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報告書&レポート

2019年9月12日 ワシントン 事務所 石田滋陽
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米国における重要鉱物対策

<ワシントン事務所 石田滋陽 報告>

はじめに

2019年6月4日、米国政府は「安全で信頼できる重要鉱物の供給に向けた連邦政府戦略」を発表した。2017年12月の大統領令から1年半を経て、公表に至ったものである。折しも、中国が米国へのレアアース輸出制限を検討しているとの報道がなされていたところであり、米国は今次戦略によって、レアアースを含めて重要鉱物の安定供給確保を強化していくものと思われる。

本報告ではまず、議員の立法活動を補佐する役割を担う議会調査局の報告書から、米国における鉱物資源調達の現況、法令及び政策を概括する。次に今次戦略の内容及び策定に至る経緯を含め、行政府(連邦政府)の取組を報告する。最後に今後の米国の政策に影響を与える可能性がある動向として、立法府(連邦議会)の取組を紹介する。

1.議会調査局による報告書

1.1 国防入門:特定金属、レアアース磁石及びタングステンの調達(2019年5月24日)1

本報告書の内容は、概略、以下のとおりである。

チタンやタングステンなどの金属や金属合金、そしてレアアース磁石と呼ばれる強力な永久磁石は、米国国防省の活動にとって重要である。これらの材料は軍事プラットフォームや兵器システムの部品・部材に組み込まれているが、その多くは代替物がほとんど又は全くない。これらの材料の多くは、米国の国内材料産業を保護するとともに、防衛産業基盤に係る重要な生産能力の維持/確保のために、議会が定めた調達規制に従うこととされている。その規制の下で、特定金属を組み込んだ部品・部材については、米国内で生産・製造しなければならない。また、一定の種類のレアアースやタングステンを組み込んだ部品・部材については、特定の国からは調達することができない。

特定金属の国内調達規制は、USC(United States Code;合衆国法律集)第10編第2533条のbに規定されており2、国防省の主要な契約及びその関連の全ての委託契約に適用される。同条における特定金属の定義は、本項末尾のとおりである。国防省は、特定金属の最終的な溶融又は同様の生産が行われる鋳造地を以って生産地としている。例えば、カザフスタンで製造されて米国に輸送され、オハイオ州の工場でインゴットに溶融されるスポンジチタンは、特定金属の国内調達義務を充足していると認識される。特定金属調達規制下、国防省は米国内で溶融又は生産されなかった特定金属を一定量含有している軍事プラットフォーム又は兵器システムを調達することができない。この規制は航空機、ミサイル及び宇宙システム、船舶、戦車及び自動車類、兵器システム並びに弾薬に適用される。また、国防省及びその主要コントラクターは米国内で溶融又は生産されなかった特定金属を直接に調達することが禁止されている。ただし、「必要時に充分な質・量の特定金属を調達不可能と国防長官が認定した場合」、「調達が国際合意を促進する場合」、または「ダイオードや集積回路等の電気機器の購入(国防長官が国家安全保障にとって国内調達が重要であると認定した場合を除く)、商業的に入手可能な一般品(留具、高性能磁石等の一部品目を除く)の調達、あるいは国家安全保障に必要な場合」等においては、法令や政策により国内調達規制の例外とされる。

USC第2533条のb第1項が定義する特定金属

・次に掲げる含有基準を一つ以上満たす合金鉄:マグネシウム1.65%、シリコン0.60%、銅0.60%、又はアルミニウム、クロム、コバルト、ニオブ、モリブデン、ニッケル、チタン、タングステン若しくはバナジウムのいずれか0.25%。

・10%超の他金属(鉄を除く)を含むニッケル、フェロニッケル及びコバルト主体の合金。

・チタン及びチタン合金。

・ジルコニウム及びジルコニウム主体の合金。

レアアース磁石及びタングステンの調達規制は、2019会計年度国防授権法3第871条に基づき新設されたUSC第2533条のcに規定されており4、対象材料又は対象材料を含有する最終製品について、対象4か国(北朝鮮、中国、ロシア及びイラン)からの調達を禁止している。同条は、国防省の主要な契約及びその関連の全ての委託契約に適用される。同条における対象材料の定義は、本項末尾のとおりである。対象材料調達規制下、国防省は基本的に、対象4か国において溶融又は生産された対象材料や、かかる対象材料を含有している軍事プラットフォーム又は兵器システムを直接調達することができない。この規制は、航空機、ミサイル及び宇宙システム、船舶、戦車及び自動車類、兵器システム並びに弾薬に適用される。また国防省は、対象4か国やその代理と考えられる第三者に対し、対象材料を国家防衛備蓄から売却することができない。国防備蓄とは、国家緊急時において戦略的かつ重要な材料供給の外国依存可能性を低減・排除すべく、かかる材料の調達・維持を目的に1939年に設定され、USC第50編第98条から第98条のiまでに規定されている5。ただし、「国防長官が必要時に適当な価格で充分な質・量の特定金属を調達不可能と認定した場合」、「ダイオードや集積回路等の電気機器の購入(国防長官が国家安全保障にとって国内調達が重要であると認定した場合を除く)、商業的に入手可能な一般品(重量基準でタングステン含有率50%以上のものを除く)又は最終製品に組み込まれていない半製品、米国内でリサイクルにより回収されたネオジム磁石の購入の場合」等においては、法令や政策により非同盟国からの調達規制の例外とされている。

USC第2533条のc第d項第1号が定義する対象材料

・サマリウムコバルト磁石

・ネオジム磁石

・タングステン粉

・タングステン合金ヘビーアロイ又はそれを含有する最終若しくは半製品

1.2 米国貿易法の強化:第301条と中国(2019年6月4日)6

本報告書の内容は、概略、以下のとおりである(金属関連部分のみ、他は割愛)。

トランプ大統領は、2019年5月3日、中国との貿易交渉があまりにも遅滞しており、中国は以前の貿易コミットメントの再交渉を試みているとツイートした。それに引き続き、同大統領は、総額2,000億米ドル分の中国からの輸入品への関税を10%から25%へと引き上げるよう指示するとともに(6月1日発効予定だったが6月15日に延期されて発効)、残りの中国からの輸入品のうち関税引き上げ未措置分の大宗である総額3,000億米ドル分(レアアース、重要鉱物、医薬品及び特定の利用品を除く)について、25%への引き上げ手続きを開始するよう通商代表部に指示した。

中国は、5月13日、総額600億米ドル分について関税を引き上げると発表(同年6月1日発効)。6月2日には、米国が中国の主権事項を含む法外な要求を継続していると言及。

長期・拡大化している米中貿易紛争は、二国間の商業上の結びつきを急速に弱め、国際的なサプライチェーンを阻害し、世界の経済成長を鈍化させる可能性がある。多くの経済学者は、中国からのほぼ全輸入品に対する関税導入が米国消費者や中国との貿易に依拠する企業の費用増になり得ると警告している。さらには、中国が追加の報復措置として、中国における米国投資先企業の事業制限、保有する米国債の取崩し、米国へのレアアース輸出規制を実施する可能性も指摘されている。

2.行政府(連邦政府)の取組

2.1 安全で信頼できる重要鉱物の供給に向けた連邦政府戦略
(A Federal Strategy to Ensure Secure and Reliable Supplies of Critical Minerals)

本戦略は、大統領令第13817号(2017年12月20日)により策定が指示され、内務省地質調査所(略称「USGS」)による重要鉱物リストの策定(35鉱種の指定)を経て、商務省による策定に至ったものである。

2.1.1 大統領令第13817号(2017年12月20日)7

主要な条項は、概略、以下のとおりである。

第1条
米国は、国家安全保障及び経済的繁栄に不可欠な鉱物を輸入に大きく依存している。これは経済及び軍事の両方にとって、外国の敵意ある行動に対して戦略的脆弱性となり得るものである。これら鉱物のいくつかは米国内に充分に賦存しているにもかかわらず、米国の生産者は地形、地質及び地球物理に関する包括的かつ機械処理可能なデータの不足、許認可の遅延並びに発行済み許認可に関する訴訟可能性による制約を受けている。民間部門による重要鉱物の国内探鉱、生産、リサイクル及び再処理を拡大し、技術的により一般的な重要鉱物の代替を見出す取組を支援することは、輸入依存度の低減、科学技術イノベーションにおける米国のリーダーシップの維持、雇用創出、国家安全保障及び貿易均衡の改善、そして米軍の科学技術における優位性の強化に貢献することとなろう。
第2条
重要鉱物は(ⅰ)米国の経済安全保障及び国家安全保障に不可欠な非燃料鉱物又は鉱物材料であり、(ⅱ)サプライチェーンに途絶の危険性があり、(ⅲ)製品の製造において不可欠な機能を果たし、その欠如により米国経済や国家安全保障に重大な影響を及ぼす可能性があるもので、国防長官との調整や関係機関の長との協議を踏まえ、本大統領令発令の60日以内に内務長官が指定する。
第3条
重要鉱物の供給途絶に対する国家の脆弱性を低減することを連邦政府の政策とする。具体的には、重要鉱物の新たな供給源の発見、サプライチェーンの全段階(探鉱、採掘、選鉱、分離、合金化、リサイクル及び再処理を含む)における活動強化、法規で認められた範囲内での米国内の地形、地質及び地球物理に関する電子データへのアクセスの整備、並びに重要鉱物の探鉱、生産、処理、再処理、リサイクル及び国内精製の迅速化のためのリース及び許認可手続の簡素化を実施する。
第4条
内務長官が第2条に基づき重要鉱物を指定した日から180日以内に商務長官は、国防長官、内務長官、農務長官、エネルギー長官及び米国通商代表と調整の上、(ⅰ)重要鉱物への依存を低減するための戦略、(ⅱ)重要鉱物のリサイクル及び再処理技術の開発並びに技術的代替に向けた進捗状況の評価、(ⅲ)同盟国及びパートナーとの投資や貿易を通じて重要鉱物にアクセスし開発する選択肢、(ⅳ)民間による重要鉱物の資源探査を支援するため、米国の地形、地質及び地球物理に関する各地図を改良し、法律で認められている範囲内かつ個人情報保護を目的として適切に制限したうえでその電子データへのアクセスを可能とする計画、並びに(ⅴ)鉱山開発、重要鉱物資源へのアクセスの促進、また、重要鉱物の発見、生産及び国内精製の拡大に寄与する許認可及び評価プロセスの合理化に関する提言を含む報告書を大統領に提出しなければならない。
2.1.2 重要鉱物リスト(2018年5月18日内務省地質調査所)8

