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豪:外国投資審査委員会(FIRB)、中国企業によるレアアース鉱山会社買収を阻止
2011年2月15日、Bloombergは、豪州情報公開法に基づき請求した豪州外国投資審査委員会(FIRB)の内部資料から、豪州は貿易相手国に対する信頼できる輸出国としての評判を守るため、特に外国投資に関し制限を設けていることが明らかとなったと報じている。
2009年5月1日、中国有色鉱業集団有限公司(China Non-Ferrous Metal Mining Co Ltd.(以下CNMC))が、西豪州にあるMt Weldレアアース鉱山開発を進める豪レアアース鉱山会社大手Lynas Corporation社(本社:シドニー、以下「Lynas」)発行株式の51.6%を取得(投資額252百万A$)することを発表した後、FIRBは投資の是非について審査を開始したものの、同年7月にはCNMCに対して一旦申請の取り下げを行うよう指導、再申請するよう求めるなど、審査が大幅に遅れた経緯がある。最終的に、2009年10月16日、Lynasは中国からの投資を受け入れず、新株発行により約204百万A$の増資を行い、2009年2月より開発を中止していたレアアース開発の再開を発表するに至ったが、この裏にはFIRBによる国益審査の壁があったことが入手資料から判明した。
2009年9月23日に開催されたFIRBの会議議事録によれば、「中国企業によるLynasへの投資は、Lynasの生産量をコントロールすることにより中国以外の需要家へ損害を与える可能性を否定できない」として、「全ての貿易相手国に対して信頼できる供給国としての立場を維持するとの政策に矛盾し、国益に反する恐れがある」と結論付けている。
この当時、急速に拡大する豪州資源分野への中国投資に対しては、資源のコントロールという観点から世論の注目を集めていた。象徴的な出来事として2009年9月24日、シドニーで開催された『豪中高級事務レベル経済委員会』に出席したFIRBのPatrick Colmer委員長は、「海外国有企業(SOEs)からの豪州資源分野への投資は、これから開発が行われるプロジェクト(Green Field)への出資比率は50%以下に、国内の主要資源企業(Major Producers)への出資比率は15%以下に押さえることが好ましい」と述べ、中国企業(特に国営企業)による資源投資に対して厳しい審査の目を向けていた。今回、FIRBの内部資料が公開されたことで、豪州の資源国として世界の貿易相手国から尊敬される貿易輸出国であり続けるという立場(国益)が明らかとなり、日本を含めた外国投資に対して「資源のコントロール」という観点での投資は歓迎されないことが一層明確となった。