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ザンビアザンビア(Republic of Zambia)

面積(k㎡):
752,618
人口(百万人):
16.4
人口密度(人/k㎡):
21.9
GDP(bUS$):
25.71
一人当たりGDP(US$):
1,563.39
主要鉱産物:鉱石:
主要鉱産物:地金:
銅、コバルト
鉱業管轄官庁:
鉱山・鉱業開発省
Ministry of Mines and Minerals Development
鉱業関連政府機関:
鉱山・鉱業開発省地質調査所(Geological Survey Dept, Ministry of Mines and Minerals Development)
鉱業法:
鉱山・鉱物開発法(Mines and Minerals Development Act NO.11 of 2015及びMines and Minerals Development(Amendment) Act NO.14 of 2016)
ロイヤルティ:
銅以外のベースメタル、産業用資源は5%、宝石、貴金属は6%、銅については市況に応じ5.5~10%
外資法:
The Zambia Development Agency Act of 2006
環境規制法 (環境影響調査制度、環境・排出基準の有無等):
The Environmental Management (Amendment) Act, 2013 [No. 10 of 2013), The Zambia Wild Life Act 2015
The Citizenship Empowerment Act 2006, The Cooperative Societies Act 1998
The Business Regulatory Act 2014、The Lands Act、The Land and Deeds Act、 The Arbitration Act.
鉱業公社(環境):
ZCCM-IH (Zambia Consolidated Copper Mines Investments Holdings)
鉱業活動中の民間企業:
First Quantum Minerals Ltd.(FQM)、Glencore Plc、
China Nonferrous Mining Co. Ltd.(CNMC)、Vedanta Resources plc、Eurasian Resources Group B.V.(ERG) 他
最終更新日:

1.鉱業一般概況

(1)主要鉱産物

ザンビアは、世界第9位の銅鉱石生産国、アフリカにおいてはDRコンゴについで第2位。ザンビアにおける主要な銅生産者としては、Glencore、First Quantum社(FQM)、Barrick Gold社といった欧米の鉱山会社の現地子会社による銅生産量が多くを占め、これらの会社で国内銅生産量のほぼ7割を占める。特にFQMは、2015年にSentinel鉱山の生産を開始し、既存のKansanshi鉱山と併せて、ザンビアの銅生産の半分ほどを担っている。

また、ザンビアの銅鉱石は従来から硫化鉱が主体であり、主に乾式製錬による地金生産が行われてきた。

銅製錬所としては、Kansanshi(FQM)、Nchanga(Vedanta社)、Mufulira(Glencore)、Chambishi(CNMC)といった製錬所がある。中でもKansanshi製錬所は、2014年より稼働したザンビアでもっとも新しく最大規模の製錬所であり、年産300千t以上のアノードを生産する能力がある。また、Chambishi製錬所では、同社のChambishi鉱山以外の他の鉱山からも鉱石を買鉱し、ブリスターやアノードにして出荷している。Nchanga製錬所及びMufulira製錬所については、2019年から銅精鉱輸入税が導入されたこともあり、一時休止に入った。その影響を受けて、DRコンゴ産の銅精鉱輸入量の減少及び地金生産量の減少が顕著に見られた。また、従前より銅地金生産に際し、DRコンゴ産銅精鉱に含まれるコバルトの回収が行われていたが、輸入精鉱の減少に伴い、コバルト地金生産も減少が見られた。

表1.主要金属埋蔵量
鉱 種 2017年(千t) 2018年(千t) 2019年(千t) 対前年増減比(%) 世界シェア(%) ランク
20,000.0 19,000.0 19,000.0 0.0 2.2 10
コバルト 270.0

出典:Mineral Commodity Summaries 2020

表2-1.主要金属鉱石生産量
鉱 種 2017年(千t) 2018年(千t) 2019年(千t) 対前年増減比(%) 世界シェア(%) ランク
802.9 857.4 758.9 – 11.5 3.7 9

出典:World Metal Statistics Yearbook 2020

表2-2.金属地金生産量
鉱 種 2017年(千t) 2018年(千t) 2019年(千t) 対前年増減比(%) 世界シェア(%) ランク
銅(Refined SxEw含む) 989.2 1,038.7 782.9 – 24.6
コバルト 2.5 1.6 1.3 – 21.2 1.0 11

出典:銅はICSG 2019 Statistical Yearbook, コバルトはWorld Metal Statistics Yearbook 2020

(2)鉱山開発・探鉱活動

銅やコバルトを中心に鉱山開発・探鉱活動が進められており、最近の主な動きは次の通り。

Kansanshi銅鉱山(First Quantum社80%、ZCCM-IH 20%権益所有)の埋蔵量は、842.7百万t(品位:Cu 0.64%)、資源量については939.6百万t(品位:Cu 0.67%)であり、硫化鉱の鉱石処理能力等を52百万t/年(現在28百万t/年)に増やす計画(S3 Expansion)を再検討する可能性がある。また、この拡張計画は、2023/24年の資本支出の上で2024年後半からの生産開始を想定されている。