重要鉱物として35鉱種を指定。当該鉱種及びその主な用途及び利用分野9は以下のとおりである(鉱種アルファベット昇順)。なお比較として、我が国のレアメタルである31鉱種10には「(※)」を付している。

アルミニウム ;
(ボーキサイト)
経済全般(※)
アンチモン ;
蓄電池及び難燃剤(※)
砒素 ;
木材保護剤、農薬及び半導体
重晶石(バライト);
セメント産業及び石油開発産業(※)
ベリリウム ;
航空宇宙産業及び国防産業における合金硬化剤(※)
ビスマス ;
医療及び原子力研究(※)
セシウム ;
研究開発(※)
クロム ;
ステンレス鋼及び他の合金(※)
コバルト ;
蓄電池及び超合金(※)
蛍石 ;
アルミニウム、ガソリン及びウラン燃料の製造
ガリウム ;
集積回路及びLED等の光素子(※)
ゲルマニウム ;
光ファイバー及び暗視用途(※)
グラファイト(天然);
潤滑剤、蓄電池及び燃料電池
ハフニウム ;
核燃料制御棒、合金及び高温セラミックス(※)
ヘリウム ;
MRI、浮揚及び研究用途
インジウム ;
液晶スクリーン(※)
リチウム ;
蓄電池(※)
マグネシウム ;
鉄鋼業及び窯業における炉内耐火剤
マンガン ;
鉄鋼業(※)
ニオブ ;
合金鉄(※)
白金族 ;
触媒(※)
炭酸カリウム ;
肥料
レアアース ;
蓄電池及び電子機器(※)
レニウム ;
無鉛ガソリン及び超合金(※)
ルビジウム ;
電子工学における研究開発(※)
スカンジウム ;
合金及び燃料電池(※)
ストロンチウム ;
花火及びセラミック(フェライト)磁石(※)
タンタル ;
キャパシタ等の電子部品(※)
テルル ;
鉄鋼業及び太陽電池(※)
錫 ;
鉄鋼向け防食被覆及び合金
チタン ;
白色顔料及び金属合金(※)
タングステン ;
耐摩耗金属製造用途(※)
ウラン ;
核燃料
バナジウム ;
チタン合金(※)
ジルコニウム ;
高温窯業(※)
2.1.3 米国の製造業及び防衛産業の基盤並びにサプライチェーンの強靭性評価及び強化
(Assessing and Strengthening the Manufacturing and Defense Industrial Base and Supply Chain
  Resiliency of the United States)(2018年9月国防省)11

本報告書の冒頭に記されている要約は、以下のとおりである。

発見

  • 全体的な傾向として、主に防衛サプライチェーンの下流に影響が現れている。
  • 驚くほど競合する他国に依存している。
  • 全分野の雇用主が労働力の問題に直面している。
  • 多くの分野において、競争力のある価格と外国市場を求めて、重要機能の海外移転が続いている。

これまでの取組

  • 足元の国防省予算増額の安定化
  • 対米外国投資委員会の刷新及び通商法第301条に基づく中国による知的財産盗用に対する調査
  • 通常兵器移転政策及び無人航空機輸出政策の見直し
  • 旧国防省調達・技術・兵站局の再編及び適応調達枠組みの開発
  • 調達人材の早期育成のための教育及び訓練を提供する防衛調達大学の再編
  • 産業基盤の脆弱性の分析、評価及び監視能力の強化プロセスの確立に関する2018年度国防権限法第1071条(a)項への対応
  • 国家先端製造業戦略の策定
  • 労働省統轄の見習い制度促進の戦略及び提案を策定する見習い制度拡大タスクフォースの設置
  • 国防省による国家安全保障及び経済競争力に資するミクロ電子工学におけるイノベーション促進プログラムの実施
  • 技術優位性を維持するため、国防省内に横断チームを設置
  • 国家産業安全保障プログラムにおける業務委託先を米国の製造業及び防衛産業に対するリスクに基づく方法に従って管理

提言

  • 国家安全保障の取組を支援する産業政策の策定
  • 重大なボトルネックへの対処、不安定な供給者の支援及び単一障害点排除のための産業基盤の下流への直接投資の拡大
  • 米国との関係を遮断する恐れのある政治的不安定国に依存している供給源の分散化
  • 産業基盤の課題解決に向けた同盟国との協働
  • 自律的な産業基盤の更新
  • 労働力開発の取組加速化
  • より効率的なプロセスによる未処理の機密情報の利用許可数の削減
  • 次世代技術探索の取組強化
2.1.4 鉱物コモディティ概要(2019年内務省地質調査所)12

本報告書の冒頭に記されている要約は、以下のとおりである。

2018年3月、商務省が通商拡大法第232条の下での国家安全保障に対し有害であると認定したことで、カナダとメキシコを除く全ての国からのアルミニウムについて10%の、鉄鋼について25%の追加輸入関税が導入13された。EU諸国、カナダ、中国、インド、日本、メキシコ、ロシア、トルコなど多くの国は、当該追加輸入関税への対抗策として米国のアルミニウム及び鉄鋼に対する輸入関税を引き上げた。2018年12月にはトルコへの関税について、アルミニウムを20%に、鉄鋼を50%にそれぞれ引き上げた。結果として、2018年の米国の輸入量はアルミニウムが11%減、鉄鋼製品が8%減となった。2018年7月以降、通商法第301条に基づき通商代表部が中国に課した追加輸入関税では多くの鉱産物も対象となったが、重要鉱物を含む一部の鉱産物は対象外とされた。

2018年に米国内の鉱山で生産された非燃料鉱物は推計822億米ドル(前年比3%増)であったが、そのうち金属は価格低迷及び生産量減少により、推計259億米ドル(同4%減)であった。国内原材料及び国内リサイクル品からは7,660億米ドルの鉱産物が生産され、それを消費した下流産業製品の価値は推計3兆200億米ドル(同6%増)であった。

2018年において、非燃料鉱物のうち輸入依存度が100%のものは18鉱種(うち重要鉱物14鉱種)であり、輸入依存度が50%超100%未満のものは30鉱種(うち重要鉱物15鉱種)であった。非燃料鉱物の最大の輸入元は中国であり、次いでカナダであった。

国防省国防兵站局戦略物資部は、米国内10か所に44鉱種を備蓄している。2018年度には約1,160万米ドル分の調達及び6,990万米ドルの余剰分の売却を実施し、同年度末には12億米ドル相当を備蓄している。

2.1.5 安全で信頼できる重要鉱物の供給に向けた連邦政府戦略(2019年6月4日商務省)14

本報告書の冒頭に記されている要約は以下のとおりである。

重要鉱物の供給確保とそのサプライチェーンの耐性は、米国の経済繁栄と国防に不可欠である。米国は重要鉱物を海外からの供給及び海外のサプライチェーンに大きく依存しているため、経済と軍事の両面において戦略的脆弱性を内包する可能性がある。これらリスクの低減は重要であり、かつ、米国の繁栄を促進し平和を維持するための米国の国家安全保障戦略及び国家防衛戦略と一致する。

米国は重要鉱物のほとんどを輸入している。具体的には、内務省によって重要と指定されている35鉱種のうち31種類が輸入に依存(輸入が年間消費量の50%超)している。また、14種の重要鉱物については米国国内で生産されておらず、需要を満たすため完全に輸入に依存している。

本課題に対処し、重要鉱物の供給途絶に対する国家のリスクを軽減するため、ドナルドJ.トランプ大統領は、2017年12月20日に大統領令第13817号「安全で信頼できる重要鉱物の供給に向けた連邦政府戦略」を発令した。当該大統領令は、関係する省庁及び局の長官と調整の上、以下の事項を含む報告書を大統領に提出するよう、商務長官に指示するものである。

