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ニュース・フラッシュ

鉱種:
ジスプロシウム テルビウム ネオジム プラセオジム レアアース/希土類
2021年8月6日 北京 塚田裕之

中国:レアアース製品不足、価格高騰の中、レアアース業界を支える2つの側面

 2021年7月30日付け現地報道によると、最近のレアアース各種製品の市場価格は全体的に上昇基調にあり、特に酸化プラセオジム・ネオジム製品の価格が大幅上昇している。2021年6月中~下旬、プラセオジム・ネオジムの市場価格は下落、ジスプロシウム・テルビウムの市場価格も下落後に上昇した。その後、軽希土類・重希土類ともに市場価格は全面的に上昇した。
 市場では、プラセオジム・ネオジム酸化物の在庫量が比較的少ない中、川下メーカーの生産は続いており、メーカーは原料不足に陥り、特に金属工場や分離工場では鉱石不足が目立ち始めている。また、夏期に入り気温の上昇に伴い、各地域において工業用電力の規制が厳しくなり、レアアース生産に影響を与える可能性がある。短期間でレアアース製品の供給不足を緩和するのは難しい状況である。
 では、このレアアース製品が不足し、価格が高騰する中、レアアース業界が何によって支えられているかは、大きく二つの側面が考えられる。
(1)2021年前半の中国国内経済の急成長によるものである。国家統計局のデータによると、2021前半、中国経済は対前年同期比12.7%の伸びを記録、世界の主な経済大国の中で第1位となった。現在、中国は新型コロナウイルスによる不況からの回復途上であるが、四半期毎に着実に前に進んでいる。
(2)レアアースの価格はむしろ標準価格帯に戻ったと言える。国の政策によって、レアアース市場も徐々に自信を見せ始めている。川下産業の需要が強気なこともレアアース価格上昇を後押しした。
 レアアースは、国家戦略資源として長年に亘り規制を敷いた後、業界は量的変化から質的変化に変化、産業秩序は回復した。国内レアアース大手原料メーカーは、レアアース割当量の増加によって市場占有率を拡大すると同時に、一部の企業は自山鉱の産出比率見直しや低コストの国産鉱購入を通じて、事業規模拡大やコスト低減を図っている。結果として、レアアース価格が長期的に高水準に留まることによって、数多くの企業の生産能力は大きく拡大できる。
 中国は、レアアースを戦略的資源の中に加えた。これは戦略的にレアアースの価値を高めるための重要な措置である。スマート化時代が訪れ、新エネルギー車、5Gスマートフォン、アンドロイド、スマート家電などの普及に伴い、今後もレアアース需要の伸びが更に期待される。
 ネオジム鉄ホウ素磁石の材料産業を例に挙げると、2000年以降、世界のネオジム鉄ホウ素磁石業界は急速に成長する一方、中国はレアアース原料が多く、製造コストが低いという強みがあるため、海外の生産能力は徐々に中国国内に移転してきた。同時に、中国には優れたレアアース資源があり、産業政策を制定していることから、中国は世界最大のネオジム・鉄・ホウ素永久磁石材料の生産・輸出国になった。
 新エネルギー自動車の発展に伴い、このモーター用磁石の需要もネオジム鉄ホウ素磁石の需要を伸ばす重要なポイントになる。業界関係者の予想では、今後5年間、新エネルギー車の普及は加速するため、世界全体のネオジム鉄ホウ素需要量は5.6万t以上、このうち中国国内の需要量が2.4万t程度となる可能性がある。
 2021年前半、中国経済は安定して回復、レアアース需給も好調である。2021年後半に「レアアース管理条例」等の政策を実施したり、または新しい政策を徐々に打ち出したりすることによって、レアアース業界の中長期的な成長を促し、レアアース価格の高値維持を後押しすることとなろう。

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