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報告書&レポート

2020年5月13日 金属企画部
20_03_vol.50

2019年世界の探鉱動向

<JOGMEC 金属企画部調査課>

2020年3月

S&P Global

本資料は、S&P Global Market Intelligence社が発表した「WORLD EXPLORATION TRENDS」を、同社の許可を得てJOGMECにおいて翻訳したものです。著作権は全てS&P Global Market Intelligence社に属します。

世界の探鉱動向

地球規模の不確実性が緩和するどころか高まる中、2019年は業界の回復が小休止するか、新たな下降トレンドに向かうかの転換点となる可能性がある。2020年がどのような年になるかは、現在も続く地政学的問題やマクロ経済的問題など、さまざまな外部要因によって決まる。S&P Global Market Intelligence社の30年目となる年次研究Corporate Exploration Strategies(CES)によると、世界の非鉄金属探鉱予算は2018年の10.1bUS$から、2019年は9.8bUS$に減少すると予想され、2年ぶりに予算回復傾向が足踏みすることが明らかになった1

2018年の業界の動きは様々だった。厳しい市況の中で多くの金属価格は下落し、探鉱のために調達された資金はごくわずかであった。それでも探鉱部門は引き続き堅調を維持し、2018年12月四半期のパイプライン活動指数(PAI)を94に押し上げた。

2019年は米中貿易摩擦の継続によって主要国経済は大幅に減速し、多くの工業用金属価格低迷の引き金となった。金価格は安全資産としての需要増から2019年6月四半期には上昇した一方、ニッケルや鉄鉱石価格は供給サイドで懸念事項が生じたことにより急騰した。

探鉱サイドでは、主要なボーリング活動が6月に約3年ぶりの低水準となった一方で、資金調達は引き続き変動が大きかったものの、2019年1~2月の過去最低に近い水準からは回復した。これらの状況によりPAIは、2019年6月四半期に、2016年初頭から半ば以来の最低値となる70となった。金属価格は2019年末までにほぼ安定し、金探鉱企業が牽引したことで、12月四半期のPAIは2018年末とほぼ同水準の90にまで回復した。

2020年を展望すると、米中貿易摩擦は1月に両国間で署名された「第1段階」の合意によって一時休戦となったが、制裁関税は継続している。マクロ経済の懸念はいくぶん和らいだものの、2020年の最初の数週間にあった重大な出来事はこの年の大きな変動を予感させるものである。急激に高まる米国とイラン間の地政学的緊張状態が直ちに落ち着く可能性は低く、米国では大統領選挙を前に政治闘争が表面化してくるであろう。さらに新型コロナウイルス肺炎の感染拡大は、中国や感染が確認された他の国々の地域経済に著しい影響を及ぼす可能性があり、すでに世界市場を揺るがしている。

短期的なコモディティ需要の不確実性は続いており、これが依然として業界の妨げとなっている。当然のことながら金は例外であり、現在の地政学的状況の恩恵を受けている。これを踏まえ、金の探鉱予算増が、その他多くのコモディティの弱含みな状況を相殺する可能性があり、2020年の世界の探鉱予算は横ばいで推移すると予想される。

2020年は不確実な要素が多い年であるが、パイプラインへの投資不足によりいくつかのベースメタルは今後数年間供給不足になると見込まれる。新たな未開発地域の発見への取り組みが行われなければ、業界は、特に銅に関して、控えめな世界需要予測値の達成を求められることになる。

図1.世界の非鉄金属探鉱予算総額の推移

図1.世界の非鉄金属探鉱予算総額の推移

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月15日時点)

図2.パイプライン活動指数(2008~2019年)

図2.パイプライン活動指数(2008~2019年)

PAI:2008年Q4=100、EPI:2008年5月=100
出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月10日時点)