  • 1) 国内の重要鉱物への依存を低減するための戦略
  • 2) 重要鉱物のリサイクル及び再処理技術の開発並びに重要鉱物の技術的代替に向けた進捗状況の評価
  • 3) 同盟国及びパートナーとの共同投資や貿易を通じて重要鉱物にアクセスし開発する選択肢
  • 4) 民間による重要鉱物の資源探査を支援するため、米国の地形、地質及び物理探査に関する各地図を改良し、法律で認められている範囲内かつ個人情報保護を目的として適切に制限したうえでその電子データへのアクセスを可能とする計画
  • 5) 鉱山開発、重要鉱物資源へのアクセスの促進、また、重要鉱物の発見、生産及び国内精製の拡大に寄与する許認可及び評価プロセスの合理化に関する提言

本戦略は、大統領令第13817号において言及された目的を達成するために連邦政府が実行する具体的な行動計画として、6項目の行動喚起、24の目標及び61の提言を提示する。

本戦略の行動計画を実行することで、顕現しつつある重要鉱物に関する問題へ対処するため、重要鉱物を使用する先進技術、産業及び防衛関連製造業分野の能力向上、重要鉱物に依存する米国企業のリスク低減、重要鉱物のサプライチェーンの各段階の生産施設における有利なビジネス環境の創出、米国の経済安全保障と国防の支援を実現し、重要鉱物供給途絶に対する国家のリスクを軽減する。

本戦略で述べる行動喚起の要点は以下のとおりである。

  • 1) 重要鉱物サプライチェーンにおける変革的な研究開発及び展開の推進:重要鉱物のリサイクル及び再処理技術の開発、重要鉱物の技術的代替、供給源の多様化並びに重要鉱物の抽出、分離、精製及び合金化のプロセス改善の進捗状況を評価する。
  • 2) 米国の重要鉱物サプライチェーン及び防衛産業基盤の強化:重要鉱物サプライチェーンの改善方法を議論し、米国内の重要鉱物資源開発の促進、強固な下流における製造能力の構築、充分な生産能力の確保により、米国における供給リスクの低減に貢献する。
  • 3) 重要鉱物に関する国際的な貿易及び協力の強化:米国の同盟国との共同投資及び貿易を通じて重要鉱物へのアクセス及び開発のための選択肢の検討、国際的な協調及び協力分野の議論、市場を歪める外国の貿易行為の悪影響への対処に寄与する米国の通商法と国際協定を確実に執行する。
  • 4) 国内の重要鉱物資源に対する理解の向上:米国の地形、地質、物理探査及び海底地形に関する各地図の改良及び公表、鉱物情報の収集及び鉱種毎のリスク緩和戦略の分析の支援、省庁間の取組の集中及び優先順位付け、国内の在来型資源(採掘された鉱石から直接得られる鉱物)、二次的資源(リサイクル材料、産業廃棄物及び使用済み材料)並びに非在来型資源(尾鉱、石炭副産物、海水からの抽出物、地熱かん水などの供給源から得られる鉱物)の探鉱及び開発支援となる重要鉱物資源の評価のための計画を策定する。
  • 5) 連邦政府所有地における重要鉱物資源へのアクセス改善及び連邦政府からの許認可取得期間の短縮:鉱区開発及び国内の重要鉱物資源へのアクセス促進に関する許認可及び評価プロセスの合理化に向けた提言を行う。
  • 6) 米国の重要鉱物に関連する労働力の増加:重要鉱物に関連し、強固な国内産業基盤育成のための強力な国内労働力の開発・維持に必要な活動について議論する。

なお、6項目の行動喚起、24の目標及び61の提言について、主なものは以下のとおりである。

【行動喚起 1】重要鉱物サプライチェーンにおける変革的な研究開発及び展開の推進

米国は、外国の重要鉱物資源及び製造業サプライチェーンへの依存を低減するために、10年以上に亘って科学及び技術に投資してきた。かかる投資は主として、供給源の多角化、効率改善及び代替開発という3つの基本方針に沿って、重要鉱物サプライチェーンにおける適応性、柔軟性及び競争力を高める目的で実施される。既に相当な進展が見られるものの、重要鉱物の安心で信頼できる供給確保のため、連邦の研究開発戦略を更新し、民間部門による初期段階調査のより積極的な活用を促す必要がある。

[目標] 重要鉱物サプライチェーンにおける科学的かつ技術的な能力強化のための研究開発戦略の策定

<提言1.1>重要な研究開発のニーズを洗い出し、重要鉱物の供給源多様化、高効率利用、リサイクル及び代替、さらにはクロスカット採掘技術、データ科学技術、材料科学、製造科学及び工学、コンピューターモデリング並びに環境衛生及び安全性の研究開発等、現在進行中の活動を整理・調整するロードマップの策定(エネルギー省、商務省(国立標準技術研究所・海洋大気庁)、国防省及び環境保護庁;2~4年)

<提言1.3>重要鉱物並びに二次的資源及び非在来型資源(石炭由来資源、尾鉱、製錬スラグ、廃棄物、廃品及び海洋資源を含む)から製造される関連材料の生産に関する、技術的かつ経済的な実現可能性調査の実施(エネルギー省、商務省(海洋大気庁)、国防省、内務省(地質調査所)及び環境保護庁;1~2年)

[目標] 米国民間企業によるイノベーションへの投資拡大及び国家予算で開発された科学技術の移転の促進

<提言1.5>民間企業による先進科学技術の開発及びその活用を奨励する提言の検討提案。考えられる案としては、(1)新技術への投資に対する税制優遇、(2)製品生産時に国内鉱石を利用する新技術にて生産された製品の政府による買い上げ制度、並びに(3)重要鉱物の処理及び製造に係る研究開発及び商業化に対する民間部門の投資を奨励すべく、エネルギー省及び国防省のてこ入れ(重要鉱物小委員会、国防省、エネルギー省及び内務省;2~4年)

【行動喚起 2】米国の重要鉱物サプライチェーン及び防衛産業基盤の強化

重要鉱物に関する強固な国内サプライチェーン及び柔軟な防衛産業基盤の構築は、国内の重要鉱物資源の開発及びサプライチェーンのあらゆる段階の供給リスク低減に役立つものである。米国はサプライチェーン全体の能力・規模の発展、拡大、近代化及び維持に対する民間企業による投資及びイノベーションをこれまで以上に奨励する必要がある。

[目標] 重要鉱物産業及び関連サプライチェーンに対する理解及び支援

<提言2.1>研究開発投資、設備能力拡大、備蓄及び貿易行為といった政策並びに戦略提言のため、国内重要鉱物産業及び下流サプライチェーンの市場動向並びに競争力の定期的評価を可能とする省庁間連携方法の策定(国防省、商務省(産業安全保障局)、エネルギー省及び内務省(地質調査所);2年)

[目標] 連邦政府外ステークホルダーの重要鉱物に係る専門性の活用

<提言2.2>金属及び非金属部門への助言を求めるため、国家重要鉱物サプライチェーン評議会を設立(国防省、商務省、エネルギー省及び内務省;1~2年)

<提言2.3>重要鉱物サプライチェーンの関係者を招集し、あらゆる段階(陸上及び海洋における採掘の開発、拡大、近代化及び維持、下流の加工処理、関連する製品製造業並びに産業基盤の耐性強化を含む)におけるイノベーションの実現に関する主要なニーズ及び課題の洗い出し、より安定した重要鉱物の国内供給を構築すべくリサイクル及び回収のためのインフラストラクチャーの改善、また二次的資源及び非在来型資源の用途開発、重要鉱物の回収を促進するような製品設計の改善並びに技術面もしくは研究開発面でのニーズ探しを実施(国防省、エネルギー省、内務省(地質調査所)及び環境保護庁;1~3年)

[目標] 米国の下流における重要鉱物製品の生産能力及びサプライチェーンの耐性の強化、拡大、近代化及び維持

<提言2.5>国内産業の生産能力、投資に対する税制優遇及び譲渡益課税控除、低利融資及び債務保証、従業員訓練基金、国内調達方針、貿易調整支援制度並びに中小企業に与えられる調達機会といった、既に増加した民間部門による投資をさらに促すような各政策の評価(重要鉱物小委員会、国土安全保障省、国防省;1年)

[目標] 戦時又は国家非常時における、緊急かつ不測の軍事及び重要な非軍事要請に対する国防備蓄プログラムの即応力の安定化及び強化

<提言2.7>戦時又は国家非常時における国防備蓄プログラムの対応力向上のための、現行の国防省の緊急調達権限及び他の実施事例の見直し(国防省;実施中)

<提言2.8>上院報告第115回会期第262号で言及のあった、国防備蓄基金の長期的な財務安定性の欠如に関する議会の懸念への対処(国防省;1~2年)

【行動喚起 3】重要鉱物に関する国際的な貿易及び協力の強化

米国は、現在、多くの重要鉱物を輸入している。それら資源へのアクセスを維持することは米国の経済安全保障及び国防にとり極めて重要である。同盟国及びパートナーとの貿易並びに協力拡大は、途絶の恐れがある重要鉱物の供給源依存を低減するのに役立ち得る。また、米国の通商法及び国際協定の強化も市場を歪める外国の貿易行為による悪影響への対処に有効である。

[目標] パートナー国との事例共有の活発化、並びに貿易及び協力機会の洗い出し

<提言3.1>重要鉱物資源の発掘及び探鉱、処理及びリサイクル、供給リスクの低減及びサプライチェーンの途絶防止、重要鉱物材料及びその製造に関する研究開発、並びに鉱区への外国投資及び取得情報の捕捉・共有に関して、パートナー国(特にカナダ、豪州、EU、日本及び韓国)との協力の継続及び拡大(商務省(国際貿易局)、国防省、エネルギー省、内務省(海洋エネルギー管理局・地質調査所)及び国務省;実施中)

