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インドネシアインドネシア(Republic of Indonesia)

面積(k㎡):
1,904,569
海岸線延長(km):
54,716
人口(百万人):
260.6
人口密度(人/k㎡):
138.0
GDP(bUS$):
1,015.00
一人当たりGDP(US$):
3,862.44
主要鉱産物:鉱石:
銅、ニッケル、ボーキサイト
主要鉱産物:地金:
銅、ニッケル、アルミニウム、錫
鉱業管轄官庁:
エネルギー鉱物資源省鉱物石炭総局 (Ministry of Energy and Mineral Resources, Directorate General of Mineral and Coal:MEMR-DGMC)
鉱業関連政府機関:
海事投資調整大臣府(Coordination Ministry of Maritime and Investment)、国営企業省 (Ministry of State-Owned Enterprises、インドネシア語略称:BUMN)、投資調整庁 (The Investment Coordinating Board、インドネシア語略称:BKPM)
鉱業法:
鉱物石炭鉱業法(2009年法律第4号)
ロイヤルティ:
鉱業事業分野における税務及び /あるいは税外国家収入の扱いに関する政令(2018年第37号)
外資法:
投資法(2007年法律第25号)
環境規制法 (環境影響調査制度、環境・排出基準の有無等):
環境保護法(2009年法律第32号)、森林法(1999年法律第41号)
鉱業公社(環境):
MIND ID、PT Inalum (Persero)、PT Antam (Persero)、PT Timah (Persero) 等
鉱業活動中の民間企業:
Freeport-McMoRan社(米)、Vale(伯)、PT Medco Energi Internasional、Eramet社(仏)、Newcrest Mining社(豪)、三菱マテリアル、住友金属鉱山 等
最終更新日:
2020年02月28日

1.鉱業一般概況

(1)主要生産物

インドネシアは銅、ニッケル、錫等の埋蔵量が豊富な鉱業国である。埋蔵量(2019年)はニッケルが世界第1位、錫が世界第2位、銅が世界第7位などとなっている。同国のニッケル生産量は2017年にフィリピンを抜き世界第1位を誇る。

日本はニッケル中間原料であるマットの約84%をインドネシアより輸入するなど、我が国にとっても重要な資源国の一つであるが、近年はインドネシア国内での高付加価値化政策に基づく未加工鉱物の輸出禁止措置などが取られ、その政策動向に注目が集まっている。

表1.インドネシアの主要鉱物資源の埋蔵量
鉱 種 2017年 2018年 2019年 対前年増減比(%) 世界シェア(%) ランク
ニッケル(千t) 4,500.0 21,000.0 21,000.0 0.0 23.6 1
錫(千t) 800.0 800.0 800.0 0.0 17.0 2
金(t) 2,500.0 2,500.0 2,600.0 4.0 5.2 5
ボーキサイト(千t) 1,000,000.0 1,200,000.0 1,200,000.0 0.0 4.0 6
銅(千t) 26,000.0 51,000.0 28,000.0 – 45.1 3.2 7

出典:Mineral Commodity Summaries 2020

表2.インドネシアの主要金属鉱石生産量
鉱 種 2017年 2018年 2019年 対前年増減比(%) 世界シェア(%) ランク
ニッケル(千t) 356.5 647.7 910.8 40.6 35.1 1
錫(千t) 82.8 84.0 86.4 2.9 24.3 2
ボーキサイト(千t) 4,400.0 10,500.0 15,000.0 42.9 4.3 6
金(t) 99.0 111.9 97.5 – 12.8 3.1 12
銅(千t) 666.3 651.1 400.2 – 38.5 1.9 13
銀(t) 102.0 104.4 138.9 33.1 0.5 17

出典:World Metal Statistics Yearbook 2020

(2)鉱山開発・探鉱活動

インドネシアは世界最大級のGrasberg銅・金鉱山をはじめ、銅やニッケル等の資源ポテンシャルが高く、多くの既存鉱山が点在する一方、2014年1月(2017年1月に条件付きで緩和)から未処理鉱石の輸出を禁止したため、近年は海外企業による探鉱活動が限定的である。

日本企業が関連する鉱山開発は、Batu Hijau銅・金鉱山に住友商事を筆頭とする日本企業連合が資本参加していたところ、2016年にPT Newmont Nusa Tenggara社(住友金属鉱山18.2%)の全株式をPT Amman Mineral Internasionalへ譲渡した。現在は、住友金属鉱山及び住友商事株式会社が参画するSorowakaニッケル鉱山のみとなっている。

日本企業が関連する探鉱活動は、住友金属鉱山がパートナーであるPT Vale IndonesiaとPomalaaニッケルプロジェクトを進めており、2018年4月からDFSを開始。フィリピンのCoral bay NickelプロジェクトやTaganito HPALプロジェクトに続く第三のHPALプラントとして位置づけられている。

2.鉱業政策

2006~2007年の資源価格の高騰を受け、インドネシア国内の外資系鉱山開発会社が莫大な利益を享受するのを目の当たりにしたインドネシア政府は、資源ナショナリズム的政策への傾倒を強めていった。政府の最大の目的は国内製錬所の建設を進捗させることにあり、鉱石の付加価値を国内で高めることで、鉱物を未加工のまま輸出するだけでは逸失してしまう利益を国内にもたらしたいとの考えがある。以下に、インドネシアにおける主な鉱業政策の動向を記載する。

