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インドネシア:EUがインドネシアをWTOに提訴及びその後の動向
2019年11月22日、EU(欧州連合)がインドネシアをWTO(世界貿易機関)に提訴したと発表した。以降の地元メディアの報道を取りまとめた。
EUの欧州委員会は11月22日、EU域内のステンレス製造会社の原料調達が不当に制約されており、国内の製錬所・ステンレス産業に有利となるよう、インドネシア政府がニッケル鉱石等のステンレス鋼原料の輸出制限措置をとっていることがWTO協定に違反しているとして、WTOに提訴したと発表した。欧州委員会は提訴にあたり、①ステンレス原料の輸出制限・禁止措置、特に2020年からのニッケル鉱石全面輸出禁止措置、②国内高付加価値化(国内加工義務)や不透明な輸出認可手続きにより起きている他のステンレス原料(鉄、クロム、コークス等)の調達の制約、③国産機械・設備を30%以上導入した企業への原料等の輸入関税免除の優遇措置の3点が協定違反であると指摘した。
インドネシア政府は、工業省が即座に反論し、これらの輸出規制は国内産業界の需要を満たし供給の確実性を保証するものであり正当である、また、EU域内でのパーム油規制と同様のものである、と主張した。12月に入ってからは、Luhut Pandjaitan海事投資調整大臣が「(インドネシアから)EUにはニッケル鉱石を2%しか輸出していないにもかかわらず、なぜ98%を占める中国を守ることを言うのか」と述べ、EUとの対決姿勢を露わにし、さらに12月12日には、Joko Widodo大統領が直接この提訴に反論する声明を発表、高付加価値化政策の正当性を強調した。なお、12月9日にはEU域内でのパーム油使用規制(2030年までの使用中止)に関して、インドネシア政府がEUをWTOに提訴している。
その一方、インドネシア政府は、ドイツの自動車メーカーに対しインドネシアへの電気自動車(EV)生産工場建設等の投資の呼びかけを行っており、今後の推移が注目される。
また、Joko Widodo大統領は本件にまつわる発言の中で、ニッケル鉱石の次はボーキサイトの全面輸出禁止を考えている旨言及しており、この発言の今後についても注視していきたい。
