、2018年の11kt/年から2019年には30kt/年にまで増強される。(2015年までは8kt/年の生産量)

4.7 コバルト精製方法(浄液法と溶媒抽出法との比較)

DRコンゴの各精製工場では水酸化コバルト、ザンビアのChambishi鉱山ではカソードメタルとしてそれぞれコバルトを回収しているが、コバルト溶液への精製方法は不純物を沈殿分離させる浄液法と溶媒抽出法とに大きく分けられる。また不純物除去時の操作の中では、それぞれの方法を組合せて実施している例もある。

(1)浄液による精製方法

一般に、コバルト浸出液中には、Cu、Fe、Mn、Al、Mg、Caおよび少量のU、Zn、Niが含まれる。図17に銅電解尾液からのコバルト清浄のフローシートを示す。

コバルト中和時には石膏の生成防止のため、1st StageではMgOを使用している。水酸化コバルトとして回収する際のコバルト品位は、石灰では~18%に、MgOでは40%以下の析出物として回収される。

図17.銅電解尾液からのコバルト清浄フロー

図17.銅電解尾液からのコバルト清浄フロー

(出典:Copper Cobalt Africa 講演資料より)

(2)溶媒抽出による精製方法

溶媒抽出によるコバルト溶液の精製は、1回の溶媒抽出にてCoを効率良く分離回収できるのでは無く、複数回の溶媒抽出工程や浄液法・イオン交換法と組合せて不純物が除かれたコバルト溶液の精製を行っている。

図18に溶媒抽出によるコバルト溶液精製の例を示す。

図18.溶媒抽出によるコバルト溶液精製の例

図18.溶媒抽出によるコバルト溶液精製の例

(出典:Copper Cobalt Africa 講演資料より)

また使用する溶媒の種類によって、各pHでの金属分の分離効率が異なる。図19に各pHにおけるCo/Ni分離時の抽出剤の例を示す。

ここでは、3種類の溶媒(a:リン酸系、b:ホスホン酸系、c:ホスフィン酸系)によるCoとNiの各pHにおける抽出率を示す。

一般に、矢印の幅が広いほど回収する目的金属とそれ以外の金属との分離性が良く、CoとNiの分離ではcが一番優れており、次がbとなっている。後は、使用する酸濃度や温度条件における吸着/脱離の耐久性や溶媒のコスト等により選択される。

図19.各pHにおけるCo/Ni分離時の抽出剤の例

図19.各pHにおけるCo/Ni分離時の抽出剤の例

(出典:Copper Cobalt Africa 講演資料より)

4.8 カッパーベルト銅コバルト鉱の乾式製錬

銅コバルト鉱の乾式製錬の従来法の例として、図20にザンビア北部カッパーベルトのKoncola Copper Mines社Nchanga製錬所のフローを示す。

選鉱により分離された硫化銅精鉱は、乾燥後自熔炉にて熔錬される。自熔炉からは粗銅とスラグが産出し、粗銅は陽極炉を経由してアノードに鋳造され、電解精製により銅カソードを生産している。

通常の銅製錬の自熔炉では銅マットを産出し、転炉でマットを酸化することで粗銅を製造しているが、この自熔炉では炉内の雰囲気を銅製錬よりもより酸化雰囲気とすることで粗銅まで一気に製造している。そのため、銅の一部およびコバルトが酸化されスラグ中にロスするため、スラグ中に分配した銅分とコバルト分を回収するため、2つの電気炉にて還元を実施している。

まず自熔炉から出たスラグはSlag Cleaning Furnace(電気炉)に入り、スラグ中の酸化銅の大部分を還元し粗銅として回収する。ここで回収された粗銅は、陽極炉に入りアノードに鋳造される。次にSlag Cleaning Furnaceから出たスラグは、コバルト回収のためにCo Recovery Furnace(電気炉)に入り、Cu-Co合金(Co品位:3~8%)として回収し外販している。

銅の回収率を優先するのであれば、通常操業されている自熔炉-転炉法が優れている。なぜマットを生成させず転炉工程を省いたかについての理由は分からないが、コバルト回収を優先とするため工程内に滞留するコバルト量を少なくし回収を早めるためではないかと推測される。

またKoncola Copper Mines社では、選鉱時に発生した尾鉱を浸出させ、銅をSxEwにより銅カソードとして回収している。

図20.銅コバルト鉱乾式製錬フロー(Koncola Copper Mines社 Nchanga Plant)

