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ニュース・フラッシュ

2007年10月8日 バンクーバー 宮武修一

カナダ・鉱業を巡るアジア太平洋フォーラム、バンクーバーで開催

2007年9月30日から3日まで、鉱業に関するカナダBC州と環太平洋アジア諸国の緊密な連携と、相互の健全な鉱業の発展を目指すAsia Pacific Forum on Mining and Mineralsがバンクーバーで開催され、約250名が参加した。主催はBC州鉱業協会、協賛はBC州天然資源省および経済開発省であり、この種のフォーラムとしては初めての試みである。 この会議は、鉱業をめぐる様々な課題についてその基本的な課題に対する認識を共有し、解決にむけた取り組みを考えようという、いわば政府の政策や、産業界、NGO等の組織経営の基本方針に関する視点に重きを置くもので、参加者としても、実務者よりも、むしろ経営者、政府関係者、投資家、NGOなどの幹部の参加が奨励されていた。 実質2日半にわたる会議の内容であるが、リーダーズフォーラムと題し、エマーソン連邦アジア貿易大臣、Lundinグループ会長、学識経験者らが参加した二時間程度の基調講演の後、3つの専門部会に別れ、「貿易と投資」、「新たな基準とベストプラクティス」、「資金調達とリスク」のそれぞれについて各専門家から講演が行われた。 ここでは、フォーラムでの関係者の発言、質疑応答の中からその一部を紹介する。 カナダの現状につき、エマーソン連邦アジア太平洋貿易大臣は、資源国カナダの重みというものは世界的な供給構造の変化および価値の転換(資源重視)をふまえ、その技術、人材、資金調達の上で世界をリードする存在である。またBC州は約4億人の人口を抱える北米にあって、アジアへの窓口としての機能を担うことになるであろうと発言した。同じく、ウー在カナダ・アジアパシフィック基金会長は、カナダの位置づけとは、エネルギーの分野では新興のスーパーパワー。他方、金属鉱業の分野ではパワーハウスといったところ。世界経済に関し、当面の注視すべき事項は、米国のクレジット・クランチと中国の流動性の増加とアジアへの影響。エネルギーに関し、もはやOECD諸国の消費は増加しておらず、BRICsら新興経済がドライビング・フォースであると述べた。 また、中国Minmetalsによるノランダ社買収の試みなど、カナダ企業の外資による買収をどう受け止めたら良いのかとの参加者からの質問に答え、エマーソン大臣は、双方向の自由貿易を堅持することは基本であるが、企業買収に関して踏まえておくべき留意点として以下の点を指摘した。(1)市場における透明性の確保n (2)国家安全保障のクリア(技術上、軍事上。現状カナダにはこの評価機関はない)n (3)本社機能流出への配慮(様々な議論があり、極めて難しい問題ではあるが、カナダ側の何らかのコントロール権の確保など)n   参加者から、鉱業に対するNGOの活動に対する責任論に関し、NGOに対し鉱山会社と同様の責任を課すのが適当ではないか。NGOによる明らかな誤認により名声に傷をつけられた探鉱・開発企業は多いとの意見並びに認識が示されたが、一方NGO関係者からは、鉱業は過去において環境破壊、若年労働などの問題を引き起こしてきた歴史を持っている。ただしNGOにもいろいろあり、アンチマイニングはむしろ少数派。その多くが組織としては小さく、収入も少ない、若いスタッフも多い状況から弱者に対する支援は社会にとり重要との意見があった。
鉱物資源の探査事業を進めていく上で、カナダなど外資企業が発展途上国でプロジェクトを行う場合、地域社会などから貢献を求められる(企業の社会的責任:Corporate Social Resposibility:CSR)。ジュニア企業関係者からは、零細な探鉱企業の場合、学校建設や医療機関の施設など様々な地元からの要求に応えることは困難で、どう向き合っていくのかという問題提起がなされた。これに関係する参加者の議論とは以下のようであった。
・プロジェクトのスケール次第で、是々非々でないか。対応できることがらの幅が異なるのでは。
・開発側と地元でコンセンサスを得ることは極めて難しい。問題の深刻さについても相互の共通認識を得にくいのも現実であることから、カナダ側で世界のCSRに関する標準化というものを考えてはどうかとの提案もあった。しかし発展途上国において実際に調整に携わっている参加者からは、問題とは地元住民側から提起されるもので円卓で解決を図るもの、カナダなど開発側が基準を作りそれを住民側におしつけるのはナンセンスであり機能しないとの指摘がなされた。
今回のフォーラムでは、BC鉱業協会が直面する環境ライセンス、社会ライセンスの取得に関する様々なイシューを中心に様々な議論が行われた。会議にはカナダ連邦政府、BC州政府の政治家の多数の参加をみるなど、BC州におけるマイニングビジネスの重みが改めて確認された。また環太平洋地域のマイニングビジネスを先導したいとするBC州の意気込みというものも印象に残った。

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