ロシア連邦(Russian Federation)
- 面積(k㎡):
- 17,098,242
- 海岸線延長(km):
- 37,653
- 人口(百万人):
- 142.7
- 人口密度(人/k㎡):
- 8.3
- GDP(bUS$):
- 1,578.00
- 一人当たりGDP(US$):
- 11,134.46
- 主要鉱産物:鉱石:
- ニッケル、金、タングステン、白金族、ウラン
- 主要鉱産物:地金:
- ニッケル、アルミニウム、銅、コバルト、白金族
- 鉱業管轄官庁:
- 連邦天然資源環境省、連邦地下資源利用庁(Rosnedra)
- 鉱業関連政府機関:
- 国家鉱量委員会(GKZ) 連邦予算機関Rosgeolekspertiza(ロシア地質審査機関)
- 鉱業法:
- 地下資源法(1992年2月21日制定、No.2395-1(1992年4月16日施行)、2020年6月8日最終改正)
- 外資法:
- 外資規制法(2008年4月29制定、No.57-FZ(2008年5月7日施行)、2018年5月31日最終改正) 外国投資法(1999年7月9日制定、№160-FZ(1999年7月14日施行)、2018年5月31日最終改正)
- 環境規制法 (環境影響調査制度、環境・排出基準の有無等):
- 環境保護法(2002年1月10日制定、No.7-FZ(2002年1月12日施行)、2020年7月31日最終改正)
環境監査法(1995年11月23日制定、No.174-FZ(1995年11月25日施行)、2020年7月31日最終改正)
- 鉱業公社(環境):
- ARMZ Uranium Holding(ウラン開発国営持株会社)、Rosgeologia
- 鉱業活動中の民間企業:
- Norilsk Nickel、 RUSAL、Ural Mining & Metallurgical Company Ural Mining & Metallurgical Company(UMMC), Russian Copper Company(RCC), Polymetal, Polyus Gold 等
- 最終更新日:
- 2020年02月28日
1.鉱業一般概況
(1)主要生産物
ロシアは石油、ガス、石炭といったエネルギー資源に恵まれた国であり、鉱物資源についてもその種類・埋蔵量ともに豊富である。特に、ニッケル、白金族金属(PGM)、金及びその他の資源の埋蔵量、生産量、輸出量で世界上位を占める。埋蔵量では、PGM、タングステン、アンチモン、バナジウムは世界第2位、鉄鉱石、金は第3位、ニッケル、ウランは世界第4位、銅が第6位となっており、その他の非鉄金属資源も豊富である。
2019年の実績において、ロシアは日本が輸入するパラジウムの50%を占めており、重要な貿易相手国となっている。アルミニウム(地金)については、日本が輸入する全量の17%を占めるほか、ジルコニウム鉱石についてもロシア産は品位の高い場でライトとなっており、純分換算で日本が輸入するジルコニウムの20%を占めている。
鉱 種 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 対前年増減比(%) | 世界シェア(%) | ランク |
---|---|---|---|---|---|---|
マグネシウム(千t) | 2,300,000.0 | 2,300,000.0 | 2,300,000.0 | 0.0 | 27.1 | 1 |
PGM(t) | 3,900.0 | 3,900.0 | 3,900.0 | 0.0 | 5.7 | 2 |
金(t) | 5,500.0 | 5,300.0 | 5,300.0 | 0.0 | 10.6 | 2 |
アンチモン(千t) | 350.0 | 350.0 | 350.0 | 0.0 | 23.3 | 2 |
セレン(t) | 20,000.0 | 20,000.0 | 20,000.0 | 0.0 | 20.2 | 2 |
バナジウム(千t) | 5,000.0 | 5,000.0 | 5,000.0 | 0.0 | 22.7 | 2 |
タングステン(千t) | 160.0 | 240.0 | 240.0 | 0.0 | 7.5 | 2 |
ホウ素(B2O3換算) (千t) |
40,000.0 | 40,000.0 | 40,000.0 | 0.0 | – | 2 |
鉄(百万t) | 14,000.0 | 14,000.0 | 14,000.0 | 0.0 | 17.3 | 3 |
亜鉛(千t) | – | – | 22,000.0 | – | 8.8 | 3 |
鉛(千t) | 6,400.0 | 6,400.0 | 6,400.0 | 0.0 | 7.1 | 3 |
レニウム(t) | 310.0 | 310.0 | 310.0 | 0.0 | 12.9 | 3 |