Lubambe Copper Mine社(豪EMR Capital社が80%シェア所有)の2020年10月1日付の発表によると、Lubambe銅鉱山の南東6kmに位置する新規銅鉱床の開発(Extention project)について、Concept Studyを完了した。新規鉱床からは、最大銅量160千t/年の精鉱を生産し、マインライフを30年以上と見込み、次のステップとしてPFSの策定に入る。2023年に建設を開始し、2028年頃に生産に入る予定である。

2020年4月27日付け加探鉱ジュニアMidnight Sun社の発表によると、同社のザンビアSolwezi鉱区権益について、Rio Tintoとの間で参入オプション契約を締結した。同鉱区は、ザンビア・カッパーベルトの銅・コバルト鉱床区に位置し、First Quantum社のKansanshi鉱山に隣接する。2つの探鉱鉱区からなり、総面積506km2になる。今回の参入契約において、Rio Tintoは、合計で4mUS$の現金支払い及び初期探鉱費の拠出を約束した。その後の探鉱ステージ1(4年間)での探鉱拠出のための16mUS$及び現金1mUS$を支払いうことによって、51%の権益、ステージ2(15mUS$で14%)及びステージ3(15mUS$で10%)にてそれぞれ拠出を行うことで、最大75%まで権益を取得するオプションを持つ。

2.鉱業政策

ザンビアの鉱業セクターは経済の主要セクターであり、最も重要な外貨獲得源となっている。2018年統計で、鉱業セクターは全輸出高の約70%を占める。またGDPの約11%を占め、卸売業・小売業、公共サービスに次ぐ第3位の産業となっている。鉱業税の国家予算収入への寄与は、1990年代には殆ど無かったものの、各公社の民営化後、財政制度の見直しが進み、鉱業税収はGDPの約2%程度にまで増加している。

表3.鉱業政策の主な動き
年 月 内 容
1964年 独立(旧宗主国英国)、カウンダ大統領就任
1968年 チリ、ペルー、ザイールとともにCIPEC(銅輸出国政府間協議)を設立
1969年 主要外国資本2社(Rhodesian Anglo American Corp.、Roan Selection Trust)の国有化。前者はNchanga Consolidated Copper Mines Ltd.(NCCM)、後者はRoan Cosolidated Mines Ltd.(RCM)に改称。
鉱山操業はAnglo AmericanとRCMがコントラクターとして実施。
1982年 NCCMとRCMが合併、Zambia Consolidated Copper Mines Ltd.(ZCCM)を設立
1992年 民営化法制定。国営企業をその経営により適任で必要な資本を有する企業に売却を開始するためザンビア民営化庁(ZPA)を設立
1995年 鉱山・鉱物法制定
1996年 ZCCMの民営化開始
2000年 ZCCMはZCCM-IHへ改組。同社はZCCMによる過去の負債を継承するとともに、ZCCMが有していた鉱害についての責任も負うことになった
2008年4月 鉱山・鉱業開発法制定(2009年施行)。探鉱権の有効期間を大規模または小規模に分けて明確化、探鉱権及び採掘権の鉱区面積に制限
2009年5月 ウラン採掘に関する規則制定
2012年2月 輸出管理強化のため、輸出企業に対し、輸出許可証や成分分析表の取得の義務付け
2015年7月 鉱山・鉱業開発法改正・施行。小規模鉱業と一定規模の鉱業におけるライセンスについて、ザンビア資本の参加を義務付け
2019年 鉱業税制の改正
2020年11月 計3bUS$のドル建て国債のうち42,5mUS$の利払いができず、デフォルト(債務不履行)状態とる。
2020年12月 2020~2023年の経済復興プログラムの発表
(1)鉱業税制の改正

2019年1月に鉱業税制の改正が施行。ロイヤルティ等の鉱業税収を増やすことで、増大するザンビア債務への貢献が期待された。

(銅生産等に係るロイヤルティ)

銅:

  • 市場価格が4,500US$/t未満:5.5%
  • 市場価格が4,500~6,000US$/t:6.5%
  • 市場価格が6,000~7,500US$/t:7.5%
  • 市場価格が7,500~9,000US$/t:8.5%
  • 市場価格が9,000US$/t以上:10%

コバルト:8%

(輸出入税の導入)

  • 輸入税(銅精鉱):5%(その影響について後述)
  • 輸出税(貴金属):15%
(2)銅・コバルト精鉱に対する輸入税導入の影響

2019年1月の鉱業税制の見直しの一環として、銅精鉱には5%の輸入税が導入されたことによって、ザンビアの銅製錬に影響を及ぼすこととなった。ザンビアの製錬所の中には、DRコンゴからの銅硫化鉱に原料を求める製錬所がある。この輸入税導入によって輸入される精鉱を規制し、国内銅鉱山の生産を拡充することがザンビア政府の思惑であったが、結果的として鉱石が不足し、国内銅製錬所の減産に繋がった。

