英:Johnson Matthey社、プラチナ・パラジウムの2008年需給実績と2009年上期価格見通しを発表
貴金属製錬・加工大手Johnson Matthey Plc(本社:ロンドン)のPeter Duncan市場調査本部長は18日、2008年のプラチナ及びパラジウム需給実績(下表参照)と2009年上期の価格見通しを発表した。
|
2008年 |
2007年 |
(t) |
対前年比(%) |
(t) |
対前年比(%) |
供給 |
185.7 |
90.5 |
205.3 |
96.7 |
南ア |
140.9 |
89.3 |
157.7 |
95.7 |
ロシア |
25.5 |
89.5 |
28.5 |
99.7 |
北米 |
10.1 |
100.0 |
10.1 |
94.4 |
その他 |
9.2 |
102.2 |
9.0 |
107.1 |
需要 |
197.4 |
95.0 |
207.8 |
103.2 |
触媒分 |
118.3 |
91.8 |
128.9 |
106.1 |
(回収分) |
31.3 |
107.6 |
29.1 |
109.0 |
工業用 |
54.7 |
95.3 |
57.4 |
100.9 |
宝飾用 |
42.5 |
93.8 |
45.3 |
88.8 |
投資用 |
13.2 |
249.1 |
5.3 |
(441.7) |
需給バランス |
(12) |
|
(3) |
|
価格(US$/oz) |
1,583 |
120.5 |
1,314 |
115.3 |
|
2008年 |
2007年 |
|
(t) |
対前年比(%) |
(t) |
対前年比(%) |
供給 |
227.4 |
85.2 |
266.9 |
107.9 |
南ア |
75.6 |
87.9 |
86.0 |
99.7 |
ロシア |
113.8 |
80.6 |
141.2 |
115.8 |
北米 |
28.3 |
91.9 |
30.8 |
100.7 |
その他 |
9.6 |
107.9 |
8.9 |
106.0 |
需要 |
213.1 |
100.2 |
212.6 |
103.5 |
触媒分 |
136.2 |
96.3 |
141.4 |
113.2 |
(回収分) |
36.4 |
115.2 |
31.6 |
126.4 |
電子材 |
26.6 |
119.8 |
22.2 |
59.2 |
宝飾用 |
36.4 |
115.2 |
31.6 |
126.4 |
その他 |
41.2 |
106.7 |
38.6 |
103.8 |
需給バランス |
14.3 |
|
54.3 |
|
価格(US$/oz) |
355 |
98.9 |
359 |
112.5 |
1)プラチナ需給と価格:供給不足により2009年は増産を予想。需要は宝飾と投資が自動車触媒の需要減を相殺
【プラチナ:2008年の供給】前年比9.5%減の185.7tとなった。これは南アのプラチナ生産が140.9tと前年比10.7%減少したことが主因であるが、懸念されていた電力不足による減産量は1.9t程度に過ぎず、むしろ、洪水・製錬所の閉鎖・保安対策・労働問題などが南アでの残り14.9tの減産を引き起こした。
ロシアの25.5tは10.4%減となった。
ジンバブエ(プラチナ埋蔵量の世界第2位とされる)は、2008年のムガベ政権再確立の影響に対する予想とは反して微増となった。ジンバブエとその他諸国を合わせて0.2t増の19.3tと発表された。
【プラチナ:2008年の需要】2008年のプラチナ需要197.4は、前年比5.0%減となった。主因は、経済不況による自動車触媒需要(前年比8.2%減)と、工業用需要(同比4.9%減)である。なお、2008年の宝飾用需要は、同6.2%減の42.5tであったが、2008年後半からの宝飾価格下落がきっかけで、中国はじめアジアの宝飾需要が急増し、減退した自動車触媒の需要減を相殺した。
また、2008年は価格下落が原因で、日本を中心に世界全体の投資買いが150%増の13.2tに達し、これも全体的な需要の減少を食い止める要因となった。
【プラチナ:2009年の需給・価格見通し】2009年も引き続き、自動車産業の需要と工業用需要は弱含みに続くと予想されるが、供給に関しては、2008年の需給バランスが11.7tの大幅な供給不足であったため、鉱山企業は経営コスト削減に注力し、長期的な需要予想からも増産継続が予想され、2009年は、需要減と供給増により、需給バランスは均衡する。
2009年上期の価格は、中国の宝飾需要増が続くと予想されること、工業用・自動車触媒の需要が回復し始めると想定すれば、下限950US$、上限1,350US$と見通した。
2)パラジウム需給と価格:生産激減。投資家の買いが価格に大きく影響
【パラジウム:2008年の供給】前年比14.8%減の227.4tと激減した。これは、パラジウムは副産物であるために地金生産が優先されず、南アでは同比12.1%減の75.6t、ロシアでは同比11.5%減の84tまで落ち込んだ。また、2008年のロシアの在庫売りも29.9tと前年の1/3であった。
【パラジウム:2008年の需要】前年比0.2%増の213.1t。宝飾用と投資家の需要が、自動車産業の需要減を相殺したことが寄与した。宝飾用需要は中国を中心に増加し、前年比19.6%増の26.6tとなった。また、2008年の投資家のパラジウム需要は史上最高記録の12.4tに達し、ETF買いも前年比32%増の11.5tと急増した。
自動車触媒需要は、前年比3.6%減の136.2tで、主因は、世界第1位の需要地域である北米が42tと同比20%以上激減したためである。欧州では2008年、強化する排気ガス規制によって、触媒需要が前年に比0.9t増の29.5tとなった。中国、日本、その他の国でも自動車触媒用途が増加し、プラチナに比べ自動車触媒需要減少は小さかった。加えて、BRIC諸国によって自動車触媒用のパラジウム:プラチナムの比率は1:1までパラジウム需要が上がっているとDuncan氏は述べた。なお、2008年のパラジウムの工業用需要は、19.6tと横ばいに推移。
【パラジウム:2009年の需給・価格見通し】自動車産業及び工業用需要が弱含みに推移し、減産も予想される。しかし、需給バランスは、2008年の14.9tの供給過剰に続いて、ロシアの国家在庫の放出により、市場は供給過剰の状態が保たれると予想された。
2009年上期価格は、2008年の下期同様に投資家の買いが大きく影響すると考えられており、投資家の買いが消えると下限180US$、投資家の買いが継続すれば上限280US$と予想された。