マクロ経済の不確実性は続く

2018年と同様に、2019年もマクロ経済が金属鉱業に影響を及ぼし、GDP成長率悪化や金属需要減少の見方が、ほとんどの工業用金属価格が早期に上昇するという楽観論に水を差した。米中貿易摩擦の継続が経済指標悪化の一因となり、米連邦準備銀行はFF金利の引き上げを繰り返し撤回し、その代わりに10月末までに3回引き下げた。これらの要因は、2019年半ばまで工業用金属と貴金属にとっては好材料となった。

多くの機関が、2020年の経済は2019年を上回ると予想しているが、景気回復は依然として不確実である。2020年1月のWorld Economic Outlookレポート2「Tentative Stabilization, Sluggish Recovery?(安定は一時的か、ゆっくり回復か)」において、IMFは、世界のGDP成長率が2019年の2.9%から2020年は3.3%に上昇すると予測しているが、これは2019年10月に発表した予測値を下回っている。

しかしこのレポートでは、「自動車業界による新排ガス基準への対応、新しい技術製品発売の小康状態、在庫の増加など、世界の製造業を減速させてきた要因が次第に消えてきたと思われる」ことから、2019年12月四半期には世界経済の展望に明るい兆しがあったとも述べている。

米中通商協議における第1段階の合意署名後に世界の展望が落ち着きを見せていることから、S&P Global Economicsは、世界のGDP成長率は2019年の3.2%から2020年は3.3%にわずかに回復すると予測する3。ただし米中2か国の2020年の予測成長率はこれよりも低く、米国の成長率は2018年の2.8%よりも持続可能な水準であるが、「中国の成長は必然的に段階的な緩和を続ける」としている。

米国や他の先進国で景気後退に対する懸念が低下する中、2020年初頭の多くの事象が、その後数か月にわたってコモディティ価格に影響を及ぼすだろう。急激に高まる米国とイラン間の地政学的緊張状態が直ちに落ち着く可能性は低く、新型コロナウイルス肺炎の拡大による中国や他の地域における経済活動の縮小が予想される。これらのダウンサイド・リスクは短期的に工業用金属価格に影響を及ぼすが、貴金属価格は世界経済の不確実性により既に上昇しており、金セクターは、2020年には投資対象として好位置にいる。

図3.成長率予想:2019年12月のCCC会合内容を反映

図3.成長率予想:2019年12月のCCC会合内容を反映

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月28日時点)

工業用金属は圧力を受けるも、金は強みを発揮

ベースメタル価格は、2019年3月四半期に2018年後半の最安値から回復したが、マクロ経済的圧力を継続的に受けて4月までには再び下降傾向をたどり始めた。S&P GSCI商品指標は1月に2019年の最低値を示し、4月後半には前年比約21%上昇して2019年最高値に達した後、前年比16.5%増でこの年を終えた。鉱業関連株はS&P GSCI商品指数を上回り、S&P/TSX Global Mining Indexは2019年に21.6%上昇し、12月30日には2014年8月以降で最高水準の83.01に達した。

2019年の金価格は6月まで1,270~1,342US$/ozの間を上下し続けたが、6月に米国のFF金利が引き下げられるとの予想から1,400US$/ozまで上昇し、最終的に8月には1,500US$/ozを超えた。2019年9月四半期にFF金利が3回引き下げられると金価格は安定し、生産企業や探鉱企業に利益をもたらした。金価格は2019年終わりに1,517US$/ozとなった後、地政学的状況や新型コロナウイルス肺炎の拡大によって押し上げられ、2020年1月終わりには過去数年での最高値に達した。

金の次に重要な探鉱対象である銅の価格は、2019年は順調に推移せず、経済見通しの悪化により低迷した。2019年のロンドン金属取引所(LME)における銅の平均現物価格は、2018年の6,527US$/tから6,005US$/tに下落し、9月3日に同年における最も悲観的なマクロ経済見通しを背景に28か月ぶりの最安値となる5,584.5US$/tを記録した。亜鉛も同様の軌跡をたどり、平均価格は2018年の2,919US$/tから2019年は2,548US$/tに下落した。金とは異なり、2020年1月の出来事は銅や亜鉛にとってかなりの逆風となり、同月末の価格は2019年9月の最安値と同水準であった。2020年初めも、銅と亜鉛については下落局面となるリスクが依然として残っている。