ニッケル(千t) | 7,600.0 | 7,600.0 | 6,900.0 | – 9.2 | 7.8 | 4 |
銀(t) | 55,000 | 45,000 | 45,000 | 0.0 | 8.0 | 4 |
レアアース(千t) | 18,000.0 | 12,000.0 | 12,000.0 | 0.0 | 10.0 | 4 |
銅(千t) | – | 61,000.0 | 61,000.0 | 0.0 | 7.0 | 4 |
モリブデン(千t) | 1,000.0 | 1,000.0 | 1,000.0 | 0.0 | 5.6 | 5 |
コバルト(千t) | 250.0 | 250.0 | 250.0 | 0.0 | 3.6 | 5 |
錫(千t) | 350.0 | 350.0 | 350.0 | 0.0 | 7.4 | 6 |
ボーキサイト(千t) | 500,000.0 | 500,000.0 | 500,000.0 | 0.0 | 1.7 | 9 |
出典:Mineral Commodity Summaries 2020
鉱 種 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 対前年増減比(%) | 世界シェア(%) | ランク |
---|---|---|---|---|---|---|
パラジウム(t) | 83.8 | 83.1 | 89.2 | 7.4 | 42.0 | 1 |
プラチナ(t) | 21.3 | 20.4 | 21.7 | 6.7 | 12.0 | 2 |
コバルト(千t) | 5.9 | 6.1 | 6.1 | 0.0 | 4.4 | 2 |
ニッケル(千t) | 217.9 | 218.3 | 226.2 | 3.6 | 8.7 | 3 |
アンチモン(千t) | 16,533.0 | 25,233.0 | 15,270.0 | – 39.5 | 12.7 | 3 |
金(t) | 270.0 | 279.9 | 279.8 | 0.0 | 8.8 | 3 |
タングステン(千t) | 1,119.0 | 724.0 | 1,467.0 | 102.6 | 1.3 | 4 |
タンタル(t) | – | 38.0 | 38.0 | 0.0 | 2.1 | 7 |
鉄(千t) | 95,000.0 | 94,512.8 | 97,180.7 | 2.8 | 3.3 | 5 |
銀(千t) | 1,305.0 | 1,350.0 | 1,350.0 | 0.0 | 5.3 | 5 |
モリブデン(千t) | 10.8 | 10.8 | 10.8 | 0.0 | 3.9 | 6 |
ウラン(千t) | 2,917.0 | 2,904.0 | 2,904.0 | 0.0 | 5.5 | 6 |
ビスマス(t) | 18.0 | 18.0 | 18.0 | 0.0 | 0.7 | 6 |
鉛(千t) | 210.0 | 215.0 | 221.3 | 2.9 | 4.5 | 6 |
レアアース(千t) | – | 2.7 | 2.7 | 0.0 | 1.3 | 6 |
銅(千t) | 722.0 | 773.0 | 773.0 | 0.0 | 3.7 | 7 |
ボーキサイト(千t) | 5,524.0 | 5,650.0 | 5,572.0 | – 1.4 | 1.6 | 8 |
ホウ素(B2O3換算) (千t) |
80.0 | 80.0 | 80.0 | 0.0 | – | 8 |
クロム(千t) | 488.0 | 507.0 | 507.0 | 0.0 | 1.4 | 9 |
亜鉛(千t) | 292.0 | 315.0 | 315.0 | 0.0 | 2.4 | 10 |
錫(千t) | 1.0 | 1.5 | 2.3 | 47.9 | 0.6 | 12 |
マンガン(千t) | 27.7 | 45.8 | 16.7 | – 63.7 | 0.0 | 26 |
出典:World Metal Statistics Yearbook 2020,Mineral Commodity Summaries2020
(2)鉱山開発・探鉱活動
Norilsk Nickel社、Polymetal社、Russian Copper Company(RCC)社、Ural Mining and Metallurgical Company(UMMC)社等の大手企業並びに、連邦地下資源利用庁による活発な探鉱プロジェクトの推進や、地下資源利用権取得申請、精錬の地域制限、地質調査・探査・採掘分野等における規制緩和などが進められた。2019年は地下資源利用者による地質調査により、国家バランスに98の固体鉱物鉱床が登録され、ロシア全体のP1+P2予測資源量は、金142.6t、銀2.094千t、銅984.2千t増加した。