<提言3.2>パートナー国における重要鉱物の正確な需給見通しの作成(国防省、国務省及び内務省(海洋エネルギー管理局・地質調査所);5年)

[目標] 国内産業及び広い意味での国益を毀損することなく、国際的なパートナーとの貿易及び投資による重要鉱物へのアクセス確保

<提言3.5>重要鉱物に関する貿易及び投資に対する諸外国の障壁の注視、並びにそれら障壁が建てられた際はその除去(商務省(国際貿易局)、通商代表部及び国防省;実施中)

<提言3.6>諸外国による非合法又は不公正な貿易慣行に対抗するための、有効な国際的貿易合意の活用(通商代表部及び商務省(国際貿易局);実施中)

【行動喚起 4】国内の重要鉱物資源に対する理解の向上

国内の重要鉱物資源を発掘・活用する能力強化には、高度な地球観察データ、確かな鉱物情報の収集及び分析、重要鉱物の供給及び消費データの公開、並びに重要鉱物資源の評価が必要である。全てのデータは、見つけやすく、アクセス可能で、利用可能な電子媒体による一般公開を想定して作成されるべきである。

[目標] 各鉱種特有の脆弱性緩和戦略の実施方法を開発するための重要鉱物の供給及び消費のデータ活用

<提言4.1>需給状況等の変化に基づく、重要鉱物リストの2年ごとの定期的な見直し及び所要時の更新(内務省(地質調査所)、重要鉱物小委員会、国防総省及びエネルギー省;2~4年)

<提言4.3>重要鉱物資源及び重要鉱物関連の経済活動に対する投資の指標を追跡する試験的な取組の策定(内務省(地質調査所)及び商務省;2~4年)

[目標] 重要鉱物資源に関する評価の実施、並びに重要鉱物の二次的資源及び非在来型資源の活用を奨励する手法の検討

<提言4.4>優先順位に沿って、2年ごとに、少なくとも1件の国又は地域単位で国内の複数の重要鉱物資源に関する評価を実施(内務省(海洋エネルギー管理局・地質調査所);実施中)

<提言4.5>重要鉱物資源に関する評価手法の確立、二次的資源及び非在来型資源からの重要鉱物の採取可能性の特徴の記録及びその位置を示す地図の作成、並びに重要鉱物小委員会に対するそれらの進捗の定期的な報告(民間部門との共同で、内務省(地質調査所)、エネルギー省、環境保護庁及び国務省;実施中)

<提言4.6>有望な賦存可能性を秘める重要鉱物の二次的資源及び非在来型資源の特定、並びに国内の回収能力の改善に必要な技術の開発(エネルギー省、国防省、内務省(地質調査所)及び環境保護庁;実施中)

[目標] 米国並びに沿岸部及び領海の地形、地質、物理探査及び海底地形に関する各地図の改良

<提言4.8>陸上及び海洋において有望な重要鉱物資源の賦存可能性を秘める優先地域の特定(商務省(海洋大気庁)及び内務省(海洋エネルギー管理局・地質調査所);1~2年)

<提言4.9>重要鉱物の地図作成事業の考案及びその優先的推進のための予備的地域調査の実施(商務省(海洋大気庁及び内務省(海洋エネルギー管理局・地質調査所);1~2年)

<提言4.10>米国の排他的経済水域における海洋鉱物資源の可能性を評価するための複数の機関にわたる手続きの整備及び活用(商務省(海洋大気庁)、エネルギー省(水力技術局)及び内務省(海洋エネルギー管理局・地質調査所);2~4年)

[目標] 地形、地質、物理探査及び海底地形データの検索しやすさ、アクセスしやすさ及び利用しやすさの改善

<提言4.12>連邦政府機関が作成した地形、地質、物理探査及び海底地形に関する調査データの公開及びその電子媒体化(商務省(海洋大気庁)及び内務省(海洋エネルギー管理局・地質調査所);2~4年)

<提言4.13>データの開発及び普及を支援するため、共通の枠組み又は基準を用いることで、データの検索しやすさ、アクセスしやすさ及び利用しやすさを改善(内務省、商務省(海洋大気庁)及びエネルギー省;2~4年)

【行動喚起 5】連邦所有地における重要鉱物資源へのアクセス改善及び連邦政府からの許認可取得時間の短縮

重要鉱物は米国の経済及び国家安全保障の維持に不可欠である。よって、かかる資源へのアクセス改善は極めて重要である。ここでのアクセスとは、鉱物の探鉱及び開発に必要な全ての側面、鉱物又は鉱山につながるインフラストラクチャー、土地利用政策、許認可制度の改革、並びに長期的なアクセスを確保し維持するために必要な経済的支援を含むものである。

[目標] 鉱物資源へのアクセスの特定及び保護のための、内務省土地管理局及び農務省森林局の土地利用計画プロセスの改定

<提言5.2>鉱物開発の価値の有無に基づいて地表管理庁が土地を指定し分類する様に土地利用計画プロセスの更新(内務省(土地管理局);1年)

[目標] 鉱業法により取り消された案件並びに連邦鉱物地における探鉱及び開発が制限されている地域の徹底した見直しの完了

<提言5.4>現行法下の取消し案件、土地利用指定及び配分計画の見直し、並びに鉱物の探鉱、開発及びその他の活動に与え得る不必要な影響を削減するための適切な方法の提言(内務省(土地管理局)及び農務省(森林局);2年)

[目標] 探鉱及び開発への影響に関する、連邦所有地における交通手段の管理計画及び既存のインフラストラクチャー能力の見直し

<提言5.5>実行可能な範囲で鉱物の探鉱及び開発促進のため、地表管理庁による交通手段の管理計画の策定又は修正。交通手段の管理計画の更新又は新規に計画策定する際の順序は、重要鉱物の可能性が最大の地域を優先的に考慮の上決定(内務省(土地管理局)及び農務省(森林局);1~2年)

[目標] 許認可に必要な事項及び発給に要する期間を把握するための鉱物資源開発モデルの適用

<提言5.6>州政府及び連邦政府機関による許認可の内容確認、処理及び発給に要する時間を含め、鉱山プロジェクトにおけるマイルストーンの進捗確認が可能な公開オンラインシステムの開発(内務省(土地管理局)及び農務省(森林局);1~2年)

[目標] 鉱物プロジェクトにおいて許認可申請の円滑な処理を実施するための国家環境政策法及び他の規制の見直し

<提言5.7>鉱山操業計画の円滑な処理に留意して国家環境政策法に基づく分析を簡素化すべく、地表管理庁による同法で定められたプロセスの見直し(国防省(陸軍工兵隊)、内務省(土地管理局)及び農務省(森林局);2~4年)

<提言5.8>既存の国家環境政策法の無条件での除外例の見直し、並びに、必要に応じ、環境に重大な影響を及ぼさない鉱物の探鉱及び開発活動の承認につき前例となる、新たな無条件での除外例を策定することを提言(国防省(陸軍工兵隊)、内務省(土地管理局)及び農務省(森林局);2年)

<提言5.10>州又はその他の機関が実施する鉱業プロジェクトに対する現行の環境評価及び分析を統合すべく、内務省土地管理局及び農務省森林局の手続改定(内務省(土地管理局)及び農務省(森林局);1~2年)

<提言5.13>過度を廃し許認可プロセスを簡素化するため、現行の鉱業規則改定の提言(内務省(土地管理局)及び農務省(森林局);1年)

[目標] 許認可プロセス改善のための水質保全法及び河川・港湾法の見直し

[目標]重要鉱物の海洋開発を促進するため、現行規則の見直し及び新法案の検討

<提言5.17>海洋採鉱権を促進するため、現行規則の改定を提言(商務省(海洋大気庁)及び内務省(海洋エネルギー管理局);1年)

[目標] 陸上交通修繕法第41条及び連邦政府の決定を一括化する枠組みに優先度の高い鉱業事業を含めるか否かの検討

<提言5.19>陸上交通修繕法第41条及び大統領令第13807号のインフラストラクチャー事業の定義に鉱山事業を含めることについて、連邦許認可改善運営評議会長への提言(内務省(土地管理局)及び農務省(森林局);1年)

【行動喚起 6】米国の重要鉱物に関する労働力の育成

米国の重要鉱物サプライチェーン全体にわたり、高齢化及び退職者、鉱業及び製錬業への一般の理解、並びに米国人材の確保における外国との競争を含む労働力関連の課題に直面している。かかる課題に対処しない限り、重要鉱物サプライチェーン全体を通して国内生産ニーズを満たす米国内の労働者を充分には確保できないかもしれない。

