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ニュース・フラッシュ

2007年7月30日 ジャカルタ 池田 肇

インドネシア・株式会社法(改正案)を可決、企業の社会的責任を義務化

 議会本会議は7月20日、株式会社に関する法律(1995年法律第1号)の改正法案を全会一致で可決した。同法案の議会審議で注目されていた「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)」は第5章第74条に盛り込まれた。同法案によれば、天然資源開発企業、廃棄物排出企業は、税引き後利益に対し一定分を地域社会へ還元、環境対策へ配分する義務を負う。具体的な金額や、義務履行違反に対する罰則については政令で定められる。
 インドネシアでは3月29日、新投資法(2007年法律第25号)が成立し、第9章(投資家の権利、義務及び責任)第15条bに「企業のCSRの実施」が明記され、また、第17条では「再生不可能な天然資源事業を行う投資家は、環境基準を遵守した現場回復のために、段階的に資金を割り当てなければならない。」と明記されるなど、国民福祉実現、環境保護徹底のための法制化が進んでいる。
 鉱物資源開発(鉱業投資)は、政府が先に施行した新ネガティブリスト(2007年大統領第77号)では記載がなく、一般投資家に開放された事業分野、あるいは、鉱物資源石炭鉱業法案を基本法令とするため、新投資法で定める「企業のCSRの実施」は精神規定との理解にあったが、インドネシア国内で鉱業投資を行う場合は、インドネシア法人(会社)を設立しなければならないため、再生不可能な天然資源開発を行う投資家に対し、地域住民への富の分配、環境配慮を、株式会社法(改正案)の成立によって実現させる狙いが窺える。
 可決された法案では、企業のCSRの費用負担は税引き後利益を基準に算定するとしており、企業会計上、地域社会・環境対策への寄付金扱いとされ、税制上の優遇措置は検討されていない。
 インドネシアの鉱業投資環境がまた一つ悪化したと言える。企業に対するCSRの適用は、法律施行後1年の猶予期間が設定されている。
 なお、CSRは、経済のグローバル化、消費者意識の変革等を受けて、企業価値やブランド価値を創出、国際競争力を強化するための企業による自主的、主体的な取り組みであるが、今回、法律によりCSRの実践を義務化し、CSRの不履行に罰則を設けた点で、世界に例を見ない法律となっている。

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