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ニュース・フラッシュ

2008年12月16日 シドニー 原田富雄

豪:政府が排出権取引制度を発表

 2008年12月15日、豪州政府はCarbon Pollution Reduction Scheme(炭素汚染削減案)に関し、2020年までに地球温暖化ガスを2000年比で5%削減する内容を発表した。ただし、経済新興国等を取込んだ世界的な枠組みが出来上がれば削減目標を15%に上げることも可能としている。また、Penny Wong気候変動担当大臣は、排出権取引制度導入により、民生部門では一般家庭の年間電気代が200A$上昇するものの、低所得者層を対象とした年間60億A$の保証制度を設けること、産業部門では石炭火力発電所等の影響を受ける産業に優遇措置を設けることにより対応するとしている。
 2007年7月に地球温暖化対策に関する議論のたたき台(Green Paper)が発表されて以降、産業界を始めとした関係者と政府間で導入目標値について議論されてきた経緯があり、産業界、特に排出権取引制度の実施により影響を受ける産業からは、世界金融危機の影響もあり、企業の競争力を削ぐような過度な負担は避けるよう声が上がっていた。政府はこうした要望を汲取り、5%という当初想定されたシナリオの中では最も低い目標値に落着けた模様である。政府は2009年に法案作成、2010年には制度を実施に移す予定としている。
 今回の発表を受け、主だった関係者の反応は次のとおり。
(鉱業協会)
 非常にがっかりしている。企業の平均的な炭素排出量を100万tとすれば4年間で100百万A$のコストが嵩み、これは欧州の6百万A$よりも高く競争にならない。
(Alcoa and Almina社)
 最大90%の無償排出枠を歓迎する(アルミナ精製所は60%、アルミ製錬所と製鉄所は90%)。しかしながら世界との競争力の観点から業界は発展できない。
(豪州産業協会)
 政府の譲歩はありがたいが5%の削減目標は厳しい。
(投資家、気候変動関連機関)
 低排出型経済を目指す目標値としては低い。高い目標を望む。

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