表3.鉱業政策の主な動き
日 付 内 容
2004年3月 「2004年第1号緊急政令」が閣議決定され、森林法の施行以来、全国の保護林で操業停止を命じられていた鉱山会社のうち13社に事業再開を認める方針が示された。
2005年5月 エネルギー鉱物資源省から議会に鉱業法案が上程された。
2007年1月 商業省は、天然資源の一次産品について輸出禁止、輸出規制に関する商業省令を発行。
2007年3月 新投資法が成立。
2007年3月 エネルギー鉱物資源省は、鉱業権を有する事業者等からロイヤルティを確実に徴収するため、錫の輸出に割当制度を導入する方針を明らかにした。
2008年12月 新鉱業法が国会本会議で承認された。
2009年1月 新鉱業法が大統領の署名にて公布、施行。
2009年4月 金属鉱石、錫地金等の鉱業製品を含む一次産品輸出に貿易信用状の利用及び輸出代金受領はインドネシア国内の外為銀行を経由した受領を義務付けた。
2011年5月 政府は経済開発加速化・拡大マスタープランを正式に発表。
2012年2月 エネルギー鉱物資源大臣令(no.07.2012)によって鉱石輸出規制にかかる詳細な内容が規定された。
2014年1月 政府は正式に未処理鉱石の輸出禁止を施行。
2015年1月 輸出額の把握及び特定貨物輸出における信用状利用に関する大臣規則が商業省により制定、同年4月に施行された。
2017年1月 政府はさらなる政省令の改正を実施。
2019年7月 エネルギー鉱物資源省が国民議会第7委員会の合同聴聞会において、2017年からの輸出禁止緩和措置について、2022年に撤廃するとの方針を改めて明らかにした。
2019年8月 エネルギー鉱物資源省は低品位ニッケル鉱石の輸出緩和措置の期限2022年1月を前倒し、2020年1月から再度全面輸出禁止とすることを定めた大臣規則を制定した。
2019年8月 政府は電気自動車開発促進の大統領令を施行した。
2020年5月 インドネシア国会で2009年新鉱業法の改正案が可決、同年6月にJokowi大統領が署名し正式に制定された。
(1)鉱業法改正(2009年1月)
  • 鉱業権は、国または地方政府から発給される鉱業事業許可制度に一本化され、これまで外国からの投資に活用されてきたCOW(鉱業事業契約:Contract of Work)制度は廃止、ライセンスベース制度(鉱業事業許可(IUP)もしくは特別鉱業事業許可(IUPK))に移行。
  • 既存COWは契約期限内有効。但し、1年以内に新法に適合させなければならない。
  • インドネシア国内での生産物高付加価値化(精製・製錬)義務。
  • 新たに10%の新ロイヤルティ(Net Profit Royalty)を追加。
  • 外資インドネシア法人による鉱山開発の場合、生産開始5年後に国、地方政府、インドネシア民間企業等に一部資本移転義務(当初公布された政令により、最低20%とされたが、その後の改正により51%まで引き上げられた)。
  • 政府に生産量、輸出量をコントロールする権限を付与
(2)政省令公布・施行(2014年1月)
  • 国内での未処理鉱石(精鉱等)の輸出を禁止(2017年1月まで経過措置)
  • ニッケル/ボーキサイト鉱石は輸出禁止、銅・鉛・亜鉛は精鉱であれば輸出可能に
(3)政省令改正(2017年1月)
  • IUPKの延長申請、COWからIUPKへの移行申請の利便性向上:延長申請時期の早期化
  • 鉱物販売における基準価格適用の義務付け
  • 外資によるインドネシア国内への資本移転義務比率 51%以上の義務付け:生産開始以降5年目の終わりから段階的株式譲渡を行い10年目には51%以上を移転
  • 低品位ニッケル鉱石(品位1.7%未満)と洗浄工程後ボーキサイト(品位42%以上)について、生産量の内一定割合について国内製錬の義務付け
  • 鉱石類は条件を満たせば5年間一定量の輸出が可能:精鉱、アノードスライム、品位1.7%未満の低品位ニッケル鉱石、洗浄工程後の品位 42%以上のボーキサイトについては、必要な場合はCOWからIUPKへの切り替えを行った上で、鉱種ごとに定められる各条件を満たせば5年間(2021年末まで)輸出が可能となった(詳細は鉱業の趨勢2019を参照)
(4)ニッケル鉱石の全面輸出禁止が再開予定(2020年1月)
  • 2017年の政省令改正時に5年間条件付きで低品位ニッケル鉱石の輸出が認可されたが、2019年8月の改正大臣規則の制定により、2020年1月からニッケル鉱石のみ全面輸出禁止の前倒しを決定。
  • インドネシア政府が目的とする国内製錬所建設等による鉱石の高付加価値化が意図通りに進展していないことが前倒しの一要因であるとみられる。
  • 政府としては、国内ニッケル資源を活用しインドネシアをEV向けリチウムイオン電池(LIB)の生産拠点として発展させたいとの意図もあるとみられる。2019年8月、政府は国産EV構成部品の現地調達率等を定めた大統領令を施行した。
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