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ニュース・フラッシュ

2010年7月16日 ロンドン 萩原崇弘

カザフスタン:大統領が新地下資源利用法に署名・施行、同国の鉱物資源産業の規模を4年間で2.5倍に拡大するよう指示

 カザフスタン政府関係者等からの情報によれば、カザフスタンの新しい「地下資源及びその利用に関する法律案」について、ナザルバエフ大統領は、去る2010年7月7日に署名し、同法案は成立・施行された模様である。同時に同大統領は、鉱物資源分野を今後4年間で現在の2.5倍の産業規模に拡大するよう指示したとのことである。同法案は、2008年10月に議会下院に提案され、その後、公聴会、外資を含めたシンポジウム等における検討作業を経て、大統領の署名を待っている状況であった。
 新法の特徴は、資源開発に係るカザフスタン政府の関与を強め、カザフスタン共和国の国益の保護を極めて重視するという近年の同国の資源政策の傾向を明文化し、従来は別々の法律であった、石油・天然ガスと鉱物資源(ウランを含む)とを包括的に束ね、エネルギ-・鉱物資源開発を網羅する法律体系を構築したことである。
 新法の具体的な内容及び旧法からの変更点について、現在までに判明しているところは、以下のとおりである。
 地下資源利用権について、探鉱権と採掘権とに分割され、探鉱・採掘を連続して行う権利はなくなった。また、契約形態については、生産分与契約(PSA)は規定が削除され、また、採掘契約は「採掘及び一次加工契約」に変更された。その結果、探鉱契約終了後、原則として改めて採掘に係る入札を行うため、探鉱・開発事業を連続して行う可能性が低くなった。
 落札者を選択する基準は簡素化され、権利取得ボーナスの規模及び地方予算への支払額の2つとなった。ボーナスは落札者決定後50%を支払い、契約締結後50%を支払う。ただし、落札者の過失により契約できなかった場合には、支払ったボーナスは返却されない。
 国営鉱山会社が50%以上権益を有する場合は、上記入札を行う必要がなく、地質・地下資源利用委員会への認可の下、探鉱契約後に採掘契約を連続して締結することができる。ただし、入札を行ったかどうかにかかわらず、探鉱契約時・採掘契約時の2度ボーナスの支払いが必要となる。
 生産された資源の売買だけでなく、生産企業の権益や株式の譲渡(無償譲渡を含む)についても国に優先権が生じることとなった。
 契約期間中に地下資源利用者にとって不利となる法律や税制の改正があった場合、既存の契約時点での法制度が保証されるとの規定が変更され、制度改正が商業活動を直接悪化させない場合には、契約変更を強いられる可能性がでてきた。
 所管機関が一方的な契約解除や契約無効となる事由が明確化された。具体的には、一定期間内に契約義務違反等を3通以上解消しなかった場合、国の優先権規定に従わなかった場合、契約修正等が期間内に終わらなかった場合には契約解除され、入札が無効であった場合、法律上の義務付けが契約に含まれなかった場合、明らかに誤った情報を記載した場合等の場合は契約は無効とされる。
 契約の履行や解除に関する紛争が当事者間の協議等で解決されない場合は、裁判所に解決を依頼することとなり、従来可能であった国際仲裁機関に解決を依頼することができなくなった。なお、二国間投資協定等の国際協定で別途国際仲裁機関への解決を依頼できるようになっている場合には、この限りではない(日本・カザフスタン間の投資協定は、現在協議中である。)。
 地下資源利用者だけでなくその請負先は、カザフスタン製の部品・製品、並びにカザフスタンの労働・サービスが国外のものと比較して同等以上の場合には、活用する義務は従来どおりであるが、加えて新たに、先端技術・加工技術を有する企業を育成・活用する義務及び必要なインフラを整備する義務が追加された。

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