閉じる

ニュース・フラッシュ

鉱種:
ベースメタル
2013年3月13日 調査部 渡邉美和

中国:鉛蓄電池、リーダー企業の無媒な拡張が蓄電池産業の危機を招来

 現地メディアは、中国鉛蓄電池産業で、リーダー企業による無媒な拡張が蓄電池産業に危機を招来していると以下のように報じた。

 2012年上半期に、工業情報化部は「鉛蓄電池産業参入条件」を発表し、旧式設備の淘汰と生産能力の過剰を避ける意図から、この産業での企業運営や新規参入に対して厳しい条件をつけた。しかし、この産業のリーダー企業である天能動力集団のこうした国の調整意図を無視したかのような無媒な生産能力拡張が、この産業に大きな影をもたらしている。

 市場は無秩序な価格戦争の様相を呈し、それが企業の利潤低下につながり、ここ十年間発展を遂げてきた鉛蓄電池産業は今や厳しい冬の時代に直面している。消息筋によれば、天能動力集団自体も2012年上期には利益率5%を切り、その無媒な能力拡張が自社にも傷をもたらしている。天能集団も経営悪化におびえている。

 2011年5月、それまでの蓄電池産業に関係した環境汚染頻出に基づき、国は蓄電池産業に対して大規模な産業整理を実施した。その結果として2012年上半期に、工業情報化部による「鉛蓄電池産業参入条件」が発表された。しかし、これに際して、鉛蓄電池のリーダー企業である天能動力集団は中央政府の産業整理の意図を無視した形で自公司の生産能力拡張に走った。2012年の天能動力集団の生産能力は7,000万個/年前後に増加、2012年中に8,500万個/年に達する見通しとのこと(注;JOGMEC「カレント・トピックスNo.2012-38”中国鉛蓄電池産業に係る2012年の政策動向”2012.7.5」での推定によれば、2010年の同社の生産能力は4,900万個/年、2011年は6,500万個/年、また天能動力と超威の2企業でのシェアはその当時2社で30~40%と言われていた)。そして、政府による産業整理の決新と行動は却って市場の急速な破壊をもたらした。

 この産業のトップ企業である天能動力集団の生産能力拡大は大きな販売価格低下プレッシャーとなって産業全体を覆った。同公司は資金回収を急ぐ必要があり、2011年4月には価格破壊競争に打って出た。市場は混乱し、多くの中小企業が巻き込まれた。2011年7月には第二の企業である超威集団がいくつかの中小メーカーとともに価格回復の動きに出た。しかし、それも混乱の中に失敗した。2012年9月、電池価格は年初に比べ10%以上低下した。汎用的な48V12AHを例にとると、一級ブランドである天能動力・超威では現在410元/個前後、二級ブランド品名では350~380元、三級ブランドでは340元前後である。2012年初めの時点では、一級ブランドが460元前後、二三級が400元程度であった。

 業界関係者によれば、天能動力集団による市場破壊は更に悪化しつつあるという。そしてそれは産業全体の企業力を削ぐとともに天能動力集団にも経営リスクの増大をもたらしている。2013年の鉛蓄電池産業の見通しは憂いばかりである。

 前述の「カレント・トピックスNo.2012-38”中国鉛蓄電池産業に係る2012年の政策動向”2012. 7. 5」の段階では、環境問題からの産業整理の進展の中で、多くの中小鉛蓄電池企業が淘汰され、それに代わって大手が生産を維持又は増加させることにより、自動車や電動自転車の増加に伴う供給を確保すると見た。実際、その方向で当時懸念された供給不足が回避されている。しかし、この際に政府も大手に対して手綱を緩めたと見られる。それに乗じ、黙認されたトップ企業の暴走が今度は鉛蓄電池産業市場の破壊をもたらしているのであろうか。リチウムイオン電池が鉛蓄電池を代替するにはまだ時間を要し、今後の動向が注目される。

 ところで、このようなトップ企業を名指しで扱った報道が出たことも驚きである。この報道の背景についても今後注目される。

ページトップへ