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ニュース・フラッシュ

2007年5月14日 リマ 西川信康

ペルー国会、鉱業ロイヤルティの一部を軍事費へ流用することを検討

 業界紙等によると、国会のエネルギー鉱業委員会のフジモリ委員長は、鉱業ロイヤルティの一部を軍備増強に充当する法案を作成中であり、来月初頭に国会へ提出する見通しであることを明らかにした。
 この法案は2006年10月にUPP党及び国家主義政党議員によって提案された後、2007年3月末に再びアプラ党のジャンピエトリ議員らを代表とする複数の議員によって鉱業ロイヤルティの15%を軍備増強に充てる法案が提出された経緯がある。
 フジモリ委員長は、鉱業ロイヤルティの裨益者からの反発は免れないとしつつ、ペルー軍は諸外国からの脅威に対抗するための抑止力を持つため、武器の新規購入等より多くの予算を必要としていると主張した。さらに、現在のペルー軍の装備は危機的な状況である一方、政府によるインフラ事業や貧困対策を必要とする貧しい人々が存在しているとし、双方に配慮したバランスのとれた結論を出すことが肝要であると述べた。
 防衛委員会のカネパUPP党議員は、領海境界線問題のある隣国のチリと比べて軍事面で非常に不利であることを挙げ、国家には軍事増強の義務があるとし、エネルギー鉱業委員会の報告書作成に賛成の意を表明した。
 鉱業協会のクルス会長は、ロイヤルティ法が、ロイヤルティを地方政府並びに地方の大学による社会事業実施のために利用することを定めているとし、法案が可決された場合地方政府や自治体、地方の大学などを中心に反対運動などが起こる可能性があると指摘した。
 BUENAVENTURAのベナビデス社長は、チリの銅公社CODELCOが売上の10%を軍事費に拠出していることが、本法案のアイデアのきっかけになったのだろうとしつつ、現在チリではこの制度を廃止する議論がなされているとし、ペルーにおいても軍事予算の増加によって装備を整えるべきだと主張した。
 一方、全国地方政府評議会(ANGR)のワロック会長は、軍備増強に反対の立場ではないが、地方も資金を必要としているとして法案に反対を表明。軍事強化は、他の財源を模索するべきだとし、地方政府知事の大多数が本法案に反対していると強調した。
 防衛問題専門家のロブレス氏は、法案は15%という数字の根拠など具体性に欠けているとし、まずペルー軍において何が必要とされているのかを分析し、その結果に基づいて必要な金額を算定する必要があるほか、ロイヤルティの削減が行われた場合の地方への影響を事前に評価すべきであると主張した。

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