例えば、Nchanga製錬所(Vedanta社)は輸入税の導入に合わせて2019年に半年ほど操業を休止した。また、銅精鉱をDRコンゴに依存していたERG社のChambishi製錬所(年産能力55千t)も操業休止となった。Mufulira製錬所(2018年産銅量119千t)も大規模改修を理由に操業休止に入った。

(3)鉱業セクターの監査の強化

近年、ザンビア歳入当局による鉱業セクターの操業に注目した監査が厳しくなっている。2018年3月にはFQMの子会社が、Sentinel銅鉱山への鉱山機械輸入(540mUS$相当)に関連する輸入税及び遅延に伴う罰金等の支払いとして、歳入当局より8bUS$相当の請求がなされた。国際会計事務所を通じて関連文書の見直しがなされ、2019年7月までに歳入当局との間で和解合意がなされた。

(4)KCM社を巡るザンビア政府とインド系Vedanta社の紛争

2019年5月、Konkola Copper Mines(KCM)社のマイナーシェア20.6%を持つザンビア国有鉱山企業ZCCM-IHが仮精算人を立てて、KCM社の清算手続きが国内の高等裁判所に申請された。申請理由は明らかではないが、大統領や政府関係者からは、KCM社のメジャーシェアを持つVedanta社に代わって、より開発実施能力のある他社を引き入れる旨の発言もなされた。また、KCM社はサプライヤー等への支払いや国への納税が滞り、開発ライセンスの規則違反があるとする政府関係者の発言も報道されている。

これら政府の動きを受けて、Vedanta社側は、KCM社の株主間合意書の仲裁条項に則り、国際調停によって解決するとして手続きを進めている。

他方で、ザンビア高等裁判所は2020年11月、KCM社の清算手続きの停止を命じ、Vedanta社とZCCM-IHによる調停に入ることを認めた。政府とVedanta社間の一連の論争を通じて、鉱業関係者の間では資源ナショナリズムの動きとして警戒する見方もある。

(5)ザンビアの債務不履行に対する鉱業への影響

2020年11月、計3bUS$のドル建て国債のうち42.5mUS$の利払いができず、デフォルト(債務不履行)状態となった。これに対し、Richard Musukwa鉱山大臣は、債務の一部が不履行になったが、鉱業資産を債権者に譲渡することは考えておらず、売却の計画もないとコメントしている。

(6)2020~2023年の経済復興プログラム(ERP)

マクロ経済の安定化や財政健全化を計るための目標設定を行うとともに、農業、製造業、観光業、鉱業、エネルギー分野の経済分野においても目標を設定した。鉱業においては、以下の目標が設定された。

  • 投資を増加させるためのより安定した鉱業税制の導入
  • Konkola Copper Mines(KCM)社への政府権益比率の引き上げ及びパートナーの選出
  • Mopani Copper Mines社への政府権益比率の引き上げ
  • 金鉱業における鉱山及び精錬への投資増、マーケティングの簡素化、中央銀行による生産物の買取り
  • 地質マッピング、鉱物資源賦存状況のマッピング推進
  • 鉱業セクターにおける付加価値促進、民間セクターと連携して製錬業への投資促進
  • 鉱業規制当局を創設し、鉱山のコスト構造の監視や紛争への対処
  • 協同組合の設立、取引センターの設立を行い、金やマンガンの零細・小規模採掘のフォーマル化を促進
  • マンガンや宝石など非伝統的鉱物のバリューチェーンの開拓

プログラムにKCM社やMopani社といった銅鉱山の権益取得が含まれているが、同プログラム公表時のスピーチにおいて、Lungu大統領は、「国が戦略的にいくつかの鉱山の権益を取得することで、鉱物資源を活用して、税金以上の利益を国にもたらすことができる。」と語った。

Anglo American CEO Mark Cutifani氏は、「Anglo Americanはザンビアに操業鉱山を持たず、探鉱事業に参入しているが、仮に開発に値する銅鉱床を発見した場合には、ベスト・プラクティスな採掘方針について政府と真剣に議論することになるだろう」と語り、ザンビアの鉱業政策の不確実性や不利な税制を踏まえて、意志決定をする際の慎重な姿勢を改めて示したと報道されたように、鉱業界は再び国有化の波が押し寄せるのではと懸念している。

(7)電力問題

ザンビアでは、電力消費の約半分が鉱業活動に伴うものとされている。水力発電が発電の80%以上を占めることから、発電量は気象の影響に左右されることが多い。近年は、異常気象による鉱業への影響が危惧されている。2015年には、深刻な干ばつにより発電量が7%減少し、銅及びコバルトの生産量が17%減少したこともある。近年、発電容量は増加しているが、2019年も干ばつにより国有電力会社ZESCOのKaribaダムの水位は低く、不安定な電力供給が鉱業にとってのリスクになっている(IMF Country Report No.19/263)。

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