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チリ鉱業界に二つの脅威 -水と電力-
地元各紙等は、好況の裏で水と電力不足の陰に怯える鉱山業界の様相を次のように伝えている。
“銅とモリブデンの建値は高騰に次ぐ高騰を続けており、鉱山会社は何れも歴史的な利益額を計上している。銅価格の見通しも極めて楽観的で、我国の鉱山業界は正に順風満帆の状態。一見何一つ心配することもなさそうに見えるが、本当にそうなのだろうか?”しかし、現実には、鉱山業界の心配は深刻である。「チリ北部で今迄どおり正常な鉱山経営が継続出来るのだろうか?」。
一見極めて順調に見える鉱山経営を脅かしている要因が二つ存在する。チリ北部に於ける水不足と電力不安である。
新しく制定された水利法典は、特定の企業が環境を害していると政府当局が判断した場合、当該企業に対する水の供給量を制限する権限を当局に付与している。水を確保出来るか否かは、砂漠地帯で操業を続ける鉱山にとっては正に死活問題である。
チリ鉱業協会(SONAMI)やチリ鉱業審議会(Consejo Minero)といった業界団体の呼びかけに、政府も漸く重い腰を上げ、大統領府、鉱業省、環境委員会(CONAMA)、水利局、農牧局等が鉱山業界と共同でワーキング・グループを作り、水問題の解決策作りに乗り出す構えを見せている。Dulanto鉱業大臣は「先ず使用可能な水の量から詳細な調査・研究をしなければならないが、水をより効率的に使用するための技術開発も緊急を要する」とコメントしている。チリ鉱業協会のOvalle会長は「水の問題に付いては政府も大変心配してくれており、何らかの解決策が見つかると思う。但し、州によって問題点が異なるため、地域別に解決策を見出さなければならないだろう」と語っている。
鉱山会社側には独自の用水確保を目指す動きも見え始めている。Escondidaは海水淡水化プラントを建設し、他の鉱山会社もこれに注目している。
一方の電力問題は、電力各社が、アルゼンチン産天然ガスの供給停止と1990年代に行った過剰投資による損害を、電力代値上げにより回収しようとしている一方、鉱山会社側は地域全体の電力供給体制を確立するコストを鉱山会社が負担するのは不公平と値上げに反対しており、問題解決が長引いている。チリ鉱業協会の計算によると、これら水と電力問題を解決するためには、15~20%のコスト増を覚悟しなければならないという。一旦、銅価格が低落し始めると、鉱業界にとって大きな負担になることは間違いない。
