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ニュース・フラッシュ

鉱種:
リチウム
2020年6月30日 バンクーバー 佐藤すみれ

メキシコ:リチウム資源国有化は産業の進歩を妨げる、と各方面で批判の声

 2020年6月25日付け地元紙は、Víctor Toledo環境天然資源大臣が発表したリチウム資源の国有化検討(2020年6月22日付 ニュース・フラッシュ:環境天然資源省、リチウム資源の国有化を提唱参照)に関し、VSA Capital社のOliver O’Donnellリサーチ・コンサルティングディレクターに対して行ったインタビューを次のとおり報じた。O’Donnell氏は、技術的な専門知識が鍵となる業界において、国有化はリチウム資源開発の妨げとなることから逆効果であり、メキシコのリチウム産業確立に向けたこれまでの進捗を完全に歪める極端な計画であると述べた。リチウムがニッチな資源から主流へと変わりつつあることが各国政府の目を引いたが、石油収入が減少する中リチウム生産により税収の安定を確保することは容易ではなく、チリでは計画的ロイヤルティ増加の結果として、投資国としての魅力後退を経験したことを例に挙げた。また、実践的な課題に直面することも予測され、政府は政治思想的な観点から国益について議論することはできたとしても、リチウムの場合は生産の技術的経験が絶対的に不可欠であることから、国有化は現実的ではないと釘を刺した。Sonoraリチウムプロジェクトを保有する英Bacanora Lithium社は、メキシコ人労働者に対してリチウムプラント運転を訓練する初の企業であり、現在Sonora州都でパイロットプラント運転を続けているが、このような外部のスキルと経験は国有企業には存在しないことから、リチウム生産で成功し業界の成長を支えるために、メキシコ政府には民間企業の力が必要であるとO’Donnell氏は語った。
 業界の反応として、メキシコ鉱業会議所前会頭のSergio Almazán氏は、この投資は非常にリスクが高いほか、長年に亘って存在していた鉱業法制を変えることで法の確実性が失われることとなると警告し、メキシコ労働組合連盟(CTM)関係者は、資源国有化により外国投資を失うことになり、イデオロギー的狂信の余地はないと語った。

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