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Nautilus社の海洋資源開発計画、主要科学誌に環境への懸念が掲載
5月18日発行の科学雑誌サイエンス誌の中で、在バンクーバーのNautilus社が進める海洋資源の商業開発に関する懸念の表明と何らかの規制の必要性についての主張がなされた。著者はトロント大学Jochen Halfar氏とカリフォルニア州の環境団体Environmental DefenseのRodney Fujita氏。現在Nautilus社は3億US$を投じるPNG沖の噴気堆積性鉱床の開発計画を進めており、2009年の出鉱を見込んでいる。採掘規模は年間約2百万t。著者らは、Nautilus社が現在も活発に噴気を行うチムニー周辺を採掘すれば特殊な生物コロニーを失い薬学上・生物科学上の損失は重大であること、またこれに伴い生じる浮遊物質と熱水循環システムの変化は海洋深層に著しい影響を与えるほか、表層水の富栄養化に繋がる懸念があるとしている。また採掘は排他的経済水域に限られるとはいえ、この影響は一国の範囲に留まらず、国際環境法に抵触する恐れもあるとしている。従いこうした産業が生まれようとしている今、環境への影響を最小化するために、科学的な研究の充実と必要なコストを産業から徴する諸規制の制定が必要だと主張している。
過去、公海におけるマンガン団塊の採掘をめぐり、1994年に国連において新たな海洋法を批准、開発者に環境保全とコスト負担を強いることを定めたが、当時の低い金属価格もあり、関心はマンガン団塊開発から排他的経済水域内の塊状鉱床へと移っていった経緯がある。
この記事はバンクーバーの地元紙でも大きく取り上げられた。インタビューの中で著者のHalfar氏は「Nautilus社事業の場合、独立した環境アセスメントが必要」とコメントした。他方、Nautilus社CEO David Heydon氏は記事に対し、「現行の諸規制は十分適当である」との認識を示した上、「ルールは開発側により遵守されないであろうという無遠慮な指摘、PNG政府がほとんど仕事をしていないという先入観にもとづくもの」とコメントした。