2019年上半期のニッケル価格の動きは銅や亜鉛価格の動きと似ていた。しかし、2020年1月のインドネシア政府によるニッケル鉱石輸出禁止措置をめぐる年半ばの投機筋の動きにより、ニッケル価格は急騰した。LMEニッケル現物価格は、供給制約に対する懸念を背景に9月には18,000US$/tを超え、その後年末までに14,000US$/tに落ち着き、平均現物価格は2018年の13,122US$/tから13,936US$/tに上昇した。その後は、2019年半ばの鉱石輸出禁止をめぐる投機要因を受けた価格上昇からの反落傾向をたどり、2020年1月にかけて価格上昇以前の水準まで下落した。

鉄鉱石価格は通常マクロ経済の懸念にネガティブに反応するが、2019年1月に発生したVale廃滓ダム決壊事故は直ちに供給に影響を及ぼし、2019年の鉄鉱石市場は大幅な供給不足に陥った。鉄鉱石(品位:Fe 62%)の価格は5月半ばから8月初頭にかけておおむね100US$/tを超えており、2019年の平均価格は93.4US$/tで、2018年の平均価格69.5US$/tを34%上回った。マクロ経済の見通しは厳しいが、Valeが停止していた操業を再開するため、世界の海上輸送鉄鉱石生産量は2020年に前年比2.4%増の1,744百万tに増加し、供給不足幅は2019年よりも減少すると予測される。2020年の鉄鉱石平均価格は80.2US$/tと予想する。

図4.主要鉱物コモディティ価格指数の推移(2019年1月以降)

図4.主要鉱物コモディティ価格指数の推移(2019年1月以降)

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月28日時点)

探鉱休止の再開

鉱業界はポジティブな雰囲気で2018年を迎えたが、同年後半には世界的な政治・経済上の逆風の高まりにより上昇基調は止まり、金属価格は下落して株式市場からの支援が低下した。2019年末までに市況は改善したが、地政学・マクロ経済上の懸念は2019年の間継続した。これが探鉱計画に直接的な影響を及ぼし、2019年に3,300社を対象にしたS&P Global Market Intelligence社の調査によると、世界全体の非鉄金属予算は前年比4%減の9.29bUS$になった。把握できなかった予算を考慮すると、予算合計は2018年の10.1bUS$に対し3%減の9.8bUS$と推定される。

2019年に操業した探鉱企業の数は前年比3%増の1,708社であり、これは2012年以降で2番目に高い増加率である。過去数年に亘り休止していた多くの企業が2018年に操業を再開したが、その後価格が下落し資金調達の確保が難航した。これにより探鉱予算の平均値は5.4mUS$、中央値は1.1mUS$へとそれぞれ減少した。

月刊Industry Monitorレポートによると、2018年後半以降、ジュニア企業や中堅企業の探鉱資金調達は大企業よりも困難になっている。2018年11月~2019年2月(概して探鉱企業が翌年の探鉱資金調達のために市場開拓する時期)の資金調達合計額は、2017年11月~2018年2月の3.97bUS$に対し957.1mUS$であった4。資金調達額は2019年を通じて回復したが、2019年の調達額8.61bUS$は、2018年(9.2bUS$)と2017年(9.6bUS$)を大きく下回っている。

主に探鉱活動に用いる資金調達額は下落傾向をたどり、2019年の調達額2.53bUS$は、2018年の2.91bUS$、2017年の3.39bUS$を大きく下回った。資金調達の厳しさはジュニア企業の予算に反映され、その予算額は前年比10%減少した。メジャー企業は予算配分をほぼ維持しており、収益に占める探鉱支出の割合が次第に増加した。

