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ニュース・フラッシュ

2011年2月7日 バンクーバー 片山弘行

米:安全保障シンクタンク、連邦政府に対してレアアースに関する長期的戦略策定の必要性を訴える

 安全保障戦略を専門とする米国のシンクタンクAmerican Security Projectは、2011年2月1日、「Rare Earth Metals and U.S. National Security」と題して、レアアースと米国国防に関する報告書をまとめた。
 報告書では、現在、米国はレアアースを使用する兵器の製造において中国に依存する形となっており、これを低減させるためにも、連邦政府は首尾一貫した長期的な戦略を策定すべきであると唱えている。特に新鉱山の開発がなければ2012年から2014年にかけてレアアースの供給不足が起こり、米国経済及び国防上、非常に問題であるとしている。
 報告書が提言する戦略としては、レアアースの備蓄、新鉱山の開発、国際協力の推進、WTOへの提訴、レアアース代替物の開発、新技術の開発を挙げている。レアアースの備蓄については、長期的な問題解決とはならないまでも、新鉱山からの供給がなされるまでの短期的な供給不足を解決する最も有効な手段であるとしている。新鉱山の開発については、カナダThor Lakeや米国Mountain Pass等により年産40,000 tのレアアースが供給でき、これら北米の鉱山のみで米国が年間必要とするレアアースの2倍が供給できるとしている。国際間の協調・対話も重要であり、その方策として新鉱山への協調投資や中国へのレアアース依存を低減させるための公式・非公式条約の締結等を挙げている。この中では、当事国政府のみならず、鉱山会社、磁石製造会社等も交えたより大きな協調の有効性も唱えている。
 中国の違法な輸出制限についてWTOに提訴することも一方法として挙げているが、これは切迫している供給不足を解決する方策にはならないことも認めている。レアアース代替物や使用量の低減技術及びリサイクル技術の開発においては、現在、レアアースに関する技術の多くが中国に存在しており、これらの技術開発を難しいものとしているが、中国への依存度を低減させるためには必要なものであるとしている。現在、米国連邦政府は少額の補助金や融資を国内の研究機関に供与しているが、さらに多くの資金や人的資源を研究開発に投じるべきとしている。

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