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欧州:非鉄金属業界、欧州化学物質規制(REACH)で登録を完了し、次は評価段階へ
欧州化学物質規制(REACH)に則して、欧州域内で年間1,000 t以上の化学物質を生産・輸入する業者は、2010年11月30日までに、金属及び金属化合物を含めた化学物質の登録が求められていた。第一段階の登録期日から3か月経ち、代表的な金属コンソーシアムのREACH対応について報告する。
○亜鉛/カドミウムコンソーシアム(Christian Canoo氏):
・リード登録者によって、2010年11月30日までにREACHの登録を完了。カドミウムに関しては、金属及び化合物の合計7物質に加え、カドミウム中間産物(1物質)を登録。亜鉛に関しては、金属、化合物の合計11物質に加え、14種の中間産物の登録を完了した。
・同コンソーシアム公式HPに、対応化学物質の分類及びe-MSDS(電子版、物質安全性データシート)のガイダンスを掲載。中間産物の定義について未だ議論が残るが、欧州化学品庁(以下、ECHA)から追加の要件があれば、技術書類を更新する準備を整えている。
○銅コンソーシアム(Katia Lacasse女史)
・2010年11月上旬に、リード登録者によって登録を完了。銅、最終スラグ、12種の中間産物を登録した(銅化合物は非対応)。
・100 t以下の銅生産を行う企業に対して、登録内容を制限付きで閲覧できる利用状(Letter of Access)を発行した。それ以外の情報について、会員以外には非公開。
○鉛コンソーシアム(Andy Bush氏)
・2010年11月30日までに、約240社が、鉛金属、一酸化鉛、三塩基性硫酸鉛、四塩基性硫酸鉛を中心として、鉛/鉛化合物12種の登録を完了した。また、約200社が15種の中間産物についても登録を完了。現在、REACHの評価(Evaluation)段階とされるが、ECHAからは特段の質問は来ていない。
・2011年には、リスク評価の更新に応じて、登録ファイルを更新する必要があると考えている。また、REACHの『Restriction(制限)』で、宝飾品の鉛利用禁止が提案されているが、議論を続けている。
○ニッケル・コンソーシアム(France Capon女史)
・2010年4月に、リード登録者によって、ニッケル金属及び硫酸ニッケルの登録を開始。同年9月末までには、REACH第一期日(2010年11月30日)の対象であったニッケル金属・化合物・複合物13種の登録を完了させた。ECHAによる登録一式文書の評価(登録一式文書の法令適合性の点検、試験提案の審査など)は未だ始まっておらず、登録物質の評価(有害性情報の考慮、暴露情報の考慮など)は、2012年以降に実行されると認識している。
・現在は、ニッケル金属及び硫酸ニッケルの登録に要した技術書類の更新に取り組んでおり、その他の物質は、2011年Q2までに更新する予定である。
○貴金属+レニウムコンソーシアム(Caroline Braibant女史)
・2010年11月、銀、硝酸銀、酸化銀(Disilver oxide)の登録を完了した。2010年に実施されたリスク・アセスメントに基づいて新データを収集し、必要に応じて登録に要した技術書類の更新を行う方針である。なお、2011年は炭酸銀(Silver Carbonate)と硫酸銀を登録する予定である。
・中間産物のREACH登録に関して、「厳重に管理された環境」と証明した場合は、登録内容が軽減され、また、認可、制限ともに対象外とされているが、この「厳重に管理された環境」の定義が、2010年12月にECHAが発行した中間産物に関する新ガイダンスでは厳しくなったことを警戒している。また、REACH規制の初の見直しが始まったため、既存または今後対象となる化学物質の登録内容が変更される可能性もあり、動向を注視している。同コンソーシアムに関しては、2013年及び2018年に金及び貴金属の登録が残っているため、情報収集に注力している。
全体として、欧州の金属産業界は、11月30日の期日までには、REACHの登録を完了している。現在は評価(Evaluation)段階へと移行しつつあるが、ECHAからの必要に応じては、金属産業界は追加情報の提出を行う準備を整えており、また、最近に実施されたリスク評価のデータ更新などがあれば、それに応じて登録内容を更新する準備を行っていることが確認できた。
なお、業界誌によれば、欧州のMinor Metals Trade Association (MMTA)は、REACH登録準備におけるコスト的な負担や、リスク・アセスメント等の大掛りな手間などが、欧州のレアメタル産業界の成長を阻害しているとして、現在も激しく反論している。