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ニュース・フラッシュ

鉱種:
亜鉛
2021年7月21日 北京 塚田裕之

中国:2021年7月の亜鉛精鉱加工費、緩やかに上昇

 2021年7月14日付け現地紙によると、新型コロナウイルスは依然一部の鉱山生産に影響を与えているが、海外の亜鉛精鉱生産は既に徐々に回復している。また、国内鉱山の生産量も回復し、国内の亜鉛精鉱不足は少しずつ改善してきているため、加工費は2021年5月から徐々に上昇している。
 亜鉛精鉱加工費の上昇は比較的緩やかであるが、その様相は地域ごとに異なる。多くの地域では上昇の一方、ごく一部の地域は横ばい、または下落であった。2021年6月以降、この上昇ペースは速まり、2021年7月初めには地域別、段階的な上昇から全面的な上昇となった。最も上昇したのはこれまで原料が最も不足していた雲南省で、一部の加工費の取引価格上昇幅は400元/tに上った。華中地区の一部の製錬所でも400元/tに達しているが、この上げ幅を川上業界が受け入れず、亜鉛精鉱全ての製錬には時間を要する見込みである。
 だが、これまで原料に比較的余裕があった地域においても加工費は緩やかに上昇している。内モンゴル地域の加工費用は100元/t上昇し、多くの地域の上げ幅より下回っているが、この変動は長期的に見る必要がある。
 加工費の上昇要因は、供給と需要のバランスによる。まず海外の精鉱生産をみると、ILZSGの統計では2021年1~4月、海外の亜鉛精鉱生産は対前年同期比12.8%増の289.1万tであり、ペルー、南ア、インド、メキシコ等の生産量が増加した。特にペルーは、2021年5月に14.2万tレベルに達し、2020年12月に次いで2番目に多い単月生産量となった。インドや南アでは、インドVedanta社の安定的な生産により、生産量は過去最多を更新し続けている。2020年前半の生産量が少なかったため、2021年同期の生産量は対前年同期比で増加する予想であり、今後数か月間伸びる可能性がある。国家統計局の統計によると、国内の2021年1~5月の亜鉛精鉱生産量は対前年同期比15.5%増の118.0万tである。
 一方、ILZSGの統計によると2021年1~4月、海外の一次亜鉛生産量は225.3万tで、対前年同期わずか4.3万tの増加であった。その増加率は精鉱生産の伸びに及ばなかったため、原料供給に比較的余裕が発生した。2021年1~5月の国内一次亜鉛生産量は231.6万tで、対前年同期比12.2万t拡大したが、伸び率は2021年1~4月より大幅に減速した。
 輸入鉱石の加工費の上昇率は依然緩やかだが、いつ大幅に上昇できるのか。海外鉱山の生産は既に回復しているが、海外から中国への鉱石輸送には20~50日間要する。さらに海上輸送費が値上がりしているため、海外鉱山の生産量増加が国内の需要に反映されるまで通常よりも長い時間を要する。2021年5月まで、中国の亜鉛精鉱輸入量は対前年同期比減少傾向にあり、2021年1~5月の輸入量(グロス)は17.1万t、9.4%の減少であった。輸入量は第3四半期に増加する可能性があり、その際の輸入鉱石の加工費は上昇するとみられる。
 さらに、2020年の新型コロナウイルス感染状況は鉱山操業に影響を与えたほか、冬期の倉庫作業は行い辛く、2021年初には製錬所の原料在庫が不足気味となった。このことから、製錬所は2021年の冬期在庫確保に向け早めに動き始める可能性が高い。よって原料調達に力を入れるため、2021年第3四半期に輸入した鉱石の加工費値上げの余地はあまりないとみられる。

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