2019年は固体鉱物の地質調査に連邦予算から6.4bRUB(ロシア・ルーブル)が割り当てられたが、1.3bRUBが使用されず、実際の投資額は5.09bRUBとなった。2020年は連邦予算により6.48bRUB相当の地質調査が予定され、うち1.3bRUBが2019年分の義務履行に充てられる。2020~2022年の固体鉱物の地質調査に対する連邦予算の投資額は年間5.18bRUBになると予想されている。
2019年の固体鉱物の地質調査に対する地下資源利用者の投資額(速報値)は47.7bRUBであった。特に、先願主義によるライセンス鉱区の地質調査費は8.7bRUBに増加した。2020~2022年の固体鉱物の地質調査に対する地下資源利用者の投資額は年間48bRUBになると予想されている。
2.鉱業政策
近年、ロシアでは鉱物資源開発産業の効率化と活性化を意識した政策を進めている。
日 付 | 内 容 |
---|---|
2004年7月 | ロシア政府が地下資源行政を担う天然資源省を改組。 |
2004年8月 | 地下資源法の改正。 |
2004年9月 | 錫鉱石・精鉱、錫、タングステン、モリブデン、タンタル、カドミウム、マンガン、ジルコニウム、ニッケル・クロム合金の輸出関税(6.5%)が廃止。 |
2004年11月 | 鉱床発見の事実認定に関する規則が制定。 |
2004年12月 | 錫鉱石・精鉱の輸入関税(5%)、亜鉛鉱石・精鉱の輸入関税(5%)も廃止。 |
2005年3月 | プーチン大統領が白金族金属(PGM)の埋蔵量などに関する情報を国家機密から排除する大領領令に署名。 |
2005年11月 | 錫鉱石・精鉱の輸入関税(5%)をゼロ税率と決定。 |
2006年1月 | 鉄鉱石・精鉱と亜鉛鉱石・精鉱の輸入関税(5%)をゼロ税率に決定。 |
2009年5月 | プーチン首相の訪日時に、日露原子力協定が署名された。 |
2009年8月 | 企業、金融機関等が自由に希少金属、宝石用原石等を輸出できるよう希少金属・宝飾原石などの輸出入令を改正。 |
2009年1月 | ニッケル合金と銅カソードに対する輸出税が廃止。製錬銅、銅合金については10%の関税率が維持された。 |
2010年6月 | 「2030年までのロシア連邦の地質学発展戦略」を策定 |
2010年12月 | 銅地金に対する輸出関税が再開、ニッケル地金は10%に引き上げられた。 |
2011年 | 連邦天然資源環境省は、地下資源法を改正。 |
2011年 | 連邦政府は、非合金ニッケルおよび製錬銅の輸出関税に累進税率を導入。 |
2011年7月 | 国策企業「Rosgeologiya」を設立。 |
2013年1月 | 連邦地下資源利用庁は、連邦予算機関へ地下資源の地質調査プロジェクト、鉱床調査・探査プロジェクトの審査を行う権限を付与。 |
2013年1月 | 政府は国家プログラムとして「2020年までの産業発展および競争力向上」を取りまとめた。 |
2013年3月 | 政府は、「2020年までの天然資源の再生と利用」承認。 |
2014年5月 | 産業貿易省令により「2014年~2020年および2030年までのロシアの非鉄金属産業発展戦略」が承認された。 |
2015年3月 | 天然資源環境省令第150号により「地下資源(連邦的意識を有する地下資源鉱区の地下資源を除く)地質調査のための地下資源利用権取得申請審査手続きの承認」が改正(電子申請の導入)。2017年1月に施行。 |
2016年5月 | 「ロシア連邦から関税同盟協定加盟国外に輸出される商品の輸出関税率変更」 |
2018年11月 | 「ロシア国内市場にとって極めて重要で、非常時に輸出の一時的制限や禁止が課される可能性がある商品リストの修正」において品目を追加。 |
2018年12月 | 政府は、政府令第2914-r号「2035年までのロシア連邦鉱物資源基盤発展戦略の承認」に署名。 |
2019年6月 | 貴金属製錬の権利を有する企業リストにおける企業の追加・削除の基準、および手続きを定める権限をロシア政府に付与。 |
2019年8月 | レアメタルの採掘促進に向け、ロシア連邦税法典第二部が修正された。本改正法により、レアメタルの鉱物採取税率が8%から4.8%に引き下げられた。 |
2018年12月には、「2035年までのロシア連邦鉱物資源基盤発展戦略」が発行し、あらゆる地質調査段階の投資魅力度向上、新規鉱床の予想・探査の精度向上、未開発鉱床を含む既知の鉱床の最新技術の導入等による開発効率化を目指す内容が盛り込まれた。この戦略は二段階で進められる予定となっており、2024年までの第一段階では、各地での大規模な政府支援による地質調査を行い2024年以降における採掘予測を作成し、2025年から2035年までの第二段階では、ロシアにおける地下資源開発への必要な投資促進を行う。
