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メキシコ:鉱業部門の治安リスクは依然として高く、情勢の変化に懸念
2021年12月1日付け業界紙は、メキシコの鉱業分野に対する治安情勢に関し、リスクコンサルティングを専門とする米Hxagon社のインタビューを以下のとおり掲載した。近年の国内犯罪組織の情勢に関しては、アヘンやヘロインの価格低下により、強盗が代替収入源となる傾向がみられ、南部Guerrero州をはじめとするアヘン生産地域で活動する組織に対しては、特に打撃が大きいとみられている。このような中、主に遠隔地に位置するという地理的特徴から鉱山が恰好の標的となっていることに加え、北部Zacatecas州、Durango州、Sonora州といった主要鉱業州では犯罪組織間の抗争が多発し、これらの地域で活動する鉱山企業は特に防犯対策に苦戦を強いられている。これまでは麻薬の流通ルートをめぐる争いであったものが、最近では鉱山の強盗を目的とした覇権争いに変化していると考えられており、鉱山関係者が抗争に直接巻き込まれる可能性も懸念されている。また、脅迫のターゲットは企業の上層部よりもマネージャーや労働者らがより狙われる傾向にあり、得られる金額は下がるものの、より効率的な手段が選ばれているという。
過去に発生した主な被害としては、2018年にChihuahua州において、加Pan American Silver社のDolores金・銀鉱山で麻薬カルテルの抗争が発生し、同社は一時鉱山への立ち入りを制限したことで生産が減少した。2019年には、加First Majestic Silver社がJalisco州のSan Martín銀鉱山を現地の治安情勢が懸念されることを理由に操業を停止した。また、2020年には加Alamos Gold社のMulatos金鉱山において、生産物が貨物機に積み込まれる直前に、軽飛行機に乗った武装集団が襲撃し、金・銀地金数mUS$相当を強盗する事件が発生した。
これまでシナロア・カルテルの支配圏であったDurango州やSonora州では、ハリスコ新世代カルテルの参入が報告されており、今後覇権を奪う動きが見られた場合、情勢がさらに悪化すると考えられる。連邦政府は2020年、Zacatecas州Fresnillo市のHerradura金鉱山をはじめとする複数地域に特別治安部隊を設置したものの、企業の中には自社でセキュリティーサービスを契約することを望む場合もあり、治安部隊の全国展開は進んでいないのが現状である。