  • 図5.ジュニア/中堅企業による大規模探鉱の資金調達額

    図5.ジュニア/中堅企業による大規模探鉱の資金調達額

  • 図6.メジャー企業による探鉱費用

    図6.メジャー企業による探鉱費用

金探鉱予算の減少額が銅探鉱予算の増加分を上回る

金探鉱予算は2018年のコモディティの中で最も増加し、前年比756.6mUS$(18%)増となったが、2019年は559mUS$(12%)減少して4.29bUS$となった5。この減少の一因である金価格は、2018年と2019年の初めは伸び悩み、2018年8月には最安値の1,160US$/ozとなった。2019年から2020年にかけて価格は大幅に回復したが、価格上昇が遅かったため2019年の探鉱予算増加には寄与しなかった。

金探鉱予算減少の2つ目の理由は、2018年後半から2019年前半にかけて行われたM&Aである。その中で最も著名なのはBarrick社とRandgold社間およびNewmont社とGoldcorp社間の取引である。2つの企業が合併すると、合併後の企業の探鉱予算は合併前の各社の探鉱予算の合計額より減少する傾向にあるが、この主な要因は、売却前のノンコアアセットへのファンド減額等の合理化プロセスにある。上記2件の合併だけで、2019年の金探鉱支出は約103mUS$減少した。

ベースメタルの探鉱予算合計は2019年の世界探鉱予算の減速傾向とは逆行して前年から191mUS$(6.3%)増加し、3.23bUS$となった。銅の探鉱予算は、245.4mUS$と最も増加した結果となった6。銅の探鉱予算が最も多いのは依然としてチリであり、マインサイト周辺における探鉱が大幅に増加したが、対前年比では米国と豪州両国の銅探鉱予算が最も増加した。米国では、複数の重要なプロジェクトにおけるレイトステージにおける探鉱が増加した一方、豪州では新規鉱床の発見に対する楽観的な見方が、同国のグラスルーツの探鉱予算を押し上げた。

ニッケル探鉱予算も緩やかに成長し前年比53.8mUS$増加したが、亜鉛探鉱予算は、亜鉛価格の低迷を受けて前年より108.1mUS$減少した。コバルトとリチウムの探鉱予算は2019年に冷え込み、コバルトは2018年に209%増加したのに対し、2019年は10%減少して99.7mUS$に、リチウムは2018年に58%増加したのに対し、2019年は15.5%増加して285.5mUS$となった。

図7.各コモディティの探鉱予算増減額(2019/2018年比)

図7.各コモディティの探鉱予算増減額(2019/2018年比)

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月15日時点)

鉱業界は鉱山隣接地域の探鉱に照準

長期調査結果から、鉱業界は後期プロジェクトやマインサイト探鉱に対する探鉱支出の割合が増えていることが明らかになった。グラスルーツでの探鉱離れの動きは景気後退期にさらに顕著になった。その理由は、ジュニア企業がリスクの高い初期段階における探鉱よりも、実績のあるアセットに少額の資金を費やす傾向がある一方で、メジャー企業は自社の既存プロジェクトにおける価値最大化に焦点を合わせていることにある。この傾向は2019年に加速し、既存鉱山およびその隣接地における計画支出は7%増加して3.57bUS$となった7。マインサイト周辺における探鉱が世界の探鉱支出配分に占める割合は38.5%と最も大きく、初めてレイトステージにおける探鉱支出(前年比14%減)とグラスルーツの探鉱支出(同1%減)を上回った。

この初期段階における探鉱離れの動きは、すでに新規鉱床の報告数に反映されている。2010~2014年の初期段階の探鉱において確認された鉱床の数は年平均94であったのに対し、2015~2019年はわずか54である。鉱床の規模も縮小傾向にあり、2010~2014年に報告された271の金の平均含有量は835千ozであったのに対し、2015年以降に報告された176の金の平均含有量は559,037ozであった。

大規模銅鉱床(銅含有量500千t以上)および大規模金鉱床(金含有量2百万oz以上)に目を向けると、新たな鉱床発見を目的とする探鉱投資の減少は一層顕著である。銅および金の新規鉱床発見率は、過去10年間にわたって大幅に低下している8,9