国内資源有効活用のための輸出入規制の動きもある。ロシア政府は2018年11月、「貴金属の鉱石・精鉱、貴金属又は貴金属を張った金属のくず・スクラップ、その他のくず・スクラップで貴金属または貴金属化合物を含有し、主として貴金属の回収に使用されるもの」を戦略物資に追加した。戦略物資は、ロシア国内市場にとって不可欠なものであり、非常時には輸出の一時的制限や禁止が課される可能性がある。2019年3月には、政府内で一時的な貴金属スクラップ輸出禁止に向けた動きがあったが、実際に禁止にはいたらなかった。
(1)レアメタルの採掘に適用される鉱物採取税率の引き下げ
レアメタルの採掘促進に向け、2019年8月2日付連邦法第284-FZ号により、ロシア連邦税法典第二部が修正された。本改正法によりレアメタルの鉱物採取税率が8%から4.8%に引き下げられた。
(2)地域投資プロジェクト(RIP)実施企業に対し、貴金属精錬の地域制限を撤廃
2019年9月29日、採掘された貴金属の精錬の地域制限を撤廃する連邦法第325-FZ号が成立した。これにより地域投資プロジェクト(RIP)を実施する企業は、2019年10月29日からロシア政府が承認した精錬所(11か所)で貴金属原料を精錬することが可能となる。これまでこれらの企業はプロジェクト実施地域でしか精錬を行うことができなかった。
(3)回収困難な鉱物の地質調査・探査・採掘分野における関係の法的規制を改善
2019年12月2日付連邦法第396-FZ号により、既存技術では採掘の採算性の低い回収困難な鉱物の地質調査・探査・採掘のための地下資源鉱区利用権供与に関する連邦地下資源法が修正され、2020年5月31日に施行された。地下資源鉱区利用権の供与は、地下資源利用者の申請に基づき、供与済みの地下資源鉱区から回収困難な鉱物を含有する地下資源鉱区を分離する形(期間7年、一回限り3年延長可能)と、入札により落札者に地下資源鉱区を供与する形(期間15年、複数回5年延長可能)の2つである。
(4)金及び銀のインゴット輸出の包括ライセンスの交付
2020年4月17日付ロシア政府決定第539号に従い、産金企業に金及び銀のインゴット輸出のワンタイムライセンスのかわりに包括ライセンスを取得する権利が与えられた。産業商務省は、包括ライセンス交付制度の施行により、外国貿易契約が増加することを期待している。
(5)極東及び北極圏及びイルクーツク州のカテゴリP1及びP2固体鉱物予測資源量を有する鉱区に対し申請主義の適用の拡大
2019年5月14日付ロシア天然資源環境省令第299号「地下資源(連邦的意義を有する地下資源鉱区及び地域的意義を有する地下資源鉱区の地下資源を除く)地質調査のための地下資源利用権取得申請の審査手続き(2016年11月10日付ロシア天然資源環境省令第583号により承認)の変更」により、ロシア天然資源環境省は、極東及び北極圏及びイルクーツク州のカテゴリP1及びP2固体鉱物予測資源量を有する鉱区に対し先願主義の適用を拡大した。申請審査手続きの変更後は、現時点で確認埋蔵量がなくてもP1及びP2予測資源量を有する地下資源鉱区を全て競売なしで供与することができる。
(6)2020年3月15日から12月31日までの期間に期限切れとなる地下資源利用者ライセンスの延長
2020年4月3日付ロシア政府決定第440号「2020年の許認可活動に関する許認可の有効期間延長及びその他の特例」により、COVID-19感染拡大防止のための制限措置期間中の支援策として、2020年3月15日から12月31日までの期間に期限切れとなる地下資源利用者ライセンスが12ヶ月延長される。
(7)地下資源が被った損害の金額算定に関する規則及び採取された鉱物の単価の評価に関する修正
2020年3月10日付ロシア政府決定第261号により、連邦地下資源法違反の結果として地下資源が被った損害の金額算定に関する規則(2013年7月4日付ロシア政府決定第564号により承認)が修正され、2020年3月20日に発効した。この規則修正により、損害額と鉱物損失量の算定は、国家バランスに計上された天然成分だけでなく、これまで評価されていなかった天然成分に対しても行われることとなり、また採取された鉱物の単価の評価に関しても修正が行われた。連邦自然管理監督局(Rosprirodnadzor)が損害額の評価を行う。
(8)炭化水素原料の探査及び採取における随伴鉱物採取の許可
2020年6月8日付連邦法第179-FZ号「炭化水素原料の探査及び採取における、地下水・随伴水及び自身の生産・加工目的で使用する水からの、炭化水素原料に属さない鉱物の採取の改善に関する『地下資源法』の修正」が2020年9月7日に施行された。地下資源利用者はこれまでライセンスに規定されている鉱物の採取しかできなかったが、鉱区内で、炭化水素開発時に採取された地下水から、ライセンスに規定されていない鉱物を採取できるようになる。