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- 銅 ベースメタル
ぺルー:Tia Maria銅プロジェクトの動向
2015年5月26日から6月1日付け地元各紙で伝えられた、Tia Maria銅プロジェクト(Arequipa州)の動向は以下のとおり。
2015年5月26日付け地元紙によると、Pulgar-Vidal環境大臣は、2015年5月15日に60日間の休止が宣言されたTia Maria銅プロジェクトに関して、国際機関による同プロジェクトの環境影響評価(EIA)の審査は実施しない方針を示した。Tia Maria銅プロジェクトでは、これまでに2回のEIAが作成され、第1回目のEIA(2009年)に関しては、当時の政府が2010年に国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)にEIAの審査を依頼した結果、UNOPSは同EIAに138箇所の不備を指摘、その後抗議運動の激化によりエネルギー鉱山省は同EIAを却下し、プロジェクトは一度中止された。その後、Southern Copper社はプロジェクトを再開、2013年11月に不備が修正された2回目のEIAが提出され、2014年8月に承認された経緯がある。今回の反対運動においても、政府が承認したEIAへの不信感が要因の一つとなっていることから、国際機関による再度のEIA審査を求める声が出ている。しかし環境大臣は、3度目の審査を行うことは、前回UNOPSが指摘した138ヶ所の不備を修正して作成された第2回目のEIAを否定することになるとの考えを示した。さらに、政府は、確かな根拠と技術的な決断に基づいて正しく第2回目のEIAを承認したことを示す必要があるとしたほか、毎回EIAの審査をやり直ししていては際限がない上に、政府としての最終的な審査・決定を行えなくなると説明した。
2015年5月27日から28日にかけて、ペルー南部を中心にTia Maria銅プロジェクトに対する反対運動が行われた。このうちArequipa州では、2015年5月27日に各地でデモ行進が行われたほか、空港付近では警官が催涙弾を使用した取締りを行った。また翌5月28日には3千人近くのデモ隊がArequipa市中心の広場を占拠した。
一方、Puno州では2015年5月27日に道路封鎖が行われたが、夕方には治安部隊によって封鎖は解除された。
また、Cajamarca州においても、現在汚職容疑で身柄を拘留されているSantos元知事の釈放を求めるデモが実施された。
さらに2015年5月28日には、Tia Maria銅プロジェクトが位置するArequipa州Islay郡のTambo渓谷支援委員会は、同プロジェクトの内容を再度検討することを条件として、政府に対し対話協議の再開を提案した。また、Cusco州、Tacna州、Lima州、Moquegua州、Puno州でデモ行進、道路封鎖、車や建造物の破壊が行われた。
2015年5月29日付け地元紙によると、ペルー経団連(CONFIEP)のPerez会長は、Tia Maria銅プロジェクトやMinas Conga金プロジェクトで発生した暴力行為が他のプロジェクトにも波及する懸念を表明した。同会長は、Southern Copper社にも住民へのコミュニケーションの方法など改善すべき点はあるとし、プロジェクトへの純粋な反対運動に対しては企業による対話・歩み寄りの必要性があるとの考えを示した。しかし、反対運動の裏に存在する政治グループはペルーの経済モデルの変革を目的としており、そこにより大きな危険があるとの認識を示した。また、政府による一連の対応の甘さは遺憾だとしたほか、Tia Maria銅プロジェクトの反対派は「真の環境保護活動家ではない」とし、Southern Copper社や政府との協議を拒否していたことを批判した。
2015年5月30日付け地元紙によると、Arequipa州のOsorio知事は、同州Islay郡Cocachacra村、Punta de Bombon村の村長らと会合を行ったほか、2015年6月の第1週にはDean Valdivia村の村長やIslay郡知事と会合を持つ予定であることを明らかにした。またOsorio知事は、Tia Maria銅プロジェクトのEIAは国際的な機関による審査を受けるべきだとの考えを示し、EUの専門家らによる審査の実施を提案した。
2015年5月30日付け地元紙によると、Ortizエネルギー鉱山大臣は、政府はTia Maria銅プロジェクトの開発協議会を再開し、対話の枠組みの中で立場や意見の相違を乗り越える希望を持ち続けていると表明した。