[目標] 鉱山学、地質学、その他重要鉱物の採鉱及び製造に関連する分野の教育強化

[目標] 材料科学、コンピューター科学及び鉱物供給産業の刷新、新たな才能に対し魅力的な関連学問間の学際的協力の促進

[目標] 連邦所有地における重要鉱物の探鉱及び開発を支援する適切な人材を育成するための人事及びマネジメント改革の実施

[目標] 重要鉱物の利害関係者と一般大衆との継続的な意思疎通の促進

最後に言及されている次のステップ及び結論は、以下のとおり。

重要鉱物小委員会は、重要鉱物に関する省庁間調整機関であり、本戦略の実施を調整する存在であるべきである。本戦略の提言の実効性は策定の5年後に評価されるべきである。さらに、重要鉱物小委員会は、その時々の重要鉱物の優先順位及び課題を反映する様に調整しながら本戦略を実施すべきである。また、2018年5月に内務省が発表した重要鉱物リストも本戦略を構成する重要な要素である。内務省は、鉱物の供給、需要、生産の集中度合及び現行政策における優先順位の変化に基づき、重要鉱物小委員会と協力のうえで当該リストを隔年で見直すべきである。当該リストは必要に応じて更新し、それによる本戦略の調整を都度、周知すべきである。

本戦略は原材料の確保から民生及び防衛用途の最終消費に及ぶ重要鉱物サプライチェーン全体の脆弱性への対処を追求する包括的な省庁間戦略である。本戦略で示された24の目標及び61の提言は、重要鉱物の新たな供給源の発見に有用、サプライチェーン内の全ての活動を強化、民間投資及び国内下流産業の価値を付加する処理及び製造の成長を刺激、採鉱者、生産者及び土地管理者に最先端の地図データへのアクセスを保証、また、安全で環境に対し責任ある方法での鉱業権及び許認可手続の簡素化の道筋を示したものである。本戦略は、政府の優先順位及び課題との関連性及び有効性を確認するため、定期的に見直すべきである。

2.2 石炭副産物・残渣及び石炭灰からのレアアース回収

エネルギー省傘下の国立エネルギー技術研究所(略称「NETL」)は、2014年から、石炭分野におけるプログラムの1つとして、レアアース・プログラムを実施している15。その目的は、石炭及び石炭関連資源から高純度レアアース及び重要鉱物を生産するために国内の小規模パイロットスケール施設の技術的及び経済的な可能性を検証することとしている。公表されている主な取組は、以下のとおりである。

2.2.1 石炭及び石炭副産物からのレアアース報告書(2017年1月)16

エネルギー省が連邦議会に対して提出した本報告書の概略は以下のとおりである。

国立エネルギー技術研究所は、フライアッシュ、石炭くず、鉱廃水といった石炭及び石炭副産物からの経済的なレアアース回収可能性の評価及び分析を実施。

世界のレアアース需要は年間10万トン規模と考えられるが、米国の主要な産炭地域であるアパラチア堆積盆の北中部(ペンシルベニア州、ウェストバージニア州及びケンタッキー州)及び西部諸州(コロラド州、ニューメキシコ州、ユタ州、ワイオミング州など)の2地域には合計で数百万トンが埋蔵している可能性がある。

レアアースは炭層の高灰分堆積物に濃集する傾向がある。また、石炭生産及び石炭火力発電時の副産物にも濃集すると考えられる。

レアアース生産の経済性改善のために、継続的な分離技術開発の研究が必要である。具体的には、高レアアース品位の国内の石炭資源及び石炭副産物資源の特定、石炭及び石炭副産物中のレアアースの形状や構造の理解を深めるための調査、並びにサプライチェーンの下流での処理及び個別元素の精製を向上させ得る石炭及び石炭副産物からレアアース混合物を回収する他の分離技術の開発及び試験テスト等が求められる。

2.2.2 石炭研究開発事業への8,730万米ドル拠出に係るエネルギー省発表(2019年4月10日)17

本発表の内容は、概略、以下のとおりである(金属分野への言及がない部分は割愛)。

・先進石炭技術の研究開発事業に、総額8,730万米ドルを拠出。

石炭資源からのレアアース及び重要鉱物回収処理のスケールアップ及び最適化・効率改善:従来及び新規の両方式による抽出、分離及び回収プロセス等、国内石炭資源からのレアアース及び重要鉱物の回収に関する技術開発を推進する協力合意に基づくもの。エネルギー省の拠出上限は2,000万米ドル。

2.2.3 Texas Mineral Resources社発表(2019年4月12日)18

本発表の内容は、概略、以下のとおりである。

・Texas Mineral Resources社主体のコンソーシアムが、ペンシルベニア州の炭鉱廃滓から、スカンジウム、ジスプロシウム、ネオジム、ランタン、セリウム等のレアアースを99%という高純度で生産する能力の実証に成功。本件はフェーズ1であり、エネルギー省から100万米ドルの資金拠出を受けたもの。

