閉じる

ニュース・フラッシュ

2009年9月13日 ロンドン 萩原崇弘

英:WNA シンポジウム開催、ウランの2020年以降の供給不足のために新規探鉱投資の加速化を。

 9月9~11日、第34回世界原子力協会(WNA)シンポジウムが、”Nuclear Revival”- Building Confidence at a Time of Economic Instabilityと題して、ロンドンにて開催され、パネリストとして、米国、フランスを始め、ロシア、インド、ドイツ、韓国など、世界の原子力産業や政府関係者のトップクラスが参加した。
 パネルでは、世界経済が不安定な中でも、中長期的な電力需要は新興国を中心に上昇の見通しであること、温暖化問題が叫ばれる中で原子力エネルギーの利用が見直されていること、中国やインドを始めとして原子力発電所の旺盛な建設計画が発表されていることなどを背景に、原子力エネルギーの復活の流れは止まらないという楽観的な見方が太宗を占めた。
 また、WNAによる原子力関係の市場予測レポート”The Global Nuclear Fuel market Supply and Demand 2009-2030”が、2010年から各国毎の積算根拠を加えた形で発表された。それによると、原子力の電力供給能力は、インドや中国などの原子力発電所の建築などに後押しされ、標準ケースの場合、2008年の371 GW(ギガワット)から2020年までに476 GW、2030年には600 GWにまで拡大する見込みである。
 一方、ウラン供給の見通しは、今後10年間はカザフスタンなどから生産増加が見込まれることから、標準ケースの場合、2008年の43,853tから2015年には70,000t、2020年には80,000tまで上昇することが見込まれるが、それ以降は生産が頭打ちになると予想されている。
 新たなウランの探鉱・生産はもちろん、原子力燃料の二次利用などにも、各国政府から計画の安全性に関する承認プロセスに相当の時間を要する。そのため、同レポートでは、ウランの採掘・生産などへの投資を加速化するべきであると述べている。
 また、最近のウランの探鉱・生産について、ウラン生産の大手であるカナダCamecoの探鉱担当副社長Colin Macdonald氏は、「有史以来3度目となる2003年からのウラン市場の高騰(Uranium Cycle 3)は終了したが、高値の時期が短か過ぎてリスクの高い新規探鉱の成功まで至らず、結果として、豪州、ナミビア、カザフスタン、ロシアなどでの既存鉱床の再開発、低品位鉱の活用などが促進された」と言及した。また、カナダのHaywood 証券の投資銀行担当の副社長Nicole Adshead-Bell氏は、「ウラン開発はハイリスクまたは収益性の低いプロジェクトであり、短期的投資ではウラン生産の増大はほとんど見込めない。そのため、ウラン市場の高騰が終われば投資資金は他の分野へ逃げて行くだろう。ウラン資源のユーザー企業は、上流まで進出して垂直統合を目指すか、ウラン市場の高騰でも凌げる方法を生み出すことだ。」と述べた。
 なお、同シンポジウムではWNA会長であるAndy White氏(Trilliant Inc. CEO)が2010年交代し、新会長に米国の原子力発電事業者ExelonのCOOであるChris Crane氏が就任することが発表された。

ページトップへ