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ニュース・フラッシュ

2010年8月2日 ロンドン フレンチ香織

欧州:欧州議会、産業排出指令を承認

 欧州議会は7月7日、産業から発生する特定有害物質の大気、水、土壌への排出制限値を強化する産業排出指令(Industrial Emissions Directive)を承認した。本指令は、従来の総合的汚染防止管理指令(IPPC指令)等の7つの指令を一本化し、特定の条項を簡素化するという欧州委員会の2007年12月の提案を踏まえたもの。利用可能な最良の技術(BAT)の適用を強化し、大規模燃焼施設からのNOx、SO2、ダスト等の有害物質の排出を削減することとなる。
 本指令の条項案は以下の公式HPより入手できるが、大気汚染に関しては、BREF(BAT参考文書)と関連して、酸性雨、スモッグ、または喘息などの要因となるNOx、SO2及びダストのより厳しい排出制限値が設定されることとなり、また、6年後の2016年までにはその制限値に遵守しなければならなくなる。但し、加盟国は、施行にかかる費用が環境保全上の利点より勝る場合や、地域事情または特定の技術的な事情がある場合を証明できれば、BAT範囲内の基準から外れることができる柔軟な条件が設定されることとなる。その他、大規模燃焼施設の排出削減に関しては、移行猶予期間が全体的に延長される。
(7月7日に承認された指令の内容:http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//NONSGML+TA+20100707+SIT+DOC+PDF+V0//EN&language=EN、欧州議会のプレス発表:http://www.europarl.europa.eu/news/expert/infopress_page/064-77917-186-07-28-911-20100706IPR77916-05-07-2010-2010-false/default_en.htm)
 今回の産業排出指令に関して、Eurometaux(欧州非鉄金属ロビー団体)及びEurofer(欧州鉄鋼連盟)は、「総合的に容認できる内容である」とコメントしている。他方、Eurometauxは、今後はBREF(BAT参考文書)に設定される排出制限がガイダンスではなく、(加盟国の方針によっては)義務的な文書となることは注視すべき点であると述べていた。また、現在は非鉄金属製錬所(Non-Ferrous Metals:NFM)のBREFは改訂草案を作成している最中で、2011年下期以降に完了される予定であるため、引き続き留意すべきと発言していた。その他、Euroferは、従来のIPPC指令では、BREF(BAT参考文書)が示す産業ごとのBATに基づく適切な認可指標値を参考にしながら、加盟国の規制当局が施設ごとの排出限度を設定し、企業はその排出基準、操業条件を規定したIPPC認可証を取得しなければならなかったが、今後、本産業排出指令によって、従来のIPPC許可証をどの時期に更新すべきなのかどうか、加盟国の規制当局に確認すべきであると助言していた。
(NFM BREFの内容:http://eippcb.jrc.es/reference)
 なお、産業排出指令は2次読会にて既に承認されている。従って、今後は欧州理事会が公式に承認し、各EU加盟国が本指令に従って法律化することとなる。

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