・当該コンソーシアムは今回の成功を受け、フェーズ2としてパイロットプラントによる生産拡大を実証すべく、エネルギー省に2,000万米ドルの資金拠出を申請済み。

3.立法府(連邦議会)の取組

3.1 法案概要

3.1.1 国家戦略重要鉱物生産法案19
名称:
正式名称:
内務長官及び農務長官に対する、経済及び国家の安全保障並びに国内製造業の競争力強化にとって戦略的で非常に重要な鉱物及び鉱物材料の国内供給源の効率的な開発の要請(To require the Secretary of the Interior and the Secretary of Agriculture to more efficiently develop domestic sources of the minerals and mineral materials of strategic and critical importance to the economic and national security and manufacturing competitiveness of the United States, and for other purposes)
略称:
国家戦略重要鉱物生産法案(National Strategic and Critical Minerals Production Act)
番号:
下院第116回会期法案第2531号(H.R. 2531(116th))
提案者+共同提案者:
マーク・アモデイ下院議員(共和党、ネバダ州選出)+下院議員33名(共和党33名、民主党0名)
経過:
2019年5月7日    下院へ提出
主な条項:
第3条 この法律において、機関とは、連邦、州、地方若しくは部族の政府の省庁又はその他の機関、及びアラスカ州先住民会社をいう。主務機関とは、鉱物の探鉱又は採取の許認可の発行において主たる責任を担う機関をいう。
第4条(a)・(b)項 この条において、戦略的重要鉱物とは、国防及び国家安全保障、エネルギー関連のインフラストラクチャー、地域の活気、沿岸部の復興及び持続的な環境保護、国内製造業、農業、不動産業、通信業、ヘルスケア産業及び交通関連のインフラストラクチャーへの支援、又は米国の経済安全保障及び貿易均衡のいずれに対しても必要な鉱物をいう。主務機関によって戦略的重要鉱物を産出すると認定された国内鉱山は、大統領令第13807号20に規定するインフラストラクチャー事業とみなす。
第5条(a)項 主務機関は、関係機関と調整・協議の上、遅延の最小化、許認可プロセス完了までのスケジュールの策定及びその遵守、許認可事項の明確化、並びにこれらの進捗を管理しなければならない。
第5条(b)項 国家環境政策法による鉱物の探査又は採取の許認可の発行に関し、州又は連邦機関が以下に掲げる項目に既に又はこれから対処するものと主務機関が認めた場合は、国家環境政策法の必要条件が手続的にも実質的にも充足されているものとみなす。なお、主務機関は許認可申請の受付後90日以内に、決定内容の理由説明、決定の基となった事実の開示及び理性的な第三者も同じ決定に至るとする事実を書面による決定に付さなければならない。
(A)許認可に基づいて実施される活動の環境への影響
(B)許認可に基づいた活動により起こり得る環境への悪影響
(C)許認可発行の代替となり得る手段
(D)長期間であれ短期間であれ地域環境の利用と長期的な生産性の維持及び強化との関連性
(E)提案された活動に関連する資源の取消し不可能なコミットメント
(F)許認可に基づいた活動の承認過程における一般大衆の参加
第5条(c)項 主務機関は許認可プロセスにおいて、評価の重複を回避し、書類手続きを削減し、かつ、他の関係諸機関を早い段階からプロセスに関与させ、政府内の調整を促進しなければならない。その実施にあたり、主務機関は、管轄の州機関が実施する基準データ、分析及び評価に従い、かつ、許認可プロセスを早めるのであれば、最大限可能な範囲で複数の協議や評価を順番にではなく同時並行で進めることを検討しなければならない。また、州又は地方の開発関連機関から要請がある場合には、主務機関は他の連邦機関と協議のうえで、事業の代表者、州及び地方政府並びに他の関連団体との間で覚書を交わすことができる。
第5条(d)項 主務機関は、(b)項で規定されている決定ができない事業について、事業提案者の要請があったときは、鉱物の探査又は採取に関連する他機関ととともに、事業提案者との間で、許認可プロセスの各細部につきそれぞれ期限を定めることにつき合意しなければならない。なお、両者が別に合意した場合を除いて、当該評価プロセスに掛かる期間の合計は30か月以内とする。
第5条(g)項 国立森林システムの土地における事業に関し、主務機関は非開発指定地を除いて、鉱物資源が特定されている地域の全て、並びに同地域での建設、操業、維持及び修繕に必要と主務機関が決定した追加地域の全てにつき、CFR(Code of Federal Regulations;連邦行政命令集)第36編第294節21の要請の適用除外としなければならない。
3.1.2 米国鉱物安全保障法案22
名称:
正式名称:
国家としての材料又は重要鉱物のニーズを充足するために、国内資源のアクセス、開発及び環境面で責任ある生産等を促進する法案(A bill to facilitate the availability, development, and environmentally responsible production of domestic resources to meet national material or critical mineral needs, and for other purposes)
略称:
米国鉱物安全保障法案(American Mineral Security Act)
番号:
上院第116回会期法案第1317号(S. 1317 (116th))
提案者+共同提案者:
リサ・マコースキー上院議員(共和党、アラスカ州選出)+上院議員4名(共和党3名、民主党1名)
経過:
2019年5月2日    上院へ提出
          5月14日   上院エネルギー天然資源委員会において公聴会開催
主な条項:
第4条(c)・(d)・(e)項 内務長官は、意見公募期間の終了後45日以内に、重要鉱物に指定された鉱物、元素、物質又は素材の決定方法及び確定した重要鉱物リストを官報に公開しなければならない。そして、内務長官は、国防又は国家安全保障にとって戦略的かつ重要であると他の連邦機関が認定した鉱物、元素、物質又は素材を当該リストに追加できる。また、内務長官は、少なくとも3年ごとに当該決定方法及びリストを見直さなければならない。
第5条(a)・(b)・(c)項 本法律の制定後4年以内に、内務長官は、州、地方自治体、学界、産業界及びその他団体と協議のうえ、既に発見済みの重要鉱物資源の特定及び定量化、並びに未発見の重要鉱物資源の量的及び質的評価に関する各重要鉱物の包括的な分析を完成させなければならない。その際に、内務長官は、既存の情報及び資料を補足するために、現地調査(試錐、リモートセンシング、物理探査、地形及び地質図の作成並びに地化学サンプル採取及びその分析を含む)を行うことができる。また、内務長官は、法令に従い、最大限可能な範囲で収集した全データを電子公開しなければならない。
第6条(b)項 内務長官及び農務長官は、意思決定の質及び適時性の改善のために、最大限可能な範囲で、連邦所有地における重要鉱物の生産に関する許認可及び評価プロセスを最大の効率及び効果をもって完了しなければならない。
第6条(c)項 本法律の制定後1年以内に、内務長官は連邦議会に対し、国内の重要鉱物の探鉱及び開発の許認可に係る適時性向上に資する更なる方法の検討、連邦所有地における重要鉱物に関連する活動の申請、操業計画、鉱業権、許認可等に必要な連邦機関職員の適切な配置及び訓練を可能とするための具体策の検討、かかる申請等の準備及び処理の各段階をに要する標準的な時間の算出、並びに(b)項に従って実施する活動内容を記載した報告書を提出しなければならない。
第8条(a)項 エネルギー長官は、サプライチェーンを通して重要鉱物の効率的な生産、利用及びリサイクルの促進、並びに米国には十分には存在しない重要鉱物の代替物の開発に関する研究開発プログラムを実施しなければならない。
第9条(a)項 内務長官は、以下を含む年次報告書を作成し、その結果を公表しなければならない。
(1)重要鉱物の生産、消費及びリサイクルパターンの包括的な評価
(A)各重要鉱物の前年の国内生産量
(B)各重要鉱物の前年の国内消費量
(C)各重要鉱物の価格データ
(D)前年における国家安全保障、エネルギー、経済、産業、科学技術及びその他のニーズに対する重要
鉱物の評価、当該ニーズを充足するにあたっての海外依存度の評価、並びに供給の不足、制限又は
途絶の影響の評価
(E)各重要鉱物の前年の国内リサイクル量
(F)各重要鉱物の代替物の前年の市場浸透度
(G)各重要鉱物の発見、生産、消費、利用、生産コスト、価格、リサイクル及び代替物開発に関する国
際動向の議論
(H)その他、内務長官が必要と認めるデータ、分析及び評価
(2)重要鉱物の生産、消費及びリサイクルパターンの包括的な将来予測
(A)各重要鉱物の今後1年、5年及び10年間の国内生産量
(B)各重要鉱物の今後1年、5年及び10年間の国内消費量
(C)国家安全保障、エネルギー、経済、産業、科学技術及びその他のニーズ予測に対する重要鉱物の
評価、当該ニーズを充足するにあたっての海外依存度予測の評価、並びに供給の不足、制限又は
途絶の影響予測の評価
(D)今後1年、5年及び10年間の各重要鉱物の国内リサイクル量
(E)今後1年、5年及び10年間の各重要鉱物の代替物の市場浸透度
(F)各重要鉱物の発見、生産、消費、利用、生産コスト、リサイクル及び代替物開発に関する国際動向
予測の議論
(G)その他、内務長官が必要と認める各重要鉱物に関する予測
第10条(c)項 内務長官及び労働長官は共同で、高等教育機関を対象とする以下内容の4年間の助成プログラムの競争入札を実施しなければならない。
(A)重要鉱物の統合的な教育、調査、イノベーション、訓練及び労働力開発プログラムのために新設す
る学部の立ち上げ費用
(B)重要鉱物関連のプログラムに参加する学生への実務研修及び奨学金
(C)重要鉱物の統合的な教育、調査、イノベーション、訓練及び労働力開発プログラムに必要な機材
(D)重要鉱物及びその適用の調査
第13条 本法律を実施するため、2020年度から2029年度まで毎年度5,000万米ドルを割り当てる。
3.1.3レアアース・先進石炭技術法案23
名称:
正式名称:
化石燃料局に対し石炭及び石炭副産物からのレアアース元素及び鉱物の採取及び回収のための先進分離技術開発を授権する法案(A bill to authorize the Office of Fossil Energy to develop advanced separation technologies for the extraction and recovery of rare earth elements and minerals from coal and coal byproducts, and for other purposes)
略称:
レアアース・先進石炭技術法案(Rare Earth Element Advanced Coal Technologies Act)
番号:
上院第116回会期法案第1052号(S. 1052 (116th))
提案者+共同提案者:
ジョー・マンチン上院議員(民主党、ウェストバージニア州選出)+上院議員2名(共和党2名、民主党0名)
経過:
2019年4月4日    上院へ提出
          5月14日   上院エネルギー天然資源委員会において公聴会開催
主な条項:
第3条(a)・(b)項 エネルギー長官は、石炭及び石炭副産物からレアアース元素及び鉱物を採取・回収するための先進分離技術を開発するプログラムを実施しなければならない。その実施のために、2020年度から2027年度まで毎年度2,300万米ドルを割り当てる。
第4条(a)項 本法律の制定後1年以内に、エネルギー長官は、国防長官及び内務長官と協議のうえで、上院エネルギー天然資源委員会及び下院エネルギー商務委員会に次に掲げるものを提出しなければならない。
(1)以下を対象とする調査
(A)米国の消費者にとって最も重要であり、世界のサプライチェーンにおいて最も危うく、かつ、
供給途絶時には米国消費者に重大な影響を与えるレアアースの特定及び順位付け
(B)石炭及び石炭副産物からレアアース元素及び鉱物を採取し回収するための先進分離技術(以下「本
技術」という。)開発の評価
(C)本技術開発の結果の特定及び評価
(D)本技術により生産可能な物の決定
(E)本技術により達成可能なことと不可能なこと及び経済的な実現可否を含むパフォーマンス評価
(F)商業的に実現可能な本技術の浸透が各レアアース鉱物の市場に与える影響の評価及びそれが世界の
サプライチェーンに与える影響度合
(2)以下を対象とする分析報告
(A)次世代又は変更を加えた本技術の商業展開に必要な追加の資源
(B)炭鉱の酸性坑廃水からレアアース元素及び鉱物を処理し回収するプロセスの市場に与える影響
第4条(b)項 前項に掲げる調査及び報告の実施にあたり、エネルギー長官は、米国の国家安全保障にとって最も重大と定めたレアアースを重点的に取り扱わなければならない。
3.1.4 2019年米国レアアース供給確保法案24
名称:
正式名称:
レアアースの取得及び処分に関する要請を修正する法案(A bill to modify the requirements relating to the acquisition and disposal of certain rare earth materials, and for other purposes)
略称:
レアアース供給確保法案(Securing Americas Rare Earths Supply Act of 2019)
番号:
下院第116回会期法案第3567号(H.R. 3567 (116th))
提案者+共同提案者:
クリシ・フラハン下院議員(民主党、ペンシルベニア州選出)+下院議員1名(共和党1名、民主党0名)
経過:
2019年6月27日   下院へ提出
主な条項:
第2条(b)項 国防備蓄管理者は、国防倉庫で保管している300万ポンドのタングステン鉱石及び精鉱を処分しなければならない。国防備蓄管理者は、2020年度から2024年度までに、3,742万米ドルを上限として、航空宇宙向けレーヨン、電解マンガン金属、ピッチ系炭素繊維、セリウム化合物及びランタン化合物を購入することができる。
3.1.5 レアアース協同組合21世紀製造法案25
名称:
正式名称:
トリウム含有レアアース精製協同組合設立等法案(A bill to provide for the establishment of the Thorium-Bearing Rare Earth Refinery Cooperative, and for other purposes)
略称:
レアアース協同組合21世紀製造法案(RE-Coop 21st Century Manufacturing Act又はRare Earth Cooperative 21st Century Manufacturing Act)
番号:
上院第116回会期法案第2093号(S. 2093 (116th))
提案者+共同提案者:
マルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ州選出)+上院議員0名
経過:
2019年7月11日     上院へ提出
主な条項:
第4条(a)項 本法律の制定後60日以内に、商務長官は、民間が出資して運営管理するレアアース協同組合(以下「協同組合」という。)に係る連邦の設立認可発行のために、関連の連邦諸機関と調整しなければならない。
(1)協同組合は、以下に掲げる行為を行わなければならない。
(A)トリウム含有レアアース精製協同組合との命名
(B)米国の国家安全保障及び産業のニーズに資するための、完全に統合された米国のレアアース・バ
リューチェーン確立の調整
(C)協同組合の所有者又は出資者、及び米国防衛産業の要請に応じた、レアアース使用製品の製造
(2)協同組合は、以下に掲げる行為を行うことができる。
(A)国内外のレアアース製品使用者又は協同組合への資源供給者からの投資の受入
(B)外国の政府、政府系機関又は政府系企業からの投資又は資金拠出の受入
(C)投資に応じた、最終製品及び利益の分配
(D)協同組合の所有者に代わっての、余剰最終製品の市場販売
(E)米国で採掘され、国内残渣等から回収され、又は協同組合に投資する外国供給者が生産したレア
アース資源又は他の重要鉱物であって、高濃度のトリウム又はウランを含有するものの受入・処理
第4条(d)項 如何なる法律又は規則の条項にかかわらず、連邦政府はこの条に掲げる協同組合の活動に責任を負ってはならず、協同組合は、民間企業の基準に則って十分な債務保証及び他の保険を確保しなければならない。
第5条(a)項 本法律の制定後60日以内に、エネルギー長官は、民間が出資して運営する法人に係る連邦の設立認可発行のために、関連の連邦諸機関と調整しなければならない。
(1)当該法人は、トリウム貯蔵・エネルギー・工業製品会社と命名する。
(2)当該法人は、以下に掲げる行為を行わなければならない。
(A)協同組合が使用したレアアース鉱石に含まれる全てのトリウム並びに付随するアクチノイド及び崩
壊生成物に対する責任及び所有権の引受
(B)協同組合による貯蔵コストの負担の元、全てのトリウム含有アクチノイド副産物の所有及び安全な
貯蔵
(C)商業価値のあるアクチノイド及び崩壊生成物の販売管理
第5条(b)項 当該法人は、少なくとも1つの施設を設立しなければならない。当該施設はトリウム銀行と命名し、協同組合によるレアアース生産に際して副産物として生産されたすべてのトリウムに関して安全かつ長期的な貯蔵を提供し、かつ、民間企業の基準に則って債務保証及び保険を保持しなければならない。
第5条(f)項 如何なる法律又は規則の条項にかかわらず、連邦政府はこの条に掲げる法人の活動に責任を負ってはならず、当該法人は放射性物質等の管理及び貯蔵のために、民間企業の基準に則って十分な債務保証及び他の保険を確保しなければならない。
第6条(a)項 NATOの米国同盟国、他の同盟国政府、連邦及び州の諸機関、科学技術研究機関並びにレアアース及びエネルギーの利用者との会合を設けることによって、商務長官及び国防長官は協同組合に対して、エネルギー長官及び国防長官は当該法人に対して、それぞれ立ち上げ時の支援を行わなければならない。
第6条(b)項
(1)協同組合及び当該法人は、エネルギー省、国防省又は商務省が実施する資金拠出支援又は貸付支援を
申請することができる。
(2)国立研究所は、当該法人に対し、本法律の制定前に中国科学院及び他の外国機関に対して行ったのと
同程度の技術支援及びデータ支援を提供しなければならない。
第6条(c)項 エネルギー長官は、当該法人と協力の上、米国をトリウムエネルギーシステムにおける世界的リーダーとして位置付けるための政策を採用し実行しなければならない。
第7条(a)項 商務長官及びエネルギー長官は、共同で、米国政府の職員等ではなく、協同組合及び当該法人双方の発起人及び取締役として行動する2名の米国人を任命しなければならない。
第7条(c)項 (a)項で任命された個人は、商務長官と協働して協同組合の定款を、エネルギー長官と協働して会社の定款を、それぞれ作成しなければならない。かかる定款は、明確な義務、コミットメント、国際投資財源の限度及び米国の国益に特化した目標を明記した覚書において定めなければならない。

