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豪:新首相誕生が資源超過利潤税に与える影響
2010年6月24日、ラッド首相が辞任を表明、与党労働党上下両院議員総会で選出されたギラード副首相が首相となり、1901年の連邦発足以降初めてとなる女性首相が誕生した。副首相には、スワン財務大臣が同大臣を兼務する形で就任した。
2007年12月に11年間続いた自由党政権から政権を取戻し、その後高い国民の支持率を得たラッド前首相であったが、2009年12月、コペンハーゲンで開催されたCOP 15(気候変動枠組み条約第15回締約国会合)の失敗、豪州の地球温暖化防止法案であった炭素排出削減法案(CPRS)の2013年先送りなど、選挙公約に掲げた政策実現へのイニシアティブ不足に加え、2010年5月2日に発表された資源超過利潤税(RSPT)が資源業界の反発を招き、業界との調整不足が指摘されるなど、このところ支持率が急落していた。こうした背景から、ラッド前首相の下では今秋にも想定される連邦議会選挙を戦えないと見た労働党有力議員が、ギラード副首相に対し議員総会での党首投票に臨むよう持ちかけたもので、ギラード首相もこれを受けた形で代表選に臨んだが実際には投票が行われず、状況を不利と見たラッド前首相が首相の座を降りた形で終結した。
ギラード副首相は、ラッド前首相に欠けていた根回しや、コンセンサス形成の重要性を熟知した政治家であり、RSPT導入についても資源業界との間で交渉を通じて解決を図ると語っており、これまで広告媒体を活用して非難合戦を繰り広げてきた同業界との融和を打ち出している。こうした政府の歩み寄りに対して、BHP Billitonは、政府批判広告を新首相誕生当日に取りやめるなど、新政権に期待を寄せている。また、今後の交渉は、スワン副首相兼財務大臣、及び資源業界に信望が厚いファーガソン資源エネルギー大臣が行うとギラード首相が指名したことから、同業界では交渉が進展することに期待を寄せている。
こうした新首相への期待感もあり、2010年6月25~27日に実施されたNewspoll世論調査では、労働党の支持率が回復を示している。
○定例調査項目(括弧内は前回(6月18日~20日)の結果)
・政党支持率 | ||
労働党 | 42%(35%) | |
保守連合 | 40%(40%) | |
グリーンズ | 10%(15%) | |
その他 | 8%(10%) | |
・首相の選択 | ||
ギラード首相 | 53%(46%) | |
アボット野党自由党党首 | 29%(37%) | |
どちらともいえない | 18%(17%) |
また、今週末にSydney Morning Herald紙と調査会社のNielsenが合同で実施した世論調査によれば、労働党支持率が47%と、野党保守連合への支持率の42%を引き離しており、支持率が回復した形となっている(注:2010年6月上旬に行われた同調査では野党保守連合への支持率が53%と与党労働党支持の47%を引き離し、現時点で選挙を実施すれば政権が交代すると主要紙が伝えており、早期のRSPTの修正にラッド政権は応じるべきと論調していた)。
