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ニュース・フラッシュ

2010年6月7日 シドニー 原田富雄

豪:資源超過利潤税は連邦議会選挙に影響

 経済コンサルタントのAccess Economicsは、連邦政府が発表した資源超過利潤税(RSPT)により、総投資額835億A$、70の資源開発プロジェクトが開発の見直しを迫られているとの調査結果を示した。この中には4つの大型プロジェクトを含んでおり、これだけで500億A$を超える開発予算規模となっており、そのうちの一つがBHP BillitonがSA州で操業するOlympic Dam銅・ウラン鉱山拡張工事で、開発予算が200億A$、残り3つがQLD州で開発が進む石炭層ガス(Coal Seam Gas)プロジェクトとなっている。連邦準備銀行(中央銀行)が毎月発表している月次の商品価格指数(Monthly Commodity Price Index)は、底値であった2009年5月に比べ44%上昇しており、これが資源開発推進を保障する原動力になっていたが、RSPT発表後には、金融機関を含め開発資金の調達を再検討する必要が生じているとしている。
 こうした資源企業の懸念は州政府にも影響を及ぼしており、労働党政権であるSA州では次回連邦議会選挙で労働党が4議席を失うとして連邦政府に警告を発し、同じく労働党政権であるQLD州も議席数や雇用に重要な影響が出るとしてRSPTの修正を連邦政府に促している。これに対してラッド首相、スワン財務大臣は口を閉ざしているが、APEC貿易大臣会合で訪日しているクリーン貿易大臣は、BHP BillitonとRio Tintoは、連邦政府の協力なくしてはWA州Pilbaraの鉄鉱石生産事業の統合はないとして、資源企業はRSPTに理解を示すべきとの考えを述べている。
 一方、企業側の反応であるが、BHP Billitonは、Olympic Dam銅・ウラン鉱山拡張工事についてRSPTが開発に与える影響について懸念を表明しているだけで州政府に圧力をかけたものでないとの見解を示しているが、資源州においては資源開発が州の財政や雇用面に直接影響する。資源企業側からみれば、州政府に対し間接的に圧力をかけた形に見える。
 なお、今週末にSydney Morning Herald紙と調査会社のNielsenが合同で実施した世論調査によれば、RSPT導入に対する国民の不支持が増加し、導入に反対する野党保守連合への支持率が53%と与党労働党支持の47%を引き離している。このため現時点で選挙を実施すれば政権が交代すると主要紙が伝えており、早期のRSPTの修正にラッド政権は応じるべきと論調している。
 以下、RSPT発表以降に資源企業が開発の見直しを表明したプロジェクトを示す。

棚上げされたプロジェクト
プロジェクト名 鉱種 開発事業者 開発規模
(億A$)
影響を受ける
  雇用者数
Eenest Henry (QLD州) 銅/金 Xstrata 6 250
Solomon (WA州) 鉄鉱石 Fortescue Metals Group 90 21,000
Western Hub (WA州) 鉄鉱石 Fortescue Metals Group 60 12,500
Wandoan (QLD州) 石炭 Xstrata 60 3,000
開発に影響があるプロジェクト
Olympic Dam (SA州) 銅/ウラン BHP Billiton 20 17,000
Cloncurry (QLD州) Exco 2 270
Tropicana (WA州) Anglo Gold Ashanti 6 1,100
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