3.2 公聴会概要

上院エネルギー天然資源委員会における公聴会(2019年5月14日)26

前記3.1.2及び3.1.3を対象とした公聴会が開催され、政府関係者や有識者の見解が示された。概略は以下のとおりである。

ジョー・バラシュ 内務省国土鉱物管理担当次官補

重要鉱物へのアクセスを改善するために、地質調査所及び内務省海洋エネルギー管理局はより充実した内容の地図を作成する。そのデータ分析により、重要鉱物の埋蔵可能性がわかるはずである。海洋エネルギー管理局は海洋重要鉱物の可能性に注力し始めており、まずはアラスカ州を重点対象とする。

政府は国内エネルギー源の環境面で責任ある開発を最優先課題としている。大統領令を受け、内務省土地管理局はエネルギー及び鉱物の開発に係る環境評価及び許認可プロセスを改善してきた。例えば内務長官令第3355号では、環境評価の効率向上のための多数の内部指示を出している。結果、環境影響評価の過去10年の平均準備期間は5年程度であったが、12か月で承認が完了する様に短縮した。

デイビッド・ソラン エネルギー省省エネルギー・再生可能エネルギー局再生可能電力担当次官補代理

内務省が指定した鉱物資源の多くは、現在及び将来のエネルギー技術にとって不可欠。重要鉱物の海外依存度低下に向けたエネルギー省の最優先事項3点は、再利用・リサイクル、鉱物資源の効率的利用及び代替材の開発、並びにサプライチェーン内の国内における増産である。

米国では、いくつかの重要鉱物に関して下流の処理及び製造の能力が欠如していることから、国産の鉱石及び精鉱を更なる処理のために輸出している。例えば、米国ではレアアース採掘が再開しているが、バストネサイト鉱石から有用な元素を抽出する能力が欠如しており、海外の工場で処理しなければならない。このため、米国ではバストネサイト鉱石からネオジムを抽出する能力が不足しているのである。

また、米国ではネオジム磁石を製造する能力が不足しており、民生用及び軍事用のいずれの用途の磁石も輸入に依存している。重要鉱物のサプライチェーン全体に対し、国内での増産、リサイクル、再処理及び入手しやすい代替材の発見で対処すれば、輸入依存を低減し、技術革新におけるリーダーシップを維持し、雇用創出を支え、国家安全保障及び貿易収支を改善することとなろう。

エネルギー省において、省エネルギー・再生可能エネルギー局ではクリーンエネルギー技術に不可欠な重要鉱物の依存低減、電力局では国内に豊富な物質を使用した電力網用蓄電池の技術開発、国際局では重要鉱物市場支配への対処に、それぞれ取り組んでいる。重要鉱物研究所では、供給の分散、代替材開発及び再利用・リサイクルという3分野での研究を実施。

リチウムイオン電池における重要鉱物供給リスクを軽減するために、省エネルギー・再生可能エネルギー局は電気自動車用蓄電池パックのコストを2022年9月までに150米ドル/kWhへと低減することを目指している。また、リチウムイオン電池のリサイクルに対する資金拠出もしている。

非在来型資源として、化石エネルギー局では石炭からのレアアース回収、省エネルギー・再生可能エネルギー局では地熱かん水からのリチウム等の回収や海水からの重要鉱物採取に、それぞれ取り組んでいる。

ジョナサン・エバンス Lithium Americas社社長兼COO

Lithium Americasは、子会社のLithium Nevada社を通じてThacker Pass事業を推進中。同事業は米国最大のリチウム埋蔵量を有し、2021年第1四半期に建設開始予定。現在申請中の区画だけでも年間3~6万トンの炭酸リチウムを40年以上に亘って生産できる見込み。

大統領令第13817号に従い、内務省土地管理局による環境影響評価が2020年12月までに完了するものと期待している。積極的な環境影響評価プロセスの管理及び、州・連邦の許認可機関の間の効率的な調整が許認可及び環境評価プロセスにとって重要。我々は大統領令第13817号の精神及び他の行政改革を歓迎する。

米国のリチウムのサプライチェーンは脆弱であり、米国内のリチウムイオン電池関連材料の製造関連の投資は極めて少ない状況。Thacker Pass事業の操業に必要な技術を有する労働力の確保も課題。米国ではリチウム化合物の製造は未だ黎明期にあり、連邦政府の融資保証により重要鉱物のサプライチェーン構築に対する政府の強い意志が確認され、関係者の投資意欲を固める役に立つこととなる。

我々は米国鉱物安全保障法案を支持する。リチウムイオン電池産業へのこれら支援がなければ、米国は長期に亘り中国、韓国及び日本の後塵を拝したままであろう。

ジョン・ワーナー National Alliance for Advanced Technology Batteries代表

リチウムイオン電池の製造及び知見はアジアが中心である。中国はリチウムイオン電池の開発技術に600億米ドル以上を投資し、世界の生産量の60~75%を占めていると試算されている。ノウハウやイノベーションの開発は主に米国で行われてきたが、化合物の製造の大宗は海外で行われている。

