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ニュース・フラッシュ

2010年4月9日 リマ 山内英生

ペルー:違法鉱業規制政令への抗議行動が収束

 Madre de Dios県内の環境や治安の悪化をもたらしている金の違法採掘の制限・合法化を目的とする緊急政令012-2010号の廃止を求める抗議行動が、ペルー南部を中心とした複数の県に波及し、4月4日には、パンアメリカン・ハイウェー(Arequipa県)の封鎖を解除しようとした警官隊との間で衝突が発生し、6名の死者をはじめ、多数の死傷者が出る事態に発展した。
 同政令で定められた合法化までの期限設定が1年間と短期間であったことや、適用地域がMadre de Dios県以外の県へも広がり、生活の糧を得る唯一の手段が奪われるといった懸念が、Madre de Dios県外の零細鉱業や違法鉱業従事者の不安をあおり、今回の抗議行動につながったものである。
 この事態を受けて、Garcia大統領は「自然を破壊しない採掘を行う意図があるのならば対話に応じるが、河川を水銀で染めるような野蛮な鉱業を受け入れることはできない。」とし、違法鉱業は国としてのイメージを低下させ、納税義務を履行せず、労働者搾取や児童労働、児童売春等の温床であり、社会の汚点であると糾弾した。また、政府は鉱業や鉱山労働者に反対する立場ではなく、合法化による社会秩序の形成を目指していると訴えたほか、地域住民の飲料水でもあるMadre de Dios川等の主要河川が汚染されることの危険性は甚大であると警告した。
 一方、Brack環境大臣は、緊急政令は違法鉱業の合法化を目的としており、Madre de Dios県の環境破壊阻止に必要不可欠であるとの考えをあらためて示したほか、同政令に改善・改正の余地はあるとしたものの、廃止することは不可能であると主張した。また、Madre de Dios県における同政令への最大の反対理由は大規模採掘船の廃止だが、大規模採掘船は1日に10万ソーレス(約35,700 US$)相当の金を違法に採掘していること、採掘された金の流通ルートの存在等に言及した。
 一方、NGO団体Cooperaccionの法律顧問は、Madre de Dios県に限定的な政令であるにもかかわらず、他県における零細鉱業が制限されることへの不安感が広がり、パンアメリカン・ハイウェーの封鎖等が行われたが、政府は政令の内容を的確に国民に周知する手法に欠けていると指摘した。
 最高政令に関しては、リマにおいてQusquen首相、エネルギー鉱山大臣、環境大臣、全国零細鉱業従事者連盟(FENAMARPE)代表等による協議が行われ、政令の内容を再検討する高レベルの委員会を設置すること、違法な零細鉱業を段階的に合法化するための計画を作成すること等で合意した。Arequipa県における道路封鎖は、合意形成のニュースが伝わったことにより中止され、通常の道路交通が回復された。

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