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インドネシア:(続報その2)政府が低品位ニッケル鉱石の再輸出禁止の2020年1月への前倒しを決定
標題のニュースに関して、2019年9月後半以降の地元メディアの報道を取りまとめた。
<政府側発言>
エネルギー鉱物資源省Andri Budhiman Firmanto鉱物探査監督担当副部長は、低品位ニッケル鉱石の輸出額は350mUS$であり貿易収支にマイナスの影響を与えるが、これを下流ニッケル産業の発展と電気自動車(EV)への利用による高付加価値化でもたらされる利益のほうが大きいとして、本政策の妥当性を説明した。
また、Luhut海事担当調整大臣は、韓LG Chemical社がインドネシアにリチウムイオン電池工場建設を計画している等、いくつかの韓国や中国の企業が投資を考えており、早くも輸出禁止前倒しの効果が出ていると強調した。
<識者の反対意見>
鉱業専門家のBill Sullivan弁護士は、インドネシア政府の政策の信頼性と一貫性に疑問を投げかける措置だとして同政策に疑念を示した。同弁護士は、政府が2017年の鉱石輸出緩和の際に示した新規製錬所建設に5年を要するとの方向を否定するものでもあり、これにより海外の投資家をさらに遠ざける可能性があると指摘した。
経済金融開発研究所(INDEF)Tauhid Ahmad所長は、ニッケル鉱石の高付加価値化への基盤が国内に整ったかどうかについて疑問を呈し、貿易収支・経常赤字に与えるマイナス影響は大きいと懸念を示した。また、それによって起こりうる上記と同様の政策への疑念による投資を控える動きや密輸出が増えるリスク等の危険性を指摘した。
<インドネシア国外の反応>
欧州連合(EU)の欧州委員会Leopoldo Rubinacci貿易総局長は、本政策によりEU域内鉄鋼業界の調達に大きな影響が出るとして、世界貿易機関(WTO)に提訴する可能性があることを明らかにした。また、インドネシア産ステンレス鋼のEUへの輸出が急増していると見ており、これに新しい関税を課すことの適否について調査を開始する予定とのこと。
ニッケル鉱石消費地における在庫確保の動きも活発になっていると見られる。インドネシア産鉱石の最大輸出先である中国への輸出量は、輸出禁止前倒しの噂が流れていた8月に既に前年同月比26.5%増となっていた。また、EUでも年内にインドネシア産鉱石をできる限り輸入しようとの動きがあるという。
なお、大きな影響を受けると考えられるニッケル生産国のフィリピンに係る動向については、別記事に取りまとめる。