北米のエネルギー材のサプライチェーンには市場価格と地政学関連の2つの問題が存在する。市場価格問題は需要サイクルに対し供給サイクルの周期が長く一致しないために発生する、そもそも不可避の性質のもので、電気自動車やリチウムイオン電池の場合は需要サイクルが他のエネルギー材より急激に変化するため、更に輪が掛かったものとなる。中国企業は、同国内の電池メーカーが低価格での安定供給を確保できるよう、世界中の供給源を買い占めている。リーダーシップを再び獲得して市場で優位な立場に立つために、どの戦略産業に投資すべきかというのが、政策関連で米国が答えねばならない問いである。そして、先端電池産業は公共投資をすべき戦略的産業の一つである。

地政学問題は外国の関係者による供給途絶の脅威である。米国はエネルギー安全保障に関し社会への適合を考慮した投資を行っている。しかし、海洋軍事技術に対する中国の関心の高まりにより、米国のエネルギー材の安全保障に対する追加アプローチの検討の是非が議論となるやもしれない。

リチウムイオン電池のリサイクル及び再利用も重要な課題である。最近のエネルギー省の分析によれば、2040年までに米国のエネルギー材の需要の60%は既に北米市場に存在するリチウムイオン電池のリサイクルによって賄われる可能性がある。リチウムイオン電池のリサイクルは現時点では経済的でなく困難である。経済性があり活発な北米におけるリチウムイオン電池のリサイクルシステムを確立することは、長期的に市場価格関連の問題緩和に貢献し、地政学的な供給途絶への備えとなる余力を生むこととなるだろう。

リチウムイオン電池競争に敗れることは3つの理由から危機的である。第一に、リチウムイオン電池のリーダーシップを米国が喪失すれば、他の重要技術におけるリーダーシップも失うことになりかねない。第二に、リチウムイオン電池の製造及びその技術力を失うと高給の職業における世界的な競争で米国労働者が不利となる。第三に、リチウムイオン電池は戦略商品であり、今後益々その重要性が増す。

ポール・ジェムキェビチ ウェストバージニア州立大学ウェストバージニア水研究所ディレクター

酸性坑廃水の中和処理後の沈殿物中に、世界の多くの経済性のある鉱床を上回るレアアースが濃集されていることを発見。近い将来、酸性坑廃水からの回収システムはレアアースの生産手段として運用され得る。

我々の調査によると北中部アパラチア堆積盆炭鉱における酸性坑廃水汚泥には700トンのレアアースが含まれており、実際にこれらの炭鉱では年間1,000トンのレアアースを生産し、その経済価値は2.45億米ドル相当と試算される。

次の段階は、レアアース酸化物技術のパイロットプラントでの操業及び商業化へのスケールアップである。成功すれば、レアアースの国内サプライチェーンの基礎を支えるものとなろう。

おわりに

今次戦略は、重要鉱物に関し、国内生産の推進やパートナー国との連携を通じた貿易の安定化などの供給面の取組と、効率的利用やリサイクルといった需要面の取組を包括したものと言える。供給面においては、国内の探鉱、開発及び生産を促進するための地質データ充実化や規制緩和が打ち出されており、連邦議会に提出されている法案もかかる対策の促進を目指している。具体的にどのような対応が取られるのか、そして、それが米国の探鉱、開発及び生産にどのような効果をもたらすのか、引き続き注視してまいりたい。

留意すべき点としては、今次戦略の提言が示すとおり、関係省庁が多岐にわたることである。また、2.2に記載の取組は石炭事業の経済性向上が目的と思われ、レアアースについての充分な知見のもとに政策が実施されているのかとの点に疑問が残る(当該取組を促進する法案も連邦議会に提出されているが、その提案議員の選出州は米国第2位の産炭州である)。さらに、鉱物資源の供給の過程では選鉱及び精錬の技術力も不可欠であるが、かかる技術開発を推進する省庁が今次戦略からは明確に読み取れない。関係省庁間で適切な連携がなされ、重要鉱物のサプライチェーン全体を網羅した効果的な政策を実施していくことが、今次戦略の実現に不可欠であろう。


  1. https://crsreports.congress.gov/product/pdf/IF/IF11226
  2. 同条は、第10編(軍隊)第A章(一般軍事法)第Ⅳ節(サービス、供給及び調達)第148款(国防技術及び産業基盤、防衛再投資並びに防衛コンバージョン)第Ⅴ目(種々の技術基盤政策及びプログラム)を構成するものであり、「国家安全保障にとって重要な戦略材料の購入に係る条件」との見出しがつけられている。米国下院のウェブサイトに原文が掲載されている(http://uscode.house.gov/view.xhtml?req=granuleid:USC-prelim-title10-section2533b&num=0&edition=prelim)。
  3. 2018年8月13日成立。米国議会のウェブサイトに原文が掲載されている(https://www.congress.gov/bill/115th-congress/house-bill/5515/text)。また、同法の概要は、我が国の国立国会図書館が報告している(http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11179141_po_02770201.pdf?contentNo=1)。
  4. 同条は、「非同盟国からの機密素材取得の禁止」との見出しがつけられている。米国下院のウェブサイトに原文が掲載されている(http://uscode.house.gov/view.xhtml?hl=false&edition=prelim&req=granuleid%3AUSC-prelim-title10-section2533c&num=0&saved=%7CZ3JhbnVsZWlkOlVTQy1wcmVsaW0tdGl0bGUxMC1zZWN0aW9uMjUzM2I%3D%7C%7C%7C0%7Cfalse%7Cprelim)。
  5. これらの条は、第50編(戦争及び国防)第5章(武器庫、武器及び戦争物資一般)第Ⅲ節(戦略原材料の取得及び開発)を構成するものである。米国下院のウェブサイトに原文が掲載されている(http://uscode.house.gov/view.xhtml?hl=false&edition=prelim&req=granuleid%3AUSC-prelim-title50-section98&num=0&saved=%7CZ3JhbnVsZWlkOlVTQy1wcmVsaW0tdGl0bGU1MC1jaGFwdGVyNS1zdWJjaGFwdGVyMy1mcm9udA%3D%3D%7C%7C%7C0%7Cfalse%7Cprelim)。
  6. https://crsreports.congress.gov/product/pdf/IF/IF10708
  7. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/presidential-executive-order-federal-strategy-ensure-secure-reliable-supplies-critical-minerals/
  8. https://www.usgs.gov/news/interior-releases-2018-s-final-list-35-minerals-deemed-critical-us-national-security-and
    なお、本ウェブサイトにおいて各鉱種のリンクをクリックすると、輸出入、国内消費、リサイクル、備蓄等に係る情報・データが掲載されているページを閲覧できる。
  9. 本稿で記載している用途及び利用分野は、内務省地質調査所が列挙しているものである。我が国における用途については、JOGMECが公表している鉱物資源マテリアルフローを参照されたい(http://mric.jogmec.go.jp/report/?category%5B%5D=material_flow)。
  10. 昭和59年(1984年)8月開催の通商産業省(現・経済産業省)レアメタル総合対策特別小委員会において定義された31鉱種。
  11. https://media.defense.gov/2018/Oct/05/2002048904/-1/-1/1/ASSESSING-AND-STRENGTHENING-THE-MANUFACTURING-AND%20DEFENSE-INDUSTRIAL-BASE-AND-SUPPLY-CHAIN-RESILIENCY.PDF
  12. https://www.usgs.gov/centers/nmic/mineral-commodity-summaries
  13. 2018年6月には、カナダ及びメキシコに対しても追加輸入関税が導入された。
  14. https://www.commerce.gov/news/reports/2019/06/federal-strategy-ensure-secure-and-reliable-supplies-critical-minerals
    なお、内務省もプレスリリースで同省の管轄事項として、許認可迅速化、鉱物の新たな国内供給源の発見及び情報提供の改善を掲げている(https://www.doi.gov/pressreleases/trump-administration-announces-strategy-strengthen-americas-economy-defense)。
  15. https://www.netl.doe.gov/coal/rare-earth-elements
  16. https://www.energy.gov/sites/prod/files/2018/01/f47/EXEC-2014-000442%20-%20for%20Conrad%20Regis%202.2.17.pdf
  17. https://www.energy.gov/articles/department-energy-announces-87-million-coal-research-and-development-projects
  18. http://tmrcorp.com/news/press_releases/index.php?content_id=190
    なお、エネルギー省は、同月9日にhttps://www.dropbox.com/s/hikvgpswnamf54l/DOE%20presentation%204-9-19%20final%20with%20no%20movie.pptx?dl=0#を発表している。
  19. https://www.congress.gov/bill/116th-congress/house-bill/2531
  20. 2017年8月15日に発出された、インフラストラクチャーの環境評価及び許認可プロセスの規律及び説明責任を確立するための大統領令。
    https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/presidential-executive-order-establishing-discipline-accountability-environmental-review-permitting-process-infrastructure/
  21. 同節は、第36編(公園、森林及び公共不動産)第Ⅱ章(農務省森林局)を構成するものであり、「特別地域」との見出しがつけられている。
  22. https://www.congress.gov/bill/116th-congress/senate-bill/1317
  23. https://www.congress.gov/bill/116th-congress/senate-bill/1052
  24. https://www.congress.gov/bill/116th-congress/house-bill/3567
  25. https://www.congress.gov/bill/116th-congress/senate-bill/2093
  26. https://www.energy.senate.gov/public/index.cfm/hearings-and-business-meetings?ID=559FE490-CA2A-4A56-9C30-F5ED5B0C7780
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