高品位の新規鉱床がないことは、鉱業界に即座に影響を及ぼすものではないが、過去10年間に発見された鉱床が生産を開始して既存鉱山の生産量減少を軽減するまでには10~15年を要することに鑑みると、長期的には懸念事項となる。

図8.金探鉱における発見量と探鉱予算

図8.金探鉱における発見量と探鉱予算

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月15日時点)

図9.銅探鉱における発見量と探鉱予算

図9.銅探鉱における発見量と探鉱予算

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月15日時点)

探鉱予算は7地域中3地域で増加

世界の探鉱が減速する中、2018年は探鉱予算が6地域で増加した一方で、2019年に増加したのはCESの7地域中わずか3地域だった。2019年に探鉱予算が最も増加したのは豪州のプロジェクトで、前年比15%(約200mUS$)増10、米国が同11%(93mUS$)増でこれに続く11。2018年に唯一減少した大洋州・東南アジアの探鉱予算は、2019年には緩やかに前年比5%(15.8mUS$)増加した。

中南米の探鉱予算は4%超減少し、世界の探鉱予算に占める割合がピークに達していた2017年の約30%から2年連続で減少し28%となった。しかし、中南米は依然として最も探鉱が行われている地域である12。同地域の総探鉱予算の4分の1を占めるチリをはじめ、ペルー、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、エクアドルの6か国で中南米の総探鉱予算の90%近くを占めている。中南米で探鉱予算が減少した最大の要因は、同地域の金探鉱予算が14%減少したことにあり、その多くはメジャー企業や中堅企業が探鉱予算配分を減少させたことによるものである。銅探鉱予算は、すべての規模の企業で増加しており、前年比11%増加した。

2018年の世界の探鉱予算で4位だった豪州は、2019年の実績として、1990年代後半から2000年代前半以来となる2位に浮上した。銅と金の探鉱予算は、メジャー企業が豪州での活動を活発化させたことによって増加した。WA州は依然として同国で最も人気のある探鉱地域であり、豪州における総予算の63%を占め、その金額は2018年比で15%増加した。

欧州およびアジア大陸を含むその他の地域は、金探鉱予算が前年比139mUS$減少したことを主因として最大の下げ幅となった。銅、白金族金属、ダイヤモンドおよびその他の探鉱対象に対する探鉱予算の大幅減少も、全体の減少に影響した。ロシアと中国の探鉱予算は依然としてこの地域のトップであり、2か国合計で総予算の56%を占めた。

2019年のカナダの探鉱予算は前年比9%(134mUS$)減少し、地域別順位を1ランク下げて4位になった13。この減少に最も影響したのはジュニア企業で、その探鉱予算は前年比12%(95mUS$)減少した。一方で、メジャー企業の探鉱予算は同4%(22mUS$)減にとどまった。コモディティ別では、金探鉱予算が約200mUS$(21%)減少したことおよび白金族金属と亜鉛・鉛の探鉱予算が合計40mUS$減少したことが、探鉱予算大幅減の主因となった。

2012年まで2位だったアフリカは、2年連続で5位となった。2019年にこの地域の探鉱予算が12%減少したのは、主に金と銅に対する予算配分が約150mUS$減少したことによる14。ジュニア企業は、金について25%、銅について57%予算を削減した。DRコンゴは、計画されていた探鉱支出が35%減少したにもかかわらず、2008年以降アフリカ諸国トップの地位を維持している。

2017年に世界の探鉱予算が回復して以降、米国では、連邦政府が国内鉱物資源の探鉱と開発に関する特定の規制要件を緩和したことも追い風となり、他のほとんどの地域を上回った11。2019年、世界の探鉱予算が前年比4%減少したのに対し、米国の予算配分は同11%(93mUS$)増加した。この増加の大きな原動力となったのは、銅への予算配分が前年比80%増と急増し、銀などの他のコモディティへの予算配分が同44%増加したことである。米国の金予算配分は前年比22%減少し、約370mUS$の銅とほぼ同水準となった。計画されていた探鉱支出は6%減少したものの、NV州は依然として米国各州の中でトップだった。

