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- 金 銅 アルミニウム/ボーキサイト 錫 ニッケル
インドネシア:新型コロナウイルス肺炎感染拡大によるインドネシア鉱業への影響(その4)
標題のニュースに関して、2020年4月の地元メディアの報道を取りまとめた。
2020年4月1日付け地元メディアによると、新型コロナウイルス肺炎感染拡大によりインドネシアのニッケル産業に与える影響として、①インドネシア全体として感染対策による労働力の減少は否めず、それにより生産量は減少する、②入国規制等により、中国を中心とする投資スピードの減退や実際の輸出パフォーマンスへの影響は大きい、③ニッケル鉱石が全面輸出禁止になったこともあり、ニッケル産業全体の総輸出額が減少する、の相互に関連のある3点が挙げられる。
なお、2020年4月3日付け地元メディアによると、新型コロナウイルス感染拡大による国内需要減等により業績に影響を受けているニッケル生産者もあることから、インドネシアニッケル鉱業協会(APNI)がニッケル鉱石全面輸出禁止の撤廃、輸出再開を政府に要請したとのことであったが、政府はコメントに応じなかった。本件についてはその後の情報が無く、国内販売最低価格を設定する規則が制定されたこともあり、政府側にこれに応ずる意思は無いものと見られる。
個別のニッケル企業に関しては、PT Vale Indonesia(PTVI)は2020年4月1日、PT Inalum(PT Indonesia Asahan Aluminium(Persero))への株式20%譲渡について、最終契約への調印を2020年5月末まで再延期することになったことを公表した。契約書面に関する話し合いもまだ残っているが、新型コロナウイルス肺炎感染拡大による売却に関連する商業的側面への影響緩和も考慮されている模様。2020年4月27日付け地元メディアによると、同社自体のニッケル生産は現段階では引き続き堅調で業績もよく、感染拡大の影響に対応できるシナリオは考えてはいるものの、2020年のニッケルマット生産目標の71千tは現時点では変更しないとしている。
他方、国営非鉄金属会社PT Antam(PT Aneka Tambang)は、第1四半期、第2四半期を中心に、新型コロナウイルス肺炎感染拡大が同社業績に影響を及ぼすと予測し、現在精査しているとしている。また、事態の長期化に備えていくつかのシナリオを想定し、対応する予定としている。2020年4月23日付け地元メディアによると、同社は2020年、引き続きMaluku州東Halmahera県のフェロニッケル製錬所、西Kalimantan州Mempawah県のスメルターグレードアルミナ工場等の下流開発事業に注力するとしている。また金は、Pongkor、Cibaliung両鉱山を通じて安定的に生産するとしている。
また銅に関して、2020年4月13日付け地元メディアによると、PTFI(PT Freeport Indonesia)が操業するPapua州Grasberg銅金鉱山の鉱石生産への影響は4月初めの時点では大きくないが、東Java州Gresik・Java統合工業港湾団地(JIIPE)において同社が進めている新規銅製錬所建設(2023年末完成予定)については、おそらく遅延が発生するだろうとしている。錫に関しては、世界の需要減少の影響が大きく、2020年4月27日付け地元メディアによると、国営錫鉱業会社PT Timahの財務実績には大きな影響があると予測されている。
なお政府は、鉱業を新型コロナウイルス肺炎感染拡大対策の中でも事業継続を許可されている重要産業の一つとしており、生産量減・稼働率減による従業員の解雇の禁止を要請し、また、所得税・付加価値税の免除・納税猶予・早期還付等の支援政策を打ち出している。
