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ニュース・フラッシュ

2012年9月14日 モスクワ 大木雅文

ロシア:金属の新輸出関税率が発効

 2012年9月4日付け現地報道によると、ロシアWTO加盟(マラケシュ協定の効力発生)に伴い、金属生産者に対する新関税率が発効し、ニッケル輸出は5%、非精錬銅輸出は10%の固定税率となった。メドヴェージェフ首相が当該政府決定(2012年7月21日付け法令N756)に署名した。
 (参照HP: http://www.rg.ru/2012/08/03/stavki-dok.html)
 (参照:ニュースフラッシュ2012-30(2012年8月15日))
 これまで関税額はLMEの金属価格に連動しており、銅6,000 US$/t以下、ニッケル1万2,000 US$/t以下に下がると関税はゼロとなっていた。専門家によると、世界的に価格が下落した場合、固定税率は金属輸出企業にとってマイナス要因となる。しかし、価格の下落が深刻で長期に及ぶ場合、政府は資産税の軽減等、また別の生産者支援策を打ち出すことになる。新税率は4年間適用され、その後撤廃される。(参照:ニュースフラッシュ2012-28(2012年7月25日))
 自由貿易への移行は金属の輸出関税撤廃を前提としているが、即時ではなく徐々に廃止される。5%のニッケル輸出関税率が導入されるまで、関税額はほぼ2倍以上であった。Fin Expertizaのアレクサンドル・ドロフェエフ企業評価部長は「ニッケル生産者には有利となる。競争力は向上し、必要に応じてエンド・ユーザー向け価格を引き下げたり、あるいは価格は下げずにマージンを拡大したりできる。関税引き下げは、西側取引先にとっても有利である。ニッケルをより安く購入できる可能性があるためだ」としている。
 銅の関税についてもほぼ同様の状況である。現行価格においては関税額の絶対値は下がる。これまで関税額算定には累進税率が適用されており、世界市況が悪化した際、ロシアの生産者を支援することができた。つまり関税は下がり、それにより生産者の取り分が増えた。市況が好調な時は、逆に関税は上がり、歳入も増加した。
 しかし、WTO規定の狙いは価格形成を最大限単純化することであり、そのために固定税率が設定された。ドロフェエフ氏によると、ロシアの国家予算は新たな関税額により戦術的には敗北するものの、大多数の分野で貿易が拡大することで戦略的には勝利することになる。世界市況が悪化した際、累進税率によってロシアの生産者を支援することができた。つまり関税は下がり、それにより生産者の取り分が増えた。関税の変更がこの分野に総じてどう影響するかについては、専門家も評価に窮している。Nalogovik法律事務所のアントン・ソニチェフ弁護士は、「これまで関税の累進課税が効果的であったとしても、企業によっては課税状況次第で得することもあり得る。例えば、累進税率導入によりNorilsk Nickelの支払額は固定税率に比べはるかに増大した。要するに、業界最大手は金属価格が安定していればある種ニュートラルな状態でいられるだろう」と述べている。

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