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ニュース・フラッシュ

2008年6月17日 リマ 西川信康

ペルー:モケグア県においてカノン税増額要求の抗議行動が継続

 ペルー南部、モケグア県におけるカノン税還元の配分改正を求める無期限抗議行動は、発生後1週間が経過した。
 6月16日には内務省の指示によって出動した警官隊が、デモ隊によって封鎖されているパンアメリカンハイウェイの開放を図ったが、約2万人のデモ隊と衝突した。この際、警察による催涙ガスに対するデモ隊の投石による応酬が行われ負傷者約80名が発生したほか、警官約60名がモケグア内の教会に軟禁される事態となった。さらにデモ隊は、Ilo郡のSouthern Copper社の施設の一部や、パンアメリカンハイウェイ沿いの警察署を襲撃したほか、警官の移動用バスを炎上させるなど、抗議行動をエスカレートさせた。
 軟禁されていた警官ら60名は翌日17日に解放されたものの、抗議デモにSouthern Copper社の労働者50名が加わるなど事態が複雑化している。なお、この大規模なデモによって、供給不安が広がり、LME銅価格上昇の一因とも見られている。
 モケグア県のデモ抗議は、2007年にSouthern Copperの生産した銅精鉱の割合が、モケグア県52%(Cuajone銅山)、タクナ県48%(Toquepala銅山)であったにもかかわらず、カノン税の還元配分がモケグア県21%、タクナ県79%であるのは不公平であるとし、精鉱生産量比に基づいたカノン税配分を行うことを要求しているものである。
 なお、Castillo(カスティージョ)首相並びにモケグア県知事、郡知事らは警察官らの解放を機に対話交渉を再開し、2009年よりSouthern Copper社がCuajone鉱山(モケグア県)及びToquepala鉱山(タクナ県)の2鉱山の税務処理を分離し、2県に対するカノン税還元を個別に行うことで合意し、モケグア県内のデモ隊に対して道路封鎖の解除を呼び掛けた。
 一方、García(ガルシア)大統領は、モケグア、タクナ両県とも他県と比較して多くの財源を有する豊かな県であり、貧困が原因ではなく、有り余る財源を奪い合う贅沢な対立問題だと厳しく非難した。
 タクナ商工会議所によれば、モケグア県の抗議行動によって両県の経済的損失は400万N.Soles(約1.2百万US$)に上るほか、両県境でデモ隊によって唯一のアクセスを阻まれたタクナ県では食糧不足によって食料価格が40%上昇している。また、タクナ・モケグア両県でデモが終了するまでの学校の休校が決定されるなど、あらゆる社会経済活動に深刻な影響が及んでいる。

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