図20.銅コバルト鉱乾式製錬フロー(Koncola Copper Mines社 Nchanga Plant)

(出典:Elegant solution for challenging Zambian raw material base (Outotec, KCM))

5. 今後のコバルト生産量推移見込み

コバルトは2017年で約110千tが生産されているが、この生産量に加えて現在進行中の大きなプロジェクトとしては、先に述べたKCC社Katangaの他にERG社RTRプロジェクトがある。この2つのプロジェクトが完遂すると、コバルト生産量は約50千t/年が増加する。

それ以外にも種々なるプロジェクトが進行中であり、それらのプロジェクトを加えると、更にコバルト生産量は25~30千t/年程度増加するものと見込まれる。以下にKCC社Katanga、ERG社RTRとそれ以外のプロジェクトについて紹介する。また図21にコバルト鉱石産出量推移を示す。

図21.コバルト鉱石産出量推移

図21.コバルト鉱石産出量推移

(出典:CRUデータを元にJOGMECにて2016年データを追記し作成)

(1)Katanga(DRコンゴ):Glencore系

・Co生産量:2018年11千t→2019年34千t→2020年30千t
ただし、2018年11月に水酸化コバルト中に放射能元素(ウラン物質)が検出させたため、除去のためイオン交換樹脂プロセスを設置中。2019年後半より再処理分を含めて出荷を再開する予定。

・プロジェクト概要:
4.5にて説明済み、生産遅延リスクとしては次の2つで、

①バーナの建設遅れによるコバルト生産量低下(WOLプロセスではSO2が必要、それ無しでは製造出来ず)ザンビアMopani製錬所からの硫酸輸送での依存となる。

②元素硫黄の安定供給の必要性(WOLプラントは大規模であり、コバルト生産を遅らせるか、停電となる可能性あり)南アからザンビア経由の鉄道輸送に依存となる。

(2)The Roan Tailings Reclamation Project [RTR](DRコンゴ):Eurasian Resources Group系

・Co生産量:Phase Ⅰ(2019年)14千t→Phase Ⅱ 20千t

・プロジェクト概要:
1950年代に鉱山活動から投棄された尾鉱を再処理するための、低コストでの操業を目的とした総合的な湿式製錬施設を設置する。処理はSxEw経由で銅の回収を行い、水酸化物の形でCoを回収する。

(3)Mutoshi(DRコンゴ):ShalinaResources

・Co生産量:最大16千t/年(2019年生産開始予定)

・プロジェクト概要:
5千tのCoを生産しているEtoile鉱山での生産量を今後7千tに増大する。またKolwezi郊外に製錬設備を設置し、処理はSxEw経由で銅の回収を行い、水酸化物の形でコバルトを回収する。

(4)Musonoi(DRコンゴ):JinchuanGroup International Resources

・Co生産量:7.5千t~10千t/年

・プロジェクト概要:
Kolwezi以外からの鉱山掘削による。MusonoiからのCu-Co回収物は、バルク濃縮物(輸出の場合)かSxEwプラントの設置(自前処理)により、水酸化物の形でコバルトを回収する。

(5)Lubumbashi Slag Hill(DRコンゴ):Groupement du Terril de Lubumbashi

・Co生産量:5.5千t/年(現状規模と同等)以上

・プロジェクト概要:
乾式製錬工場(電気炉)の更新のため、2017年5月に生産停止。生産の再開は2020年以降となる。

(6)Idaho(米):eCobaltSolutions

・Co生産量:1.5千t/年(2020年生産開始予定)

・プロジェクト概要:
Coを副産物とする銅・金鉱山プロジェクトで、銅の生産量の大半は硫酸塩。コバルトは硫酸塩の形で回収することでプレミアムを受け取る予定。

(7)Nico(加):Fortune Minerals

・Co生産量:1.7千t/年(2021年生産開始予定)

・プロジェクト概要:
銅・金・Bi・Co鉱山プロジェクトで、当初は新加工工場に鉱山からの濃縮物を輸送し硫酸Coを生産する予定から、世界の鉱山および精製会社が鉱山からの直接濃縮物購入に関心を示し、開発コストを約50%削減。

(8)Clean TeQ Sunrise(豪):Clean TeQ Holdings

・Co生産量:最大7千t/年(2021年生産開始予定)

