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ニュース・フラッシュ

鉱種:
ニッケル
2019年11月6日 ジャカルタ 南博志

インドネシア:低品位ニッケル鉱石の輸出を一時的に禁止、違法輸出取り締まり目的

 2019年10月29日付け地元メディアによると、Bahlil Lahadalia投資調整庁長官は10月28日、国内ニッケル生産民間団体との間で、低品位鉱石輸出禁止をさらに2か月前倒しして10月29日からニッケル鉱石の全面輸出禁止を実行することで合意したと発表した。民間団体とは、ニッケル鉱業協会(APNI)、鉱物加工精製協会(AP3I)、若手起業家協会(Hipmi)の3団体。低品位鉱石輸出禁止の2022年1月からの2年間前倒しの決定後、それぞれの立場から賛否や意見を表明していた団体である。一部では、APNIは、特に低く抑えられている国内取引価格を国際価格水準まで引き上げることを主とした条件を提示して合意したと報じられていた。このメディア報道はニッケル市場に衝撃を与え、一時的に混乱を引き起こすこととなった。
 しかし、翌10月30日付け地元メディアによると、Luhut Pandjaitan海事・投資調整大臣は、これは違法輸出を取り締まる検査のために1~2週間ほど低品位ニッケル鉱石輸出を一時的に禁止する措置であると、即座に修正を発表した。また、8月30日付け制定の現行規則どおりに2020年1月1日から、鉱石全面輸出禁止措置を発動することに変更は無いとも述べた(前段の合意は法的には意味を持たない)。Arifin Tasrifエネルギー鉱物資源大臣も、この一時禁止期間中は新たな輸出許可を付与しない方針を表明した。
 Luhut大臣は、9月の低品位ニッケル鉱石の輸出量が輸出許可量の3倍を超えており、また、輸出船の数も通常の3倍であると述べ、これらは違法輸出であり、取り締まるために検査を実施しているとした。輸出許可量を超過した企業には処分を検討しているとのこと。また政府は、腐敗撲滅委員会(KPK)の検査への参加を依頼している。実際に地元メディアの報じる中国税関の統計によると、2019年8月のインドネシアからのニッケル鉱石輸入量はグロス量で前年同月比26.5%増の1.61百万t、9月は前月比56%増、前年同月比47.5%増の2.51百万tと急増している。
 なお、一部地元メディアでは、今回の騒動を踏まえ、ニッケル鉱石全面輸出禁止は確かにインドネシアに利益をもたらすだろうが、今回のような政策の予測不能性等は、長い投資回収期間を持つ鉱業投資への非常に大きなリスクであり、鉱業への海外からの投資の見通しは良くないだろうと論じている。

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