大洋州・東南アジアは、2018年に唯一探鉱予算が減少した地域だが、2019年は増加に転じ、前年比5%(15.8mUS$)増となった。銅が12%増加して牽引し、金も約5%増加した。

図10.世界のトップ20か国の探鉱予算の変化(2019年)

図10.世界のトップ20か国の探鉱予算の変化(2019年)

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月15日時点)

ボーリング活動

2019年における世界の探鉱予算の減少が一因となり、2018年後半と2019年前半の厳しい財政状況は2019年に行われたボーリング件数に確実な影響を及ぼした。探鉱企業の報告によると、2019年には1,093件のプロジェクトで合計38,958件のボーリングが行われ、2018年の1,262件のプロジェクト、49,061件のボーリング件数に比べてそれぞれ13%減および21%減であった15。2018年後半から2019年前半にかけて資金調達に苦戦したことが、2019年前半のボーリング活動に最大の影響を及ぼした。この時期に報告されたボーリング件数は18,265件であったが、同年後半は前半比13%増の20,723件に増加している。それ以降、資金調達活動は改善したことから、2020年にとって楽観的な兆候であるが、資金源増加による恩恵はまだボーリング結果に表れていない。

図11.世界のボーリング実施状況

図11.世界のボーリング実施状況

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月16日時点)

2019年も引き続き、金はボーリング活動にとって注目のターゲットであり、世界のボーリング件数に占める割合は2018年の58%から63%に増加した。これは、英国のEU離脱の是非を問う国民投票や米国の大統領選挙が金価格を押し上げた2016年以来の最高水準である。金のボーリング活動は、プロジェクト件数で見ると、2018年の707件から641件となり、前年比9%減少した。報告されたボーリング件数の減少はさらに顕著であり、前年比で6,730件減少している。資金調達の難しさも金のボーリング件数減少の一因であるが、探鉱企業が鉱床を正確に特定するために、より多くのボーリングが必要となる後期ステージにおける探鉱やプロジェクトから、比較的少ないボーリングでターゲットを特定できるグラスルーツの探鉱へと対象をさらにシフトしていることも反映している。金のボーリングが報告されているグラスルーツのプロジェクトの件数は、2019年には前年比で290件から299件に増加した。これは2012年以降の金におけるグラスルーツのボーリング件数では最高水準であった。

ベースメタル/その他金属(工業用ベースメタルと銀、白金族金属を合わせたもの)のボーリングの減少は、金よりも均衡がとれており、その件数は19%減、プロジェクト数は15%減となった。ベースメタル価格は、米中貿易摩擦が阻害要因となり低迷した。ボーリングに関しては亜鉛・鉛とニッケルが最も影響を受け、プロジェクト件数はそれぞれ19%減、32%減であった。2019年の銅価格は比較的安定していてプロジェクト件数は6%減にとどまり、報告されたボーリング件数は9%増加した。

有意なボーリング結果(推定カットオフ品位を満たすもの)は2019年も同様に減少し、有望な着鉱を伴うボーリング件数は前年比21%減少した。この減少には、ベースメタル/その他金属が20%減少と大きく影響しており、金の減少率はこれよりも緩やかで9%であった。金の初期段階における探鉱ボーリングが増加したのに加え、銅のボーリングも大幅に増加し、プロジェクト報告件数は21%増加した。有意な結果を伴うプロジェクト件数は、前年比30%増加している。一方で、金の初期段階における探鉱ボーリングを実施するプロジェクトにおける有意な結果は、4%下落した。ボーリングを行うレイトステージのプロジェクトやマインサイト周辺における探鉱プロジェクトの件数は、2019年、ほとんどのコモディティにおいて減少した。