・プロジェクト概要:
ニッケルと硫酸コバルトの鉱山プロジェクトで、現在FS実施中。

6. リチウムイオン電池(LiB)からのコバルトリサイクルの状況

今後自動車の電動化が進み自動車に搭載される電池の数量および容量の増大に伴い、リチウムイオン電池(LiB)の構成成分であるコバルト消費量が増加し、コバルトの供給が足りなくなることが懸念されている。

そのため、廃LiBからのコバルトリサイクル技術の確立について取り進めることも急務となっている。

現在のところ、コバルトのリサイクルを考えると、湿式法の方が乾式法よりも優れており、その際の回収率は≧80%になるとの報告が10th Lithium Supply & Market Conferenceにてあった。またその他の新技術としては、吸着剤によるLi、Co、Ni、Mnの選択分離法も存在するとの報告があった。

足元LiB 廃電池よりコバルト回収を商業的に実施している企業としては、海外ではUmicore社(Hoboken工場)、Glencore(Sudbury工場)、カナダLi-Cycle Corp.社やAmerican Manganese Inc.社および中国企業で、また国内ではJX金属株式会社(敦賀リサイクル工場)、住友金属鉱山株式会社(新居浜工場)、DOWAエコシステム株式会社、日本重化学工業株式会社と松田産業株式会社等が既に取り組んでおり、新規技術・手法の開発や各社プロセスの流用により、LiB 構成成分であるCo、Ni、Mn、Li等のリサイクルを始めている。

表8.各リサイクル製錬方法でのLiB 金属回収状況
Paramert 乾式製錬 湿式製錬 正極材→正極材
リサイクル
処理温度 高温 低温 低温~高温
回収金属種 CO, Ni, Cu CO, Ni, Cuに加えLi 正極材そのもの
LiB分別に要求される厳密さ 分別の必要性は最小 最小~中程度 単一の化合物まで分別する必要あり
その他特徴 ・焼成時に電解質とプラスチックは揮発
・LiとAlはスラグに逸失
・適用技術によるが、ほとんどの元素の回収率は80%以上 ・高付加価値のリサイクル回収物
・長期による正極材の寿命、技術進化に対応できるか?

表9.LiBからのリサイクル可能な金属分推定供給量(t/年)

表9.LiBからのリサイクル可能な金属分推定供給量(t/年)

(出典:10th Lithium Supply & Market Conference Panel discussion時資料より)

6. おわりに

コバルトは、銅コバルト鉱石・銅-ニッケル鉱石・ニッケル鉱石の副産物として生産されており、単独のコバルト鉱石としてはほぼ存在しないため、コバルトの生産量増大のための生産拡張や新規プロジェクトへの投資意欲は、銅やニッケルの相場・需要や社会情勢に左右されやすい。

今後、コバルト供給量が不足となるリスクとしては次の事が考えられる。

Copper Belt銅鉱石 ニッケル鉱石
Cu価格の下落
Co価格の下落
政情不安
増税政策(コバルトロイヤリティ)
児童労働問題と供給元証明
環境重視の鉱業政策
Ni価格の下落
ステンレス鋼用途の減少
鉱業政策(未加工鉱石輸出禁止)
環境重視の鉱業政策

足元のコバルト価格下落による影響のためか、2月中旬に入りGlencoreがDRコンゴで操業している銅・コバルト鉱山の内1か所での減産を、またEurasian Resources Group社ではBoss鉱山での一時的な閉鎖を、それぞれ計画していることが報道されている。これらの状況によっては、2019年の世界におけるコバルト生産量は2018年よりも減少となる可能性が出てくる。

しかし、5.で示した現在進行中のプロジェクトと今後予定されているプロジェクトが計画通り進むものとすれば、コバルト供給量は2017年から2021年の5年間で12%以上の大幅な増加が期待できる。しかし、供給量の大部分は最大の埋蔵量を有するDRコンゴより供給されることとなり、コバルト供給源がDRコンゴに依存するという長期的な見通しは、将来的に見ても変わらないものと考えられる。

世界の埋蔵量と資源の約50%を所有するDRコンゴ以外の地域からの供給は、地理的にも多様であり、DRコンゴからの供給が中断された場合、生産を置き換える立場にある地域は存在しない。

コバルトの供給リスクに対応するためには、選鉱および製錬工程における更なる生産性向上の追求と、今後数年後より発生し始める車載用廃電池材料からのリサイクル技術の早期確立を実現させる必要があると考え、この辺りに日本の選鉱・製錬技術の強みを活かした協力が可能になるのではないかと考える。

以上

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