ボーリング活動はほとんどの鉱区で減少した。2019年に報告されたプロジェクトの所在地は、2018年と同様に大部分が豪州に位置しており、プロジェクト報告件数は314件で、第2位のカナダでは298件であった。同件数の前年比では豪州が7%減、カナダが11%減だった。ボーリング件数において、豪州は引き続き他の地域を大きく引き離したが、総件数の対前年減少率はカナダよりも高く、カナダの15%減に対し豪州は19%減であった。さらに、鉱業界が慣れ親しみ安定した自国内の鉱区にシフトしたことに注目すると、中南米、アフリカおよび大洋州(豪州を除く)におけるボーリング活動は、プロジェクト報告件数においてそれぞれ24%減、17%減および8%減となった。

図12.重要なボーリング結果および資金調達額

図12.重要なボーリング結果および資金調達額

出典:S&P Global Market Intelligence(2019年1月16日時点)

図13.2019年の世界のボーリング活動(1,093件)

図13.2019年の世界のボーリング活動(1,093件)

出典:S&P Global Market Intelligence(2020年1月30日時点)


出典

 1 CES 2019 — Overview of Exploration Trends: Full report, S&P Global Market Intelligence, Nov. 19, 2019

 2 World Economic Outlook: Tentative Stabilization, Sluggish Recovery?, International Monetary Fund, January 2020

 3 2020 Vision: Global Macroeconomic Outlook Steady For Now, S&P Global Economics, Dec. 4, 2019

 4 IM January 2020 — Gold pushes number of financings to 2-year high, S&P Global Market Intelligence, Jan. 14, 2020

 5 CES 2019 — Prices and mergers lead gold budgets 12% lower YOY, S&P Global Market Intelligence, Nov. 20, 2019

 6 CES 2019 — Copper budgets grow 12% YOY, driven by Chile, US and Australia, S&P Global Market Intelligence,
  Dec. 11, 2019<

 7 CES 2019 — Explorers spend more on minesite for the first time, S&P Global Market Intelligence, Nov. 21, 2019

 8 Copper RRS 2019 — Copper discovery rates remain at 10-year lows, S&P Global Market Intelligence, April 25, 2019

 9 Growth in gold discoveries driven by older deposits, S&P Global Market Intelligence, June 25, 2019

10 CES 2019 — Australia bucks global trend with 15% increase in 2019 budget, S&P Global Market Intelligence,
  Jan. 8, 2020

11 CES 2019 — US budgets grow 11% while regional peers decline, S&P Global Market Intelligence, Nov. 22, 2019

12 CES 2019 — Chile leads in Latin America as budget increases 13% YOY, S&P Global Market Intelligence,
  Nov. 21, 2019

13 CES 2019 — Falling late-stage gold budgets drive Canada-wide decline, S&P Global Market Intelligence, Dec. 10, 2019

14 CES 2019 — Africa exploration budgets fall 12% YOY as large programs wrap up, S&P Global Market Intelligence,
  Nov. 28, 2019

15 IM January 2020 — Drilling activity dips in December 2019, S&P Global Market Intelligence, Jan. 8, 2020

特に明記しない限り、すべてのデータは2020年1月31日現在のものです。


S&P Global Market Intelligenceについて

S&P Global Market Intelligenceは財務データ、業界データ、リサーチ、ニュースをとりまとめ、パフォーマンス・トラッキング、アルファの生成、投資アイデアの発掘、競争・業界ダイナミクスの理解、パフォーマンス評価、リスクの評価に役立つツールを提供します。また、S&P社の金属・採掘ソリューションは、世界探鉱予算、埋蔵量置換分析、世界の採掘用地、プロジェクト、企業、鉱山に関する詳細な資産レベルの測定基準を網羅した情報源を提供します。世界の探鉱、開発、生産から探鉱コスト分析まで、S&P社の中立的な調査は確信を持って行動いただくための洞察力に富んだ視点となります。十分に情報を吟味した上での探鉱投資の意思決定の一助として、買収、コモディティ市場予測、信用リスク評価に欠かせない貴重な洞察を是非ご利用ください。

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